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JTB、国内旅行者数は対前年175%。2022年夏休みの旅行動向。花火大会やテーマパークの人気が回復

2022年7月7日 発表

JTBは2022年夏休みの旅行動向を発表した

 JTBは、「夏休み(7月15日~8月31日)に、1泊以上の旅行に出かける人」の旅行動向見通しを発売した。

 同レポートは、旅行動向アンケート、経済指標、業界動向や航空会社の予約状況、JTBグループの予約状況などから推計している。

夏休み旅行動向推計数値

 社会経済環境と生活者の動きについては、新型コロナウイルスの世界的流行が3年目に入り、世界の国と地域では正常化に向けた動きが活発化し、国際旅客の受け入れを再開する動きも顕著になっている。コロナ禍前と同じ条件で出入国できる国も増え、特に欧米を中心に入国制限の緩和も進んできた。日本でも、6月10日から外国人旅行客の受け入れが添乗員つきパッケージツアーに限り再開され、国内旅行も県民割が行なわれている。今後は全国を対象とした観光需要喚起策が実施される予定。

 世界経済は、IMFが2022年の世界成長率(予測値)を3.6%と発表し、日本も0.9ポイント減少の2.4%と下方修正された。日本国内では、円安ドル高が進み、輸入原価が上昇するなど、物価上昇が家計に影響を与え始めている。JTBのアンケート調査で生活状況を聞いたところ、「昨年より収入が減った(15.8%)」は前年調査より4.1ポイント減少した一方で、「家計に余裕はない(24%)」は前年調査から10.2ポイント増加した。消費については、「特に生活費を節約していない(6.4%)」が前年から7.6ポイントと大きく減少したが、「普段の生活を切り詰め、欲しいものはこれまで通りに購入したい(8.3%)」が0.4ポイント増加、「先行きがわからないので、今のうちに大きな支出を考えたい(4.5%)」が2.9ポイント増加と、前年より消費に積極的な人の割合も増える結果となっている。「今後1年間の旅行支出に対する意向」については、「旅行支出を増やしたい(14.6%)」は0.7ポイント減少となっているものの、「旅行支出を減らしたい(39.7%)」は5.5ポイントの減少となり、旅行支出についての意向も前年より高くなっている。

消費者物価指数の推移
現在の暮らし向き
今の自身の生活について
今後1年間の旅行の支出に対する意向

 夏休みに旅行に行くかどうかについては、「行く(“行く”と“たぶん行く”の合計)」と回答した人は調査時点で36.1%と、前年から14.7ポイント増加。2019年に実施した同調査では38%で、以降はコロナ禍前に近づいているといえる。性年代別でみると、男女とも若い年代ほど旅行意向が高くなる傾向がみられた。また、「旅行日数を増やす(14.8%)」は対前年11.0ポイント増加、「昨年の夏より遠方に旅行したい(14%)」が7.4ポイント増加するなど、日数を増やし、遠方に旅行する傾向が昨年より強まっているといえる。他方で、旅行に行かない人に理由を聞いたところ、最も多かったのが「夏休み期間は混雑するから(29.3%)」、次が「家でのんびりしたいので(25.0%)」となり、「新型コロナウイルス感染症がまだ収束していないから/拡大の懸念があるから(24.8%)」は、前年から39.7ポイント減と大きく減少した。

 国内旅行人数については、7000万人(対前年175%、対2019年96.7%)と推計する。また、国内旅行平均費用は3万5500円(対前年107.6%、対2019年97.3%)、総額2兆4850億円と推計する。

 旅行に行く目的や動機は、「家族と過ごす(12.3%)」が最も多くなった。次いで「温泉でゆっくりする(9.8%)」「帰省(9.7%)」となったが、いずれも昨年より減少している。またコロナ禍で需要が増えていた「自然や風景を楽しむ(7.8%)」「ハイキング、登山、キャンプなど(3.6%)」「海辺で保養、海水浴、水遊び(2.2%)」も昨年より減少した。一方で「イベント・祭り・観劇・スポーツ観戦など(5.4%)」「テーマパークやレジャー施設(4.7%)」は増加しており、昨年中止や入場規制を行っていたイベントや施設への訪問意向がみられる。

 旅行日数は、「1泊(35.7%)」が最も多くなったが、前年から6.2ポイント減少している。一方で「2泊(33.1%)」「3 泊(18.3%)」はそれぞれ増加し、旅行日数は長くなる結果となった。

 同行者は、「夫婦のみ(24.5%)」が最も多く、次いで「子供づれ(中学生までの子供がいる)の家族旅行(20.9%)」となったが、いずれも前年に比べ減少した。コロナ禍では増加傾向にあった「ひとり(18.0%)」も減少。一方、「三世代の家族旅行(6.6%)」「(母娘など)それ以外の家族旅行(8.8%)」、「家族と友人・知人(5.3%)」「友人・知人・パートナー(14.1%)」はいずれも増加した。これまでの少人数の家族やひとりが中心だった旅行から、同行者の対象が拡大する傾向がみられている。

 1人あたりの旅行費用は、「1万円~2万円未満(20.6%)」が最も多く、次いで「2万円~3万円未満(18.3%)」 となったものの、いずれも前年より減少した。一方、「3万円~4万円(9.2%)」「4万円~5万円未満(17.4%)」はそれぞれ増加し、3万円以上はすべての項目で前年より増加している。

 利用交通機関は、「自家用車・レンタカー(61.9%)」が最も多かったものの、前年より8.1ポイント減少。一方「鉄道全体(43.5%)」「航空機全体(23.3%)」は増加した。昨年は感染対策として自家用車の利用による近距離旅行の傾向が顕著だったが、「鉄道」や「航空機」など公共交通機関を利用し、遠方へ日数をかけて行く意向がみられる。

 利用宿泊施設は、「ホテル(63.2%)」が最も多く、前年より20.1ポイント増加しており、都市部への旅行の回復がうかがえる。次に「旅館(24.3%)」「実家や親族の家(18.9%)」となったものの、いずれも減少した。これまでは、感染対策を兼ね、「キャンプ場・グランピング・キャンピングカー・車中泊など、アウトドアに関する宿泊(5.1%)」や「民泊・貸別荘(2.2%)」が増加したが、今夏はいずれも減少している。

 なお、今年の夏休みで最も気になる場所は「自然が楽しめる場所」だが、前年よりは減少しており、花火大会、テーマパーク、文化施設など、コロナ禍で行きづらかった場所の人気が回復。また、期間中の海外旅行人数は50万人と予測され、関心は高いものの水際対策や出入国手続き、入国規制が大きな壁となっていることがわかる。