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ANA、第3のブランドは「一度乗ったらまた乗りたくなる航空会社に」。第76回株主総会

2021年6月29日 実施

ANAホールディングスが第76回定時株主総会を開催した

 ANAホールディングスは6月29日、第76回定時株主総会をグランドプリンスホテル新高輪(港区高輪)で開催した。

 代表取締役社長の片野坂真哉氏が議長を務め、来場した株主は447名(11時29分時点)。

議長を務めたANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 片野坂真哉氏

国内線は今年度中にコロナ以前の水準へ回復見込み

 その冒頭、議長から連結業績と対処すべき課題について報告があり、2020年度の売上高は前期比63.1%減の7286億円、純損益は4046億円の損失となっている。主な事業別に見ると、国際線旅客収入は447億円(前期比5692億円減)、国内線旅客収入は2031億円(4768億円減)、貨物郵便収入は1868億円(507億円増)、LCC収入は220億円(599億円減)とコロナ禍で厳しい状況にあり、こうした背景から株主への配当を見送ることに理解を求めた。

 また、手元現預金の確保のため、上期に5300億円、下期に劣後ローン4000億円、公募増資で3000億円の借り入れ・調達を行なっていること、5900億円の費用削減を達成していることなどを説明した。

 一方で、コロナ禍における社員発信の取り組みとして、エアバス A380型機を使った遊覧飛行や、羽田に駐機する機材でファースト/ビジネスクラス機内食を楽しめる「翼のレストラン」、機内食のインターネット販売、機内でのウェディングなどの取り組みを行なっており、増収に努めたことを紹介。国内線は今年度中に以前の水準に、国際線は今年度中に以前の水準の5割まで回復すると見込んでいるという。

 また、中長距離と高価格帯市場はフルサービスキャリアのANA、国内と近距離アジア圏をカバーするピーチ(Peach Aviation)、アジア・オセアニア地域からの訪日需要など今後の成長領域をカバーする「第3ブランド」(2022年度後半~2023年度前半の就航を準備中)によって航空事業モデルを変革、需要のカバレッジを最大化していくことなどを説明した。

質疑応答抜粋

 総会に上程した議題は3つで、発行可能株式総数を増やすための定款の一部変更(第1号議案)、取締役10名の選任(第2号議案)と監査役1名の選任(第3号議案)。ここでは株主からの主な質疑を抜粋する。

 コロナ禍において抑制している新卒採用について、国内・国際線の回復見込みや第3のブランドの立ち上げなどが控えており、人材を確保できるのかという質問については、2020年度~2021年度はパイロットなど一部の職種を除いて新卒採用を見送っており、2022年度の採用についても新型コロナの収束が見えないことから一部の職種の採用を見送ることを決めていると報告。採用予定は300名程度で、その先については検討中であるとした。

 ピーチを利用した際、非常口座席でシートベルトの外し方が分からない人がいた。緊急時に避難の手伝いをお願いする席のはずなのに、広報が足りないのではないかという声に対しては、ピーチは就航10年を迎え、新しい需要を取り込むことで飛行機に乗ったことがない人もいるとしつつ、今後そうした心配をかけないよう改善していきたいと回答した。

 スーパーフライヤーズ会員になって9年という株主は、上級会員が増えすぎて優先搭乗の列が長かったり、ラウンジが混雑していたりとプレミアム感が薄れていると指摘。これについては、顧客エンゲージメントという言葉を挙げ、利用者と縁をいかに長く保つか、体験価値をいかに向上するかということに軸足を置いていると述べ、そのために新たな部門を創設するなど組織体制の変更を行なっていることを紹介して理解を求めた。

 ANAとピーチ間でマイルとポイントの交換、コードシェアなどが始まっていて、第3のブランドの立ち上げも控えており、棲み分けはどうなっているのかという質問に対しては、コロナ後は旅客の量と質に変化が起こると回答。なかでもアジア・オセアニア地域の回復が早く、業務渡航よりも宿泊志向の高いプレジャーマーケットの成長が見込まれるため、第3ブランドはこの市場を狙っていくとしつつ、「単なるLCCにとどまらず、一度乗ったらまた乗りたくなるような航空会社を目指すので期待してほしい」と説明した。

 なお、3つの議案はすべて原案どおり可決した。