ニュース

JAL、5か年で「株の希薄化を打ち返すほどの利益」。第72期株主総会を開催

2021年6月17日 開催

JALが第72期定時株主総会を開催した

 JALは6月17日、第72期定時株主総会を東京ガーデンシアター(江東区有明)で開催した。

 代表取締役社長の赤坂祐二氏が議長を務め、株主の出席者は399名(閉会時点)、議決権を行使した株主数は11万2512名(議決権数は271万8018個)。なお、3月31日時点の株主総数は38万9848名で、株式発行数は4億3714万3500株、議決権を有する株主は36万6623名、議決権数は436万6999個となっている。

 なお、2020年の第71期総会の出席者数は405名だったため、今回はほぼ前年並みと言える(ただし2019年の第70期は1149名)。

議長を務めた日本航空株式会社 代表取締役社長 赤坂祐二氏

 会の冒頭、議長の赤坂氏はコロナ禍における手元流動性の確保と財務の健全性維持のため、今期の期末配当を引き続き無配としたこと、また2022年3月期の業績に見通せない部分が多いため、配当を未定としたことについて、株主に理解を求めた。

 続いて、映像を使って2020年度の事業報告を行なった。詳細は本誌でも既報だが、グループの売上収益は4812億円、EBITは3983億の損失、純損益は2866億円の損失となっている(関連記事「JAL、2866億円の赤字決算。2023年にコロナ禍以前の利益水準目指す」)。

FSC領域の拡大を緩めてLCC領域を加速

 さらに赤坂氏から、「対処すべき課題」として、コロナ禍の経営環境の変化、航空業界が受けた甚大なダメージ、航空需要の構造や消費者行動の変化、SDGsの達成などを踏まえて、2025年度までの新たな中期経営計画を策定したことが述べられた。

 5か年の前半、2023年度までに利益水準を以前のレベルまで回復させ、2024年度からは以前の水準より成長を目指すための計画であるとして、事業戦略について説明を行なった。この点についても既報のため、詳細は前述の関連記事を参照していただきたいが、一部かいつまんで紹介する。

 ビデオ会議の浸透などでビジネス需要が元には戻らないと考えられる一方、観光・訪問需要は変わらず期待が持てるため、ビジネス需要を狙ったフルサービスキャリア領域の事業拡大を緩め、LCC事業を拡大する。具体的には、国内線は大型機(ボーイング 777型機)をすべて退役させ、エアバス A350型機の導入を推し進める。国際線では2023年度までに777型機をA350型機へ置き換え、欧米線では長胴型のA350-1000型機の投入を行なう。

 LCC領域では、観光・訪問需要は成田をベースに展開し、中長距離国際線LCCのZIPAIRでアメリカ西海岸を含む主要都市への就航を進める。また、SPRING JAPANを6月末に連結子会社化、中国発のインバウンド獲得を狙う。国内ネットワークはジェットスターが担っていく。

 さらに、マイレージ・ライフスタイル事業は3000万人の顧客基盤、JALマイレージの魅力・強みを活かして事業を拡大し、異業種パートナーとの提携でマイルをより貯めやすく・使いやすいものにする。一方、コロナ後に向けて、大都市集中の見直しや場所にとらわれない働き方など、都市圏にも地方にも転機が訪れることから、これまでの航空ネットワークと人材を活かして、旅行・物流・インバウンドなど地域密着事業を拡大していく。

質疑応答抜粋

 総会に上程した議題は2つで、取締役9名の選任(第1号議案)と監査役1名の選任(第2号議案)。ここでは株主からの主な質疑を抜粋する。

 コロナ禍で搭乗機会が減少するなか、株主優待券の期限延長を求める声に対しては、すでに2019年5月発行分、2019年11月発行分、2020年5月発行分は期限を半年延長しており、2020年11月発行分以降は、発行時点で有効期間を1.5年に延長していると回答した。

 国際線のネットワーク戦略について、ハワイアン航空、カンタス航空とのJV(共同事業)が実現していないという指摘に対しては、独禁法の特例を認めてもらう必要があるという前提を挙げたうえで、ハワイアン航空とは認可を得られなかったが、マレーシア航空は認可を得て共同事業を開始しており(2020年7月)、カンタス航空については最終裁定を待っていると説明した。

 女性活躍についての質問に対しては、赤坂氏自身がJALには多数の優秀な女性社員がいるとしたうえで、コーポレートガバナンスの基本方針を改定し、早期に女性取締役を複数採用すると説明。客室担当からの回答では、現在女性役員は5名で、これを拡大するために女性管理職比率を2025年度までに30%へ伸ばしていくという(現在は19.5%)。また、出産や育児など家庭と仕事の両立などの環境整備を進めたことで退職率はかなり減少しており、例えばCA(客室乗務員)職では、2017年度の5.1%から2020年度は1.5%まで減少している。

 ユナイテッド航空がBoom Supersonicの超音速機を購入する契約を結んだことについて、Boomと資本業務提携を結んでいるJALの動きを問う声に対しては、超音速機の試験機や本番機の開発のなかで、安全性、客室仕様などで情報の共有をしているが、現時点で機体の購入が確定しているわけではないと回答した。

 公募増資で株価が下がったという指摘については、コミットメントラインを使わなかったのは今後の手元流動性を確保するためであり、公募増資とコミットメントライン、どちらが優先ということではないと回答。とはいえ、株式が希薄化しているという批判は承知しており、安易に新株を発行するのではなく、新しい中期経営計画で希薄化を打ち返すほどの利益を上げていくので期待してほしいと述べた。

 なお、2つの議案はともに原案どおり可決され、総会は閉幕した。