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ANA井上社長「脱炭素は人間そのもののサステナビリティ」。第77回株主総会

2022年6月20日 実施

ANAホールディングスが第77回定時株主総会を開催した

 ANAホールディングスは6月20日、第77回定時株主総会をグランドプリンスホテル新高輪(港区高輪)で開催した。代表取締役社長の芝田浩二氏が議長を務め、来場した株主は664名。

議長を務めたANAホールディングス株式会社 代表取締役社長 芝田浩二氏

ANA・ピーチ・エアージャパンの連携を進める

 総会の冒頭では議長から連結業績と対処すべき課題について、まず2021年度の売上高が前期比40.0%増の1兆203億円、純損益は1436億円の損失となったことを報告した。引き続き新型コロナの影響を強く受けてはいるものの、純損失が前期比で2609億円改善するなど赤字幅は急速に縮小しており、国内線・国際線ともに需要が戻りつつあると説明しつつ、大型機の退役や役員報酬の減額などコスト削減に努め、6000億円の費用削減を行なったものの、引き続きコロナ禍で厳しい状況にあり、株主への配当を見送ることに理解を求めた。

 対処すべき課題としては第一に業績の改善を挙げており、渡航制限の緩和でレジャー需要が一層回復し、コロナ前の水準に戻るとみられることから、2022年度は黒字化を見込んでいることを説明した。また、開発を進めているスーパーアプリを中心とした「マイルで生活できる社会」を目指すANA経済圏の構築に引き続き取り組んでいることや、ANAによる国内線・国際線、ピーチによる国内ローカル路線・国際短距離路線、エアージャパンによる国際中距離路線という3ブランドによる事業ポートフォリオで収益の最大化を図ることなどを紹介した。

質疑応答抜粋

 総会に上程した議題は3つで、総会資料の電子提供制度のための定款の一部変更(第1号議案)、取締役11名の選任(第2号議案)と監査役2名の選任(第3号議案)。ここでは株主からの主な質疑を抜粋する。発言者は11名。

 まず、配当はいつ復活するか、赤字でも配当を行なう企業はあるのではないかという質問に対しては、コロナ禍で2期連続の赤字となっていること、将来の手元流動性を確保する必要があることなどから、無配が続いていることに繰り返し理解を求めた。

 最近株主優待の使い勝手がわるい、連休などに使えないことがあり、株主優待より安い航空券が販売されているケースが見られるという指摘については、航空ネットワークを維持・株主還元を行なうため、収益基盤を維持するために株主優待が利用できない局面があるという状況を説明。安価な航空券については、閑散期などに限られた座席数でそういうケースもあるが、プロモーション的側面があり、変更が効かないなどの制約がある一方、株主優待券ではそうした制限がないというメリットを紹介した。

 CA(客室乗務員)の高年齢化が進んでいると感じる、キャリアデザインはどうなっているかという質問に対しては、2020年度末から2021年度末にかけて社員が4000名減少しているという背景があり、その期間中はCA採用も凍結しており、2023年春入社についても見送っていると説明。学生からも要望があることは理解しているとしつつ、CAは年代に応じたスキルを持っており、子育て経験のあるスタッフは小さな子供連れの利用者に寄り添うことができるなど、新卒スタッフのフレッシュさだけでなく客室がチーム全体で機能しているという点に理解を求めた。

 SAF(持続可能な航空燃料)の戦略について、国交省は2030年度に10%のSAFへの転換を掲げているが、試算では6%台という報道を見た、そのギャップはどう埋めるのかという質問に対しては、いかに国産のSAFを作っていくかが課題で、2030年に10%達成に向けて、ANAもリーダーシップを取りながら進めている、グローバルでは運賃転嫁の話も出ているが、サーチャージ導入などは今後の社会情勢を見ながら検討したいとした。また、事業会社のANA 代表取締役社長の井上慎一氏が回答に登壇し、「脱炭素は人間そのもののサステナビリティ(持続可能性)だと考えている。3月にSAFの商用化・普及を目指す団体『ACT FOR SKY』を設立しており、消費量を増やす取り組みを進めている。SAFによる脱炭素は個社ではなく社会全体・世界全体の問題であり、SAFが適正な価格になるまでは政府が補助する例もある」と海外の事例を紹介した。

 株主優待を紙券ではなく期間限定のマイルで付与できないか、発行の費用が減り飛行機を利用しようというマインドにもつながるのではという提案については、マイル・コインは金券と同じ扱いと見なされて、配当と同じ扱い受ける可能性があり、法的・税制的な課題が発生すると考えられると回答した。

 なお、3つの議案はすべて原案どおり可決した。