ニュース

ANAスーパーアプリで描く経済圏「マイルで生活できる世界」。ANA XとANAあきんどが事業説明

2021年3月26日 実施

ANA XとANAセールスが事業の分割と社名変更について説明した

 ANA(全日本空輸)グループのANA XとANAセールスは3月26日、本社で会見を開き、4月1日の事業分割と社名変更について説明した。

 既報のとおり、ANAセールスは4月1日に旅行事業を分割して、ANA Xが継承する。ANAセールスは「ANAあきんど株式会社」に商号を変更し、地域創生事業と航空セールス事業を展開する(関連記事「ANAセールス、商号を『ANAあきんど』に。4月1日に旅行事業を分割」)。

 これにはコロナ禍で航空事業が大きく影響を受けるなか、非航空収入を拡大する狙いがあり、将来的には2022年度に提供予定のスーパーアプリ(航空券の予約・購入、会員プログラム、各種決済など、さまざまな機能を1つに集約したもの)を起点に、航空・旅行だけでなく日常の街中やデジタル市場を含めたANA経済圏構築のための足がかりとする。マイルを貯めたり使ったりできる対象も、大きく広げていくという。こうした未来像を、ANA X 代表取締役社長の井上慎一氏は「マイルで生活ができる世界」と表現した。

ANAグループの目指す経済圏

ANAあきんどは国内33支店に地域活性のためのコンシェルジュを配置

 ANAあきんど(現ANAセールス)代表取締役社長の高橋誠一氏は、ANAあきんどの立ち位置を地域創生事業会社であると話す。

 例えば後継者不足で悩む農園に対して、地域の産品を商品化して販売する、おてつたびやワーケーションを通じて人手不足・交流を活性化するなど、ANAの商材を使って地域課題に取り組む、というのはこれまでも進めてきている。そのうえで、ANAあきんどは「地域でともに暮らすANAグループコンシェルジュ」を国内33支店に約120名配置する。

 航空券の販売は東京に集約し、全国の拠点は地域創生に集中させる。高橋氏は、「地域にともに暮らして課題を共有し合う、というところにリアルな解決のヒントがある」と説明した。

ANAあきんど株式会社(現ANAセールス株式会社)代表取締役社長 高橋誠一氏

 一方で、プラットフォーム事業会社としてスタートを切るANA Xについて井上氏は、今後「航空一本足からの脱却」が必要であると述べ、航空・旅行といった非日常だけでなく、不動産や金融・保険など日常の幅広いデジタル商材を同社が形成し、そのすべてのスーパーアプリで利用できるという将来を描く。

 従来のANAマイレージクラブ運営などに加えて、ANAセールスが担っていた旅行事業を担当し、国内外の旅行販売や特にデジタルチャネルでの航空販促に力を入れる。タビマエ・タビナカ・タビアトの体験において、交通や宿泊、飲食、体験などさまざまな消費行動がスーパーアプリ1つで完結する「TaaS(Travel as a Service)」が目指す形と説明した。

ANA X株式会社 代表取締役社長 井上慎一氏

 なお、3月23日にANAセールスが7月以降出発のハワイツアーを発売したこと、25日に新しい国内旅行商品を発売したことについて高橋氏は、新型コロナウイルスの影響を受けて旅行商品は催行決定と中止を繰り返してきたと背景を説明。そのうえで、「ハワイは早期に回復すると見られるデスティネーション。先々に備えて商品発売をした」という。国内についてもゴールデンウィークの予約が増えており、やはり先々のニーズをとらえる狙いがある。商品という形を作ることで認知と購買に結びつけていきたいと説明した。

 井上氏も「人の移動をもう一度活性化させたい」と補足。感染防止を図って安全な体制を作り、陰性なら旅行に行っていいんだという機運を高めたいとして、市場の再活性に向けて期待を寄せた。