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JAL、2866億円の赤字決算。2023年にコロナ禍以前の利益水準目指す

2021年5月7日 発表

JALが2021~2025年度の中期経営計画と2020年度(2021年3月期)決算を発表

 JAL(日本航空)は5月7日、2021~2025年度の中期経営計画と2020年度(2021年3月期)決算を発表した。

 中期経営計画については説明したのは、代表取締役社長の赤坂祐二氏と常務執行役員 経営企画本部長兼経営管理本部長の斎藤祐二氏、連結業績については代表取締役専務執行役員 財務・経理本部長の菊山英樹氏が担当した。

JAL Vision 2030
2023年にはコロナ禍以前の利益水準へ
リスクに耐える事業構造へ改革
旅客以外の収入を強化

 赤坂社長は、2030年に向けたJALグループの指針を安全・安心とサステナビリティを2本柱とした「JAL Vision 2030」と紹介し、5か年の中期経営計画でコロナ禍以前の利益水準を超えて成長を目指すとした。具体的には、2023年にはEBIT(利払前税引前利益)をコロナ禍前の水準である1700億円へ戻し、2025年には約1850億円レベルまで伸ばしていく。2030年にはSDGsの達成、2050年にはCO2排出実質ゼロを目指す。

 また、今後のリスクにも耐えうる事業構造として、変化する市場に即した事業領域の拡大を行なう。例えばフルサービスキャリア(JAL本体)では、高収益な国際路線から順次複便、エアバス A350型機の導入促進などで収益性を向上、好調な貨物郵便は引き続き旅客機の貨物スペースを使った供給を続ける。

 一方、LCC領域ではZIPAIRが中長距離の国際線、SPRING JAPANが中国、ジェットスターが成田を軸に観光需要という具合に棲み分けと市場開拓を進める。また、「マイル・ライフ・インフラ」領域ではマイレージの顧客基盤を活用して、マイルの利用機会拡大・金融、eコマースの新規事業などの展開を狙う。

 こうした変化によって、国際/国内旅客収入が大きな割合を占めていた事業構造を改革し、新たな事業ポートフォリオの確立を目指していくという。

JALグループ連結業績
連結財政状況、キャッシュフロー

 2月の第3四半期決算では、純損益で2127億円の赤字を発表しており、通期では3000億円の損失を見込んでいたが、今回の発表で通期の損失は2866億円に上ることが明らかになった。累積の売上収益は前年比65.3%減の4812億円、EBITは3983億の損失となっている。

 事業別に見ると、国内線は12月にGo To キャンペーンが中止、1月に緊急事態宣言の発出があり、国内旅客数は前年比66.5%減、国内旅客収入は同67.2%減の1740億円。国際線は「国境をまたぐ移動需要はほぼ消失」と表現するとおり、国際旅客数は同96.0%減、国際旅客収入は同94.3%減の279億円となっている。

 一方、貨物郵便収入については、乗客を乗せない貨物専用便を計1万5299便運航するなど積極活用することで、前年比40.6%増の1288億円と伸長している。

 新型コロナウイルスによる苦境が続くなか、自己資本比率は前年比6.2pt減の45.0%、自己資本は同668億円減の9474億円を維持しており、現預金は4083億円。中期経営計画によると、自己資本比率を50%程度まで回復させ、手元流動性は旅客収入の5.0~5.6か月分を確保するよう財務基盤の再構築を行なう。計画は5か年の前半(2021~2023年度)と後半(2024~2025年度)でフェーズを分けており、前半では前述の現預金水準に至るまで投資を厳選し、後半では株主還元や持続的な成長が見込める分野で投資を行なっていく。このことからも分かるように、今期の株主への配当は見送りになっている。

 なお、新型コロナウイルスの収束状況が見通せないことから、2021年度(2022年度3月期)の通期業績予想についても公開を見送っている。

財務基盤の再構築
投資と株主還元について
中期経営計画の経営目標
フルサービスキャリア領域の詳細
LCC領域の詳細
機材の更新予定など