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JAL、LCC事業の戦略を説明。2025年度に120億円の利益目指す

2021年6月30日 実施

格納庫前に駐機するJALグループLCC 3社の機体

 JAL(日本航空)は6月30日、成田空港でグループのLCC(ローコストキャリア)戦略の説明会を開催した。

 JALグループのLCCは、100%出資のZIPAIR(ZIPAIR Tokyo)、6月に出資比率を66.7%に引き上げて連結対象子会社となったSPRING JAPAN(春秋航空日本)、50%出資するジェットスター・ジャパンの3社がある。

 戦略については、取締役専務執行役員 路線事業本部長である豊島滝三氏が説明した。5月に発表した2021~2025年度のグループ中期経営計画では、2023年度にはEBIT(利払前税引前利益)を1700億円、2025年度には1850億円を目標としている。

 現状では収益の大部分はFSC(フルサービスキャリア)であるJALによる部分が大きいが、2025年度にはLCCの成長も加速させ、120億円の収益が計上できるよう投資と事業構造改革を推進していく。

日本航空株式会社 取締役専務執行役員 路線事業本部長 豊島滝三氏

SPRING JAPANは中国特化型LCCとして期待

 連結対象子会社としたSPRING JAPANだが、引き続き春秋グループとの共同経営を通じ、JALだけでは獲得できない新たな中国市場を開拓していく。

「中国には底知れぬ成長の魅力がある」と豊島氏が語るように、日本からの直行便はANAグループも含めて45%の都市までしか就航しておらず、残りの55%のなかには人口が1億人近い河南省をはじめ、河北省や湖南省など、有望な都市がまだまだ残されている点を説明した。

 春秋航空はもともと旅行会社からスタートしており、その販売網やブランド、マーケティング力にも期待しつつ、JAL側からは運航や整備、オペレーションの品質を高めるような施策を講じていくとしている。機材についてはボーイング 737-800型機を6機保有しているが、近いうちに7機体制にすることで売り上げを伸長させていく方針だ。

SPRING JAPANのボーイング 737-800型機。客席数は189席

ジェットスター・ジャパンは国内線の高収益路線に注力

 コロナ禍において厳しい経営状況に直面しているジェットスター・ジャパンは、首都圏(成田空港)を中心とする収益性の高い国内線需要をしっかりと取り込むことで財務体質の改善を急ぐとしている。

 国際線が飛べない厳しい状況ではあるが、カンタス航空グループであるジェットスターは外国人にも高い知名度があることから、今後もJALとジェットスターのブランドを活かした「Dual Brand」戦略を柱にしていく。

 機材はエアバス A320ceo型機を25機保有しているが、そのうち6機は需要が回復しつつあるオーストラリアのジェットスターにおいて転用稼働させており、グループ内でフレキシブルな運用ができていることも説明した。なお、導入予定となっているエアバス A321型機については、市場動向を注視しながら導入時期を決めたいとしている。

ジェットスター・ジャパンのエアバス A320ceo型機。客席数は180席

ZIPAIRは旅客と貨物輸送でLCCの稼ぎ頭を目指す

 2020年6月に貨物便、同10月に旅客便をデビューさせたZIPAIRは、日本初の中長距離LCCとして、JALのLCC事業における収益拡大の最大の担い手として期待されている。

 航続距離の長いボーイング 787-8型機の特性を活かし、短・中・長距離を組み合わせた運航ネットワークを検討しており、機材をフル稼働させる。具体的には長距離はアメリカ西海岸、短・中距離はアジア近郊をターゲットにし、価格志向の強い利用客を取り込んでいく。また、787-8型機の輸送力を活かし、貨物輸送業務も収益の柱として見込んでいる。現在は2機体制だが、2024年度までに10機体制にする予定だ。

 利用客のニーズに合わせたサービスを提供することで、従来のFSCやLCCにはない、新しい時代の基準になる「NEW BASIC」エアラインを目指し、「ZIPがLCC事業の半分の売り上げを計上することになる」と豊島氏は説明した。

ZIPAIRのボーイング 787-8型機。客席数は290席

 新型コロナウイルス感染症の収束はまだまだ不透明な状況ではあるが、国内線の高収益路線を復活させ、海外との往来が本格的に再開された際には海外路線も充実させてシェアを伸ばしていきたいとしている。

 JALグループでは、LCC 3社による成田をハブとした国際・国内ネットワークに加え、JALの持つ羽田と成田の国際・国内ネットワークも活用できる「首都圏デュアルハブ」の利便性をアピールし、今後の成長につなげていく考えだ。

LCC 3社の成田を使ったネットワークと、JALの持つ羽田と成田のネットワークを活かした首都圏デュアルハブによってさまざまなニーズに応える
機体をバックに撮影に応じてくれたジェットスター・ジャパン、SPRING JAPAN、ZIPAIRの客室乗務員