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【星野リゾートが創造する新しい旅のカタチ】密を避けつつ益子焼を身近に感じる、界 鬼怒川の「リモート益子陶器市」

星野リゾート連載企画 第1回

「星野リゾート 界 鬼怒川」の福田友里さんに話を聞いた

 星野リゾートが「王道なのに、あたらしい。」をテーマに全国各地に展開する温泉旅館ブランド「界」について紹介する連載を、トラベル Watchでスタートすることになった。

 第1回は、栃木県・鬼怒川温泉にある「星野リゾート 界 鬼怒川」で進めている「リモート益子陶器市」について、界 鬼怒川の福田友里さんに話を聞いた。

「星野リゾート 界」は「ご当地部屋」や「ご当地楽」など地元文化を施設の意匠やアクティビティに積極的に取り入れているのが特徴。写真は界 鬼怒川のご当地部屋「とちぎ民藝の間」

 福田さんは栃木県足利市出身で、都内で働いていたが「地元で地域の応援や魅力を発信するような仕事がしたい」という想いから、2018年に星野リゾートへ転職。界 鬼怒川へ着任して3年目になる。

 福田さんは、道の駅などに並ぶローカルな農産物や工芸品を見つけるのが好きで、休日にはドライブを兼ねて益子に行くことも多く、益子焼のショップやカフェめぐりで地元愛を充電しているそう。そんな福田さんが担当した「リモート益子陶器市」は、益子焼の作家や職人と連携し、界 鬼怒川で器を展示し、来場者は気に入ったものがあればオンラインで注文できるという仕組みだ。

――イベントを企画したきっかけを教えてください。

 3月に入り、コロナの影響で毎年ゴールデンウイークに県内外から約40万人もの方が訪れる「益子陶器市」が中止(秋の益子焼陶器市も中止に)となりました。界 鬼怒川には「とちぎ民藝が光る木漏れ日の湯宿」というコンセプトがあり、開業当初から黒羽藍染や鹿沼組子など、栃木の民藝を客室やロビーにしつらえており、益子焼もその一つでした。

 しつらえだけでなく、毎晩、「益子焼ナイト」と題して、ゲストに益子焼の特徴やその歴史、器の楽しみ方などをご案内する催しを行なっていたこともあり、益子焼の作家さんや販売店を応援する取り組みができないかと考えたのがきっかけでした。

益子焼ナイト
益子焼ナイトでは約250点の豆皿が並ぶ

――どういった内容ですか?

 20名ほどの作家さんにご協力いただき、約150点の作品をロビーと客室に展示しています。気に入った作品があれば、作品紹介に掲載してあるQRコードをスマートフォンで読み取り、特設サイトから購入することができます。通常の陶器市だと、荷物になったり、破損の心配がありますが、Webサイトから購入いただければ、そういった心配はありません。また、宿泊者向けの企画なので不特定多数の人と接触することもないため、感染対策にもつながります。

 7~9月の実施で、65点程購入がありました。界 鬼怒川のほかにも、栃木県内にある界 川治、界 日光でも同様の取り組みをしています。

作品紹介にあるQRコードを読み取ると、特設サイトの購入ページにアクセスできる

――準備段階で大変だったことは?

 館内に設置する際、どのようなディスプレイにしたら、ゲストの皆さまに見ていただけるかという点が悩ましかったです。実際の陶器市は器が所狭しと並び、その場で手にしたり作家さんと話をしたりと、にぎやかな楽しさがあります。

 ただ、界 鬼怒川で行なう場合、ゲストに安心して見てもらうことを第一に考え、作品同士のスペースはある程度余裕を設けたほうがよいのではと思いました。ロビー前のパブリックスペースでの展示だったこともあり、ゲストがいらっしゃらない、チェックアウトからチェックインの間の数時間で、何度もディスプレイのトライアルをしました。

界 鬼怒川の特設ギャラリー

――ゲストの反応はどうでしたか?

 通常の益子陶器市は40~60代の方が多いですが、リモート益子陶器市では20~30代の女性やカップルにも反応がよかったのが新鮮でした。界 鬼怒川に来て、益子焼自体を初めて知る方も多く、スマートフォンからQRコードで作品紹介を見ていただいている様子を見るとうれしくなります。

 また、益子焼は温かみのある色合いや質感が特徴で、日常使いできる作品が多いことから「用の美」とされていますが、でこぼこしたお皿や、モダンでスタイリッシュなコーヒーカップ、土の力強さをそのまま活かした和食器など、作家さんによってさまざまな表現があり、それをゲストにも体感していただけたのが、とても励みになり、参加していただいた作家さんにも共有させていただきました。いつもの陶器市とは異なるやり方ですが、withコロナの陶器市としてやってよかったと思います。

 星野リゾートでは、withコロナの旅のあり方として、3密を避けながら近場の旅を楽しむ「マイクロツーリズム」を提案していますが、この取り組みでもコロナ対策をしながら地域の魅力を発信できたのではと感じています。

――今後の展開を教えてください。

 10月からは「リモート益子陶器市 第2弾」として、これまでの取り組みに加え、作家さん7名と界鬼怒川をオンラインでつなぎ、リモートトークを行なっています。

 作家さんのところに実際に足を運んで、制作の場を見せていただいていますが、作家さんにより器の形、焼き方、使う釉薬がまったく異なるので、そのこだわりや想いをリモートでつないで、ゲストに紹介したいと考えています。ゲストからも作家さんに質問できる時間も設けています。

 ぜひ、界 鬼怒川にお越しいただき、益子焼を実際に目にして、その質感を感じていただき、数ある作品からお気に入りを見つけていただければと思っています。

リモートトークに参加する益子焼作家の向山文也氏(写真左)と大塚雅淑氏(写真右)
「星野リゾート 界」の新型コロナウイルス感染症対策