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阪神高速、吉田新社長就任会見。老朽化した道路のリニューアルと大阪湾岸道路西伸部/淀川左岸線延伸部のミッシングリンク解消が最優先

2020年6月26日 会見

阪神高速道路株式会社 代表取締役社長を退任した幸和範氏(左)と、新たに就任した吉田光市氏(右)

 阪神高速道路は6月26日、大阪市北区の本社で社長就退任記者会見を開いた。

 同日開催の第15回定例株主総会、定例取締役会、監査役会での選定・選任を受けたもので、これにより幸和範(ゆき かずのり)氏が代表取締役社長を退任し、新たに吉田光市(よしだ こういち)氏が就任した。合わせて取締役会長、代表取締役、執行役員、監査役を選定・選任したことを発表した。

会見は発言時をのぞいてマスク着用で行なった

大阪湾岸道路西伸部、淀川左岸線延伸部の両ビッグプロジェクトをスタートできた

 代表取締役社長を退任した幸氏は、2期4年間という在任期間を「自身にとっても関西にとっても非常に濃い期間だった」とし、「シンプルでシームレスな料金体系の実現ができました。また、関西の多くの人たちが数十年間事業のスタートを望んでいた大阪湾岸道路西伸部、淀川左岸線延伸部の両ビッグプロジェクトをスタートすることができました。合わせて次の世代に今のネットワーク機能を引き継いでいくリニューアルプロジェクトが本格化しました。さらに、大阪万博の開催が決定しました」と振り返った。

 新たに新型コロナウイルス感染症という課題が加わることには、「責任ある道路事業を進めていくなかで、我々がまったく経験したことがない新しい環境のもとで、(事業を)どのように進めていくか。その課題を、次にバトンタッチしていくことになります」と話した。

 新型コロナ対策に伴い、日本の社会全体で働き方を変えていく動きにあるが、阪神高速道路も3年前から働き方を変えることをスローガンに掲げてやってきたという。その阪神高速道路の働き方改革が、新型コロナにより一段と前進させるというきっかけにもなったと幸氏。あいさつの締めくくりに、「次の経営陣にもぜひ、効率的で品質の高い仕事を目指していただきたい」と述べた。

代表取締役社長を退任した幸和範氏

 記者からは、大阪湾岸道路西伸部、淀川左岸線2期・延伸部のプロジェクトへの新型コロナの影響について質問があったが、幸氏は、「現在はコンサルタントなどとの打ち合わせ段階。以前より全国の叡智を集めるためにオンラインでの打ち合わせを取り入れているため、それが功を奏して特に影響はでていない」と回答。

 また、新社長に期待することと問われ、「吉田氏は国土交通省でインフラ、建設業関連の仕事に長く携わってこられているということで、私のほうからお願いして来ていただきました。幅広い知識とネットワークをお持ちで、さまざまな視点での施策展開を実現していただけると思っております」と紹介した。

最優先の施策は「老朽化した道路のリニューアルとミッシングリンクの解消」

 新社長に就任した吉田氏は、東京大学経済学部卒業後、当時の建設省に入省、国交省、独立行政法人都市再生機構、復興庁で要職を歴任し、2018年12月に国交省を退職している。吉田氏は、「大変な重責を担うことになり、身の引き締まる思いです。安全、安心、快適なネットワークを通じて、歴史ある関西のさらなる発展に微力を尽くしてまいりたいと考えております」とあいさつ。

 阪神高速道路は1日約70万台の自動車が走り、阪神の物流の5割弱を担う大動脈であり、24時間365日、平時も災害などの非常時にも、道路サービスを提供していくことが求められているという認識を持ち、責任感と緊張感をもって先進の最高の道路サービスを提供し、関西の暮らし、経済をしっかりと支えていきたいという。

 また、「このインフラ(阪神高速道路)は、我々世代だけでなく、将来世代も利用するもの」であり、1962年から現在まで60年近くの間に全長286kmのネットワークを構築し、いまだ大阪湾岸道路西伸部、淀川左岸線2期・延伸部というミッシングリンクを残し、また供用後40年以上が経過した道路も4割強あるなど、老朽化も大きな課題であると説明。

「リニューアル事業も含めて、高度な技術力を要する困難な課題ではありますが、叡智をふりしぼって、関西のさらなる発展に貢献できるよう取り組んでまいりたい。(中略)これら先人から引き継いだ資産を我々世代でしっかり手を加え、よりよい資産とし、次の世代に引き継いでいくことが必要だと考えております」と話した。

 そして吉田氏は、人口減少、頻発・激甚化する災害、新型コロナなど、数百年、数千年に一度の大きな時代の変化のなかにあるとし、これまでの常識をゼロベースで見直し、その変化に対応していく必要があると語った。「阪神高速道路は民営化から15年が経過しました。民営化当初に、1人の先輩が経営理念として“先進の道路サービス”という素晴らしい言葉を残しました。この言葉を大切にしながら、徹底した利用者目線に立って、先進の最良の道路サービスを関西の皆さまにお届けし、皆さまから信頼され、愛される阪神高速道路を社員とともに築いていきたいと思います」と締めくくった。

代表取締役社長に就任した吉田光市氏

 記者からは、新型コロナの影響と対策について吉田氏への質問があった。これには、阪神高速道路の総交通量はコロナ前の1日約70万台から、今年5月には50万台程度に激減しており、現在でも約15%程度減少していると説明。今後は、総交通量はもちろん、その内容の変化もしっかりと注視していくとともに、政府が8月の実施に向けて準備を進めている「Go Toキャンペーン」などにもどう対応できるか、社内でも検討していくという。

 また、最優先の施策を問われると、「老朽化した道路のリニューアルとミッシングリンクの解消」があり、さらには防災・減災への備えや、発災後に1分1秒でも早く再開通できるような仕組みも検討していくべきだと答えた。

記者からの質問に答える吉田光市新社長
2020年6月26日に選定・選任した阪神高速道路株式会社の取締役/監査役

・取締役会長(非常勤):中野健二郎(なかの けんじろう)氏
・代表取締役社長:吉田光市(よしだ こういち)氏
・代表取締役:関本宏(せきもと ひろし)氏
・取締役:平田修身(ひらた おさみ)氏
・取締役:奥村康博(おくむら やすひろ)氏
・取締役:濱浩二(はま こうじ)氏
・監査役:今林寛幸(いまばやし ひろゆき)氏
・監査役(非常勤):坂下泰幸(さかした やすゆき)氏
※新任者のみ
※取締役 森下俊三氏/幸和範氏/島田隆史氏/小関正彦氏/田中稔氏/木谷信之氏、監査役 伊藤昇一氏/村岡秀樹氏は定時株主総会の終結をもって退任