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阪神高速、「西船場JCT信濃橋渡り線」公開。16号大阪港線東行きと1号環状線北行きが直接接続

2020年1月28日 公開

2020年1月29日4時 開通

狭隘な都市空間に誕生した西船場JCT信濃橋渡り線

 阪神高速道路は、かねて整備を進めてきた西船場JCT(ジャンクション)信濃橋渡り線の工事を終え、1月29日4時に開通した。これにより、16号大阪港線東行きから1号環状線北行きが直接つながることになる。神戸・天保山方面から池田・守口方面への交通の流れがスムーズになり、時間的損失の解消、CO2排出量の削減といった効果が見込まれる。

 開通に先立つ1月28日、信濃橋渡り線180mの区間と、その前後の16号大阪線、1号環状線の車線増設部分の橋脚・橋梁部の新技術が報道公開された。

西船場JCTの改築概要

 西船場JCTは、東西の大動脈である16号大阪港線と、大阪市中心部の1号環状線北行きが立体交差するポイント。この2つの道路は順次渡り線によって接続されてきたが、そのなかで16号大阪港線東行きから1号環状線北行きへの渡り線のみが最後まで存在しなかった。そのため同区間を移動するためには、1号環状線の南半分を迂回するか、乗り継ぎ制度を利用して一般道を経由する方法しかなく、所要時間が長くかかったり、一般道路の交通量が増大し渋滞を引き起こしたりという影響があった。

 ここに渡り線が建設されることが公示されたのは2011年11月で、同年度から用地取得を開始、2014年1月より建設工事に着手していた。工事は渡り線180mの新設を中心に、渡り線より上流の16号大阪港線800mと、下流の1号環状線北行き710mをそれぞれ1車線ずつ拡幅、それにあわせて信濃橋入口からの入路を変更するというものだ。

工事区間の概要

信濃橋渡り線の設置と、16号大阪港線東行き・1号環状線北行きの車線増設

 1月29日の午前4時、信濃橋渡り線が開通した。またこれに関連して、信濃橋渡り線の上流にあたり16号大阪港線東行きで約800m、下流にあたる1号環状線北行きで約710m、それぞれ車線を1車線増設する。信濃橋渡り線の開通により、1号環状線の南半分を迂回するこれまでのルートより、約5分所要時間が短縮されると見込まれる。また、信濃橋渡り線の前後の車線増により交通の流れがスムーズになり、渋滞解消が期待できる。

大阪港線は約800mにわたり車線を増設(右端のレーン)した。この部分は2018年5月により供用している
信濃橋渡り線の分岐にわる標識。1月28日時点ではカバーがかけられている
16号大阪港線、3号神戸線の合流店付近は渋滞が多く、車線増設によりで渋滞解消が期待できる
信濃橋渡り線の分岐点を下から。16号大阪港線の下には中央大通りがありスペースに余裕がないことから橋脚が特殊な形状となっている
信濃橋渡り線は下り勾配と急カーブが組み合わさっている。走行時は速度に注意したい
ビルがすぐそばに迫り、カーブは急だ
カーブを抜けるとすぐに1号環状線北行き。渋滞している可能性もあるため、やはりカーブは慎重に通過したい

信濃橋入口も同時に開放

 信濃橋渡り線設置工事のため、信濃橋入口から1号環状線にいたるスロープも従来の位置から移動させる必要があり、同入口は長らく共用が停止されていた。こちらも1月29日の信濃橋渡り線開通と同時に開通している。

小路に伴い利用できなかった信濃橋入口も、信濃橋渡り線開通と同時に解放
従来は直線だったスロープも、信濃橋渡り線の設置により左に回り込む形状に変更

新技術で、より強じんな高速道路へ

 信濃橋渡り線の設置、16号大阪港線と1号環状線の拡幅工事に際しては、複数の新技術が導入されている。

 その1つが「UFC床版」。阪神高速の既設の橋梁部では、大型重量車などが繰り返し通ることによって、鋼床版では金属疲労亀裂が、鉄筋コンクリート床版ではひび割れなどの損傷が顕在化している。そこで阪神高速と鹿島建設が2011年から研究を進め開発したのが、UFC床版だ。

 UFC(Ultra High Strength Fiber Reinforced Concrete)とは、超高強度の鋼繊維入りセメント質複合材で、圧縮強度は従来のコンクリートの約5倍。これを床版の材料に使用し、橋軸と並行・直角にPC鋼材を配置(ワッフル型)することで、軽量で高い耐久性を実現する。

 このUFC床版は信濃橋入口から1号環状線北行きへと続くスロープのうち、本町通を越える部分(橋長37m)に使用している。このUFC床版自体の重量は67.1tだが、仮に従来のRC床版で設計した場合の重量は144.3tとなるようで、大幅な軽量化が達成できたといえる。

本町通にかかる橋梁部分にUFC床版を使用した
信濃橋入口からのスロープ(左)はUFC床版、1号環状線(右)は従来型のRC床版
橋梁を見上げると、格子(ワッフル)状のUFC床版が見える

 そして、もう1つが16号大阪港線の車線増設部に使用した「鋼管集成橋脚」による耐震橋脚だ。

 通常、車線を増設するためには橋脚を太くし、さらに地下に埋設している基礎部分もあわせて増設する。これらは耐震のために必要な措置だが、16号大阪港線の車線増設部はその下に大動脈である中央大通があり、さらにその地下にはインフラ関係の設備が走っており、地下部分の増設工事は困難だった。

 そこで採用されたのが鋼管集成橋脚。これは4本のスパイラル鋼管を束ねたもので、一見すると橋脚だが、普段は荷重がまったくかかっていないというものだ。地震の横揺れによる水平方向の力のみを受け止める橋脚で、これにより地震発生時に橋梁の破損や倒壊を防ぐ。

 さらに4本のスパイラル鋼管は、2か所の「せん断パネル」で1つの束にまとめられており、地震発生時に複雑な力が働くと、このせん断パネルが衝撃を受け止めて破損することで、スパイラル鋼管そのものの損傷を防ぐ構造になっている。構造が簡単で軽量、強度もあり、施工が容易で災害時の復旧にも有利とされる。今回の車線増設部分には計12基を設置した。

鋼管集成橋脚は、既存の橋脚の間に建てられている。地震時に水平方向の力を受け止めることで、橋梁や橋脚の損傷、倒壊を防ぐ
従来の橋脚はそのままで、増設部分を支えるために梁が横に伸ばされている
新技術について説明する 阪神高速道路株式会社 建設事業本部 大阪建設部 設計課 設計総括課長 志村敦氏

時間的損失の解消、CO2排出量削減に寄与

 今回の信濃橋渡り線の開通について、建設事業本部 大阪建築部 大阪改築事務所 所長の佐竹秀德氏に話を聞いた。

 佐竹氏は冒頭、多くの方にご協力いただき、工事の間は沿道にもご不便とご迷惑をおかけしたとしたうえで、「従来ですと、環状線の南側をご利用いただいて、11号池田線、12号守口線に行っていただく必要がありました。こちらが開通することにより環状線への迂回も必要なくなり、時間の短縮、CO2排出量の削減に寄与できると考えております」とメリットを強調した。施工時は、沿道にオフィスや飲食店も多いため、振動などに気を付けて工事を実施したという。利用者に伝えたいことはと問うと、「急カーブでもありますので、法定速度を順守していただき、安全に走行していただきたいと思います」と話した。

阪神高速道路株式会社 建設事業本部 大阪建設部 大阪改築事務所 所長 佐竹秀德 氏
信濃橋渡り線、運転のポイント