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ボーイング、機内消毒のためにUV照射器を開発中。操縦室や化粧室向けで1年以内の提供を目指す

2020年6月17日 実施

ボーイング・ジャパンが旅客機内の安全性などについて説明した

 ボーイング・ジャパンは6月17日、報道向けのオンラインセミナーを実施して、民間航空機部門のジム・ハース(Jim Haas)氏が機内の安全性などについて説明した。

 航行中の機内の空気が2~3分おきにすべて入れ替わっていることや、循環する空気についてもHEPAフィルターを通すことでほとんどのウイルス・バクテリアを除去できるという点については、本誌でもたびたび紹介してきた(関連記事「ANAの機内はどのように消毒されているのか? 約30分かけて787型機の清掃&消毒を実施」「飛行機の換気についてJALに聞いてみた。搭乗・降機中も機体の空調を積極活用してきれいな空気に」)。

 そのうえでボーイングは航空会社に対して、計器類の多い繊細な操縦室でどのような薬品を使うべきか、どこを重点的に消毒すべきか、あるいは客室内のどこが乗客が多く触れる部分(=重点的に清掃消毒すべき箇所)なのかといった点について、ガイドを提供しているという。一方で、微細なミストを噴霧するような消毒手順については、粒子のサイズによっては機内に入り込み過ぎてしまうため、(具体的な粒子サイズは研究中としながらも)あまり推奨していないという発言もあった。

 そして、現在はアルコールのような化学薬品を使った拭き取り消毒が中心だが、棒状の紫外線照射器(UV wand)を使った殺菌や、抗菌スプレーコーティングについても研究を進めているという。前述したように操縦室は計器類が多く形状が複雑で、液体を多く使うような消毒作業は実施しづらい。紫外線照射はすでに病院などで使われている実績があり、家庭向けの既製品では出力が足りないので、機内向けに出力を高めたものを開発しているという。

 ハース氏が示したスライドを見ると、ある程度の可搬性を考慮したイラストが掲載されていたが、これを操縦室や化粧室に使っていく。この照射器は1年以内の提供を目指しているそうだ。

 評価中という抗菌スプレーコーティングは、消毒液に比べると効果の発揮に時間がかかるため、現在の考え方はあくまで消毒液の補助。加えて、新しい化学物質でできた消毒液の利用についても評価中であり、組み合わせれば客室内の消毒がより効果的になるとのこと。

 なお、化粧室に関しては、利用するたびに紫外線を照射する機能の搭載も検討を進めており、提供までには数年かかるとしながらも、ハース氏は「準備ができたら新しい機体だけでなく、既存の機体についても後付け(レトロフィット)できるようにする」と述べた。いずれにせよ、紫外線は人の肌や目に有害なので、単に出力を上げるのではなく、どのスペクトルを使えばよいのかも含めて研究しているという。