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日本旅行業協会、新型コロナウイルスの対策室立ち上げ。「需要は落ちるがその後のリカバリーが重要」と認識示す
2020年2月13日 14:06
- 2020年2月13日 実施
JATA(日本旅行業協会)は2月13日、東京・霞が関の本部において定例会見を実施し、新型コロナウイルスに関する対応について、理事・事務局長である越智良典氏が説明した。
越智氏はまず、訪日を中止する中国人観光客が40万人におよぶとする報道があったことに触れつつ、実際にはそれ以上の中国人観光客が訪日を取りやめる可能性があるとした。そのうえで「現状は心理的に旅行に行きたくない、人混みが嫌だといった過剰な反応になっていて、国内旅行も海外旅行もすべてに影響が出ている」と語った。また団体旅行では新型コロナウイルスとまったく関係のない方面への修学旅行をキャンセルする学校が出てきていること、国内旅行でバスツアーのキャンセルが出ているなどの事例も紹介。4月の状況については「お客さまが様子見をしている状態。先行予約は入ってこないので、どんどん先行受注の数字は落ちている」とした。
こうした状況は2002年に流行したSARS、あるいは2009年に感染が広がった新型インフルエンザのときと同様で、感染のピークとは関係がなく、その情報が出たときから旅行予約を手控え、様子見の状態になると越智氏は指摘し、「一時的な現象で言えば、おそらくこの1か月から2か月の需要はそうとう落ち込むと思っている」と話した。そのうえで、このように報道が過熱している状況では仕方がないと述べつつ、「いずれ落ち着くので、そのタイミングで何をするか、冷静に全体を見て動かないといけない」と語った。
JATAとしての取り組みとしては、対策室(新型コロナウイルス感染症に対するJATA対策室)の設置および対策会議の実施のほか、情報収集やWebサイトやセミナーでの情報発信、リカバリー策の協議が挙げられた。なお対策室について「いま(新型コロナウイルスに関して)集まっている情報を見やすく編集し、分かりやすく提供していく。もし一般のお客さまにも使えるのであれば、そういったものも出していきたい」とする。
旅行需要の影響について、中国から毎月80万人の訪日があり、そのうち旅行会社の扱いが個人・団体旅行を合わせて毎月平均で45万人程度だとして、1月2月3月の数字はそうとうに減るだろうという見通しを示す。ただ「大事なのは今減るのが問題ではなく、必ずリカバリーする。リカバリーしたときの中国のマーケットをどこの国が取るかという方が大事」だと話した。中国は1億2000万人が旅行する巨大なマーケットであり、それにどうアプローチして訪日中国人を獲得するかが重要だとする。
その観点で日本には東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えているためチャンスが大きいとして、「中国人のマーケットは早く戻ってくる。そのときに誰が取るのか。やっぱり日本だよねというのがみんなの意見。オリンピック・パラリンピックがある、中国との関係で非常にうまくやっていて外交的にも落ち着いている、日本のおもてなしに信頼感がある。どこの国よりも日本が一番チャンスが大きい」と語った。
さらに湾岸戦争発生時やSARSの流行、アメリカ同時多発テロ事件の発生、2009年の新型インフルエンザの例を示しつつ、日本人は事件発生から旅行者数が回復するまでの時間が長いとするが、半年ほどで旅行者は戻ってくるのではないかと期待を示した。
その過去の例の1つであるSARSの流行について、日本からの旅行者は2002年4月は前年比14%、5月は同10%、8月にいたっても64%しか回復しなかったとする。一方、世界からの訪問者は4月5月は日本と同様に低迷したが、8月には110%と大幅に回復している。その理由として挙げられたのが7月13日から実施された大規模キャンペーンだ。
このキャンペーンでは香港行政庁が150億円、香港政府観光局が60億円を集中的に投じ、総額2億4000万円の懸賞やアジアフォーラムの開催、旅行業界およびプレスの招待、新聞テレビ広告、一般消費者を2000名招待するといった取り組みである。越智氏は「こうした取り組みのおかげで旅行者が戻った。そのときの主力は本土の中国人であっという間に回復した」とする。
この事例で参考になることとして、越智氏は発生期のフェーズ1、回復準備期のフェーズ2、そして回復期のフェーズ3に分けて、それぞれのフェーズでやるべきことをしっかりやることとした。
また、新型コロナウイルスの影響はインバウンドだけではないと話し、「国内旅行もアウトバウンドも影響を受けている。単純にインバウンドだけでなく、双方向でメッセージを出し、国内旅行も含めたキャンペーンも必要」との認識を示した。