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スカイホップバス京都、2階建て周遊バス新型導入。車いす対応で京都観光がますます快適・便利に

2020年2月7日 公開・試乗会

2020年2月中旬 運行開始

スカイホップバスが新たに導入した2台のバス。手前が2階席前方に屋根がある「全天候型ハーフループオープンタイプ」

 東京エリアや京都エリアで周遊観光バスを運行するスカイホップマーケティングジャパンは、「スカイホップバス京都」(明星観光バス)に新型バスを2台導入し、2月中旬から運行する。それに先立つ2月7日に、車両の報道公開、試乗会を実施した。

 新型バスは、「全天候型ハーフループオープンタイプ」が1台、「オープンタイプ」が1台で、いずれも従来型のバスとは一線を画すものだ。2台とも車両はメルセデス・ベンツ製の2階建てで、艤装はスペインのウンビが手掛けた。車いす対応の1階席が設けられているのが特徴で、それ以外にも快適に観光が楽しめる新機軸を取り入れている。

京都駅烏丸口の観光バスターミナルで新型バスを公開。営業運転もここから発車する

乗り降り自由な2階建てバスで京都観光できる「スカイホップバス京都」

 スカイホップバス京都では、乗り降り自由な2階建て観光バスで、オープン、カブリオレ(幌)、屋根ガラス付きなど複数タイプの車両があり、日中は約30分に1本のペースで運行している。

 京都には寺社仏閣などの観光名所が市内に点在するが、地下鉄や路線バスといった公共交通機関の乗り継ぎでこれらを回るには時間的なロスがあり、また外国人には比較的難しい。さらに、地元住民の生活路線が混雑することが課題となってきている。そこで観光客向けの専用路線として2019年4月に設けられたのが「スカイホップバス京都」である。

 京都駅を起点として、二条城や金閣寺、京都御所などの主要観光名所を1周約100分で周回する。京都駅より北側の市街地を反時計回りに1周してくるイメージだ。現在のところ欧米豪を中心とするインバウンドが主流だが、音声ガイドには日本語もあり、日本人でも効率よく京都観光を楽しめる。時間内乗り放題となっているので、例えば1日券(24時間)を13時に購入した場合、翌日の13時までの利用が可能で、観光の自由度が高まる。チケットはバス車中での購入も可能なため、最寄りのバス停から周遊をスタートできる。

「スカイホップバス京都」

運行時間: 9時~17時 ※京都駅烏丸口の出発時間
料金:
[1日券(24時間)]大人3600円、子供1800円
[2日券(48時間)]大人6100円、子供3100円
販売箇所: バス車中、Webサイト、旅行会社、京都駅京阪バスチケットカウンターなど
車内サービス: 無料Wi-Fi、多言語音声ガイダンス(日本語、英語、スペイン語、フランス語、ドイツ語、中国語、韓国語)
車両タイプ: オープンエア×3台、ハーフループオープン×1台、カブリオレ(幌)×1台、屋根ガラス付き×1台
停留所: 京都駅烏丸口、烏丸五条、四条烏丸・錦市場、二条城、二条駅、北野天満宮・上七軒、金閣寺、大徳寺、京都御所、平安神宮・岡崎公園前、五条坂(清水寺・祇園)、三十三間堂・京都国立博物館(計12か所)
Webサイト: スカイホップバス京都
Webサイト: スカイホップバス

JR京都駅烏丸口を出たところにある「京都定期観光バスのりば」。ここでもチケットを購入し、そのままバスに乗車できる

快適・便利な機能を導入し、車いすにも対応した新型車両

 導入した新型バスは2台。いずれも2階建てバスで、1台は2階席の前方20席が屋根・冷暖房完備、後方26席がオープンの「ハーフルーフオープンタイプ」、もう1台は2階席全席が「オープンタイプ」で、ともに1階席は8席+車いす1席になっている。

 1階は路線バス構造を採用したため低床で、車体傾斜システムも備えていて乗客の乗降時は道路との段差を縮めることができる。車いすの乗降時はスロープを使用するなど、バリアフリー仕様となっている。

新型バスは低床タイプで乗降時の段差も少ない
1階席、車いすスペースの前後には通常のシートもある。冷暖房完備で快適だ
1階席と2階席を行き来するステップは車体中央に1か所
「ハーフルーフオープンタイプ」は2階席前方に屋根付きの座席計20席を用意。冷暖房完備
シートはコンパクトだが座り心地はわるくなく、薄いデザインのため思いのほかゆったり。最前列の視界もよく、競争率が高そうだ
2階席後方はオープンタイプ。
左側にステップがあるため、後方左側はシートピッチがわずかに狭い。そのため左右の座席が交互に並ぶ
左側最後方は乗務員専用。走行時はここに着座する
2階席ステップ後ろの座席は視界も広く、個人的にオススメ。着座しているのは日の丸自動車興業の清水和生氏
座席には音声ガイドを搭載。液晶パネルで言語が表示される。旧型はチャンネルの数字のみだった
2階席足元には暖房の吹出口がある。
こちらは「オープンタイプ」の新型車両
座席の配置などは「ハーフループオープンタイプ」と大きな差はない
最前列の展望
ステップ付近
こちらも、2階席には暖房の吹き出し口がある
ゴミ箱。従来はビニール袋を搭載して対処していたが、車両スペースに余裕ができたことからゴミ箱の搭載が可能になった
最新のバスらしく、運転席も洗練されているのを感じる

「ハーフルーフオープンタイプ」に試乗!

招待者や報道関係者らが乗り込み、約30分の試乗を実施

 スカイホップバス京都の通常の周回ルートは1周約100分だが、約30分に短縮したコースで試乗会が行なわれた。それでも新型バスの快適性を感じるには十分な時間だった。

 試乗したのは、前方座席が屋根付きの「ハーフルーフオープンタイプ」。屋根のある部分は冷暖房を完備し、前面展望もよいが、後方のオープン部分にも床付近に暖房が備えられているとのことで、あえて最後尾の座席に座ってみた。なお、一般的なオープントップのバスでは、この部分は自車の排気ガスを含む外気巻き込むこともあり、その点でも確認したかった。

 シートに座ると、ちょうど顔の真横までがガラス窓になっていて、横から吹き付ける風を防いでくれる。停車中は暖房がよく効き、足元が寒いとも感じなかった。試乗では音声ガイドは使用できないということだったが、手持ちのイヤホンを接続してみた。出発までは和をイメージする音楽が流れていた。言語設定を切り換えると流れる音楽が変わった。

 2階席最後部左側に女性の乗員が1名搭乗。彼女はチケットの確認や販売をするほか、バスが左折する際には巻き込み確認をしてインターホンで運転士に伝える役割も持っているそうだ。出発時間になると、乗降しやすいよう左に傾いていた車体が水平に戻り、京都駅烏丸口を出発した。

2階席からの視界。隣のバスは「オープンタイプ」の新型バス
JR京都駅烏丸口を出発

 走行中はさすがに寒い。冬場はストール・マフラーなどで首やひざ元をカバーしたほうがいいだろう。バスが信号や停留所で停車すると足元から温気がじわっと立ち上ってくる。だが、メルセデス・ベンツの新型車両だけあって静粛性は素晴らしく、エンジンの真上に座っているはずだがエンジン音もほぼ聞こえてこない。排気ガスの巻き込みもなく、AT車だがシフトショックもなく、大型車特有の路面の凹凸からの突き上げもなかった。

 着座位置が高く、側面がすべてガラス張りのため視界は広く、交通量の多い京都市内でも、ほかのクルマが邪魔にならず観光を楽しむことができる。音声案内はちょっとマニアックな情報も流れているようで、これは実際に乗った際に確認していただきたい。当然だが全面禁煙で、ドリンクはキャップ付きの物のみ持ち込める。雨が降っても傘の使用はNG。そんなときこそ屋根のある前方に座ろう。

東本願寺前を通過。視界の広さはオープン席ならでは
音声ガイダンスはノイズもなく聞き取りやすい
ガラス窓が高いからか、思ったより風はない。走行中は寒いが、信号停車時などは暖房の熱が心地よかった
京都タワー。通常のルーフトップのバスやタクシーだとなかなか見られない景色だ
JR京都駅前に戻ってきた
JR京都駅烏丸口の「京都定期観光バスのりば」へ到着

車いすユーザー待望の観光周遊バス

ドア付近の床面の一部を起こしてスロープにできる。その奥が車いすスペース

 招待者のうち、1階に試乗した車いすユーザーの藤田隆永氏に話を聞いた。藤田氏は、設備や製品のユニバーサルデザインの企画・設計や情報発信などを行なう「株式会社ミライロ」のデザイナーだ。藤田氏は、「車いす席はバスの右側にありますが、ドアから近いために乗り降りもスムーズでした。左のドアは全体がガラスになっていて、(観光名所が)よく見えました」と車いすユーザーならではの視点で感想を述べた。

 床に完全に固定された通常座席より、ベルトでタイダウンする車いすはどうしても揺れるものだが、その点についてもバスそのものが揺れないので体への負担は少なかったという。また藤田氏は、「車いすユーザーは、路線バスや地下鉄での移動にはかなりの時間がかかりますし、タクシーは料金が高くなります。(このバスは比較的)安い値段で観光名所を巡るので、車いすユーザーでも効率よく観光ができます」と話した。

 バリアフリー化が遅れている地方の車いすユーザーのなかには、そのような事情でこれまで京都観光を半ば諦めていた人も多かったという。そのため藤田氏は、「今後は、このようなバスが京都にあるということを発信していきたいし、スカイホップバスや報道関係者にもそれをお願いしたいと思います」と話す。デザイナーとしても、今後のアイデアの創出に大きなヒントとなる試乗体験だったそう。

車いすスペースにも余裕があり、方向転換も簡単そうだ
スロープを収納すると、通常の床面となる
出入口ドアは全面ガラス張りで採光と視界確保を両立
体験乗車した株式会社ミライロ デザイナーの藤田隆永氏

日本人にも快適で便利な京都周遊観光バス

 新型バス2台について、日の丸自動車興業の車両担当課長 清水和生氏に話を聞いた。清水氏は、これまでも要望があった車いすに対応できたこと、車体はコンパクトだが車内空間が広く、窮屈にならずに従来型のバスと同様の乗車定員を確保できたことなどが大きな進化と説明した。

 シャーシをメルセデス・ベンツにしたことについては、先進の車両コントロールシステムで乗り心地がよく、また三菱ふそうが日本代理店を務めておりメンテナンス性に問題がないことが決め手だったという。

 架装をスペインのウンビに決めたことについては、さまざまなメーカーを検討し、実際に工場を見学するなどしたうえで、質問へのレスポンスの早さや工員のクオリティの高さなど、どれをとっても高水準だったことを明かした。「ドアを大きなガラスにするなど、車いす席からの視界の確保についても、ウンビには豊富なノウハウがあったので非常にスムーズに話がまとまりました」と清水氏。今後の部品供給についても全幅の信頼を寄せているそうだ。

日の丸自動車興業株式会社 運行・車両管理部 運行・車両管理課 車両担当課長 清水和生氏

 スカイホップバス 専務取締役 中島節郎氏は、「老朽化したバスの更新にあたって、従来からの課題だった雨天時などに対応できる車体としてハーフルーフオープンタイプをはじめて採用しました」とその導入経緯を明かした。本年内にさらに2台(東京・京都各1台)導入し、今後も車両の更新時に順次入れ替えていくという。

 新型車両で大きく変わった点については、「シートの座り心地、(室内の)冷暖房完備による快適性向上、車いす対応など、これまでのバスとは一線を画すものです」と中島氏。現在7か国語の音声ガイドも14か国語に拡張する準備を進めており、近い将来より多くの訪日外国人に対応する。また停留所についても、1月に三十三間堂付近に1か所を増設したが、3月には八坂神社付近にも設置、今後も許認可が取れ次第拡充を目指す方針だ。

 中島氏は、「訪日外国人の方にとって、京都はとても魅力ある都市ですが、これまでは観光のためのインフラが未発達でした。例えば『金閣寺から銀閣寺までまっすぐに行けない』という声が非常に多く、そこでスカイホップバスが誕生したわけです。要所をストレスなく周回できるこのバスは外国人観光客からは高評価を得ています」と話す。

 一方で、日本人観光客の利用がまだまだ少ないことが現在の課題のようだ。「日本語の音声ガイドでは、あるお寺の裏手の団子屋の情報など、バスガイドに練ってもらったガイドブックにも載っていないようなコアな情報もあります。日本人のお客さまにも、便利で効率のよい観光を楽しんでいただきたいですね」。

スカイホップバスマーケティングジャパン株式会社 専務取締役 中島節郎氏。背後のバスはガラスルーフタイプの従来型車両
取材時、営業運行のため停留所に到着した従来型バスを撮影。これは1台のみの「カブリオレ」タイプ
幌はルーフ全体を覆うことが可能だが、雨天でも一部オープンで運行することが多いという
従来型の音声ガイド機

 スカイホップバスは世界では「ホップオン・ホップオフ・バス」と呼ばれ、現在世界43か国114都市で同様のものが走っているそう。日本では導入からまだ日が浅いが、京都の街並みを肌で感じられ、いつもと違う視点からその魅力に気づける新しい観光コンテンツとしての発展と、公共交通機関の混雑緩和との両面から今後ますます注目されていくだろう。