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ATR、CEO来日会見。800mの滑走路も離着陸できる「ATR 42-600S」が日本の離島や遠隔地を結ぶとアピール

2020年2月5日 開催

ATRが都内で記者会見を開催した

 航空機機メーカー「ATR」は2月5日、都内で記者会見を開催した。

 来日中のATR CEO ステファノ・ボルテリ(Stefano Bortoli)氏らが登壇し、従来機より短い滑走路でも離着陸が可能なSTOL(Short Take Off and Landing:短距離離着陸)性能を備えた「ATR 42-600S」を軸にプレゼンテーションを行なった。

日本政府が取り組む地方活性化にATRの航空機が必要

ATR CEO ステファノ・ボルテリ(Stefano Bortoli)氏

 CEOとして2回目の来日になると自己紹介したステファノ・ボルテリ氏は、日本の都市部と離島や遠隔地を結ぶ航空機の重要性を強調。日本政府が地方活性化に取り組むなか、それを持続可能な方法で進めるためにも、燃費、排気量、コスト効率に優れるATRの航空機が必要だという。

 短い滑走路にも対応できるATR 42-600Sがあれば、離着陸できる滑走路が日本には12あると紹介。そのATR 42-600Sの詳細について、ATR Airline Marketing Manager エリカ・ソメルサロ(Eerika Somersalo)氏にバトンを渡した。

短い滑走路にも対応できるATR 42-600S
視界の悪いコンディションでも問題なく運航できる技術を紹介

ATR 42-600Sは「新しい市場を開いていくための武器になる」

ATR Airline Marketing Manager エリカ・ソメルサロ(Eerika Somersalo)氏

 エリカ・ソメルサロ氏は、2019年だけでもATRの航空機が164の新規路線、9社の航空会社に導入されたと紹介。日本では、AMX(天草エアライン)、JAC(日本エアコミューター)に計11機を納入。さらに2020年にはHAC(北海道エアシステム)への納入を予定している(3月就航予定)。

 ATRの航空機が他社と差別化できる点として、約1000mの短い滑走路、約14mと狭小の滑走路、極低温環境下等々での離着陸が可能であることを挙げる。そして既存のATR 42-600をさらに進化させたものが、ATR 42-600Sとなる。

 ATR 42-600Sでは約800mとさらに短い滑走路に対応。今後900機以上のプロップジェット、30~50席クラスの航空機の引退が見込まれるなか、これらに代わる航空機として、「新しい市場を開いていくための武器になる」という。

 ATR 42-600Sは2019年10月にローンチ。20機のコミットメントが現状あり、2022年から順次納入を予定している。

ATRは2019年だけでもATRの航空機が164の新規路線、9社の航空会社に導入
日本では、AMX(天草エアライン)、JAC(日本エアコミューター)に計11機を納入。さらに2020年にはHAC(北海道エアシステム)への納入を予定している
ATR機は約1000mの短い滑走路、約14mと狭小の滑走路、極低温環境下等々での離着陸が可能
ATR 42-600をベースに開発したATR 42-600Sは、約800mとさらに短い滑走路に対応
約800mとさらに短い滑走路に対応できたことで、日本国内のさまざまな空港で利用できる可能性がある
担架搭載の医療需要への対応が可能
エアバス A320型機相当の座席を実現。79dB以下と静粛性にも優れる
ATR 42-600S以外の貨物機
70席規模のリージョナルジェットと比較して40%省燃費などレスポンシブルだと紹介

ATRのブランディング「into life」で空をつなげ、人をつなげる

ATR 日本代表 好田二朗氏

 ATR 日本代表 好田二朗氏は、ATRのブランディング「into life」が「旅を楽しむ」「地域生活を豊かに」「復興の架け橋」の3つの柱からなると紹介。

 ATRの航空機は胴体の上端付近に主翼が取り付けられている高翼機であり、どの窓からも景色を楽しむことができ、ジェット機よりも低い高度を飛ぶことから、遊覧飛行をしているかのように島々、海、山々などを眺めることができる。それがATRの「旅を楽しむ」になるという。

 地域活性化は日本にとって重要な取り組みであり、政府、地方自治体が地方に投資することは大事だが、地域に物を運び、人をつなげることができなければうまくいかない。滑走路が1000m以下の主要空港は日本に10以上あり、それらもATR 42-600Sであれば離着陸できる。そうすれば遠隔地と都市部とで物と人の流れが生まれ、地方活性化に寄与できる。これがATRの「地域生活を豊かに」。

 自然災害の多い日本において、災害が起きたときに地上の交通網がダメージを受けると長期にわたって陸上での移動が困難な状況に陥る。日本には97の空港があるといわれているが、ATRの航空機であればこれらの空港に届くことができ、救済や物資の輸送を行なうことができる。「まさにATRが復興の架け橋になることができる」と3つの柱を説明した。そしてこれらを通じて「皆さまの生活にATRが入り込んでいく。空をつなげ、人をつなげる『into life』としてプロモートをしていきたい」と話した。

「旅を楽しむ」
「地域生活を豊かに」
「復興の架け橋」

ATRは「イタリア・フランスで大きなサクセスストーリー」

イタリア公使参事官 ニコロ・タッソーニ・エステンセ(Nicolò Tassoni Estense)氏

 来賓として、イタリア公使参事官 ニコロ・タッソーニ・エステンセ(Nicolò Tassoni Estense)氏と、駐日フランス大使 ローラン・ピック(Laurent PIC)氏があいさつした。

 ニコロ・タッソーニ・エステンセ氏は、ATRは「イタリア・フランスで大きなサクセスストーリー」であり、環境面での取り組みも評価されていることを紹介。ATRのATR 42-600Sは、離島、遠隔地への短距離飛行に適しており、「日本におけるATRのビジネスの成功を祈念しております」と話した。

駐日フランス大使 ローラン・ピック(Laurent PIC)氏

 ローラン・ピック氏は、フランスのマクロン大統領が2019年6月に来日した際に、安倍首相との会談で経済イノベーション、持続可能性のある文化・観光において協力・強化すると取り交わしており、人的交流にエアラインは不可欠だと述べた。

 また、関西国際空港、大阪国際空港(伊丹)、神戸空港を運営する関西エアポートにはフランスの運営会社VINCI Airports(ヴァンシ・エアポート)もかかわっていると紹介。これら空港を結ぶ航空機について、ATRは「非常にすばらしい航空機を製造している」「リージョナル航空機市場において世界のリーダー」であると語った。