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ANA Cargo、北九州~沖縄線に定期貨物便就航。初便は自動車部品や半導体などを満載

2018年6月5日 就航

ANA Cargoの北九州~那覇(沖縄)線、定期貨物便が就航

 ANAグループの貨物事業を担うANA Cargoは6月4日~5日、かねてからアナウンスしていたとおり、北九州~那覇(沖縄)路線の定期貨物便の運航を開始した。北九州空港の貨物エリアでは、6月4日の初便到着前に記念セレモニーが開かれた。

 今回の貨物定期便は、6月3日まで運航していた関空(関西国際空港)~中部~那覇線に代わり、関空~北九州~那覇のルートを開設したもの。北九州空港は自動車部品、電子部品、半導体、産業用ロボット、農林水産物といった貨物の需要が伸びていることからルートを変更した。

 運航ダイヤは下記のとおりで、関空を夜出発し、その日のうちに北九州に到着。北九州で追加の貨物を積み込んだうえで、深夜のうちにANA Cargoの沖縄貨物ハブがある那覇空港へ移動。沖縄貨物ハブから、その日のうちにソウル、台北、上海、香港、バンコク、シンガポールというアジア6都市へ輸送し、翌朝には貨物を到着させることができる。

NH8565便:関空(22時00分発)~北九州(23時10分着)、月・火・水・木・金曜運航
NH8566便:北九州(00時40分発)~那覇(2時30分着)、火・水・木・金・土曜運航

全日本空輸株式会社 上席執行役員 九州支社長 大人形綱邦氏

 セレモニーにはANA、福岡県、地元自治体や経済界、国土交通省ら多くの関係者が参加。主催者としてあいさつに立ったANA 上席執行役員 九州支社長の大人形綱邦氏は、「ついに北九州から沖縄、世界へとルートが定まることになった。例えば、農産物は、本日載せたものは、アジア各都市には翌朝に到着し、昼までにはそれぞれの貨物の拠点になり、夜にはお茶の間でその農産物を口にしていただける」とコメント。

 今回の路線について、「九州地区、西中国地区の物流が大きく変わろうとしている。この北九州空港の24時間という強みと、我々の沖縄貨物ハブという強み。お互いの強みを活かしながら今後も頑張っていきたい」と意気込みを示した。

福岡県副知事 服部誠太郎氏

 続いて、福岡県副知事 服部誠太郎氏があいさつ。北九州空港について、「北九州空港には広い地域の貨物を集積できるさまざまな特徴を備えている。昨年に整備(2017年3月に供用開始)した大型貨物機に対応できるスポット。海上空港なので24時間利用できる九州で唯一の空港。港湾機能も持っているので航空輸送と海上輸送を組み合わせたシー&エアに対応できる。東九州自動車道の苅田北九州空港IC(インターチェンジ)からは約10分と至近で陸上交通の便もよい」と特徴を紹介。

 そのような強みを活かして貨物便誘致に取り組んできたことに触れ、「今回、ANA、ANA CArgoが声に応えてくれて就航を決定いただいた。心より感謝申し上げる」と謝意を示した。

 また、北部九州の貨物需要について、「北部九州は、年間159万台の生産能力を有する世界有数の自動車生産拠点。九州には1000社以上の自動車関連企業が立地。こういったことから、貨物の需要も近年、自動車関連の部品、半導体、電子機器、安川電機をはじめとする産業用ロボットなど、アジアへの貨物需要が高まっている。

 福岡県は安全で安心な農林水産物が多数ある。イチゴの『あまおう』、ブドウやモモ、さらには、甘鯛、アサリ、牡蠣といった新鮮な魚貝類はアジアの皆さんに大変な人気を博している。

 今回の定期貨物便に乗れば、今日出荷した荷物が明日の早朝には成長発展著しいアジアの6つの都市に届く。すなわち、生産現場の多様なニーズに機動的に、またスピーティに応えられる。明日の夕方のアジアの皆さんのディナーの食卓には、我々の食材をお届けできることになる」と、同便で運ばれることが見込まれる貨物を紹介。

 そして、「新しい物流ルートは、九州、西日本の発展に大きな役割を果たしてくれる。ますます力をいれて、北九州空港の貨物拠点化に向けて頑張っていきたい」とした。

 その後、列席者によるテープカットとくす玉開披が行なわれた。参列者は下記のとおり。

テープカット参列者

全日本空輸株式会社 上席執行役員 九州支社長大人形綱邦氏
福岡県副知事 服部誠太郎氏
北九州市長 北橋健治氏
苅田町長 遠田孝一氏
福岡県議会議長 井上順吾氏
北九州市議会 副議長 木下幸子氏
苅田町議会 議長 坂本東二郎氏
国土交通省 大阪航空局 北九州空港事務所長 菅田成雄氏

くす玉開披の参列者

北九州商工会議所 専務理事 羽田野隆士氏
苅田商工会議所 副会頭 辰元隆一氏
財務省 門司税関 総務部長 浅野尚一氏
国土交通省 九州地方整備局 北九州港湾・空港整備事務所 長根木貴史氏
国土交通省 九州運輸局次長 髙杉典弘氏
福岡県議会 空港、防災及び水・エネルギー等社会基盤調査特別委員会 委員長 中尾正幸氏
北九州市議会 経済港湾委員会 委員長 中村義雄氏
苅田町議会 産業建設常任委員会 委員長 桝谷忠明氏
北九州エアターミナル株式会社 代表取締役社長 片山憲一氏
香春町長 筒井澄雄氏

総勢18名によるテープカットとくす玉開披
テープカットとくす玉開披を終え、笑顔見せるANA 九州支店長の大人形綱邦氏(右)と、福岡県副知事の服部誠太郎氏

 その後、福岡県副知事のあいさつにもあった、2017年3月に供用を開始した大型機対応の貨物エプロンへ移動し、関空から到着した貨物機を出迎えた。北九州空港には貨物ターミナル前に貨物機対応のエプロンがあったが、ボーイング 747型機のフレイターのように機首を開いて貨物を出し入れする、いわゆるノーズオペレーションに対応できないといった課題があり、新たにボーイング 747-8F型機のノーズオペレーションにも対応できるエプロンを整備したという。

マーシャラーの誘導で、2017年3月に整備された大型機対応の貨物エプロンに到着する、ANA Cargoの関空~北九州初便
到着後、タラップ車の接続、貨物室ドアのオープンなど次々に作業がスタートした
ANA Cargoの北九州~那覇線初便の到着
北九州市 港湾空港局 空港企画部 空港企画課 航空貨物担当係長 大谷法之氏

 囲み取材に応じた北九州市 港湾空港局 空港企画部 空港企画課 航空貨物担当係長の大谷法之氏は、「念願の週5便の貨物便が就航して、たくさんのお客さんにご利用いただいて感慨深い。ANAさんにはずいぶん前から北九州空港のご利用をお願いしており、このたびやっと(実現した)という思い」と感慨深げ。

 この定期化のメリットについては、「九州や西中国エリアのお客さまにとって、これまで九州にはフレイターによる貨物便がなかったので、国内陸送で遠くの関空や羽田、成田へ運んで海外に輸出していた。今回のフレイターの就航は輸送時間の削減や、在庫の削減に効果が見込め、利用価値の高い。自動車産業や半導体産業、電子部品などスピード感を求める企業も多いので、企業にとってもメリットが大きい」と話し、「北九州空港にとっても、24時間空港だし、こういう深夜便が運航されるになった。貨物拠点化を目指していたが、一歩近づいたような気がしている」と喜びの言葉を述べた。

タラップを降り、花束を贈られる全日本空輸株式会社 フライトオペレーションセンター B767部の大和田淳一機長

 到着後は、初便のパイロットを務める、ANA フライトオペレーションセンター B767部の大和田淳一機長への花束贈呈が行なわれ、集められた貨物の搭載がはじまった。

 機材はボーイング 767-300F型機(登録記号:JA8664)で、搭載可能な重量は最大50トン。初便は、約30トンとなったが容積としては最大限に積み込んだ、満載の状態となった。貨物の内訳は約9トンが関空での積載、21トンが北九州での積載で、電子部品、自動車部品、タイヤが中心。農産物なども少量ながら含まれている。保冷コンテナの準備はあるが、この日の便では使われていないという。

 貨物は、航空機の上部貨物室へパレット、下部貨物室へコンテナとバルクの貨物をそれぞれ積載。

 各部で手際よく作業が進められ、ほぼ定刻どおりに出発。地上から見送る人たちの期待を乗せて、深夜の北九州空港から那覇空港へ飛び立った。

上部貨物室はパレットを積み込んでいく
上部貨物室へのパレット積載
下部貨物室はコンテナを積載
下部貨物室へのコンテナ積載
フレイターの周囲でさまざまなクルマが動きまわり、作業が進められた
トーイングカーを接続し、上部貨物室、乗務員室のドアをクローズして出発準備が完了
上部貨物室ドアを閉じる様子
ほぼ定刻どおりにプッシュバックを開始
プッシュバックが完了し、トーイングカーを切り離す。滑走路へ向けて地上走行を開始
北風運用時の36滑走路から離陸し、那覇へ飛び立った