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ルフトハンザ、ブランドリニューアルから1年。「新デザインはプレミアムで“デジタルの時代”に沿うもの」

2018年2月 ブランドリニューアル

ルフトハンザ ドイツ航空 日本・韓国支社長 ドナルド・ブンケンブルク氏(左)、副社長 マーケティング部門担当 アレクサンダー・シュラウビッツ氏(右)

 ルフトハンザ ドイツ航空は、2018年2月にブランドイメージを刷新、従来のイエローを基調としたデザインから、濃いブルーを主体にホワイト/イエローで補完するものに変更している。

 変更する範囲はロゴに始まり、各種印刷物、Webサイト/アプリなどデジタル関連、チェックインカウンターなど空港の装飾、機内で提供するアメニティやグッズ、機材自体の塗装といった具合に、非常に点数が多く広範なため、数か月規模の短期間で完了するものではない。それでも、2019年2月で丸1年が経過しており、新デザインが利用者の目に留まる機会が増えている。

 そこで、ブランドリニューアルの進捗や狙いについて、副社長 マーケティング部門担当のアレクサンダー・シュラウビッツ氏に話を聞いた。

新デザインになったルフトハンザの機材

――デザインリニューアルに至った経緯を教えてください。

シュラウビッツ氏:前回のデザインリニューアルは30年前で、ドイツでは大変アイコニック、シンボリックな存在でしたが、あくまで当時のデザインであって、現在では“アナログ感”を覚えるものでした。

(新デザインは)将来を見据えて、航空会社のDNAとプレミアムなブランドを維持しつつ、“デジタルの時代”に沿うものにしました。タッチパネルで触って操作できるといった、インタラクティブな使う楽しみを優先しています。なぜなら、以前は利用者が機内に足を踏み入れるとたくさんのタッチポイント(接点)があったのですが、現在は搭乗前からスマートウォッチのようなデジタルの接点があるからです。

 戦略的な観点でいうと、他社のブランドがどのようにデザインを変更してきたかという例も確かめました。ただ、我々はまったく新しいブランドを送り出すわけではなく、以前からあるプレミアムなブランドが近代的な装いになったということを伝えたいのです。

――2月から始まってどの程度の進捗でしょうか。

シュラウビッツ氏:機材は15%、機内については800アイテムが変更されています。機体の塗装は7年間かけて変更を完了させます。

 リニューアルに当たって、環境面や経済的な面も考慮しました。例えば、使い捨ての紙コップもデザインリニューアルの対象ですが、現在あるものを捨ててしまうのではなく、使い切ってから新しいものに入れ換えていきます。それから、ティースプーンのような小さなロゴの付いたアイテムは、変更することによる効果が明確ではないため、そのままにしています。

 エコロジーという観点では、アップサイクルも行なっています。例えばビジネスクラスで使われていた毛布からバックパックを作るというように、新たな生命を吹き込む取り組みをしています。

――ルフトハンザといえば黄色と青の印象が強いのですが、新しい色使いになってから利用者の反応はどうですか。

シュラウビッツ氏:黄色と青を半々、という従来の色使いはカラフルなのですが、プレミアム感という点では1色(濃いブルー)を前面に押し出した方がよいと考えました。もう1色は機能を表現するために使っています。

 ブルーはメインカラー、イエローは3つの機能を持たせました。1つは「ルフトハンザの方角」を示していて、1.8mより高い位置で使っています。例えば、初めて羽田空港を訪れて、ルフトハンザを利用したことがなくても、高い位置にあるイエローを見つけることでルフトハンザを認識できるようにしました。

 もう1つはデジタルのタッチポイントにおいての機能で、操作しているなかでイエローが現われた場合は、「何かリアクションしなければならない」という状況を利用者に示しています。もっとも重要なのは、イエローは「ルフトハンザの中心(Heart of Lufthansa)」にあるということです。それによってサプライズをもたらされたり、目が輝くような瞬間があったり、ということを大切にしています。

 利用者の反応ですが、取り組みを初めて1か月後くらいに調査をしたところ、「古いデザインよりも新しいものの方がよい」という多くの結果が出ています。ルフトハンザのように非常に長い歴史のあるブランドのリニューアルとしては、かなり早い段階でポジティブな反応が出ていると言えるのではないでしょうか。

――リニューアル前はデザインがちぐはぐになっている部分があり、それがリニューアルのきっかけになったと聞きました。どんなところで苦労したのでしょうか。

シュラウビッツ氏:とにかく時間がかかる、ということですね。タッチポイントが多いと先ほど言いましたが、関わる人間も多くいます。そのため、「なぜこのように変えるのか」を説明するために時間を割きました。そこではデザインのルールよりも、理念や哲学を説明しています。というのは、今度どのようなアプリケーションが出てくるのかを完全に把握することはできませんが、哲学や理念が浸透していれば、どんな対象であっても、一番最適で一貫性のあるものが作れるはずだからです。

 インタビューの場にはルフトハンザ ドイツ航空 日本・韓国支社長のドナルド・ブンケンブルク氏も同席していた。そこでブンケンブルク氏にリニューアル後のお気に入りを聞いてみたところ、「30年も使われていたデザインが変更されるというので実は不安に思っていた部分もあったのですが、機体が新しいデザインになったのを見て感動しましたし、すぐに好きになりました。古い機体だけを見ても古いとは思わなかったのですが、新しい機体と並んでいると、なんだか旧時代のものを見ているような気分になりました。お客さまやスタッフもきっと同じ気分だと思います。

 販売の観点で言うと、現在お客さまの多くがモバイル端末でチケットを購入しています。予約をしたり、次の旅先を考えたりするときに、携帯電話を使いますよね。そんなときにブランドの明確なイメージを打ち出すことが大切だと考えています。今回の新しいデザインはそういったことを成し遂げていると思います」と話してくれた。