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JAL、中国東方航空と上海で会見。乗り継ぎの利便性向上やマイレージプログラム拡充など共同事業へ

国内50都市/中国80都市以上のネットワークを「2019年度の早い段階」から

2018年8月2日 締結

2019年度 開始予定

JALと中国東方航空は共同事業に関する覚書を締結。ダイヤの調整やマイレージプログラムの拡充など共同事業について説明した

 JAL(日本航空)と中国東方航空は、中国東方航空 上海本社で会見を開いて共同事業に関する覚書を締結、2019年度中に開始するという事業内容について説明した。

 JALと中国東方航空は、2002年から日本~中国間の国際線や両国の国内線でコードシェア便を運航。これまでにFFP(Frequent Flyer Program:マイレージプログラム)やグランドハンドリングなどでも提携している。

 現在2社のコードシェアは、JAL運航便が日本~中国間で9路線、日本国内で4路線、中国東方航空運航便が日本~中国間で23路線、中国国内で5路線となっている。日中の航空権益にはコードシェア運航可能地点に制限があり、上記はほぼすべての権益を行使した状態にある。

 今後、国土交通省から独占禁止法の適用除外の認可を受けて共同事業が始まれば、日本国内50都市以上、中国国内80都市以上が対象となり、運航路線の新設や整理、ダイヤの調整、マイレージプログラムのサービス拡大などが可能になる。例えば日本人旅行者が中国へ到着後、中国各地へ移動する国内線への乗り継ぎがしやすいダイヤになったり、日本の地方空港から中国東方航空運航の直行便で中国へ行ってもJALのマイルが貯まったりと、利用客の利便性の向上を図ることができる。

中国東方航空 上海本社
JALと中国東方航空の共同会見は、中国東方航空 上海本社内で行なわれた
中国東方航空の社内に展示してあるボーイング 787-9型機のモデルプレーン
中国東方航空の社内に展示してあるボーイング 777-300ER型機のモデルプレーン

共同事業は「2019年度の早い段階」を目指す

日本航空株式会社 代表取締役会長 植木義晴氏

 会見冒頭で登壇した、JAL 代表取締役会長の植木義晴氏は、「JALと中国東方航空は日本~中国間の航空事業の競争が激しくなるなかで、この共同事業によって、さらによいサービスをお客さまに提供することにより、競争力を強化していくという両社の提携戦略が一致したことから、共同事業の実施に向けて準備を進めていくことになりました」と共同事業の意図を説明。

 5月の日中首脳会談では「両国民がより一層活発に往来することを後押ししていく」で一致していることに触れつつ、国土交通省から独占禁止法の適用除外の認可取得後は、両社が乗り入れる都市は日本国内50都市以上、中国国内80都市以上と「利用客に充実したネットワークを提供できる」ようになり、運航スケジュールの調整や運賃、空港や機内でのサービス、Webサイトなどあらゆる分野で協力し、「世界で一番お客さまに選ばれ、愛される航空会社」を目指していくと述べた。具体的な開始時期については「2019年度の早い段階」を目指すとしている。

JALグループと中国東方航空の就航地

「より多くのフライトの選択肢と、シームレスにつながる旅行体験を届ける責任と義務があり、その自信がある」

中国東方航空 社長(総経理) 馬須倫氏

 続いて登壇した中国東方航空 社長(総経理)の馬須倫氏は、共同事業を行なう3つの理由を挙げた。

 第1に2002年のコードシェアから始まる「双方の堅い協力の基礎」があること。長年の順調な経験を基礎に、2社がより広い範囲、より高いレベル、より多くの分野でさらに協力を深めることは時代の流れに応じたことであり、お互いの長所を取り入れ、リソースを共有し、戦略的シナジー効果を図ることができるとした。

 第2に日本と中国の「マーケットの幅広い将来性」があること。中国から日本への訪日旅客数は増加を続けており、2017年は前年から15.4%増えて735万人に達し、3年間連続して、日本への観光客がもっとも多い国となっている。一方、日本から中国への旅客数も回復し、成長軌道に乗るようになったという。「中国東方航空とJALは、両国の旅客に優れたサービスを提供し、より多くのフライトの選択肢と、シームレスにつながる旅行体験を届ける責任と義務があり、その自信がある」と述べた。

 第3に航空会社間の共同事業は「グローバル航空業の発展トレンド」であること。世界的に、大型航空会社間の運航路線に関する共同事業は「すでに普遍的な戦略的選択」になっており、運航路線に関する共同事業はコードシェアと比べて「より有効でより緊密な協力モデル」であるとし、「競争関係を協力関係にレベルアップすることにより、双方の運航路線のネットワークが完備し、フライト時刻がより合理的になり、旅客がより優遇されたチケット価格とサービスを楽しめるようになる」と説明した。

 馬社長は「中国東方航空は人民を中心にした発展理念があり、JALは利他の心を経営理念としています。根本的にいえば双方は人間本位を堅持する点で一致しています。2社が共同事業を実施することは、まさに人間本位という理念の反映であり、共同事業は2社の発展のみならず、両国民に福をもたらすことを期待しています」と語り、あいさつを締めくくった。

共同事業の効果はエリア間の総収入の5%向上がおおよその目安。同じ路線において運賃を一致させる予定はなし

 植木会長と馬社長のあいさつのあとには、JALと中国東方航空の代表者が書類に署名を行ない、共同事業覚書が締結された。

 覚書締結後には、JAL 執行役員 路線統括本部国際提携部担当の大島秀樹氏と、中国東方航空 CMO 営業本部長の薫波氏が加わり、記者からの質問に答えながら詳細を説明した。

JALと中国東方航空は共同事業に向けた覚書に合意、書類を取り交わした

 JALの植木氏は「すべては独占禁止法の適用除外の認可を得るところから始まる」としたうえで、例えば2社の路線で同じ時間帯にある便をずらすことで利用客の選択肢が広がったり、JAL運航便で上海に到着してから、中国東方航空の国内線に乗り継ぎやすいダイヤに変更したりすることで利便性を上げることができると、メリットを挙げた。

 JALは米国のアメリカン航空、欧州のブリティッシュ・エアウェイズ、フィンエアー、イベリア航空と共同事業を行なっているが、これまでの共同事業の効果はエリア間の総収入の5%向上がおおよその目安になっており、今回の共同事業についても同じような目標感があるとした。

 また、経営破綻時に撤退した浙江省・杭州蕭山(こうしゅうしょうざん)国際空港、山東省・青島流亭(ちんたおりゅうてい)国際空港、福建省・廈門高崎(アモイ/しあめんこうき)国際空港などの路線復活については、「基本は自社便。でもない袖は振れないし、無理するわけにもいかない。提携関係を使うことは当然あり得る」と述べた。

日本航空株式会社 代表取締役会長 植木義晴氏

 JALの大島氏は、「盛り上がっている中国~日本間の人の行き来を、レベルを高めながら、促進すること」が共同事業の一番の目的であり、ワンワールドのJAL、スカイチームの中国東方航空と異なるアライアンス同士によるもの、JALにとってアジアの航空会社とは初めてであることが、今回の共同事業の特徴だと述べた。

 共同事業開始後は、2社それぞれが持つ法人顧客を紹介し合うといった販売支援を相互に行なっていくが、同じ路線において「中国東方航空とJALでは運賃は違う、一致させる予定はない」と明言した。

日本航空株式会社 執行役員 路線統括本部国際提携部担当 大島秀樹氏

 中国東方航空の馬氏は、「より素晴らしい旅行体験をお客さまに届けること」が共同事業の目的であることを重ねて強調し、乗り継ぎ便の増加、グランドハンドリングやラウンジの共有、マイレージの積算以上のサービスの拡充などに言及。

 また、重要顧客については、飲食の好みなどの(個人情報を除いた)情報を共有することなど、シームレスな旅行体験について可能性を示した。

中国東方航空 社長(総経理) 馬須倫氏

 中国東方航空の薫氏は共同事業により、2社が運航する上海~東京/名古屋/大阪路線において輸送量を増やす、売り上げを向上させることが重要な目的であり、そのほかのエリア間の2社運航路線と合わせて、収入分配を行なうことを紹介。マイレージプログラムやサービスのベンチマークなどを行ない、中日路線の新たな価値を提供し、競争力を強化していきたいとした。共同事業開始後は、2社のセールスチーム、マーケティングチームがお互いの販売ルートを活かし、協力関係を築いていく。

中国東方航空 CMO 営業本部長 薫波氏
中国東方航空がハブ空港としている上海虹橋国際空港。中国東方航空の上海本社は空港の南西部にある。JALは羽田発着のJL081/082便と、中国東方航空とのコードシェア便のJL(MU)5643/5642便が上海虹橋国際空港に就航している。それ以外のJALの上海路線は上海浦東国際空港となる