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JALが5番目に開設した国際線、シンガポール線が就航60周年。チャンギ空港でセレモニー
CA出身の大川 JAL副会長は「シンガポールCAの働きぶりが気になる」
2018年5月9日 06:00
- 2018年5月8日(現地時間) 実施
JAL(日本航空)は5月8日(現地時間)、東京~シンガポール線就航60周年を祝うパーティと記念セレモニーをシンガポール・チャンギ国際空港で実施した。JALの国際線としては5番目に長い歴史を持つ路線となる。
同路線への就航は1958年5月8日のこと。60年以上運航している本路線は、米ハワイ・ホノルル、米サンフランシスコ、香港、バンコクに次ぐ国際線として開設された。当初の東京~シンガポール線は羽田空港発着で、すでに運航していた東京~香港~タイ・バンコク線を延長する形で就航。当時はDC-6B型機が使われていた。
シンガポールは2015年に建国50周年を迎えたことが記憶に新しいが、マレーシア連邦からの分離独立を果たしたのが1965年のこと。JALが就航した1958年5月のシンガポールは、第二次世界大戦終結後に再開したイギリス統治時代のことで、ちょうどイギリス連邦内の自治州としての地位を獲得した時期にあたる。
シンガポールのナショナルフラッグキャリアであるシンガポール航空は、当然ながらシンガポール建国後に営業を開始しており、日本路線については2018年に就航50周年を迎えている。日本の航空会社からはそれより10年早く路線を開設したことになる。当時、シンガポール側も現在のチャンギ国際空港が開港する前で、パヤレバー空港(Paya Lebar Airport)を使用していた。
JALのシンガポール線はその後、1977年4月1日からDC-8-61型機による羽田~シンガポール間の直行便となり、1978年の成田空港開港とともに日本側発着地を成田に移管。2010年10月の羽田空港再国際化に伴い、羽田発着便が復活した。現在は毎日、成田1便、羽田2便の計3便を運航している。
JALの東京(羽田/成田)~シンガポール線(2018年夏期スケジュール)
JL35便: 羽田(00時05分)発~シンガポール(06時15分)着、毎日運航
JL37便: 羽田(11時30分)発~シンガポール(17時35分)着、毎日運航
JL38便: シンガポール(01時50分)発~羽田(09時50分)着、毎日運航
JL36便: シンガポール(21時50分)発~羽田(翌05時50分)着、毎日運航
JL711便: 成田(17時55分)発~シンガポール(翌00時20分)着、毎日運航
JL712便: シンガポール(08時10分)発~成田(16時20分)着、毎日運航
機材は主にSKY SUITE仕様のボーイング 777-200ER(SS2)が使われている。2017年12月には、それまでボーイング 767-300ER型機で2便、ボーイング 777-200ER型機で1便を運航していたものを、ボーイング 777-200ER型機を1日3便体制に変更。大型機を3便という、JALの国際線のなかでは大きめの規模の路線になっている。
同社シンガポール支店長の山下康次郎氏によると、12月に機材を大型化してから4月まで、搭乗率は例年とあまり変わりがなく(つまり搭乗者数は増えている)、「2017年、2018年と年間平均搭乗率は9割こそ届かないが、8割を超える高い搭乗率を継続している」と、非常によい状態が続いている状況にあるという。また、客層も日本人だけでなく、「日本を経由して北米へ乗り継ぐ利用者にも選んでいただけるようになってきた」と新しい客層へのアプローチも進めている。
高い搭乗率を維持している同路線の今後については、「増便を実現するのがシンガポール支店の悲願」とコメント。羽田、成田の両路線それぞれに朝、昼の便を運航することを想定し、「そのダイヤはお客さまにも利便性がある」とする。その実現に向け、まずは大型化した3便で実績をあげることが目下の取り組みとなっている。
シンガポール基地のCAによる歴代制服ファッションショーなどが行なわれた記念パーティ
5月8日には、シンガポール・チャンギ国際空港に隣接するクラウンプラザ ホテル チャンギ エアポートにおいて、空港や日本企業、旅行代理店などの関係者らが集い、就航60周年記念パーティが行なわれた。
主催者あいさつに登壇した、JAL 取締役副会長の大川順子氏は、就航当初は50人乗りのDC-6B型機で就航したことを紹介し、「その後、シンガポールの経済成長とともに、JALの事業も拡大。現在では1日3便、1400名のお客さまと貨物を運んでいる」と説明。
そして、現在はSKY SUITE仕様のボーイング 777型機で運航していることなどに触れ、「日本とシンガポールの相互交流に貢献し続けたい。そのために、JALは日本の『おもてなし』をモットーに魅力的なサービスを提供し続ける」と、将来にわたって、日本とシンガポールのさまざまな交流に貢献し続けることを約束すると述べた。
大川氏は1977年にJALに入社して以後、CA(客室乗務員)として勤務。1994年にはCAのシンガポール基地において、2カ月間、3クラス40~50名のCAを教育する立場にもいた。そうしたことから、シンガポール路線乗務では「シンガポール乗務員の働きぶりが気になる。教え子がどのようなフライトをしているかを見るのはどきどきするが、活躍しているのを見るとすごくうれしい」と思い出を語る。
シンガポール線の客室は、「シンガポールのお客さまは英語を使われるので、楽しくコミュニケーションできる。シンガポールの乗務員も非常に明るい。客室が明るく、楽しく、チアフルな感じ」といった印象だという。
さらに、パーティで関係者に「チャンギ(空港)も変わったでしょ?」と尋ねられたそうだが、「実は最初に降り立った1980年ごろと今とでは、広くはなっているが、イメージはそれほど変わりがない。今回も久しぶりに訪れたが、以前から近代的というか、立派で、洗練されたイメージは変わらない。素晴らしい空港」と語った。
ちなみに、JALは1988年にシンガポールにCAのベースを設けて、30年間の歴史がある。大川氏は、「(シンガポールのCAが)日本のおもてなしを体得し、それを押しつけるのではなくシンガポールの人なりに消化して、個性として出してもらう。その個性がシンガポールのお客さまに伝われば強みになる」と、シンガポール基地を持つ体制がJALのシンガポール線の独自性になるとコメント。
現在、JALのシンガポール基地には、約130名のCAが在籍しており、ファーストクラス乗務資格を持つCAが1名、インチャージ(クラス責任者)の資格を持つCAが3名。男性は15名程度とのこと。今回の記念パーティでも、シンガポール基地のCAが歴代の制服を着用して、来賓を出迎えた。
パーティでは、来賓として在シンガポール日本大使館 特命全権大使の篠田研次氏、Changi Airport Group, Senior Advisorのワン・ウー・リョン(Wong Woon Liong)氏があいさつ。
篠田大使は、JALに関して「シンガポール独立前に就航し、日本とシンガポールとの交流に大きな貢献をしてきた」と話し、1975年から行なっているスカラシッププログラムなども取り上げ、文化、教育の交流においての貢献も併せて評価した。
また、シンガポールからの訪日旅行客が2017年に40万人以上となり、今年はさらに伸びるとの予想。日本政府は2020年に訪日旅行客4000万人の目標を掲げているが、「JALはもちろん(その実現のための)重要なプレーヤー」と指摘。ビジネス、観光両面での送客に期待を示した。
チャンギ国際空港のリョン氏は、2017年にのべ270万人の旅客が日本とシンガポールを行き来したことや、79万人以上の日本人がシンガポールを訪れたことなどに触れ、「日本人はチャンギ国際空港にとって9番目に利用者が多い」と紹介。貿易額でもシンガポールにとって日本は8番目になるなど、経済、人的交流での両国の結び付きの強さを紹介した。
また、空港内に現在建設中で2019年の開業を目指している複合施設「ジュエル(JEWEL)」が、JALが利用しているターミナル1からアクセスが便利な場所にできることにも触れ、「JALの機内とともに、チャンギ(国際空港)の地上サービスでも『おもてなし』を」と、最高のホスピタリティで迎えることをアピールした。
その後の乾杯に際しては、JAL シンガポール支店長の山下康次郎氏があいさつ。日本を乗り継いで北米へ向かう利用者にとってのネットワークなどに触れ、JALが掲げる10年後までにワンワールド加盟社との協力も含めたネットワークを500都市へ伸ばす目標を紹介。日本を経由して第三国へ向かうルートを「シンガポールの人にとっても利便性の高い乗り継ぎ」と紹介し、快適で便利なサービスを提供していくことをアピールした。
パーティではその後、「響屋(HIBIKIYA)」が和太鼓パフォーマンスを披露。響屋は約80名のメンバーが在籍しているというシンガポール在住の日本芸能パフォーマンスチームで、太鼓だけでなく篠笛も交えた日本の音を会場に響かせた。
さらに、シンガポール基地所属CAが歴代制服を着用したファッションショーも実施。ここではシンガポール就航時の2代目から、4代目、5代目、6代目、7代目、9代目、そして現在の10代目の制服の7名が登場。最後にはCA出身の大川氏も壇上に招かれ、ともに記念撮影を行なった。
そのほか、現在はJAL財団が実施している「JALスカラシッププログラム」についても紹介があった。アジア・オセアニア地域の大学生を日本に招待し、研修や文化交流を通じて、日本への理解、日本と自国の相互理解を深めてもらうことを目的に実施しているもの。
東南アジアでは多くの国で実施しているが、シンガポールは2017年までに156名と、もっとも多くの生徒を日本へ招待しているという。2018年も1名が認定されており、会場で認定証が手渡された。
パーティはその後、来場者を対象に日本~シンガポール間のプレミアムエコノミー航空券や、チャンギ国際空港内の店舗で利用できる商品券などが当たる抽選会が行なわれ、お開きとなった。
「JAL郵便局」の到着日付印が押されたFFCなど記念の品々を展示
パーティ会場の外には、日本~シンガポール就航60周年の歴史を物語るアイテムを展示。就航当時の時刻表や、シンガポール支店開設時の写真など、貴重な品々が展示された。
なかでも面白いのは、ファーストフライトカバー(FFC)の消印。ファーストフライトカバーとは、初便就航時などに、その便を使って届けられる郵便物。東京からシンガポールへ向けての初便は1958年5月8日に東京の郵便局で押されている。
問題は到着印(back stamp)で、シンガポール郵政当局の規則のため、JALからの要請も認められず到着日付印が押されなかったという。そのため、JALシンガポール支店が「J.A.L. POST SECTION SINGAPORE」と書かれた特別なハンコを製作。それを押して到着日付印としたのである。もちろんシンガポール発便のFFCには、5月9日付けのシンガポール当局の消印と、日本の郵便局の到着日付印が押されている。
搭乗ゲート前でも和太鼓演奏やCAとの撮影会
5月8日の夜には、JL36便(シンガポール21時50分発)の搭乗ゲート前でもセレモニーを実施。セレモニーに先立ち、「響屋」が日本芸能のパフォーマンスを披露した。
このセレモニーでもあいさつに立ったJAL取締役副会長の大川順子氏は、「本日でちょうど60年。ひとえに皆さまのご利用とご支援のおかげで、日本とシンガポールの架け橋となり、運航を続けてこられた。次の目標はまたさらに60年」と、満席近くなった多くの搭乗客に向けて感謝の言葉を述べた。
また、チャンギ国際空港を代表して、Changi Airport Group, Managing Director Air Hub Developmentのリン・チン・キャット(Lim Ching Kiat)氏もあいさつし、「JALの就航は日本とシンガポールの旅客事業における重要なマイルストーンであり、日本とシンガポールを結んだパイオニア」と評価。2017年に270万人の旅客が日本とシンガポールの間を行き来し、日本からシンガポール、シンガポールから日本の人的交流、投資や貿易などの経済活動で非常に強い結びつきがあることを紹介し、「これからも長きにわたって強力なパートナーであることを望む」と語った。
さらに、JL36便の機長である中村敬市氏もあいさつ。「27年前に、ボーイング 747-400型機の副操縦士として初めてシンガポールに来て以来、シンガポールは私がもっとも好きな目的地の一つ。乗務員にとってお客さまの安全と快適が目指すべき最大の目的。さらなる向上を目指して日々努力し、1便1便を大切にしながら、これからの先の60年もシンガポールと日本を結ぶ架け橋として皆さまに選んでいただける航空会社でいられるよう努力していく」と述べた。
搭乗までの間も、響屋によるパフォーマンスや演奏、歴代制服を着用したCAとの撮影会が行なわれ、特にCAの撮影会は順番を待つ人だかりができるほど。搭乗時には乗客全員に、就航60周年フライトの記念品がプレゼントされた。