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ASEANの旅行業界向けイベント「ATF 2018」がタイ・チェンマイで開催。2018年はタイで“隠された魅力”を体験

多数の観光イベント、動画コンテストも開催へ

2018年1月22日~27日 開催

タイのチェンマイで「ASEAN(東南アジア諸国連合) Tourism Forum 2018」が1月22日~27日に開催された

 1月22日から27日まで、タイ北部の都市チェンマイで「ASEAN Tourism Forum 2018」(ATF 2018)が開催された。ATFはASEAN(東南アジア諸国連合)地域の旅行商品を取り扱う世界各国のバイヤー、セラーらが集結する商談会で、2018年の今年は37回目、チェンマイでは初の開催となる。

 実質的なイベントのスタートとなる24日には、タイ国政府観光庁 マーケティング・コミュニケーション担当 副総裁のTanes Petsuwan氏がメディア向けの説明会で登壇し、タイの観光戦略を語った。また26日には、2018年にタイ国内で開催される観光業界向けイベント、および動画コンテストについての説明会も行なわれた。

会場となったCMECC(Chiang Mai International Exhibition and Convention Centre)
会場内の様子

「Open to the New Shades」を新たなコミュニケーションキャンペーンに

タイ国政府観光庁マーケティング・コミュニケーション担当 副総裁 Tanes Petsuwan氏

 Tanes Petsuwan氏が 語った最も大きなポイントは、「新たなコミュニケーションキャンペーンとして“Open to the New Shades”を加える」こと。すでに20年続いている海外市場向けの「Amazing Thailand」というスローガンは継続しつつ、今回の新しいOpen to the New Shadesは、タイの強みであるとする「ダイバーシティ(多様性)」にフォーカスして、すでに観光名所として知られている場所でも、そこに隠された無数の魅力をさらに引き出すものだと述べた。

よく知られているスポットでも、多様性という視点から新たな魅力を引き出す

 2017年の実績としては、ASEAN地域からの渡航者が900万人、海外全体からの渡航者が3500万人で、海外旅行客からの収益は1.82兆バーツ(約6.4兆円、1バーツ=約3.5円換算)に上った。これに対し2018年の収益は8%アップの1.9兆バーツ(約6.6兆円)を目標とする。

2017年の実績と2018年の目標。収益8%アップを目指す

 ターゲットは初めてタイに訪れる人、リピーター、シニアからスポーツ好きの人までと幅広いが、ハイエンド、ラグジュアリーな旅行先としての認知度を高めるため、女性向けやウェディング、新婚旅行といった市場にも力を入れる。また、タイ独自の生活や文化を伝えるのに効果的なツールであるとして、ガストロノミー(美食)への取り組みはこれまで以上に強化する。

 一般的に観光地としてよく知られるバンコクやプーケットなど以外の都市、いわゆる“セカンド・ティア”のローカルツーリズムについても、「需要を生み出し、供給を強化する」ことにより、旅行者1000万人、100億バーツ(約350億円)の市場規模を目指す。イベント開催やトレーニングといった特定目的のツーリズムであれば税金面での優遇措置が受けられることも追い風とする。

 また、タイが地理的にASEAN諸国やその周辺地域との連絡に優れていることも強調した。隣接するミャンマー、ラオス、カンボジア、マレーシアとの国境周辺の検問が30カ所以上あるほか、各国とつながる自動車道の整備も進められ、鉄道の開通やより高速な交通手段も計画しているという。

 航空路線についても、ASEAN諸国間はもちろんのこと、中国、日本、韓国、香港、台湾といったアジア各国・地域との直行便があり、さらに2017年12月からカタール航空がドーハ~チェンマイ線を就航したことで、欧州や中東、アフリカからのアクセス性が増したこともアピールした。

国境をまたがる道路と検問。隣国とのスムーズな行き来を可能にしているとする
タイ政府観光庁が、ASEAN諸国との連絡のよさを活かした旅行プランを提案。1つは「ASEAN Ancient Kingdom」をテーマにしたミャンマー、タイ北部、ラオスの歴史のつながりを巡る旅
「ASEAN Peranakan and Nature Trail」は、アンダマン海沿岸部のプラナカン文化と独自の食を知る旅
「Mekong Active Adventure Trail」は、レース場のあるタイ東部のブリラム、ラオス、カンボジアを巡る、スポーツとアドベンチャーをテーマにした旅
「ASEAN World-Class Culinary and Heritage Cities」は、タイの首都からマレーシア、シンガポールへと至るルートで、主に食にフォーカス

 観光業界においては、すでにそうなっているところもあるが、将来的に10~20代のミレニアル世代を中心として、旅行者自らが旅程を好きなように選び、組み合わせることが当たり前になる、と同氏。「Open to the New Shades」は、そうしたトレンドを踏まえたうえで、ターゲットごと、市場ごとに異なるニーズにいかようにも合わせられるキャンペーンだと話した。

2018年タイで多数の観光イベント。ペア旅行が賞品の動画コンテストも開催

 2018年、タイでは今回のATF 2018以外にも、いくつかの観光イベントが開催される。ATF 2018の会期中にそれらのイベントに関する説明会も設けられた。

 1つは、タイ最東北部にあるナコーンパノムで行なわれる「Mekong Tourism Forum 2018」(MTF 2018)。メコン川流域の6カ国、カンボジア、中国、ラオス、ミャンマー、タイ、ベトナムが、観光産業における開発、マーケティング、プロモーションについて相互に意見交換することを目的にしたもの。途中休止期間があったものの、1996年から続く歴史あるイベントとなっている。会期は6月27、28日の2日間。

MTF 2018について、主催するMekong Tourismや、各国政府観光部門の代表らが説明

 このMTF 2018に関連して、「Mekong Mini Movie Festival」という動画コンテストを初開催することも明らかにした。メコン川流域6カ国の旅行やアクティビティなどをテーマにした60秒までの動画作品を、誰でもInstagram、Twitter、YouTubeのいずれかを通して投稿し、応募できる。MTF 2018の開催までに最終的に各国で3つずつ、計18の優秀作品が選ばれ、受賞者には動画作品でテーマにした国へのペア旅行がプレゼントされる。

 受賞の有無にかかわらず、投稿した動画作品や写真は特設Webサイト「Mekong Moments」に掲載される。個人・法人を問わず参加でき、掲載された投稿から自身のSNSアカウントや公式サイトにアクセスできるため、フォロワーやファンの獲得にも活用できる、とのこと。コンテストの参加、特設Webサイトの掲載には少なくとも「#mekongmoments」「#minis」に加え、国名の3つのハッシュタグを追加して投稿する必要がある。

Mekong Mini Movie Festivalに参加するには、いくつかのハッシュタグを付けて投稿するだけ
選考方法。最初に各国で50作品がノミネートされ、一般ユーザーやスタッフらの投票で受賞作品が決まる

 2つ目は、同じくタイ東北部のコーンケーン県で開かれる「PATA Destination Marketing Forum 2018」。PATA(Pacific Asia Travel Association:太平洋アジア観光協会)によるこのイベントでは、それまであまり目を向けられなかったニッチなスポットも含め、より魅力あるデスティネーション開拓について議論する。「Growth with Goals(目標に向けた成長)」をテーマに、11月28~30日の日程で開催される。

PATA代表やコーンケーン県副総裁、タイ政府観光庁のインターナショナル・マーケティング担当副総裁らが「PATA Destination Marketing Forum 2018」について解説

 なお、タイ旅行業界の商談イベント「Thailand Travel Mart Plus 2018」はパタヤで6月13~15日に開催。第38回目となる次回の「ATF 2019」はベトナムでの開催が決定している。

会場内にはタイの工芸品の展示がいくつか。なかには3Dプリンタで作成した象の置物も
食については、近年の健康ブームを背景に、安全性やオーガニックを意識した展開が目立つ