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JAL、ダイバーシティ推進に取り組む「なでしこフォーラム」を開催。「3期JALなでしこラボ」キックオフセレモニー

1期・2期で提言された「なでしこチャーター」の実施が決定

2017年11月9日 開催

第3期「なでしこラボプロジェクト」参加メンバー

 JAL(日本航空)は、JALグループのダイバーシティ(多様性)推進や働き方改革推進を目指すための研究プロジェクト「JALなでしこラボ」を2015年から実施し、毎年、公募・推薦されたメンバーで約1年間研究を進めている。3期目となる「3期 JALなでしこラボ」のテーマとメンバーが発表され、そのキックオフセレモニーが行なわれた。

 また、「なでしこフォーラム」として開催された今回、NPO法人J-Win理事長の内永ゆか子氏による「経営戦略としてのダイバーシティ・マネジメント」と題した講演会も実施され、経験に裏打ちされた、女性活躍推進とグローバル経営の関係について理論的で実践的な内容が語られた。

J-Win理事長 内永氏が女性活躍推進とグローバル経営戦略について公演

東京・天王洲のJAL本社で開催

 会場となった東京・天王洲のJAL本社の会議室は200席以上の大型会議室だったが、参加した社員で満席。立ち見がでるほどで、JAL社内のなでしこフォーラムへの注目度の高さを感じさせた。

 なでしこフォーラムは、NPO法人J-Win(ジャパン・ウィメンズ・イノベイティブ・ネットワーク)理事長の内永ゆか子氏による「経営戦略としてのダイバーシティ・マネジメント」と題した公演からスタート。

 内永ゆか子氏は、1972年に東京大学理学部を卒業後、日本IBMに入社。長年ソフトウェア開発に携わり、1995年に同社で初の女性取締役に就任後、常務取締役、取締役専務執行役員を歴任。2007年に日本IBM退社後は、ベネッセホールディングス取締役副社長や、ベルリッツコーポレーション代表取締役会長、社長、CEO、名誉会長を経て、現在は複数の企業の社外取締役を務める人物。2007年にNPO法人J-Winを設立し、理事長として企業における女性活躍推進を支援している。

 このJ-Winとは、企業経営の中枢を担う女性のネットワーキングを支援するNPO法人であり、JAL 代表取締役専務執行役員 大川順子氏も内永氏とはJ-Win設立前から旧知の仲とのことで、開会の挨拶とともに大川氏から内永氏が紹介された。

日本航空株式会社 代表取締役専務執行役員 大川順子氏

「内永さんと私との出会いはJ-Winを設立する少し前。日本IBMの皆さんにお声がけいただいたのがきっかけです。10年前のJ-Win設立時は名称を一緒に考えたのが懐かしいです。私もJ-Winの0期生。今にいたるまでJ-Winにはお世話になり、内永チルドレンもたくさんいます」とコメント。

 J-Winは設立から10周年を迎え、会員企業は120社に上り、企業を代表する責任者、ダイバーシティ推進責任者、女性幹部や候補生の女性メンバーが登録され、相互交流や相互研鑽の場として活用されている。

NPO法人J-Win理事長/株式会社GRI 代表取締役社長/一般社団法人ジャパンダイバーシティネットワーク 代表理事 内永ゆか子氏

 挨拶を受けて、内永氏は「まさかJ-Winがこんなに長く続くとは思っていませんでしたが、あのときがんばってきた女性たちが、J-Winを支えてくれました。その人たちが次の人を呼び込んでくれて、延べ2600人がチームと女性のネットワークに関わってくれています」とJ-Winを紹介した。

なでしこフォーラムとして2部構成で実施された
「経営戦略としてのダイバーシティ・マネジメント」と題された公演が実施された

「経営戦略としてのダイバーシティ・マネジメント」と題された公演は、日本IBMに37年間務め、はじめての女性取締役に就任するなどグローバル企業での経験に裏打ちされた実感があふれ、大変実践的な内容。世界が急速にフラット化するなか、起業家マインドやネットワーク力を持つアグリゲーターを発掘・活用することが必要であり、ダイバーシティはビジネスモデルを変えるためのゲームチェンジャーであると解説した。IBMの改革に取り組んだルイス・ガースナー氏は女性活躍推進を推し進めた人物だが、これは女性に対する配慮からではなく経営戦略であると語ったという。

 企業側はIT化で仕事の効率化を推し進め、女性に対してロールモデルを輩出したり、時間と場所にとらわれない柔軟な働き方を推進したりすること、女性側も与えられたチャンスにチャレンジし、“馬に乗ったら降りない”覚悟をすべきと解説。ダイバーシティとインクルージョン(包含、社会的一体性)は、イノベーションとグローバル経営戦略の要であると締めくくった。

3期は「Inclusion of BIAS」と「DIVERSITY & INCLUSION in JAL」をテーマに2拠点で研究

「3期 JALなでしこラボ」キックオフセレモニーを実施
JALなでしこラボ3期生が紹介された

 続いて「3期 JALなでしこラボ」キックオフセレモニーが実施され、3期生を紹介。再び檀上に立った大川氏が、3期の活動について説明した。

 大川氏によると、JALグループは2013年度末に設定した10年計画で、2023年に女性管理職比率を20%にするという目標を設定。当初3年は勤務継続にフォーカスし、その後7年でキャリアアップを促進する計画で、順調に進んでいるという。これは男女双方の意識改革とワークスタイル変革の成果であると解説。

 JALなでしこラボによるこの2年間の活動を振り返ると、積極的になれたというメンバーが多く、継続性の研究を行なったグループでは介護の資格を取ったメンバーも出たという。また、女性の先輩社員に話を聞いてJALなでしこラボのメンバーになりたいと応募したメンバーが出るなどよい影響があり、活躍する女性の裾野も広がってきたと感じているという。

 また、1期・2期で研究が進められた介護チャーターフライトの実施が決定したことも発表。インクルージョンを意識し、旅をする方々とともに中身を作っていくという。

1期・2期で研究が進められた介護チャーターフライトの実施が決定

 3期のテーマは「Inclusion of BIAS」と「DIVERSITY & INCLUSION in JAL」。東京の拠点では、「Inclusion of BIAS」をテーマに、考え方のクセや思い込みであるバイアスをどう受け止めるかなどを研究を実施。大阪の拠点では「DIVERSITY & INCLUSION in JAL」をテーマに、JALのなかで地域特性を含めた多様性をどう活用し受け入れるかなどについての研究を行なう。

東京の拠点では「Inclusion of BIAS」をテーマに研究
大阪の拠点では「DIVERSITY & INCLUSION in JAL」をテーマに研究

「JALグループが多くの価値を持って、最高のサービスと社会の進歩・発展に貢献できるようにみんなで前進していきたいと思います」と締めくくった。

日本航空株式会社 代表取締役専務執行役員 大川順子氏

 セレモニー終了後、代表取締役の大川氏は、なでしこラボのメンバーについて「一人一人が自信を持ち始めていて、積極性や自分の意思が右肩上がりに上がっていると感じています。1期・2期の活躍を見たり、フォーラムの熱気を感じたりと影響があると思います。力強く頼れるみんなになってきました」と2年間続けた活動の手応えをコメント。

 さらに、「働き方改革には、女性が働きやすくなるための制度という印象がありますが、実際は男女双方に大きな効果を出すものです。実際に男性の働き方が変化することで実感を得て、その結果、女性の働き方に対する意識も間違いなく変わってきていると思う。一人一人が最高のパフォーマンスを出そうという空気ができてきています。結果的に女性が活躍できるようになれば、理想的だと思います」と語った。

 3期のメンバーへの期待としては「大阪では地域特性を踏まえたうえでのダイバーシティ研究に期待したいですね。東京では前期に研究したバイアスを、さらにどう受容するか深掘りして、最終的にはサービスや社会の進歩発展・貢献など見えるものになってほしいです」と期待を語った。

日本航空株式会社 国際路線事業部 アシスタントマネジャー 三浦加奈子氏

 また、今回の司会を務め、2期からの継続メンバーとして事務局で「なでしこチャーター」の実施に関わるJAL 国際路線事業部 アシスタントマネジャーの三浦加奈子氏がインタビューに応じ、なでしこラボに参加した経験について、「社会人になってからプロジェクトのメンバーになるという機会がいままでなかったので、組織横断プロジェクトのメンバーになって本当に多くの学びがありました。初めて会うメンバーで進めていく力や、壁にぶつかったときにも協力して形に残すまで進める力を一番学んだと思います」とコメント。上司や同僚もプロジェクトに関しては大変協力的で、サポートを受けながら参加しているという。

 今回実施が決定したなでしこチャーターについては、早稲田イーライフと意見交換しながらニーズを調査しているとのことで、実施時期など詳しい日程は未定だそうだが、「自分にはまだ介護を受ける経験がなく、分からない部分もあるので、早稲田イーライフさんの施設に何度も通って、実際のお声を反映した介護チャーターにしたいと思っています。自己満足のものにするのではなく、お客様のニーズをしっかり組み込んだ商品にしたいです」と語った。

 今回初めて参加する3期生に対しては、「1期・2期を上回るような結果を残せる3期生になりたいなと思っているので、力を合わせてがんばっていきましょう」とコメントした。

「バイアスとビジョン」というテーマで取り組んだ2期に続き、「Inclusion of BIAS」や「DIVERSITY & INCLUSION in JAL」という難しいテーマに取り組む3期。このなでしこフォーラム前半で内永氏も「ダイバーシティとインクルージョンは、イノベーションとグローバル経営戦略の要である」と解説しており、公演の内容にもヒントが含まれているようだった。女性活躍推進やダイバーシティ、そしてインクルージョンと、企業での働き方や人材活用がより進化していくなかで、なでしこラボの活動は今後もより重要度を増していきそうだ。

3期 JALなでしこラボのメンバーたち。今期は3チームに分かれ、各チームにメンターが参加する