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経産省、女性活躍推進に優れた企業を選定する2016年度の「なでしこ銘柄」発表会
ANA、JAL、東急らが引き続き選定。「新・ダイバーシティ経営企業100選」も同時発表
2017年3月28日 12:45
- 2017年3月23日 発表
経済産業省は3月23日、女性活躍推進に優れた企業を選定する2016年度(平成28年度)「なでしこ銘柄」を発表した。「なでしこ銘柄」の選定は経済産業省と東京証券取引所との共同企画で2014年度から毎年実施され、約3500の上場会社から特に女性活躍推進に優れた会社を可視化して投資家に紹介しているもので、今年は47銘柄が選定された。
女性活躍推進は政府が「成長戦略の中核」と位置付けている課題であり、この選定により企業の中長期の成長力に注目する投資家への関心を高め、結果的に各企業の女性活躍推進の取り組みがより進むことを目的としている。交通・旅行業界からも、昨年に引き続きANA、JAL、東急らが選定された。
「なでしこ銘柄」の選定で企業価値の向上へ。「準なでしこ銘柄」も新設
発表会では、発表に先立ち東京証券取引所 代表取締役社長 宮原幸一郎氏が挨拶。「東京証券取引所では、株式投資を通じて日本経済を応援する『+YOU』ニッポン経済応援プロジェクトを実施しており、このプロジェクトの一環で、個人投資家への銘柄紹介を目的にテーマ銘柄の選定を行なっている。
これは中長期的な視点から企業を応援したくなるような特定のテーマや指標で選んで公表するもので、なでしこ銘柄はその一つとして女性人財の活用を積極的に進めている企業を業種ごとに選定している。企業の経営戦略として女性活躍推進を図ることが、企業の競争力を高め、環境変化に対する適応力やマネジメント力の高さを表わすと考えている。
経済産業省とは、なでしこ銘柄以外にも、『健康経営銘柄』や、『攻めのIT経営銘柄』などのテーマ銘柄も共同で選定しているが、今では認知も進んで学生の就職活動でも重要な観点の一つとして認識されている。今回なでしこ銘柄として選定された銘柄のうち10社は、健康経営銘柄2017にも選定され、さらにそのうちの4社が攻めのIT経営銘柄2016にも選定されている。こうして重複して選定されている企業は、あらゆる変化や企業価値向上に取り組んでいる非常に先進的な企業と言える。
また、今回からはなでしこ銘柄に準ずる企業のうちスコアリングの高い企業を『準なでしこ銘柄』として選定した。加えてベストプラクティスの共有を図る観点から先進的な取り組みを実施する企業を注目企業として選定した。東京証券取引所はこのなでしこ銘柄の選定が、企業の女性活躍の取り組みを促進する一助となり、企業価値向上になんらかの貢献ができれば幸いだ」と述べた。
続いてプレゼンターの小島慶子氏が登壇し「私自身は1995年から15年間、放送局で会社員として勤務したが、そのとき労働組合の副委員長を7年間務め、働きやすい制度作りに取り組んだ経験が今、財産になっている。当時はまだワークライフバランスという言葉もなく手探りだったが、女性が働きやすい環境を整えると男性の働き手も働きやすい場になると感じた。これから働き始める人にとっては、その企業が働きやすい環境であるかどうかは死活問題。男性でも女性でも明日、今日と同じように働けるかどうか分からないとしたら、人生で何が起きても安心して働けるような多用な仕組みや寛容な価値観のなかで働ければ幸せだなと思う。なでしこ銘柄に選定された企業は、いろいろな人にとって働きやすい、最先端の企業だと思う」とコメント。続いて2016年度のなでしこ銘柄として認定された企業を発表。選定企業を代表してカルビーと東京急行電鉄が選定証を受け取った。
今回発表された2016年度平成28年度のなでしこ銘柄は下記のとおり。
- カルビー株式会社
- アサヒグループホールディングス株式会社
- 石油資源開発株式会社
- 清水建設株式会社
- 大和ハウス工業株式会社
- 積水ハウス株式会社
- 株式会社ワコールホールディングス
- 大王製紙株式会社
- JSR株式会社
- 積水化学工業株式会社
- 日立化成株式会社
- 中外製薬株式会社
- TOTO株式会社
- ジェイ エフ イー ホールディングス株式会社
- 住友電気工業株式会社
- 株式会社小松製作所
- 株式会社クボタ
- ダイキン工業株式会社
- 株式会社日立製作所
- 富士電機株式会社
- 株式会社RVH
- 株式会社ブリヂストン
- 日産自動車株式会社
- 株式会社島津製作所
- トッパン・フォームズ株式会社
- 東京ガス株式会社
- 大阪ガス株式会社
- 東京急行電鉄株式会社
- 日本航空株式会社
- ANAホールディングス株式会社
- 株式会社野村総合研究所
- KDDI株式会社
- SCSK株式会社
- 双日株式会社
- 丸紅株式会社
- 株式会社日立ハイテクノロジーズ
- 株式会社ローソン
- 株式会社セブン&アイ・ホールディングス
- 株式会社りそなホールディングス
- 株式会社三井住友フィナンシャルグループ
- 株式会社大和証券グループ本社
- 東京センチュリー株式会社
- ヒューリック株式会社
- イオンモール株式会社
- 株式会社スタジオアリス
- スリープログループ株式会社
- 株式会社JPホールディングス
また、準なでしこ銘柄一覧は次のとおり。
- キリンホールディングス株式会社
- 住友林業株式会社
- 帝人株式会社
- レンゴー株式会社
- 株式会社シーボン
- 協和発酵キリン株式会社
- 日本特殊陶業株式会社
- 株式会社神戸製鋼所
- 住友金属鉱山株式会社
- 株式会社LIXILグループ
- 株式会社IHI
- 富士通株式会社
- 株式会社豊田自動織機
- テルモ株式会社
- ミズノ株式会社
- 中部電力株式会社
- 株式会社日立物流
- 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ
- 三井物産株式会社
- 株式会社パルコ
- 株式会社みずほフィナンシャルグループ
- 野村ホールディングス株式会社
- 東京海上ホールディングス株式会社
- 株式会社レオパレス21
- 株式会社リンクアンドモチベーション
JALが3年連続のなでしこ銘柄選定。働き方改革に全社で取り組む
3年連続のなでしこ銘柄選定となったJAL(日本航空)は、代表取締役専務執行役員 大川順子氏が発表会に出席。「JALは全社員で3万2000人いるが、その全体で取り組んでいる点が強み。ダイバーシティは女性活躍推進だけではなく全社員を対象とした取り組みであり、働き方改革と一緒に進んでいる点も今回評価されたと感じている。JALグループで取り組む『なでしこラボ』も今年2年目。1期目に提言されたことを2期目で具現化しようと作業を続けている。こうしたさまざまな取り組みを続けるなかで、男性社員のなかにも以前より確実にダイバーシティに関する意識は高まってきた。今後も女性に限らずいろいろな個性を活かし、JAL社員の総合力を発揮してイノベーションに取り組んでいきたい」とコメントした。
「平成28年度 新・ダイバーシティ経営企業100選」表彰式を同時開催
今回の発表会では、経済産業省がダイバーシティ経営を実践し、成果を上げている企業を表彰する「新・ダイバーシティ経営企業100選」の2016年度(平成28年度)選定企業の表彰式も同時開催された。
表彰式に先立ち、主催者を代表して経済産業省 大臣官房審議官 経済社会政策担当 中石斉孝氏が挨拶。「新・ダイバーシティ経営企業100選は今回、地方企業が選定数で上回り、ダイバーシティ推進のすそ野の広がりを感じる。また、なでしこ銘柄は新卒者向けの合同企業説明会で非常に注目度が高い。今回受賞された企業の皆さまには今後もフロントランナーとして日本の最先端を走ってほしい」とコメントした。
平成28年度 新・ダイバーシティ経営企業100選に選定された企業31社は以下のとおり。
- 株式会社ノベルス
- 株式会社小阪工務店
- 鹿島建設株式会社
- 清水建設株式会社
- 積水ハウス株式会社
- 株式会社クラロン
- 株式会社小金井精機製作所
- 株式会社吉村
- 富士ゼロックス株式会社
- 甲府積水産業株式会社
- 株式会社大川原製作所
- エイベックス株式会社
- 日本特殊陶業株式会社
- 株式会社安川電機
- タカハ機工株式会社
- 佐川印刷株式会社
- オリックス・ビジネスセンター沖縄株式会社
- 大橋運輸株式会社
- 株式会社タウ
- 株式会社荘内銀行
- 東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社
- プルデンシャル生命保険株式会社
- パシフィックコンサルタンツ株式会社
- 株式会社ホテル佐勘
- 有限会社ホテルさかえや
- FSX株式会社
- 株式会社日吉
- 株式会社キャリアプランニング
- マルワ環境株式会社
- 株式会社OZ Company
- 株式会社グローバル・クリーン
選考委員によるダイバーシティ経営企業の講評を実施
選定企業の発表後、今回の選考委員による講評が行なわれた。新・ダイバーシティ経営企業100選運営委員会委員長を務める、中央大学大学院 戦略経営研究科教授の佐藤博樹氏をはじめ9名が出席し、事業説明と本年度の特徴について解説が行なわれた。
新・ダイバーシティ経営企業100選は毎年応募企業を募り、書類審査を実施。本年度は121社の応募があり、31社が選定された。地方の企業からの応募が増加し、中小企業も半数以上を占めた。
2016年度の取り組みとしては、ダイバーシティ経営の基本の考え方や、ダイバーシティ経営の例示だけでなく、実践につなげるためのセミナーも実施。「ダイバーシティ経営戦略Meet Up!」と題して全国19カ所で実施され、約1600人が参加。表彰企業のダイバーシティ経営に触れる機会を持つためのバスツアーも実施されたという。
ダイバーシティ経営の取り組みはこの5年をとおしてレベルが上がり、業種も広がった。しかし実際に働き方改革やワークライフバランスを実施しようとすると組織内から反対意見も多く上がりやすく、結果まで結びつけるのは難しい。その意味で今回選定された企業は貴重な存在だ。
また、今回地方企業が多く選定されたのは、少子化が最先端で進む地方にとって働き方改革が急務となっているためだという。配布されたベストプラクティス集では、職場環境の改善や外国人社員の活用、チャレンジド(障がい者)の取り組み例などが紹介された。
ダイバーシティ経営の新ガイドライン「ダイバーシティ2.0」を公表
講評の実施後、経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室長 藤澤秀昭氏から今回ガイドラインとしてまとめられた「ダイバーシティ2.0」についての解説が行なわれ、「実施には中長期的、継続的な実施と経営陣によるコミットメント」が必要である点と「全社的な実行と体制の整備」が必要である点について強調。実施に対して7つのアクションを提示し、短期的には痛みが伴うが、中・長期的には企業価値を向上させる改革であると説明された。
最後に経済産業大臣 世耕弘成氏が登壇し、「ダイバーシティ経営企業100選は、平成24年度からはじまり、今年で5年目を迎えた。表彰された企業は200社を超え、企業の協力のもとさまざまなベストプラクティスを全国に発信してきた。この5年間でダイバーシティ経営のすそ野は地方の企業や中小企業にも着実に広がっている。中小企業はトップがやると決めたことをスピーディーに実行できるという利点もある。例えば外国人社員の家族の不安を和らげるために社長が海外にいる家族に会いに行き直接会話するなどの工夫をする取り組み事例もあった。大企業も育児中の女性など一部の社員向けの取り組みだけではなく、働き方や業務プロセスの見直し、管理職の意識改革などすべての社員を対象とした会社全体の改革として実行されている。この5年間の進展に皆さんの本気度を感じている。
今回はIT活用による働き方改革に関する取り組みも多く見られた。ダイバーシティ経営の推進には働き方改革が欠かせない。経済産業省でもテレワークを推進している。ダイバーシティ経営は一朝一夕に実行できるものではなく、100%の正解もない。試行錯誤しながら、やり続ける覚悟が重要。女性幹部の数だけ増えても経営力が高まるとは限らない。今こそ真の企業価値向上につながるダイバーシティ経営へ、ステージアップを目指す時期。さらなる高みに向けて多用な人材を活用し、中長期的に企業価値を生み出し続ける経営を『ダイバーシティ2.0』と位置付け、その実践のために求められるアクションを整備したガイドラインをまとめた。来年度はこのガイドラインに沿って、表彰制度もさらに進化させていきたい。日本経済をより元気にしていくためにも取り組みの輪を皆さんと広げていきたい」と述べた。
表彰式には受賞企業を代表して、清水建設、エイベックス、吉村、マルワ環境の4社が表彰状とトロフィーを受け取った。