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ANA、ワイン選定会「ワインセレクション 2018」を実施、2018年の機内&ラウンジでの提供銘柄を選定
世界最優秀ソムリエのオリヴィエ・プーシエ氏や「コンラッド東京」 エグゼクティヴ ソムリエの森覚氏が選定メンバーに就任
2017年12月8日 00:00
- 2017年10月27日 実施
「THE CONNOISSEURS」に世界最優秀ソムリエのオリヴィエ・プーシエ氏が参加
翌年1年間のANAの空港ラウンジや機内で提供されるワインを選ぶ「ワインセレクション」は、2017年で15回目を迎えるブラインドテイスティング方式のワイン選定会。空港ラウンジでは翌年3月から先行して提供され、6月から機内でも提供が開始される。毎年前年にセレクトを行なうのは、ビジネスクラスで約2万本、ファーストクラスでも約4000~5000本が必要となるため、必然的に準備に時間がかかるためだとのこと。
今回のワインセレクションには、ANAの機内食や飲み物をプロデュースするメンバー「THE CONNOISSEURS(ザ・コノシュアーズ)」に2017年12月から参加する世界最優秀ソムリエのオリヴィエ・プーシエ氏や、「コンラッド東京」のエグゼクティヴ ソムリエである森覚氏も新たに参加。ワインセレクションの立ち上げ時から関わるシニアソムリエの井上勝仁氏も引き続き選定に参加し、より充実した選定会が実施された。
選考会には、オリヴィエ・プーシエ氏や森覚氏らのワインアドバイザーだけでなく、ANAケータリングサービスのシェフ2名、ソムリエ資格を持つCA(客室乗務員)3名、商品戦略部の社員など約30名が参加。それぞれの持ち点を、ワインアドバイザーは5倍、ソムリエの有資格者は2倍、そのほかのメンバーは1倍で集計され、採用されるワインを決定する。
今回の「ワインセレクション 2018」は、4月から方針の策定が開始され、約2800銘柄がエントリー。このなかからさらに書類選考で300銘柄に絞り込まれたという。このうち110銘柄については先行して9月にTHE CONNOISSEURSメンバーや関係者によりテイスティングが実施され、国際線ファーストクラスの銘柄の一部が選定された。
今回公開された選考会では、187銘柄のテイスティングを実施。「ANAラウンジ」と「ANA SUITEラウンジ」用の26銘柄、「国内プレミアムクラス」「国際線ビジネスクラス」および「国際線ファーストクラス」で提供される銘柄45銘柄が選定された。
カテゴリーとテーマごとに約30名が187銘柄をテイスティング
会場には30名ほどの席が作られ、中央のテーブルにワイン台と大量のグラスが用意された。9時に開会の挨拶が行なわれ、スケジュールや審査方法を説明。シニアソムリエの井上勝仁氏から選考の際の注意が詳しくアナウンスされた。
続いて今回から選考会に参加する「コンラッド東京」 エグゼクティヴ ソムリエの森覚氏と世界最優秀ソムリエの受賞歴があるオリヴィエ・プーシエ氏が紹介され、森氏は「新しい視点で意見を言っていきたい」、プーシエ氏は「ANAのためにベストなワインをセレクトしていきたい」とコメントした。
各銘柄は、「SUITEラウンジ」「ビジネスクラス」などの提供されるカテゴリーごとに、「アメリカ産赤ワイン」「フレッシュな白ワイン」などのワインの種類やテーマ別に7~10種類ずつサンプルが並べられ、そのなかで点数を付けていく仕組み。各自に配布された採点表は回収され、点数が集計されたあと、後日その選考結果が発表されるという。
例年2日間に渡って実施されていたワインセレクションだが、今年は1日で実施されるため朝9時にスタートして夕方18時に閉会という長丁場で、テンポよく進められた。手早く開栓されたワインが次々にグラスに注がれ、各自のテーブルにセット。1杯ずつ口に含んで風味を確認して評価シートに記入していく。8種類をチェックする時間は15分ほどで、1杯にかけられるのは2分弱。休憩を挟みながらこの作業が23回繰り返された。ワインのテイスティングと聞くと優雅に聞こえるが、真剣で黙々とした、かなりストイックな作業に見えた。コルクから匂いが付いてしまう「ブショネ」の状態のワインは井上氏、森氏、プーシエ氏らが気が付いた段階でセレクトから外された。
選定会は「ANA SUITEラウンジ」のシャンパンのセレクトからはじまり、午前中はラウンジ用のセレクト、午後は国内、ビジネスクラス、ファーストクラスのセレクトを実施。最後に、先行して選ばれた国際線ファーストクラスの銘柄の一部が、森氏のセレクトしたチーズとともに会場で振る舞われた。
最後に、シニアソムリエの井上勝仁氏や、森覚氏、オリヴィエ・プーシエ氏から挨拶があり、森氏からは「井上さんとはプレセレクションの段階から、オリヴィエさんとも今日話し、来年、再来年とさらにビジネスクラスを中心にもう少し底上げをしながら、レベルの高いワインをここに集めて皆さんにテイスティングしていただけるようにしようと話し合いました。私もさらに勉強して成長し、ANAのワインセレクションに還元していきたいと思います」とコメントした。
また、ANA CS&プロダクト・サービス室商品戦略部長の原雄三氏から、「ANAワインレセクションは、受賞歴もさることながら、お客さまがラウンジや機内で楽しまれ、『美味しいな』と思っていただけることが一番大切。長年ご尽力いただいている今回は井上ソムリエに、森ソムリエとプーシエ氏に加わっていただき、今回のセレクションが実施できました。お客さまにお食事とワインがよいかたちで楽しんでいただき、旅が彩りのあるものになるとよいと思います」とのコメントして締めくくった。
受賞歴多数のANAワインセレクション。2018年度の銘柄の一部を先行公開
THE CONNOISSEURSによるANAのワインセレクションは、2013年、2014年、2016年に「セラーズ・イン・ザ・スカイ・アワード」を受賞するなど定評があるもの。2017年のANA ワインセレクションも、「ワインズ・オン・ザ・ウイング2017」の「ファーストクラス・白ワイン」部門でシルバーメダルを獲得したほか、「ビジネスクラス・赤ワイン」部門でもゴールドメダルを獲得している。
ANAワインセレクションの場合、直接蔵元と交渉するなど独自のセレクトで集められた銘柄のため、店頭で入手が難しい銘柄も入ることがあるが、ANAオリジナル製品などを取り扱う直営ショッピングサイト「ANAショッピング A-style」では歴代のANAワインセレクションが販売されている。
2018年の国際線ファーストクラス向けに、THE CONNOISSEURSのメンバーにより9月に先行して110本のテイスティングから選ばれた12本は以下のとおり。このほか、国際線ファーストクラス向けのアメリカ産ワイン2本が今回のテイスティングで決定し、追加される。
・Ch.Leoville Barton/Barton Family/FRANCE Bordeaux
・Chambolle Musigny/Bouchard Père et Fils/FRANCE Bourgogne
・Savigny les Beaune Les Lavières Domaine Bouchard Père et Files/Bouchard Père et Fils/FRANCE Bourgogne
・Chassagne-Montrachet 1er cru “Morgeot”/MAISON LOUIS LATOUR/FRANCE Burgundy/Côte de Beaune
・Laroche Sélection Vaillons 1er cru/LAROCHE/FRANCE Bourgogne
・Petalos Bierzo DO/Alvaro Palacios/SPAIN Castille Lèon
・Palliser Estate Sauvignon Blanc/Palliser Estate/NEW ZEALAND Martinborough
・サントリー登美の丘ワイナリー 登美の丘 赤/サントリー登美の丘ワイナリー/日本 山梨
・Anayón Macabeo/Grandes Vinos/SPAIN Cariñena
・Amigne de Vétroz/Domaine Jean-René Germanier SA/SUISSE Valais
・Groot Constanita Shiraz/Groot Constantia/SOUTH AFRICA Constantia
・Vasse Felix Sauvignon Blanc/Semillon Margaret River/Vasse Felix/AUSTRALIA Margaret River
※実際の提供時は下記写真で紹介しているものとは異なるヴィンテージとなる可能性がある。
料理との相性が最も重要。乗客目線でワインを選べる“みんなのセレクション”
今回の選定会に参加したメンバーが、それぞれの立場からコメントした内容を紹介したい。
ANA 取締役執行役員 客室センター長の山本ひとみ氏は、「国際線に就航して31年目になりますが、仕入れが難しかった国も含めてワールドワイドにいろいろなワインが増えてきていますので、全体のセレクションや今のワインの流れがどうなっているかも確認しに来ました。以前は伝統的なワインに重きを置いてきましたが、今のお食事やグローバルのお客さまへの対応、お食事とワインのマリアージュを意識して選びました」とコメント。
ソムリエ資格を持つCAがセレクションに参加することについても、「今日ここには限られたメンバーが来ていますが、彼女たちが自信を持って職場に戻り、周知できる効果があると思います。自分自身が選んだワインがどの程度実際に選ばれているかを確認できますし、実際に機内でお客さまにサービスしながら会話のなかで好みを伺い、自信を持ってお勧めできると思います。そういう意味で、このセレクションには必ず現役のCAに参加してもらっています」と、その重要性について語った。
選定会の終了後には、ANAケータリングサービスから参加した洋食を担当する岩村シェフと和食の杉村シェフ、清水CA、奈良CA、河西CA、そしてプーシエ氏と森ソムリエが囲み取材に応えた。
まず、約8000人のCAのなかに数百人いるというソムリエ資格を持つCAから選ばれた3名に、今日の選定会について聞くと、河西CAは「出会ったことのない新鮮な味を経験させていただきました。時間がかかりましたが、社員みんなの意見が反映されて、新しくお客さまにお届けできることをかみしめた9時間でした」とコメント。
続いて、清水CAは「不安もありましたが、機内のことを想像しながらワインを選ぶことができました。貴重な機会に参加できて光栄です。責任を感じながら選びましたが、本当に難しいなと思いました。美味しいワインと自分の好み、そしてお客さまの思いを考えながら選びました」とコメント。
最後に奈良CAは「最初は緊張もありましたが、多くのCAのなかから今日こうして来ることができたので、その責任感とうれしさなどいろいろなことを考えました。実際に来てみて、いろいろなワインに出会うことができましたし、一緒に審査する方とお会いすることもできました。あらためてワインは人と人をつなぐものだと感じ、機内でもワインがANAとお客さまをつなぐものになってほしいという気持ちで最後まで臨みました」とそれぞれコメントした。
ANAケータリングサービス 川崎工場から参加した和食の杉村シェフは、「上空で召し上がるワインはもっとこってりしたものをイメージしていましたが、地上で飲むワインと変わらない印象でした。これだけの規模でワインの選定会を行なわれることがANAブランドを作り、お客さまに届けられることを実感しました」とコメント。和食は魚がメインの場合が多く、上空でもあっさり味のものが多いため、ワインという観点ではスパークリングやフルーティな白ワインを意識しているそうだ。
続いてANAケータリングサービスの成田工場 洋食調理部でホット調理課を担当している岩村シェフは、「安全で美味しい料理を届けるために日々努力していますが、今回こうしてワインの選定に関わり、ワインとのマリアージュを考えて料理の構成や味付けを意識しなければいけないとあらためて思いました。こうしたケータリングの料理人も呼んでいただき、CAの方やソムリエの方と一体感を持って一つのことを決められるというのは素晴らしいことだと思います」と語った。この日のテイスティングでは、想像以上にスパイシーさやハーブなどを感じるいろいろなワインがあったそうで、今後はメニュー作りにもその気付きを活かしたいとのこと。
プーシエ氏は「カテゴリーのなかで一番よいものを選ぶというのが今日のメインのテーマでしたが、いろいろな地域からワインが集まり、ANAのワインのセレクションの幅の広さが分かりました。和食の繊細さをワインでも表現できるように、パンチの強い赤ワインだけではなく、強いなかでも後ろに柔らかさがあるものなどを提供していくことが大事だと思います」とコメント。「和食はとても洗練された食文化を持っているので、ワインに対しても同じぐらい洗練されたワインを出さなければならないと思います。例えば和食には樽香が強いものは合わないと思いますし、世界的に流行しているワインが日本で受け入れられるかといったら、そうとは限りません。ワインというのは食事と合わせて飲むものなので、食事に合うような選び方をしていかなければいけません」と語った。
今回の選定会については、各カテゴリーの特徴に合わせて選びながらも、全体的にエレガントでバランスがよく、日本の食事に合うようなものをテーマに今回選んだとのこと。来年度以降の取り組みとしては、各カテゴリーのレベルにまだばらつきがあるため、それを全体的に引き上げていくことを目標にしていきたいと語った。
森ソムリエは、プレセレクションを井上ソムリエとともに実施し、絞り込んだものを今回選定会にかけたとのこと。「今回は、全体的にはよかったのですが、カテゴリーのなかでばらつきがあったので、ぜひ来年以降は一番よかったもののレベルにほかのサンプルも引き上げて、みんなでそのなかからよりよいものを選んでいこうと話し合いました。オリヴィエさんにプレセレクションから参加いただければよりレベルアップができると思います。今年より来年、来年よりも再来年、とワインのセレクションはよいものになっていくと思います。エアラインはアドバイザーがすべて選ぶことが多いですが、今回のように大勢で選ぶという“みんなのセレクション”のスタイルはよいと思います。これだけの人数が集まったことでお客さまの目線でワインを選べると感じました。我々もレベルアップしていき、セレクションの幅をさらに広げるなどチーム全体が成長していければと思います」と語った。
清水CAによると、「ANAのワインはバランスが素晴らしい」と言われたことがあるそうで、個性があるなかでもバランスがよく「美味しい」と感じられるワインなのだと思うとのこと。ワインはどれかに人気が集中することはなく、乗客によりさまざまなものが選ばれているそうで、CAとしては会話のなかから好みを察知して提案を行なうことを意識しているとのこと。その提案力のアップにも今回の経験は活かされるだろう。
囲み取材では「食事と合うワイン」についてのコメントが多く、ワインは好きでも何杯もは飲めないという人は、「メインに合わせてワインを選ぶ」のがお勧めだとのアドバイスがあった。地上で飲み慣れたワインだけでなく、数千本から選び抜かれたワインとの出会いが楽しめるのも機内サービスの楽しみの一つ。よりパワーアップしたTHE CONNOISSEURSによるANAワインセレクションは、2018年も搭乗の楽しみの一つになるだろう。