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アメリカン航空、「Media and Investor Day」開幕。ULCCとLCCに対抗する料金「エコノミー・ベーシック」導入
米国本社のあるテキサス州ダラスで開催
2017年9月29日 16:36
- 2017年9月28日(現地時間) 発表
アメリカン航空(American Airlines Group)は、9月28日(現地時間、日本時間9月29日)に同社の本社がある米テキサス州ダラス・フォートワース空港近くのホテルにおいて、報道関係者と投資アナリスト向けのイベント「American Airlines Media and Investor Day」を開催した。
このなかで2013年にUS Airwaysと合併してからの合併プロセスの進行状況やプレミアムエコノミーの導入など、同社の製品戦略などについて説明を行なった。本レポートでは午前中に行なわれたAmerican Airlines Group CEO ダグ・パーカー氏、同社長のロバート・アイソム氏の講演についてお伝えしていきたい。
航空事業は変革期を迎えており、常に自分自身を変革しなければ生き残れない
American Airlines Group CEOのダグ・パーカー氏は、2013年に同社と合併したUS AirwaysのCEOを8年間務めていた。存続した会社がアメリカン航空であるため、US Airwaysが買収されたように聞こえるかもしれないが、実態としてはその2013年の段階では規模は大きいが財務的には課題があったアメリカン航空をUS Airwaysが救済したという形の買収だったため、US AirwaysのCEOだったパーカー氏が現在アメリカン航空のCEOを務めている形になっているのだ。なお、パーカー氏は、2005年まではUS Airwaysに買収されたAmerica West(アメリカの西海岸を中心に運営されていた航空会社)のCEOを務めており、会社合併の度により大きな会社のCEOになっているという珍しい経歴の持ち主でもある。
パーカー氏は「航空事業は変革期を迎えており、航空会社は常に変革していかなければ生き残れない。将来に向けて投資をして前に進まなければならない」と述べ、航空会社の役割も変わり続けており、航空会社自身が常に変わっていかなければ生き残ることはできないとした。そして、2013年にUS Airwaysと合併して以降は順調に黒字を確保していることを紹介し、「ほかの航空会社でこんな順調な業績を実現しているところはない」と述べ、合併後のアメリカン航空が健全な航空会社として運営されていることを強調した。
そのうえで「我々のハイレベルの戦略としては、ワールドクラスの製品を提供し、効率、将来を見通して戦略を作ること、企業文化と競争力の強化に取り組んでいく」と述べ、そうした基本的な戦略に基づいて、新しいビジネスクラスやプレミアムエコノミーといった製品を強化したり、従業員と変革に向けた企業文化を共有してサービスなどでもイノベーションを実現していくとした。
ハブ&スポークのビジネスモデルは強みになる、ULCCに対抗する料金“エコノミー・ベーシック”を導入
パーカー氏のあとに登壇したAmerican Airlines Group 社長 ロバート・アイソム氏は、パーカー氏の講演を受けて、同社の具体的な戦略などに関して説明した。
アイソム氏は、ロサンゼルス、フェニックス、ダラス・フォートワース、マイアミ、シャーロット、ワシントンDC、フィラデルフィア、ニューヨーク(JFK)などのアメリカン航空のハブ空港を紹介し「アメリカンのビジネスモデルは、ハブ&スポークモデル。ビジネス市場に強いところにハブ空港を持っており、それが強みとなっている」と述べた。
ハブ&スポークモデルとは、自転車の車輪の中心(ハブ)に例えられる拠点空港(ハブ空港と呼ばれる)と、車輪の外周に例えられる遠隔地空港をスポークで結ぶ、航空会社のネットワーク構築の方法のことを意味している。遠隔地の空港の顧客はスポークをたどってハブ空港に到着し、そこで目的地までの別のフライトに乗り換えることで、どこからでも目的地にたどり着くことが可能になる仕組みになっている。
アイソム氏は「ハブ&スポークは、何も国内だけではない。JFKで乗り換えてロンドンのヒースローへ向かうことも可能だ。欧州にはブリティッシュ・エアウェイズや、イベリア航空、アジアならJAL(日本航空)やキャセイ・パシフィック航空などのパートナーと協力してネットワークを構築しており、中国では新たに中国南方航空とのコードシェアをまもなくスタートする。そうしたパートナーの協力でネットワークは拡大しており、我々だけで350の目的地に、1050の直行便を飛ばしており、3万5000の市場をカバーするし、そうしたパートナーのフライトも入れれば、990の目的地に、2800の直行便、5万の市場をカバーする」と述べ、JALなどとのパートナーシップでカバーされるエリアは広がっていると述べた。
その具体的な例として、同社がダラス・フォートワース空港(DFW)からロサンゼルス空港(LAX)まで飛ばしているAA2480便について例に挙げ、DFW-LAX間のみを利用する乗客は49%に過ぎず、残りの51%はハブ&スポークで、ほかの空港から、またはほかの空港へと利用する乗客とのこと。アイソム氏は「我々がカバーできる市場はLCC(Low Cost Carrier)の8倍で、ULCC(Ultra Low Cost Carrier)比較では48倍になる。ローカルマーケットだけに依存せずで、ワールドワイドにアクセスを提供している」と述べ、LCCやULCCと比較した強みを説明した。
また、従来のレガシーキャリアは、ファーストクラス、ビジネスクラス、メインキャビンと3クラスのみを提供してきて、ビジネスクラスとメインキャビン(エコノミークラス)の間にある大きな差を埋めてこなかったと説明し、今後同社は既に一部で導入が進んでいるプレミアムエコノミー、メインキャビン・エクストラ、ベーシックエコノミーといった新しいクラスやサービスを広げていくとし、アイソム氏は「ベーシックエコノミーでは、ULCCが提供できないサービスを提供するが、価格は同じにする」と、Wi-Fiやスナック/飲料、さらには欠航時の対応などのサービスを提供しながらも、ULCCと同じ料金に据え置くことで競争力を高めていくと強調した。なお、メインキャビン・エクストラは、席はメインキャビン(通常のエコノミークラス)と同じながら、シートの前後ピッチなどを広くした席のことになる。
ワイドボディ機へのプレミアムエコノミーの導入を推進、2018年末には100%を目指す
アイソム氏はボーイング 787-9型機を機材として利用しているフライトに設定され始めているプレミアムエコノミーについても触れ、メインキャビンよりも広い前後ピッチで、フットレスト、アメニティキット、大型のモニターなどの特徴を備えており、現時点(2017年第3四半期)で保有しているワイドボディ機の26%に設置されているという。アイソム氏によれば、同社はその割合を今年の第4四半期中に76%、2018年の第1四半期中に88%、2018年の第4四半期中に100%のワイドボディ機(双通路機)にプレミアムエコノミーを搭載していく計画だと説明した。
上級クラスになるビジネスクラスでは「Flagship Business」のブランド名でシートの強化が行なわれているほか、ファーストクラスは「Flagship Fast」、さらにはファーストクラスラウンジとなる「Flagship Lounge」もすでにニューヨークのJFK空港と、シカゴ空港に設置済みで、今後マイアミ、ロサンゼルス、ダラスが今年の第4四半期に、そしてフィラデルフィア、ロンドン・ヒースローが時期は未定ながら設置予定だと説明した。アイソム氏は「こうした取り組みにより、顧客満足度は上がっており、特にビジネスユーザーが増えている」とし、ビジネスクラスなどのプレミアムキャビンの売り上げが上がっていると説明した。
その結果としてアイソム氏は「我々の売り上げは業界標準を上回っている。2016年はどのエアラインも昨年比で減少したが、今年は上昇傾向にある、第4四半期はさらによくなるだろう」と売り上げ増に貢献しているほか、定時運航やロストバゲッジの減少など信頼性も向上していると説明した。
さらにアイソム氏は、メンテナンス体制の見直し、さらにはCA(客室乗務員)の交互乗り入れ(AAとUS AirwaysそれぞれのCAが相互に移動できるようになる制度の導入)が2018年からできるようになると説明し、保有機材のうち469機を退役させ、新しく496機のデリバリーを受けたとして、その結果、平均機齢が10年になったと説明した。従来からある機体、例えばボーイング 777-200型機などに関しても内部のインテリアのアップデートなどを行ない顧客の満足度を上げる取り組みや、ボーイング 737-800型機やエアバス A321型機などの従来からある機体のシートを新しくすることで、シート数を増やしてかつ顧客の快適度を上げることができたことなどが説明された。