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JAL、ダイバーシティ推進や働き方改革を目指す「なでしこラボプロジェクト」の第2期研究発表会

2017年7月6日 開催

第2期「なでしこラボプロジェクト」参加メンバー

 JAL(日本航空)は、JALグループ全体でダイバーシティ(多様性)推進や働き方改革に関する研究に取り組む「JALなでしこラボ」を2015年に発足し、公募・推薦されたメンバーで約1年間研究を進める「なでしこラボプロジェクト」を実施している。

 その第2期メンバーによる発表会「なでしこフォーラム」が7月6日に開催され、JALグループ各社から集まった28名が、各7名ずつ4チームに分れ、1年間研究に取り組んだ研究成果を発表した。

 また、研究発表の第1部のあとに実施された第2部では、アクセンチュア 取締役会長 程近智氏が講演。同社の働き方やダイバーシティへの取り組みを紹介した。

今年度の総括「なでしこフォーラム」を東京・天王洲のJAL本社で開催した

研究から施策へ。メンバーは職場の“渦”になることを期待

日本航空株式会社 代表取締役専務執行役員 大川順子氏

 研究発表会の開催にあたり、「JALなでしこラボ」担当役員である大川順子氏が挨拶し、第2期が取り組んだテーマ「バイアス(偏見)」の難しさについて言及。試行錯誤した第2期メンバーを労った。

 また、研究だけで終わらさず施策へ落とし込むことの重要性に触れ、「メンバーには研究成果を各社に持ち帰り、職場に“渦”を作ってもらいたい。全社的に考え方をしっかり浸透させ、結果的には研究と実践が女性の活躍やダイバーシティの実績につながるようにしていきたい」とコメントした。

 続いてJALなでしこラボ事務局からこれまでの歩みを解説。JALなでしこラボは2015年に「JALグループ一丸となったダイバーシティの推進」を目的に発足。JALグループ国内41社がそれぞれ女性活躍推進のための数値目標を定め、進捗管理、意見交換のためのミーティングを実施。JALグループ共通の目標として2023年度までに女性管理職比率20%を目指しており、現在の比率は16.3%になっているという。

 そして「なでしこラボプロジェクト」は、「JALグループの社員がいきいき働ける会社にするためには何が必要か研究を進めるためのプロジェクト」であると紹介。第1期は、「意識」「ポジション」「継続性」をテーマにそれぞれ3つのチームが研究。提言内容はそれぞれ、「意識」チームは女性が長く働き、管理職を目指していくという意識やマインドを持つためには、ジョブローテーションや複数人から長所を集めたロールモデルを形成することが効果的と結論。

「ポジション」チームは女性が管理職になる壁になる原因の1つがコミュニケーション不足と分析し、それを解消するための朝活を提案した。

「継続性」チームは社員が長く会社で働くには介護の問題と向き合うことが重要で、みんなで支える介護を目指す、とそれぞれの結論をおさらいした。

 第2期では、新たにテーマを「バイアスとビジョン」と設定して研究を進めるとともに、第1期の提言を社内で実行していくチームを新設し、具現化を担ったと紹介。これから行なわれる各チームの研究発表へ期待を語った。

JALなでしこラボ事務局からこれまでの歩みを解説
1期は「意識」「ポジション」「継続性」をテーマに3チームが取り組んだ

【TAKE OFFチーム】「1期研究テーマの具現化」とその改善を担当
新たに「介護チャーター」の実施を提言

 研究発表会では、まず第1期の研究内容の実現を担った「TAKE OFF」チームから開始。第1期の提言は、「朝活」「管理職パネルディスカッション」「仕事と介護の両立のための施策」の3つ。これら提言に対してTAKE OFFチームがどう取り組んだかが発表された。

TAKE OFFチームの研究課題は「1期研究テーマの具現化」
TAKE OFFチームは第1期の提言を実践へ

「朝活4ケ条」を制定、カフェスペースを導入

 まず「朝活」。朝活は朝行なう10分程度の簡単なブリーフィングであり、コミュニケーションの場を提供するのもの。第2期ではまずこの朝活の現状調査を実施した。

 朝活が浸透している部署に対して理由を深掘りし、「メンバーが共通の目的を持って参加する」「コミュニケーションの必要性をメンバー全員が認識する」ことで朝活がより浸透するということが分かったという。

 そこで朝活のルールを定めた「朝活4ケ条」を制定し、朝活ポスターを作成。全員が共通の目的を持って進められるよう広めていきたいとのこと。

 また、朝活にカフェスペースを導入して、より会話しやすい環境を作り出すことができたという。今後はマンネリ化しない工夫をしながら朝活を実施していくとともに、社内イントラで成功事例を紹介していく。職場内のコミュニケーションを活性化し、上司と部下との信頼関係が構築されることによって壁を乗り越えていけると考えていう。

「朝活4カ条」を制定、朝活ポスターを提示
朝活にカフェスペースを導入

「管理職パネルディスカッション」を実施

 次に「管理職パネルディスカッション」では、私生活とキャリアアップの両立、および部下への配慮と組織の業績向上の実現をしている理想の管理職3名が登壇し、それぞれ異なるキャリアを積んできたパネリストからリアルな話を聞くことで、管理職をより身近に感じることができたという。9割以上の参加者がロールモデルとして参考になったと回答した。

 今後は、各個人のライフステージに特化したロールモデルも求められていることから、ターゲットを絞って複数回実施していくことや、一般職に限らず今回参加が多かった管理職も対象としていく。

「女性が目指す理想の管理職像とキャリアアップ」をテーマに実施
ロールモデル形成の一助となった
管理職から部下へのアプローチ方法についても検討

仕事と介護の両立セミナーを実施、「介護サポーターバッジ」を配布

 最後に「仕事と介護の両立のための施策」。介護の基礎知識を習得するために外部講師を招き、仕事と介護の両立セミナーを実施。セミナーでは「介護サポーターバッジ」を配布し、介護について感心がある人、介護者を理解する人、寄り添う気持ちがある人に、自発的に着けるものとした。

 しかし実際に着けている人は4割と判明。整備士など安全上の理由で着けていない人が6割いたことから、今後はステッカーなども検討したうえで、引き続きセミナーなどで配布して拡散に取り組む。

 さらに、JALグループ専用の介護ガイドブックを作成。JALグループの勤務形態に合わせたケーススタディや、実際に介護経験のある社員からのメッセージを盛り込むなど“自分ごと”にしやすい内容。意識面から取り込むことで、1人で抱え込む介護から、みんなで支える介護へ変えるための施策だという。

介護セミナーを実施し基礎知識を向上
介護サポーターバッジを作成し配布
ステッカーなどに変更してバッジを着けられない職種への対応を検討
JALグループ専用の介護ガイドブックを作成、配布

リハビリのモチベーションとなる「なでしこ介護チャーター」の提案

「なでしこ介護チャーター」を提案

 また、さらに社会に対して、なでしこらしい貢献を検討。実際に介護を受ける人の生の声を聞くため、デイケアサービス施設である「早稲田イーライフ社」を訪問。この施設では早稲田大学とともにシニア向けの運動プログラムを作成し、運動習慣を身につけることを目指しているという。しかし、スタッフからは、施設に通う人の健康維持の目的・目標が明確にないと、なかなかモチベーションが保てないという声を聞いたという。

「介護を受ける方が目標を持つこと」の大切さを知り、「なでしこ介護チャーター」を提案。「皆さん、本当は旅行に行きたいけれど、家族に迷惑がかかるから、体力に自信がないからと、行きたい気持ちを隠しながらリハビリに励んでいます。もしもう一度旅行に行けるなら温泉に行きたいという声が多くありました。チャーターフライトを実現し、シニアの皆さんの夢を実現させたい。どうか皆さんの力を貸してください」と締めくくった。

TAKE OFFチームのメンバーとなでしこラボ担当役員

【360チーム】「オンとオフの好循環」を研究
“蛍の光”の曲で定時退社を推進、「かえるクリップ」で退社時刻を宣言

 続いて、2期の研究テーマ「バイアスとビジョン」に取り組んだ3グループがそれぞれ発表。「バイアスとビジョン」から着想を得た研究を発表した。

 チーム名は「360度の視点」が由来。物事はいろいろな角度から見てこそ本質が分かることから、360度の視点を持とうと名付けられた。発表テーマは「オンとオフの好循環」。「誰もがやりがいを持って長く働き続けたいと思う会社にする」というビジョンだ。

事務局から3チームが取り組んだ「バイアスとビジョン」について解説
360チームの研究課題は「オンとオフの好循環」

約4000名にアンケート調査。休暇取得の後ろめたさの原因は「思い込み」

 時間よりも生産性を重視した働き方へシフトする必要があることから、急務となっているワークスタイル変革。JALグループでも「年休100%取得」や「残業ゼロ」が目標だが、現実は難しいと感じている人は多いという。

 そこで、JALグループ全社員を対象としたアンケートを行ない、約4000名から回答を得た。その中から、オフが大事だということは理解しているが実際に取れていない人が半数近くいることが判明。

 この現状にバイアスがないかを検証。例えば「オフを取るのに後ろめたさを感じる」人は50%いたが、残業している人は定時退社する人に対して70%以上の人がよい印象を持っていた。周囲の人が年休を取得することをよいと思っている割合も90%以上。つまり後ろめたさの原因は「思い込み」であり、休暇取得を後ろめたく感じる必要はないと結論付けた。

アンケート結果では約90%が残業をよいとは思っていなかった
後ろめたさの原因は「思い込み」であるとアンケートで可視化

定時退社時間のBGMに「蛍の光」。時間管理表の共有で「オフの見える化」

 この思い込みバイアスを取り払うため「定時退社時間のBGM」を提案。チームメンバーの部署で、定時退社の時間に「蛍の光」を流して帰宅を促したところ、約80%の人が「帰りやすくなった」「定時退社の意識が高まった」と回答し、これが、後ろめたさを感じる「思い込みバイアス」に効果的であると判明したという。

 また、「仕事量が多い、忙しいからオフを取れない」という言動には、定時までに退社したいという強い意識付けが大切だとして、「オフの見える化」を提案。まず時間管理表を共有することによる業務時間・年休を見える化。さらに立て札により退社時刻も見える化した。

 すると時間管理表の導入で90%以上がオフに対する意識が変化。周囲に対する変化も80%以上あった。時間管理表を導入している部署では、70%以上の人が定時退社を実現できているという。現状を維持したり過去のやり方を踏襲したりするバイアスを取り除き、結果として仕事が多くて帰れないという思い込みバイアスに効果的であることが分かったという。

時間管理表や立て札でオフを見える化
オフに対する意識に変化があった人は94.3%

退社時刻を記入する「かえるクリップ」を提案

 さらに立て札による見える化を多くの人に実践してもらえるよう、より親しみやすくより気軽に使える「かえるクリップ」を提案。自分の退社時刻を記入し、PCなどに付けられるようにしている。通常は緑色で、ちょっと残業するときは黄色、緊急時や長時間残業の場合は赤色といった3パターンの色を使い分けることで、周囲からの状況が把握しやすくなるという。

 これによりお互いの時間に配慮でき、みんなが気持ちよく円滑に退社できる環境、風土作りを実現できるとした。

PCやデスクに取り付ける「かえるクリップ」を提案

オンとオフの好循環にはバイアスを変えることが第一歩

 こうしてバイアスに対する施策で時間意識を高めて業務効率を上げれば、オフの時間が増える。オフを取り、十分な休養を得ることで、心身の健康を維持することができ、仕事の活力へとつながるという。さらにはオフで得た経験によって新たな発想が生まれ、視野が広がり、仕事へと活かされる。

 このオンとオフの好循環には、まずは自分自身のバイアスを変えることが大切だとし、「誰もがやりがいを持って長く働き続きたいと思う、そんな会社へと発展していきましょう」と締めくくった。

オフの時間の拡大が「オンとオフの好循環」を生む

不要な仕事は上司と見直し、生産性を上げる

 発表後の質疑応答では「本当に仕事量が多いケースもあると思うが、それに対するアプローチは?」との質問に対して、アンケートでは「不要と思いながらやっている仕事があるか」という問いに50%以上が「ある」と回答していたという点を挙げ、その業務に対して本当に必要か、上司と業務のすり合わせが必要だとの考察を述べた。

 自分が不要だと思っていても上司が必要だと思っているケースはあるため、そのズレがある状態で仕事をしているのは生産性がわるい。そこは今後も深掘りする必要があると回答した。

360チームのメンバーとなでしこラボ担当役員

【虹の架け橋チーム】「自己成長(自立)」を研究
「JAL Bias」を認識し、「バイアスノート」でポジティブ発言を習慣化

 チーム名は、さまざまな文化や価値観を持つ人が、それぞれの色を輝かせながら同じビジョンを持つための架け橋を私たちが作りたい、という思いが込められたもの。発表テーマは「自己成長」。「JALグループ社員一人一人がキラキラ輝きながら働く」には自己成長が重要と考え、現状分析を実施。すると共通したバイアスが浮かび上がったという。

虹の架け橋チームの研究課題は「自己成長(自立)」

「JAL Bias」をあぶり出し。「考え方のクセ」を認識する

 浮かび上がったバイアスは、「上からの意見に影響されやすい」「前例にとらわれ変化を好まない」「与えられた範囲内でしか働かない」「自分がやらなくても誰かがやってくれる」「同調を好み目立つ言動を慎む」などの共通した現状分析結果を「JAL Bias」と名付けた。

 このJAL Biasを理解したうえで、一人一人が自己成長していくためには何が必要か議論し、人には何かを判断するときバイアス、つまり「考え方のクセ」が影響するということ、そのことを一人一人が認識することが重要ではないかと結論付けた。

現状分析でJAL Biasを探った
自己分析による「JAL Bias」の項目

ワークショップを開催。しかし行動に結び付けるのは難しい

 そこで、より多くの社員に考え方のクセを知ってもらう場の提供としてランチ時間を使ったワークショップを開催。今まで正しいと思っていた判断も、考え方のクセがあることを意識したうえで、物事を考えたり、行動したりすることの大切さを伝えた。

 しかし、1カ月後に追加アンケートを行なった結果、考え方のクセに対する意識醸成にはなっているものの、実際にクセを弱めるような行動を取ったのはわずか16%だった。

「バイアスノート」を作成し「ポジティブ発言の習慣化」を目指す

 行動に移せない原因は「誰かがやってくれる」というバイアスが影響しているのではないかと考察。そこで、まずはチームメンバーたちが行動してみることにしたという。自分自身の考え方のクセから出るネガティブな発言を、ポジティブな発言に変えるための「バイアスノート」を作成し、「ポジティブ発言の習慣化」を目指した。

 例えば「マニュアルに書いていないので……」という発言を「やってみてもいいですか?」と記入して利用しているという。こうしたポジティブ発言を継続して実施していくために職場の仲間にも同様の施策を実施してもらい、その後、行動に変化があったのかアンケートを実施した。アンケート結果からは、施策の効果が認められたとのこと。

 これらの施策を通じ、自己成長には自分の考え方のクセを意識したうえで、そのクセがもたらすネガティブな発言の改善と、それを継続していくための意識付けが重要であることが分かったという。

 この行動は、誰かがやってくれるのを待つのでもなく、周囲を変える必要もなく、自分自身でできることだと解説。「皆さんも小さな一歩ですが、口ぐせから一緒に変えてみましょう」とコメント。

 最後に、この研究活動を通じたメンバーの成長が各部署の上司から動画で語られ、「遠慮がちだったが、素の状態が活かされている」「前向きに課題を解決するためにはどうしたらよいかという着眼点を持つことが多くなった」などのコメントが寄せられた。

ポジティブ発言の習慣化のため「バイアスノート」を作成
バイアスだと気が付いたことをバイアスノートで変換
自己成長には気付きのあと、言動の改善と意識の習慣化が必要
各部署の上司からメンバーの成長をコメント
虹の架け橋チームのメンバーとなでしこラボ担当役員

【ドーナツの穴チーム】「JALグループのいきいきの素」を研究
働く仲間それぞれのモチベーションの種類を確認、適切な働きかけを推奨

 チーム名は、「ドーナツの穴はドーナツの一部か?」という疑問を通じて、一番大切なビジョンを見失わないようにと名付けたもの。テーマは「JALグループのいきいきの素」。これは家族や知人など身近な人々と、社員自身へのイメージ調査を実施したところ、社外からはポジティブな、社内からはネガティブなイメージが目立ったことから、社員がいきいきと働けていないのではないか、その要因は何かを調査。「全社員でモチベーションを高めあい、いきいきと働けるJALグループを作る」というビジョンを掲げて研究を始めたという。

ドーナツの穴チームの研究課題は「JALグループのいきいきの素」

モチベーションを上げる原動力には5種類ある

 モチベーションを上げるには、原動力となる自己効力感が5つ存在するという。ドーナツの穴では、それぞれが持つ自己効力感を分かりやすく「いきいきの素」と名付けた。


    1.代理経験:人ががんばる姿や成功する姿を見て自分もそうなりたいと思うこと
    2.創造的体験:自分が課題を克服する姿やこうしたいと想像すること
    3.生理的情緒的高揚:自分自身にご褒美を与えることでワクワクすること
    4.言語的説得:期待を言葉で伝えたり励ましたりすること
    5.達成経験:自分自身が成功体験を重ねること

 役職別にこの「いきいきの素」を調べた結果、役職が上がるほど「3.生理的情緒的高揚」の割合が上がる傾向が増え、「2.創造的体験」が減っていると分かったという。一方、職場別に見ると、パイロット(運航乗務員)やCA(客室乗務員)など専門性が高いほど「1.代理経験」の割合が特に高い傾向にあったという。このように役職や職種によってもモチベーションの種類は違うという傾向があり、複数持つ人や状況で優先度が変わる場合もあるという。

モチベーションを上げる5種類の原動力を「いきいきの素」と名付けた
個人の「いきいきの素」を調査。役職が上がるほどいきいきの素が変化すると判明
職場別に見ると専門性が高いほど代理経験がモチベーションになると判明

適切な方法を間違えるとかえってモチベーションは下がる

 具体的には、例えば職場のモチベーションを上げようと飲み会を開くと、いきいきの素が「3.生理的情緒的高揚」の社員はやる気につながるが、そうでない社員にとってはモチベーションのアップどころかかえって下げることにもなりかねない。

 一方で「4.言語的説得」がいきいきの素の社員に新たな業務を与えた場合、何も言わなければ、社員はただ仕事を振られただけと感じるかもしれないが、そこに上司から「君だからこそ任せられるんだよ」の一言があるとやる気になるという。

 モチベーションを上げるときに普通はこうするだろうという先入観、つまりバイアスが潜んだ考え方をすると、相手のいきいきの素にあてはまらないアプローチをしてしまうことがあるとした。

いきいきの素は各個人で違う。適切でないと逆効果に

「『いきいきの素』を知りシェアしよう」と提言

 チームのメンバーが所属する部署で、職場の仲間にお互いが持ついきいきの素を予想したところ、6つの職場での的中率は平均で32%だったという。日々一緒に働く仲間でも、お互いのいきいきの素の認識にはズレが生じる。このズレを生む思い込み、「バイアス」の存在に気付くことが大切だとした。

 そこで、「『いきいきの素』を知りシェアしよう」を提言。チームでは実際にこれを行ない、実体験することができたという。自分の持ついきいきの素をシェアし、周りの人はそれを受け入れ、相手がよりいきいきするようなアプローチをすることで相互作用が生まれていく。

 チームでは会場で「みんなでモチベーションアップ」の用紙を配布。朝活やチームミーティングでの活用を勧めた。「モチベーションを高められれば、ネガティブなイメージがポジティブに変換できます。みんなでいきいきと働けるJALグループを作っていきましょう」と締めくくった。

同じ職場の仲間でも相手のいきいきの素への思い込みがあると判明
それぞれで違ういきいきの素をシェアし、多様性を認識・受容することがダイバーシティにつながると解説
ドーナツの穴チームのメンバーとなでしこラボ担当役員

総評で語られた「JAL Bias」と自立の重要性

JALなでしこラボ所長 植田英嗣氏

 各チームの発表が終了し、JALなでしこラボ所長 植田英嗣氏が講評を述べた。

「メンバーはバイアスとビジョンという非常に難しいテーマに取り組んでくれた。各チームについての補足として、TAKE OFFチームは第1期の提言を前進させてくれた。特に今回作成した介護ハンドブックは非常に役立つので、ご家族で目を通してほしい。介護チャーターについては、第3期にバトンをつなぎたい。

 360チームは、ワークスタイルについて取り組み、『思い込み』の存在をあぶり出してくれた。『申し訳ありませんが』という前置きがいらない定時退社を実現していきたい。

 虹の架け橋チームは『JAL Bias』という絶妙なネーミングで考え方のクセを語ってくれた。

 ドーナツの穴チームは、研究内容を分かりやすく伝えることの葛藤をずっと続けてきた。最後に悩んだ結果、分かりやすく伝わったと思う。今日の発表の場が、社員一人一人が勇気を得るきっかけとなってほしい」と語った。

JALなでしこラボ統括責任者の日本航空株式会社 代表取締役社長 植木義晴氏
介護チャーターの実施や「JAL Bias」について言及した

 続いて、JALなでしこラボ統括責任者である同社 代表取締役社長の植木義晴氏から総評が語られた。

「TAKE OFFチームのなでしこ介護チャーターはぜひやろう。やる気になればきっとできる。

 大賞をあげるなら虹の架け橋チームの『JAL Bias』の指摘。『指示待ち人間』『前例主義』『事なかれ主義』、これを解消するには自分で物を考えて自分で決めること。それぞれのポジションにあった責任や覚悟を持って自分の意思で進めることだ。

『下足番を命じられたら、日本一の下足番になってみろ。そうしたら、誰も君を下足番にしておかぬ』(阪急グループ創業者 小林一三氏)という言葉がある。それをただの仕事で終わらすか、日本一の仕事にするかどうかは、自分で決めること。僕は達成経験はモチベーションにならない。達成した瞬間にもう次の夢を見てるから。だから僕のモチベーションは将来への夢だ。いい発表をありがとう」と語った。

第2部ではアクセンチュア会長の程氏による講演を実施

アクセンチュア株式会社 取締役会長 程近智氏

 第2部の冒頭では代表取締役副社長執行役員 藤田直志氏から挨拶があり、アクセンチュアの程氏との出会ったきっかけや「どんな仕事でも将来必ず意味がある。今の仕事に一生懸命打ち込むことが大切」と語った。

 アクセンチュア株式会社取締役会長の程近智氏は、数多くのシンポジウムやビジネス会議での講演、早稲田大学や上智大学での講義を担当。今回は「挑戦する組織とリーダーの役割」というタイトルで講演を実施。同社の理念や働き方、ダイバーシティへの取り組みなどを紹介。リーダーには十人十色のリーダーシップスタイルがあり、「すべての出会いには意味があり、すべての経験は糧となる」と締めくくった。

「挑戦する組織とリーダーの役割」というタイトルで講演を実施

なでしこラボプロジェクトが社員の意識改革のきっかけに

JALなでしこラボ事務局 中丸亜珠香氏

 発表会の終了後、JALなでしこラボ事務局に第2期のプロジェクトについて伺った。中丸亜珠香氏によると、プロジェクト立ち上げのきっかけは、女性活躍推進やダイバーシティの取り組みを広く社員を巻き込んで行なうためだったとのこと。

 第1期は女性活躍に特化したテーマで、女性社員の意識や管理職登用の壁、就労継続に左右されることなどについて「意識」「ポジション」「継続性」というテーマで研究が行なわれた。

 その結果、第1期の最後に施策や阻害する要因について発表できたが、そのプロセスのなかでコミュニケーションや意識、周囲の理解などマインドの部分に課題があると浮き彫りになったという。そこで第2期では「バイアスとビジョン」というテーマが選ばれたとのこと。

「就労継続」などの具体的なテーマと違って「バイアス」という、ある意味哲学的なテーマの研究には苦労はあったが、それぞれ形になり発表できたと認識。自分にバイアスがあると理解して、どう行動していくか、自分がどうあるべきかを考えるきっかけになったと語った。

 今回の研究で、事務局としてはダイバーシティの根元にたどり着いたと認識しており、制度やツールの導入は会社が用意できるが、意識は本人が気が付かなければ変わらず、そのきっかけを今回作れたとの評価だった。

 第3期でこれをさらに深掘りするのか、違う方向にするのかはこれから検討していくことになるが、この気付きのすそ野を広げ、より実践につなげていきたいと語った。

 1年を通じて「なでしこラボプロジェクト」の取り組みを取材したが、社長直轄の部署として設置されることで翼を得た「なでしこラボ」のメンバーたちが、大きな組織の中で変革へのスモールチャレンジを実践し、結果を導き出したことが伝わる発表会だった。