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リニューアルオープンするサントリー「武蔵野ビール工場」改め「〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野ブルワリー」を見学
予約制の見学コースには工場直送ビールの試飲も
2017年3月13日 00:00
- 2017年3月14日 リニューアルオープン
家族や友だち同士で行く気軽なレジャー先として人気の工場見学。東京近郊にも一般からの見学を受け付けているところはいくつかあるが、なかでも東京都府中市にあるサントリーの「武蔵野ビール工場」は、東京都内で唯一、ビールの製造工程を見学できる。さらにビール好きな人からの人気が高い「ザ・プレミアム・モルツ」の発祥の地ということで、2016年は約10万人の見学者が訪れた人気スポットだったが、2017年2月1日から施設改装のため見学コースは休止されていた。
しかし、いよいよ3月14日に再開。この日はサントリーが全国のビール工場の名称を「サントリー〈天然水のビール工場〉」と切り替える日で、武蔵野ビール工場は「サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野ブルワリー」となる。さらにこの日は新しい「ザ・プレミアム・モルツ」発売日でもある。
今回のリニューアルはこれらの事柄に合わせたもので、施設内の作りを新しい「ザ・プレミアム・モルツ」のイメージに変更していたのだった。
さて、この見学コースの再開を心待ちにしている人は多いと思うが、今回は一般公開に先駆けてメディア向けに施設、ガイドツアーの公開と、この工場で製造する新しい「ザ・プレミアム・モルツ」の製法などについてのセミナーが開催されたのでそれらを紹介していこう。
東京・武蔵野ブルワリーは東京都府中市にあり、平日、祝祭日もガイドツアーを開催している(工場休業日、年末年始は除く)。ガイドツアーへの参加費は無料だが予約制になっているので、いきなり訪ねても見学はできない。事前にサントリーWebサイトの見学ツアー・セミナーのページから申し込むか、東京・武蔵野ブルワリーの工場見学予約電話番号へ連絡する。なお、1日4回ほどガイドツアーは行なわれているが、各コースとも定員が「40名まで」と決まっているので、満席の場合は予約できない。ガイドツアーの所要時間はビール製造の行程見学と見学後の試飲までで約70分だ。
「サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野ブルワリー」ガイドツアー
所在地:東京都府中市矢崎町3-1
営業時間:9時30分~17時(年末年始、工場休業日を除く毎日)
費用:無料
予約受付TEL:042-360-9591(受付時間:9時30分~17時)
Webサイト(予約可能):サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野ブルワリー
さて、駅前を出発したシャトルバスだが、5分ほど走って東京・武蔵野ブルワリーへ到着。正門前にはさっそくガラス張りの「ザ・プレミアム・モルツ」の製造現場が見えるが、ガイドツアー受付は敷地内を進んだところにあるので、シャトルバスは敷地奥へと入っていく。正門から受付のある建物までの距離はわずかだが、大きな建物に囲まれた敷地内は外の道とは雰囲気が大きく違う。それゆえに「普段は入れないところに入った」というワクワクした気分が得られると思う。
ガイドツアー用の入り口を入ると正面にあるのがガイドツアー受付とサントリービールの歴史を解説するフロア。ここも今回のリニューアルで新しくなったところで、入ってまず目に入るが「ザ・プレミアム・モルツ」を立体的に表現している壁面模型。ガイドツアー時の記念撮影ポイントでもある。
フロアには工場直送ビールやここでしか買えないオリジナルグッズなど土産物を扱うショップもあるが、ここも店構えを一新、高級感のある「ブルワリーショップ」として生まれ変わった。なお、ブルワリーショップはお店のみの利用も可能で、お店での買い物だけならば予約は必要ない。東京・武蔵野ブルワリー正門で「ブルワリーショップへ行く」と伝えればよいとのこと。営業時間や営業日はガイドツアーと同じとなっている。
ビール醸造家によるビール作りのこだわり講座を聞く
入り口フロアからエレベータで2階へ上がるとツアーの出発点となるが、今回はツアーに入る前に「ザ・プレミアム・モルツ」の歴史や作りを紹介するセミナーが、サントリービール サントリー〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野ブルワリーで醸造技師長を務める久保田寛氏の解説で行なわれたので、その内容の紹介しよう。
まず最初はプレミアム・モルツの歩みについてだが、このビールの開発は「世界でいちばん飲まれているピルスナービールの最高峰を造りたい」という気持ちが出発点だったとのこと。そして開発を開始してから約10年かけて、2003年に最初の「ザ・プレミアム・モルツ」が完成したという。
ちなみのサントリーでは、ビール作りにおいて、単に醸造の技術を持っているだけでなく、自然の恵みである原料や酵母の特性を見極め、それらのよさを引き出して狙う美味しさを作り出せることができる技術者のことを「ビール醸造家」と呼んでいる。久保田氏もその一人だ。では、その久保田氏からの解説についてはスライドの写真と一緒に紹介していこう。
「ザ・プレミアム・モルツ」には、二条大麦麦芽とダイヤモンド麦芽という2種類の麦芽が使われている。そのうちのダイヤモンド麦芽はビール大国のチェコで作られる稀少な麦芽で、長所はタンパク質が豊富というところ。そのためビール作りにおいて素晴らしい品種と言えるそうだが、この麦芽は非常に硬い構造で、含まれるうまみ成分、コク成分を簡単に手放してくれないという一面も持っていた。
そこでこれを技術的に解決することが求められたのだが、サントリーが採用した製法が「ダブルデコクション製法」というもの。これはビール製造において伝統的に使われている製法でもあって、麦汁の一部を仕込み槽から仕込み釜に移し、高温で煮込むことを2度繰り返す製法のこと。この煮出すを英語に置き変えると「decoct」なので、この方法をデコクションと呼んでいるという。
デコクションを行なうことの利点は、麦芽由来の成分を非常に効率よく抽出することができ、さらにその成分に熱を加えることができることが挙げられる。このときの熱反応によってうまみ成分、コク成分に変わってくれるとのこと。
ただし、同じ行程を繰り返すダブルデコクション製法は、一般的な製法より時間がかかる面もあり使用する蒸気量も多くなるので、実はコスト的には採算が合わないところもあるという。
しかし、サントリーはビール作りのプロとして、プレミアム・モルツをきちんとプレミアムなものに作りあげたいという気持ちからダブルデコクション製法を採用しているということだった。ちなみに東京・武蔵野ブルワリーのガイドツアーでも見どころはやはりこのダブルデコクション製法のための仕込み槽と仕込み釜だ。
ビール作りについての講義で、最後に語られたのが水について。ビール作りに使用する水もこだわりを持っていて、サントリーは昔からビールには天然水を使っている。汲み出しているのは深層地下の天然水。この層の地下水は森や林に降った雨が地中深くに浸透する途中で、土や砂、粘度などを通過するときに不純物だけでなく、ニオイもろ過されているため、素材の特徴を出すうえでとても効果があるという。
こうした作り込みを行なったうえで完成したのが新しい「ザ・プレミアム・モルツ」とのこと。今回は発売前に特別に試飲させてもらえることができたが、実は筆者はとくにビール好きでもなく、普通の感覚しか持っていない人間だが、素直に「美味しい」という印象で、このあとの仕事がなければもう1杯いただきたいところだった。
新しい「ザ・プレミアム・モルツ」は「何度飲んでも飲み飽きない味わい」ということも目指しているとのことだったが、まさにそれを体験した感覚だ。
さて、セミナーのあとは製造工程を見学するガイドツアーだが、ここは見学の順序に沿って写真で紹介していこう。見学コースは最後に階段があるが、あとは平坦フロアを移動するものなので、子供からお年寄りでも気兼ねなく参加できるはず。
また、見学後は「ザ・プレミアム・モルツ」が試飲できる時間も設けてあるのも楽しみの一つ。純粋にビール作りの現場を見たいというのはもちろん、工場直送でなおかつその場でグラスに注いでくれる「ザ・プレミアム・モルツ」を目当てにガイドツアーに参加するのもいいと思う。
【お詫びと訂正】初出時、分倍河原駅の路線の記載に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。