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「第14回 ANAテレマート応対コンクール」開催
2016年のテーマは「お客さま一人ひとりによりそって」。顧客からの電話への応対品質を競う
2016年11月15日 00:00
- 2016年11月10日 開催
航空会社のサービスにおいて、利用客からの国内線、国際線、マイレージクラブに関するさまざまな問い合わせや予約を電話で受けるコンタクトセンター。ANA(全日本空輸)グループの場合はANAテレマートがこういったサービスを担っており、東京、札幌、福岡、長崎の4つの拠点でANA利用者からの問い合わせに答えている。
ANAテレマートでは毎年応対品質の向上を目指して、「ANAテレマート応対コンクール」を行なっているが、11月10日、羽田空港の第1旅客ターミナルにあるギャラクシーホールにて、第14回を開催。ANAテレマートの9部門、札幌国内グループ、札幌AMC(ANAマイレージクラブ)グループ、東京国内グループ、東京国際グループ、東京AMCグループ、福岡国内グループ、福岡国際グループ、長崎国内グループ、長崎国際グループからそれぞれ選出された9名が競技に参加した。
「第14回 ANAテレマート応対コンクール」では、これまでより筋書きなしの実務に近いルールに
コンクールでは利用者からの電話を模した音声に選手が応対し、その応答スキルが競われる。国内線、国際線、AMCでは応対する内容が違ってくるため、それぞれの部門状況で異なる設定が定められたうえで行なわれた。なお設定内容は、国内線では「座席指定について」、国際線では「搭乗手続きに関する問い合わせ」、AMCでは「AMC会員の事後登録」となる。
また、これまでは事前に部署内で応対の筋書きともいえる「スクリプト」を作成し、それに基づいての電話対応が競われたが、今回の競技ではスクリプトは作成せず、選手はより通常の業務に近い形で競技が行なわれた。なお、コンクールにおける評価基準は以下の6項目。
1.最初の挨拶:笑顔が伝わる挨拶であったか
2.聴く(聴き取る力) :問い合わせ内容を受け止めながらお客さまのニーズや状況をキャッチできていたか
3.応える(説明する力、提案する力):回答は手際よく的確で説明は分かりやすかったか
4.ANAらしさ(共感する力) :受容の姿勢があり、感謝の気持ちにあふれていたか
5.最後の挨拶:お客さまに配慮したクロージングで感謝の気持ちが伝わったか
6.接客用語基本要素:お客さまにあわせたスピードで、航空会社の応対としてふさわしい用語遣いであったか
いよいよANAテレマート応対コンクールがスタート
「第14回 ANAテレマート応対コンクール」は、ANAテレマートの代表取締役社長である梶田恵美子氏の挨拶からスタート。梶田氏は「私はコミュニケーターという仕事は顔が見えないなかで声だけで心情を察し、お客さまの満足を追求する超一流のコミュニケーション力と人間力を磨ける仕事だと言い続けています。
日々、コミュニケーターはお客さまと向き合い、学び、相互研鑽をし、そして自己研鑽を続け、ANAブランドを感じていただけるようお客さま満足に向け努力しています」と話し、「鍛え抜かれた者の表情は美しいと言いますが、本当に皆さん、キラキラ美しい表情をしています」と選手たちにエールを送った。
来賓代表としてANAの代表取締役社長である篠辺修氏は「我々グループのなかで3つある「3大トーナメント(テレマート、グランドスタッフ、客室乗務員)」の1つであり、最も老舗であるわけで、かつお客さまの最初の接点になるところであります。したがって顔が見えない分、言葉ですべて、あるいは言葉の音色ですとか雰囲気がすべてになりますので、別な意味の難しさがあるかと思います」と挨拶。
その後、東京支店 国際グループの李玉婷選手が選手代表として宣誓を行ないコンクールがスタート。競技では選手が壇上のデスクで入電を受け対応を行なう形だ。着席してヘッドセットを装着すると、放送で電話内容が流れ競技が始まる。
9名すべての応対が終わり、最終審査が行われている間、ANA@deskサポートとグローバルコンタクトセンターによるデモンストレーションが行なわれた。
ANA@deskとはANA国内線法人様向けインターネット出張手配システムのこと。ANA@deskサポートでは、ビジネスで国内線を利用する顧客や、チケットを手配する社内担当者の予約や端末操作などについての問い合わせを受けている。
今回は問い合わせのなかで最も多い、領収書に代わる証票の発行について、国内線予約案内センターへ着信、その後、ANA @deskへ転送し対応するという設定でデモンストレーションが行なわれた。
また、グローバルコンタクトセンターはANAグループのグローバルなサポートを行なうために昨年開設され、24時間、世界中のどこからでも問い合わせが可能な窓口となっている。デモンストレーションでは英語による応対が披露された。
デモンストレーションのあとは審査員による講評へ。ANAの取締役 常務執行役員である志岐隆史氏は、「全体のレベルがすごく高くて、採点する方も大変という状況だった」と話しつつ、全選手の応対についての感想を述べた。
また、ANAエアポートサービスの代表取締役社である峯尾隆史氏は「空港というのはお客さんが目の前におります。目の前にいますから“察してくれ”という気持ちが大きいんですが、なかなか察するというのは非常に難しいんですね」と話し、「今日、皆さんの普段の状況を見ていて、察しても分からなければ聞けばいいんだ、と。『ご不明な点がありますか』『ご心配な点はありますか』ということを最後につけ加えるだけで違うということを今日、学ばせていただきました」と電話応対から得たサービスの気づきについて語った。
優勝は札幌AMCグループの金佳代子氏
講評のあとは休憩を挟んでいよいよ結果発表へ。3位が東京支社 AMCグループの松田彩氏、2位が札幌支社 国内グループの宍戸なほみ氏、1位に札幌支社 AMCグループの金佳代子氏が選ばれた。
今回優勝した金佳代子氏は「正直、信じられません。よくオリンピックのメダリストがメダルを取ったときに、周りのサポートしてくれた人たちに感謝をしているという場面を見ますけれども、その気持ちがとってもよく今分かります」と話し、練習に協力し応援に来てくれた仲間に感謝の意を述べた。
社外審査員であるプロシード コンサルティング事業部のシニアコンサルタントである数矢英子氏は、「私もこのような場に出たことがあったのですが、スクリプトがあり、すべて準備されていました。でも、真っ白になって何を言っているのか全然分からなかった」と話したうえで、今回、スクリプトなしで応対を行なった9名を称賛した。
また、数矢氏は9名の評価についても述べた。3位の松田彩氏については「お客さまの温度感をしっかりとらえた応対で、自然な会話感があったと思います。コミュニケーションの満足度がとても高い応対」と話し、2位の宍戸なほみ氏については「お客さまの温度感を理解して会話を進めていくことができ、ここが納得感と安心感につながったところだと思います。お客さまに合わせた案内や提案がスムーズにできていて、電話をかけてよかったと思わせる応対だと思いました」と話す。
そして、1位の金佳代子氏については「ニーズや状況の理解が素早く、『私がサポートできる』と伝えることで安心感につなげています。テキパキ感や温度感を相手の属性に合わせて伝えている工夫も感じ、やりとりの会話感があってコミュニケーションの満足度も非常に高かったです。内容とコミュニケーション、双方で非常によかったと感じました」と話した。
最後に、ANAテレマートの常務取締役 東京支店長である大野隆司氏が登壇。「審査をしていただきましたが大変難しかったのではないかと。まるでアメリカ大統領選挙のように激戦の戦いではと思います」と締めくくった。
激戦だった今回のコンクール。終了後、入賞した3名にどのような練習をしたのか話を聞いた。優勝した金佳代子氏は「みんなに笑顔でなく“笑声”を伝えられるように、録音して自分の応対を耳で聞き、それを修正するという練習をしました」と、自分の話し声を客観的に聞くことで心地よい声での応対を目指したという。
2位の宍戸なほみ氏は「簡単な設定をいただいていたので、その設定から想定されるお客さまとの対応をいろいろ自分たちで考えて、それに対して私がどのようにお答えするかっていうことを、積み重ねていきました」と、対応のシミュレーションを行ない、なおかつ実務においても顧客との応対でベストな対応を考え積み重ねていったとのこと。
3位の松田彩氏は「緊張してしまったり、スムーズに言葉がついてこなくなったりしていたので、いかにいつもどおりやるかを周囲にサポートしていただいた」と、日ごろのパフォーマンスを競技で出せるように努力したそうだ。
最後にANAの篠辺社長とANAテレマートの梶田社長にも話を聞いた。篠辺社長は「今回は、朝の紹介にあったようにスクリプトを読むんじゃなくてハードルは高かったんですが、レベルは私が思っているより高かったですね。(点数を)付けていましたが、困りました。大したもんだ」と話しつつ、「お客さまに喜んでいただくというのは、まずスタートのコミュニケーションでいい気分になって、カウンターへ行って、安心してチェックインされて、機内で快適に飛行機が定時に飛ぶ、全部クオリティの話です。
で、『クオリティがよければアンタのところを選ぶよ』とこうなります。運賃というのは競争で決まりますので、ウチだけが高い、ウチだけが安いというわけにはほとんどいきませんから。そうなると何が差になるのかというとクオリティですよ」と話し、サービスの質が顧客に選ばれるポイントであることを強調したうえで、電話応対サービスの質を向上させるためのコンクールであることを話した。
梶田社長は今回のコンクールについて、「一番はお客さまの状況、背景というものをしっかりとつかみながら一つ一つ自分の言葉で説明やお客さまの心情に察した、共感する言葉ということが言えていたことが一番素晴らしかったです」と今回のコンクールのテーマであった「お客さま一人ひとりによりそって ~つぎもANA いつもANA~」が実践できていたと語った。