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JR西日本、豪華列車「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の食を監修する「食の匠」
(2016/3/17 12:41)
- 2016年3月16日 発表
JR西日本(西日本旅客鉄道)は3月16日、2017年春よりJR西日本管内を中心に周遊運行を予定しているクルーズトレイン「TWILIGHT EXPRESS 瑞風(みずかぜ)」で料理を監修する「食の匠」と呼ばれるシェフとパティシェを紹介する記者発表会を開催。食に関する思いを語った。また、プロジェクトの進捗の説明もあり、会場には制作途中の車両模型が展示されていたのでこれらも紹介する。
TWILIGHT EXPRESS 瑞風は、上質さと心休まる懐かしさを感じさせる「ノスタルジック・モダン」をデザインコンセプトとした豪華列車で、京都駅、大阪駅を始発駅として山陰山陽方面への運行を予定している。ディーゼル発電機による電力と、バッテリーアシストによるモーター駆動のハイブリッド方式で走行。展望デッキと展望室を備える機関車が先頭車として前後に配置され、その中間に寝台客車6両と食堂車1両、ラウンジカー1両が連結された10両編成。そのうちの1両は、1両すべてを使った特別なスイートとなっている。車体色は、トワイライトエクスプレスの伝統を受け継ぐ「瑞風グリーン」で塗装される。車両の詳細については、弊誌記事「JR西日本、クルーズトレイン『TWILIGHT EXPRESS 瑞風』の車両デザインを発表」でも紹介しているので参照してほしい。
発表会の冒頭、プロジェクト責任者のJR西日本の取締役兼常務執行役員 営業本部長 堀坂明弘氏が、「いよいよ来年(2017年)春に『TWILIGHT EXPRESS 瑞風』は運行開始を予定していて、今のところ着実に進捗しています。製造中の車両はすでに瑞風の外観が現れつつあり、一部の車体はトワイライトエクスプレスの伝統を受け継いだ『瑞風グリーン』の塗装が完了しています。また、流線型のフォルムと、往年のボンネット型を彷彿とさせる運転室が特徴でもある先頭車両も、先日塗装が始まりました。車両を彩る地域の伝統工芸品も、地域の皆様と議論を重ね検討中です。瑞風は、沿線の魅力を発信していく、従来までやってきたものにはない役割を担った列車であり、地域の皆様と一緒に考え、地域の皆様のご期待に添える形にしていきたいという、熱い思いで検討を重ねています。本日紹介する食事は、26年間運行し、社内で調理したフレンチのディナーが好評を頂いていた『トワイライトエクスプレス』の伝統を受け継ぎ、『瑞風』ならではのお料理を提供していくよう、『食の匠』の皆様と一緒に沿線での食材の視察や食器の選定などをして、料理提供に向けた取り組みを鋭意重ねています」と挨拶し、車両製造や食の選定状況の報告があった。
クルーズのプランは、瀬戸内側を京都~大阪~倉敷~岩国~下関と走る「山陽コース(下り/上り)1泊2日」、日本海側を大阪~京都~城崎温泉~東萩~下関と走る「山陰コース(下り/上り)1泊2日」、瀬戸内側と日本海側を周遊する「山陽・山陰コース(周遊)2泊3日」の5種類が用意される。1日1回の立ち寄り観光があり、観光先は運行開始後に随時見直される。2泊3日の山陽・山陰コースでは、立ち寄り観光地での食事も検討している。
食堂車では、フードコラムニスト門上武司氏がプロデュースし、「食の匠」が監修した沿線の多彩な食材を盛り込んだメニューが、車内のオープンキッチンで調理されて提供される。
続いてフードコラムニスト門上武司氏が登壇し、「このTWILIGHT EXPRESS 瑞風が走ることによって、西日本の持つ魅力を多くの方に知っていただけるものと思っております。提供される食事に対して“西日本の香り”を存分に味わっていただきたいと思います。実は“香り”は、一瞬にして時間や空間を飛び越えてしまいます。味の記憶はほとんどが、香りなんです。この香りは“懐かしさ・優しさ・爽やかさ”を感じる重要なものです。西日本の持っている香り、食材、空気感の研究を重ねました。そこで食堂車はオープンキッチンにして、厨房からの香りやライブ感を感じてもらえるような作りにしています。これから紹介する食の匠は、今というもの、これからの時代を的確に感じ取る力を持っています。西日本の魅力や食材について精通しています。そういった方々を推薦いたしました」と挨拶した。
門上氏に続いて料理を監修する7人の「食の匠」が、一言ずつコメントを添えて挨拶した。京都の老舗料亭「菊乃井」3代目主人 村田吉弘氏は、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風が走る地域の美味しい食材を少しずつ提供していきたい。揺れる列車の中で苦労しますが、鍋を提供していきたい。てっさ、てっちり、蟹、のどぐろ、ここでしか食べられないような地産地消の料理を考えています」とコメント。
世界を代表する100人のシェフ「100 chefs au monde」にも選ばれる、レストラン「HAJIME(ハジメ)」オーナーシェフ 米田肇氏は、「列車の厨房という制約があり、内容はまったく異なるのですが、こんなにも美味しい料理ができるんだということを実現していきたいと思います。揺れる列車内で精度を出す困難をクリアしたい」とコメント。この2人が監修する料理は、すべてのコースで食べることができ、朝食はどちらかを事前に選択することになる。
ここから紹介する4人は沿線エリアで活躍するシェフで、選択するコースによって提供される食事は異なる。広島のフレンチレストラン「Le Jardin Gourmand(ル・ジャルダン グルマン)」オーナーシェフ 小山賢一氏は、「“田舎の日曜日”というテーマを考えました。担当は山陽コース下り2日目のランチで、お客様は前日にレストランHAJIMEのディナーを召し上がっているので、また違ったスタイルで、新しい美味しさや楽しさを提供できればと思っています」とコメント。
1901年に駅弁から始まり、今では広島県宮島の名物料理となった「あなごめし」の老舗「あなごめし うえの」4代目主人 上野純一氏は、「あなごめしを始めて116年が経ちます。今回は少し“おこげ”にこだわって準備いたします。子供の頃は、6升の大きな鋳物の平釜でご飯を炊いていました。そこに醤油だまりの味の濃い“おこげ”ができたものです。この“風味・香り”を感じていただける、お弁当とはまた違ったあなごめしを味わっていただければと思います。調理道具を作り込んで、熱々を提供したい」とコメント。
島根県松江市のフレンチレストラン「Le Restaurant Hara au naturelle(ル・レストラン ハラ・オ ナチュレール)」オーナーシェフ 原博和氏は、「お皿の上から山陰の自然、食材の瑞々しさ、生産者の情熱や思いを伝えることを目指したいと思っています。山陰は食材の宝庫です。生産者とお客様の架け橋になれればと考えています」とコメント。
島根県益田市で地元食材を活かした料理を提供するレストラン「Re staurant BONNE-MAMAN NOBU(レストラン ボンヌママン ノブ)」オーナーシェフ 上田幸治氏は、「地元生産者にスポットがあたり、地域が元気になれる手伝いができればと思います。今回周辺生産者の方々とお会いし、改めて地域の魅力を感じました。同じ思いで、運行開始までのワクワク感、運行開始後の嬉しさを共有したいと思いました。田舎だからこそ、都会にはない魅力がたくさんあると思っています」とコメント。
最後に、ティータイムを担当する「PATISSIER eS KOYAMA(パティシエ エス コヤマ)」オーナーパティシエ 小山進氏が、「西日本から世界が驚くようなものを、お客様が最高の満足を感じていただけるようなものを提供していきたいと考えています」とコメントした。
食堂車は窓が大きくとられ、車窓に流れゆく雄大な自然を眺めながら、ゆったりと食事を満喫することができる。ライブ感あるオープンキッチンであることは決まっているが、具体的なメニューや厨房設備の決定などはこれからになる。着実に進んでいるTWILIGHT EXPRESS 瑞風プロジェクトを今後も見守っていきたい。