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航続距離746km、トヨタの新世代EV「bZ4X」で東京~神戸を充電なしで一気に走行。電費9.4km/kWhを記録したロングドライブ性能を体感!!

神戸といえば夜景。一充電走行距離746km(WLTCモード)と航続距離が向上したトヨタ bZ4X(ビーズィーフォーエックス)で神戸までロングドライブしてみた

 クルマでロングドライブへ出かけるとき、不安になることはなんだろう。

 長距離運転での疲れや眠気、休憩ポイントがあるかどうか、渋滞や事故に巻き込まれないか……。でも例えば、これが電気自動車だったとしたら? おそらく多くの人がまずは「充電への不安」を挙げるはずだ。

 しかし、最近の電気自動車事情は大きく変わってきている。買い物や通勤メインで航続距離短めのコンパクトな電気自動車もあるが、大きなバッテリー容量を確保して、充電効率も高まって長距離移動への不安が少ないクルマも登場している。

トヨタ bZ4Xは大幅な改良で航続距離が最大746kmに

 なかでもミドルサイズSUVのトヨタ bZ4X(ビーズィーフォーエックス)は、2025年10月に一部改良を実施、WLTCモードの一充電走行距離が、バッテリー容量74.7kWhのFWDモデル(Z FWD)では700kmを超えている(Z FWD:746km、Z 4WD:687km、G FWD:544km)。

 車両本体価格も480万円~600万円とこれまでより下がっており、ここにさらに国の補助金(CEV補助金:bZ4Xで90万円、2026年1月1日以降は130万円)やエコカー減税、グリーン化特例、さらに地方自治体の補助金が加わると、同等サイズの内燃機関やハイブリッドのSUVと肩を並べて検討できるようになってきた。いよいよ「自分の生活に電気自動車という選択肢はありかも」と考える人が増えるのではないだろうか。

 私自身、近年の電気自動車にはとても興味があり、そのなかでも一部改良で大幅な進化を遂げたトヨタ bZ4Xにはじっくり乗ってみたいと思っていた。今回、新しいbZ4Xに乗る機会を得たので、せっかくだから遠出してみようと考えたのだ。

 試乗車はZ FWDモデルで、一充電走行距離は746km(WLTCモード)。ルートを考えているときに「東京から神戸までの約530kmの距離なら、途中の充電なしでも行けちゃうかもしれない」と思い立ち、思い切って“東京~神戸間無充電チャレンジ”の旅へと出かけてみることにした。

2025年10月に改良を行なったトヨタ bZ4X。ハンマーヘッドデザインを強調したエクステリアに
写真は航続距離746kmを誇る「Z FWD」(消費税込みメーカー希望小売価格550万円)

 まず、新しいbZ4Xを目の当たりにしてみて、エクステリアは、プリウスやクラウンにも採用されているハンマーヘッドデザインがより強調されてスタイリッシュになっていると感じた。車内に乗り込むと、インテリアはとてもシンプルでクリーンな雰囲気。インストルメンタルパネルは水平基調になっていて、真ん中には14インチの大きな液晶パネルが設置されてナビやクルマの情報がとても見やすい。

ボンネット内のフロントeアクスルは、最新のユニットへと進化。これにより航続距離が大幅に伸びた
装着するタイヤは235/60R18

 シートはしっとりとしていて掛け心地がよく、運転席まわりはコンパクトな液晶メーターと立体的なステアリングの作りが航空機のコクピットを思わせる。シフトノブは丸型で、押し込んで回すことで切り替えるタイプだ。めずらしいなと思ったのは、センターコンソールにスマホのおくだけ充電を2台分装備していること。おくだけ充電ができるクルマは増えているものの、2台並べて用意したクルマはめずらしい。室内はシンプルな印象だったが、使い勝手は先進的で洗練されているなと感じた。

水平基調のデザインで整えられたインテリア
視界の広さが快適さにつながっているように思える
フロントシートはエアコンの冷風を吸い込むベンチレーションとシートヒーターを装備
リアシートも前方に向かって視界が開けるようなウィンドウ形状で圧迫感が少ない
スマートフォンのおくだけ充電を2台分用意しているのがすごく助かる
駐車中に充電してくれるソーラーパネルを装備(オプション)
30Lクラスのスーツケースなら4~5人分が収まる余裕のラゲッジスペース
ラゲッジの下には充電用ケーブルを収納している
AC100V 1500Wを取り出せるアクセサリーコンセントも

 出発前、普通充電器で満充電にした状態から電源ボタンを押してみると、メーター内には航続距離632kmと表示されていた。これまでの電費によって低めに反映されているのかもしれないが、これでも神戸までは十分たどり着けそうだ。

出発前のバッテリー残量は100%で、航続距離は632kmと表示されていた。カタログ数値(746km)と異なるが、これは外気温やエアコンの使用状況など、実際の走行条件により変化するため

 少し走り出してみて、すぐに「こんなに気持ちがよいクルマだったかな?」と驚いた。新しいbZ4Xは、各モデルの出力を向上しており、試乗車のZ FWDモデルはシステム最高出力が165kW(224PS)まで引き上げられている。どこからでもスムーズに加速できる感覚はさらに強くなっており、なにより車内が圧倒的に静か。一般道を走っている限りは、外音がほとんど聞こえないと言ってもいいほどで、まるで小さなシェルターのなかにいるようだ。

 そして、ステアリングを切り始めてからの応答性がとてもよく、自分が思い描いたとおりにコーナリングしてくれるところも心地がよい。以前のbZ4Xも快適なクルマだったが、さらにそこにクルマとの一体感と運転する楽しさが加わったような感覚がある。

午前9時ごろに都内を出発
代官町から首都高へ上がる

 高速道路へと入ったときにも、モーターならではのトルクフルな加速感のおかげで合流や追い越しもスムーズに行なうことができた。神戸までの往路は電費チャレンジということもあって、左端の走行車線を約80km/hで巡航することにした。この日は天気がよく、冬にも関わらず気温も15℃前後あったので、暖房もシートヒーターも入れることなく走っていくことができた。

 高速道路に乗ってからは快適そのもので、bZ4Xは直進性高くスイスイ進んで行く。東名から新東名へと合流し、流れが落ち着いてからは前車に追従するレーダークルーズコントロールと車線の中央をキープするレーントレーシングアシスト(LTA)を作動させて、bZ4Xにサポートしてもらいながら、さらに距離を伸ばして行った。約40km/h以下の渋滞のエリアに入ると、自動でAdvanced Driveモードに入り、かなり疲労が軽減されたので助かった。

トルクフルな加速感で合流・追い越しがスムーズ
撮影日は、12月とは思えない気温15℃の暖かさだった

 途中、東京から神戸まで約半分くらいの距離の浜松SAに入ってみると、充電はまだ67%も残っており、ディスプレイが表示する航続距離も418kmと、たっぷり余裕があった。また、試乗車にはソーラーパネルが付いており、駐車中に充電されるので、お昼ご飯を食べて戻ってみると、さらに航続距離が約10kmプラスされ、429kmになっていた。「これなら神戸まで全然大丈夫」と自信を持って再スタートできた。

 今度は、編集スタッフに運転を代わってもらい、後席にも座ってみることに。後席は、足元も頭の上の空間も広々としていて、シートバックの角度が変えられるうえに、シートヒーターも完備している。Cピラーには小さな窓があり、この少しの空間でも景色が見えることで、後席の圧迫感が少ないように感じた。車内の静粛性がとても高いので、前席と後席で会話が明瞭にできるところもいい。これなら家族や友人とロングドライブに出かけても、快適に楽しく過ごせるに違いない。

東名~新東名と乗り継ぎ、快調に西へ向かう
途中、渋滞に掴まることも……
キレイな夕焼けを見ながら。神戸まであと少し

 bZ4Xは、自分で運転していても、誰かに乗せてもらっていても変わらずとても快適なので、ロングドライブがあっという間に感じられた。気づけば、少しずつ夜の帳が降りてきて、神戸付近の高速道路を降りると港町らしい風景が広がっていた。海のグラデーションと港町の明かりが交わる夕暮れはとても美しく、つい見惚れてしまう。

「あと一息」と、クルマを走らせると、真っ赤に輝くかわいらしいタワーが目に入った。「神戸ポートタワーだ!」なんと本当に無充電で神戸まで来ることができてしまった。そのすぐ向かいにある宿泊地の神戸メリケンパークオリエンタルホテルに到着し、メーターを確認してみるとバッテリーは21%も残っており、残り航続距離は123km、通算平均電費は9.4km/kWhと表示されていた。

 ただし、この通算平均電費だが、東名高速 浜松SAで撮影のために一度リセットしており、そこまでの表示は11.8km/kWh。走行距離と電費表示から計算すると電費10.3km/kWhとなり、10km/kWhを超える状況で走っていたようだ。

往路の浜松SAで撮影のために平均電費を一旦リセットしたが、そこまでの表示は11.8km/kWhだった

 正直、ここまで走ってきて「充電大丈夫かな」と心配するシーンはほとんどなかった。万全を期して、80km/h走行で暖房オフにしていたものの、そこまで制限しなくても神戸までたどり着けたかもしれない。途中休憩で昼ご飯を食べたので、その間にSAで急速充電を1回でもしておけば、さらに何の問題もなく到着できたはずだ。内燃機関やハイブリッドのモデルでも、500kmを越えるロングドライブなら30分以上の休憩を一度は取るはず。さらに、宿泊している夜間に普通充電しておけば、寝ている間にバッテリーは満充電になって、翌日はそのまま観光に行けてしまう。そう考えると、見知らぬ土地でガソリンスタンドを探して給油するよりも、ずっと楽なのではないかと思えてしまった。

すっかり日も暮れて19時少し前に到着
東京からの走行距離は519.7km、東京~神戸の通算平均電費は9.4km/kWhだった。メリケンパーク到着時のバッテリー残量は21%で、まだ123km走れるという結果に
宿泊した神戸メリケンパークオリエンタルホテルと神戸ポートタワーを背景に

神戸で夜景とグルメを満喫。2日目は市街地から40分で行ける絶景&アクティビティの六甲山へ

 今回宿泊した「神戸メリケンパークオリエンタルホテル」(兵庫県神戸市中央区波止場町5-6)は、先ほど見つけた神戸ポートタワーにほど近く、神戸港の海の上に浮かんでいるかのように港の切先に建っていた。270度を海に囲まれており、部屋からは神戸ポートタワーや港、そして停泊している船などの美しい夜景を見ることができ、一気に旅の疲れが癒された。

 ディナーは、ビュッフェスタイルのオールデイダイニング「オールフラッグ」へ。開業30周年を記念して2026年1月30日まで「蟹食べ放題 フェア」を開催しているという。せっかくなのでたくさんの美味しいカニを頬張り、ほかにもお肉や季節の野菜を使ったビュッフェをたっぷり堪能。そのあまりの美味しさに「思い切って神戸に来てよかった!」と心から実感した。

宿泊は夜景の美しいメリケンパークの突端にある「神戸メリケンパークオリエンタルホテル」。スタンダード セミダブルルームの「ノースビュー」に滞在した
目の前に神戸ポートタワー。テラスから右を見ても左を見ても神戸の夜景が広がっている
夕食はオールデイダイニングの「オールフラッグ」で蟹食べ放題
思わず無言になって蟹の殻と格闘する……!

 2日目の朝も気持ちのいい快晴になった。朝ご飯を食べにレストランへ向かうと、朝日を浴びて海面がキラキラと輝く絶景が迎えてくれた。夜の神戸もロマンチックで素敵だったが、朝も心が洗われるような海を見ることができて、ますます神戸が好きになってしまった。自分の気持ちもお腹も満タンにして駐車場に向かうと、bZ4Xも夜間にたっぷり充電できたおかげで、観光する分のバッテリーは十分蓄えられていた。

 まず目指すのは、「神戸市立六甲山牧場」(兵庫県神戸市灘区六甲山町中一里山1-1)。神戸市街から約40分で行ける牧場で、道中には登り坂のワインディングロードが続いている。ここでは、改めてbZ4Xの走行性能に驚かされた。

 電気自動車は、床下にバッテリーを搭載するため低重心で、クルマ全体のボディ剛性も高い。その成り立ちだけを見れば、まるでスポーツカーのような特性を持っていることもあって、タイトなコーナーが続く道を右へ左へいとも簡単にクリアしていく。車重は決して軽くないはずなのだが、パワーアップした出力と思ったとおりに応えてくれるクルマの感覚のおかげで、スムーズに気持ちよく走れる印象の方が強かった。急な登り坂も多かったが、まったくパワー不足を感じることなく、グイグイ力強く峠道を登ってくれる姿が頼もしい。

アップダウンやタイトコーナーをものともしない頼もしいハンドリングで峠道も快適に走れた

 六甲山牧場に到着すると、たくさんの羊を発見。なんとその羊たちは広い牧場内で放し飼いにされているのだ。牧場を見学していると、羊がすぐ側をトコトコ横切っていったりと、とても牧歌的で癒される空間になっていた。どの動物も人に興味を示してくれて、こちらが優しく声をかけたりなでたりすれば、人懐こく応えてくれる。スタッフも気持ちのいい方たちばかりで、愛情たっぷりにお世話をしているのが動物たちを通して伝わってきた。

 牧場内にはさまざまなアクティビティがあり、乗馬を体験させてもらえることに。私が乗せてもらったのは「ヤスヒデ」という馬で、牧場内でも大きめでサラブレッド並みの体格をしているとか。おそるおそるヤスヒデさんの背中に跨ってみると、静かに歩き出してくれた。すごく目線が高くて気持ちいい! 温かい馬の背中に揺られながら感じる空気は格別な体験だった。

甲子園球場32.6個分(125.8ヘクタール)という広大な六甲山牧場。写真中央で羊と戯れているのが著者
ヤスヒデさんの背中に乗せてもらう乗馬体験。脚から伝わる馬の体温が優しい
羊たちが思い思いに過ごす敷地は、全体のごく一部、23.4ヘクタールを一般開放している
羊たちは気ままなようで、でも夕方になると自然にめん羊舎へ帰ってくるとのこと
牧場内にはフォトスポットもたくさん
1位・2位を的中させると景品がもらえるシープレース。園内からお客さんが集まってすごい盛り上がりに!

 六甲山牧場にも電気自動車の急速充電器があるということで、そちらで充電をしながら、昼ご飯を食べることに。六甲山牧場では、牧場で育てた牛たちの牛乳を使ったチーズも製造しており、「JAPANナチュラルチーズコンテスト」で準グランプリに輝いたこともあるという。せっかくなのでレストランでもチーズフォンデュを注文。グツグツ煮立った香りのよいチーズにパンや野菜をたっぷりくぐらせて食べてみると……これが絶品! 愛情をたっぷりかけられた動物たちと触れ合うことができ、そして食事でもその恵みをいただくことができて大満足の時間だった。

最大出力240kWの急速充電器
QBBで知られる六甲バターが情報発信の場として牧場内に出店する「六甲山Q・B・Bチーズ館」。その2階のレストラン「神戸チーズ」で絶品のチーズフォンデュをいただいた
1階では新鮮なチーズなどを購入できる。写真の「グラン」は第15回 ALL JAPAN ナチュラルチーズコンテストで準グランプリを獲得、JALの国際線ファーストクラス機内食に採用されたことも

 六甲山牧場から道を下っていくときに、回生ブレーキをコントロールできるパドルスイッチを使ってみた。ここまで、アクセルを離したときの回生の感覚はbZ4Xまかせでちょうどよいと感じていたのだが、下り坂でパドルスイッチを使って回生を強めると、さらに運転しやすくなることに気がついた。

 内燃機関で言えばエンジンブレーキをかけるのに似ており、パドルで4段階まで自由に回生を強めることができる。下り坂の角度に合わせて上手にパドルをコントロールすると、アクセルペダルとパドルスイッチだけで下っていくことができるので、安心感がありながら新しい楽しさも感じられた。

ハンドルの左右にパドルスイッチを備える
パドルスイッチで積極的に回生ブレーキを使うと、峠の下りがさらに楽しくなった

 そろそろ夕方になるというところで、「六甲ガーデンテラス」(兵庫県神戸市灘区六甲山町五介山1877-9)へ向かうことにした。夜景スポットとして人気で、神戸の街並みだけでなく、明石海峡から大阪平野、関西国際空港まで見ることができる。

 六甲ガーデンテラスの標高は約890m。日が落ちて来ると、グンと気温が低くなって、手を擦り合わせるような寒さになってきた。一方で街並みにはポツポツと明かりが灯りはじめ、まるで星のように瞬きが広がり続ける。眼下に広がる夜景は、宝石箱をひっくり返したような輝きに包まれていた。このきらめきを自分のなかになるべくしまって帰ろうと、しばらくその絶景を眺め、ホテルに戻ってからもその光景を思い出しながらゆっくりと眠りについた。

六甲ガーデンテラスには建築家の三分一博志氏が設計した大きな樹のような「自然体感展望台 六甲枝垂れ」が鎮座していた
夕闇が迫ると星を砕いたように街明かりが広がっていった
眼下に広がる神戸の100万ドルの夜景(現在の物価だと1000万ドル?)

復路は新東名で120km/h走行もテスト。実用に近い乗り方で区間ごとの電費を計測してみた

 3日目は、東京へ戻る約530kmの復路。神戸での時間が充実し過ぎて後ろ髪を引かれる思いだったが、最後に神戸湾やメリケンパークの景色を目に焼き付けて出発することに。

 往路とは違って、80km/hでの走行やエアコンの制限はせず、制限速度や交通の流れに乗って、区間ごとの電費をチェックしながら帰ることにした。ここでは、それぞれの区間の電費をデータとして細かく紹介したい。

復路は新東名の制限速度120km/h区間を120km/hで走行

神戸市街~伊勢湾岸道 刈谷PA

 神戸メリケンパークオリエンタルホテルから出発して、刈谷PAまでの区間(約200km)の電費は7.8km/kWh。バッテリー残量は出発時92%(591km)から、56%(354km)まで減少。90kWhの充電器で30分充電し、89%(530km)から再スタートした。

神戸市街~刈谷PAの電費は7.8km/kWh。バッテリーは92%から56%へ
刈谷PAの90kWh充電器で30分充電して89%まで回復

伊勢湾岸道 刈谷PA~新東名 浜松SA

 刈谷PAから浜松SAまでの区間(約80km)の電費は7.6km/kWhで、バッテリー残量は76%(444km)まで減少。150kWh充電器で30分充電し、98%(577km)から再スタートした。

刈谷PA~浜松SAの電費は7.6km/kWh。バッテリーは89%から76%へ
150kWh充電器で98%まで回復した

新東名 浜松SA~新東名 駿河湾沼津SA

 浜松SAから駿河湾沼津SAまでの区間(約130km)は、120km/h制限区間をできるだけ120km/h付近で走行してみた。電費は6.4km/kWhで、残量は74%(436km)まで減少。充電せずに再スタート。

新東名 駿河湾沼津SA~東名 足柄SA

 駿河湾沼津SAから足柄SAまでの区間(約27km)の電費は4.4km/kWhで、65%(376km)まで減少した。90kWh充電器で30分充電し、93%(528km)まで回復。ここから一気に都心を目指す。

御殿場IC付近に東名の最高標高(454m)を示す看板がある
駿河湾沼津SA~足柄SAの電費は4.4km/kWh。バッテリーは74%から65%へ
90kWh充電器で30分。バッテリー残量は93%に

東名 足柄SA~東京都心(秋葉原UDX)

 足柄SAから首都圏までの区間(約102km)の電費は8.4km/kWhで、76%(476km)まで減少。復路はかなりこまめに充電したが、もっと省いてもバッテリー残量の不安なく帰れたはずだ。

足柄SA~都心(秋葉原UDX)の電費は8.4km/kWh。神戸~東京の通算平均電費は7.2km/kWhだった

開発者が語る、新型bZ4Xの魅力

 このロングドライブの後日、bZ4Xの開発者の方に今回の改良への思いを伺うことができた。

改良について、トヨタ自動車の城さんと加藤さんにお話を伺った

MS統括部製品企画 城隼人さん

 今回、新しいeアクスルなどの採用によって、電費を1割以上上げることができたので、神戸へのロングドライブでも安心して乗っていただけたかと思います。eアクスル以外にも空力も改善し、リアのダックテールの部分などで少し電費を稼いでいたりと細かい変更をしています。

 また、「ステアリングを切ったときの反応がよかった」とおっしゃっていただけましたが、前側はボディ剛性を強化して少しサスペンションを硬めにしたことと、ステアリングのギアボックスをボディに直結させたことで操作のダイレクト感につながっていると思います。旧型では「後席の乗り心地がもっとよくなってほしい」というご指摘もあったので、リアサスペンションは少し柔らかくして、コンフォート寄りに仕上げました。

 4WDモデルは342PSと大幅にパワーアップさせたのですが、欧州などは日本より高い速度域の高速道路がありますので、その環境にも適応できるようにという意味合いもあります。また、バッテリーは寒さに弱く、寒冷地では充電速度が遅くなることもあるので、今回バッテリープレコンディショニング機能を備えて、事前にバッテリーを温めることで通常の気温と変わらないスピードで充電できるようになりました。

 さまざまな環境でお住まいの方に安心して、かつ気持ちよく乗ってもらえるモデルになっていると思います。

冬季や寒冷地で事前にバッテリーを温めることで充電スピードを低下させない仕組み「バッテリープレコンディショニング機能」を搭載
トヨタ自動車株式会社 MS統括部製品企画 城隼人さん

国内商品部 加藤廣之さん

 これまで販売の現場では、ハイブリッドモデルをお勧めすることが多く、bZ4Xのよさについてうまく説明できていない部分がありました。

 例えば自宅に太陽光発電を設置している人がbZ4Xを所有すれば、完全にカーボンニュートラルでクルマを動かすことができるわけですよね。これからはトヨタが推し進めているマルチパスウェイの選択肢として、一人一人のお客さまにあわせてそういったご提案もできればと思っています。

 また、今回すごくクルマがよくなっているにも関わらず、一見しただけでは分かりづらい部分も否めず……新しいbZ4Xのよさを分かってもらうために、販売店の代表者を集めて試乗会や研修会も行ないました。自分たちがよいものだと心から感じられればお客さまにもきっとそれが伝わるだろうと思い、それぞれに体感して感じてもらう場を作りました。

 インフラの整備も見直して、ご自宅用として設置してもらうため、トヨタ純正の普通充電器を作り、新充電サービスの「TEEMO(ティーモ)」も立ち上げました。TEEMOは、入会費や月額基本料金は無料で、充電従量のみ支払っていただく充電サービスです。

 また、bZ4Xを購入いただいたお客さまは、TEEMOでの充電は1年間無料(月2回、1回あたり上限30分)となっています。これからさらにお客さまが不安なくbZ4Xをお選びいただけるよう、私たちの方でもサービスを拡大していくつもりです。

トヨタ自動車株式会社 国内商品部 加藤廣之さん

 bZ4Xによる2泊3日にわたる東京から神戸の往復旅。出発する前は「電気自動車で走り切れるの?」という不安はあったものの、一度走り出してしまえば、bZ4Xのトルクフルで思いのまま走らせることのできる気持ちのよい走りと、なかなか減らない大容量のバッテリーに不安はすぐに払拭されてしまった。

 これまで「内燃機関だ」「ハイブリッドだ」「電気自動車だ」と、それぞれ別の乗り物のように区分けしていたが、bZ4Xをじっくり運転し、充電も繰り返し行なってみて、bZ4Xは新しくて心地よいモビリティとして自然と受け入れられるモデルになっていると感じた。

 自分の環境に合わせて電気自動車を積極的に取り入れていく。そんなライフスタイルを選ぶ人が、これからもっともっと増えるに違いない。bZ4Xは、そう確信させるクルマだった。

Photo:高橋学