トピック

北海道・十勝で大自然を放牧中の馬を捕まえるには?

ポルシェ×東大のプロジェクト「LEARN with Porsche」

「LEARN with Porsche」の2日目。メンバーは、真夏の十勝で森の馬小屋を目指す

 ポルシェジャパンと東大が共同で実施した、若者向けプログラム「LEARN with Porsche」の2日目。メンバーは3チームに分かれ、各自計画したルートで新千歳空港から十勝にある「森の馬小屋」を目指す。ただし、設けられた条件は厳しく、スマホなし、予算は1人あたり6000円、階段を含め段差は10段まで、そして13時までに到着しなくてはならない。

 そのチームの1つに同行取材を行なった。

厳しい条件をクリアして「森の馬小屋」を目指せ <2日目>

 2日目は、各グループで前日に設定した自由な時間で出発していく。もっとも早く出発したライオンチームは、6時40分ごろには「電車の出発に間に合わない!」と、猛ダッシュで駆けていった。新千歳から目的地とは少し逆方向に行き、札幌発の長距離バスで移動するためだ。

 2番目に出発したウサギチームは比較的慎重派が多いようで、早朝に「みどりの窓口」で情報収集。乗り換え駅のバリアフリー情報、予算などを係員と相談しながら切符を購入していた。8時少し前あたりにホテルを出る。

一番早い出発のライオンチームは「間に合わない」と猛ダッシュで出発
ウサギチームは出発時間前に一度集合。早朝に「みどりの窓口」で情報収集
「みどりの窓口」では、乗り換え時刻表を印字したものが手に入った
準備万端で予定どおりにウサギチームがホテルを出発

 最後のリスチームは前日にかなりシッカリ下調べをすませている。少し遅めの8時半ごろに出発。記者は、そのままこちらに同行取材させてもらうことにした。

リスチームはもっとも遅い8時半ごろに出発
電車に乗る前に、すぐ近くにあるコンビニで昼食を調達
切符を買うために「みどりの窓口」に向かう。時間はギリギリ。空いててよかった
新得駅までの切符を無事に購入。あとはタクシーで行けるとこまで行く算段

 新千歳空港駅の構内は空港直結駅ということもあり、エレベーターやエスカレーターが完備していて、段差を超える心配はないのだが、電車の乗り口に段差が待ち構えていた。乗りと降りで段差を消費してしまうのは仕方ない。

新千歳空港駅から出発
新千歳空港駅構内はエスカレーターがあるので段差を超える心配なし
おっと。電車にステップがあった

 南千歳で特急電車に乗り換える。ここでは乗り換えでホーム間を移動するのかどうかもポイントになるだろう。下手に動くと階段で段差の制限を超えてしまう可能性もある。

南千歳にて特急に乗り換えるため降車。ステップで段差を消費
降り立ったホームでどうするか相談。どうやら跨線橋にはエスカレーターがあるようだ
時刻表に目的の特急を発見。「ホームに時刻表があるってことはこのホーム発車なのかも」
しかし、どうも電光掲示板に表示されている電車と合っていないことに気がついた様子
となりのホームに移動することにした
となりのホームに分かりやすい時刻表があって、ひと安心

 ホームの時刻表でひとしきりチェックして、となりのホームに移ることに。となりホームには目的の特急の電光掲示の案内などもあり、ひと安心。電車には遅れがあったようだが、コロナ禍で休業中の駅弁販売ブースを見つけたり、雑談したりで、ちょっとリラックス。旅行気分になってきた。

乗車する特急は、10分程度遅れて到着予定のようだ
コロナ禍で休業中の駅弁販売ブースを見つける。「うっわ~。コレ食べたかったなぁ」

 特急「おおぞら3号」釧路行きに無事乗車。新得駅まで、車内でゆっくりできる。車窓には雄大な十勝の自然が広がっていて、しばし見とれる。

特急「おおぞら3号」釧路行き到着
ここでも列車にステップがあった。でもまだ10段以内に収まっている
無事に特急列車に乗車。とりあえず一息
車窓には十勝の雄大な景色が広がっている
ちょっと窓が汚れているが、雄大な自然の眺め
降車駅の新得駅が近づいてきた
無事に新得駅で下車。ここでもステップで段差を消費

 無事に新得駅で特急を降り、予約を入れておいたタクシーに乗り換える。あとは、予算内で行けるところまでタクシーに乗る。さて、どこまで行けるだろうか。今のところ10段までという段差の制限はクリアできている。

新得駅の改札。有人の改札が新鮮
駅のエントランスにはスロープが設置されていた
予約していたタクシーに乗り込む
タクシーに乗車し、新得駅をあとにする
国道38号線を走る
清水町付近。そろそろ近い

 タクシーは国道38号線を右に曲がったところで停まった。ここで予算が尽きたようだ。ここから「森の馬小屋」までは約5km程度。

国道38号線をそれた
ちょうど曲がったところで予算が尽きた模様
ここから「森の馬小屋」までは徒歩だ
「森の馬小屋」までは5kmほど。がんばって行こう

北の自然に囲まれた「森の馬小屋」で初めて見るポルシェは!?

 目的地の「森の馬小屋」は、文字どおり森に囲まれポツンとたたずむ馬小屋だ。馬小屋の眼前には、雄大な北海道の自然が広がっている。数日前には、近くを熊の親子が通りかかったとのことで、注意も必要だ。

目的地の「森の馬小屋」
周囲は雄大な大自然
ふと森の中を見たら馬が放牧されていて、こちらに近づいてきた
わき道には熊の足跡が残る

 一番乗りだったのはウサギチームで、12時前には到着した。途中、体調不良で1名が自主的にリタイアしたが、これはチームの成績には不問。そのあと体調は無事に回復している。

 2着はリスチーム。最後の出発だったが、タクシーでギリギリ近くまで攻めたのがよかったのか、余裕で到着。

 最後は先発したライオンチームだったが、これにはワケがあって、このチームだけ4名体制、監督のスタッフを入れると5名で、タクシーを使えなかったとのこと。結果、徒歩の区間が長くなってしまった。チームとして仲間をサポートする気持ちがこもった立派なゴールだ。

一番乗りはウサギチーム
次にほどなくリスチームも姿を見せる
リスチームも無事にゴール
高速バスを選んだライオンチームもギリギリ間に合う
ライオンチームもゴールした

「森の馬小屋」の一角には、「PORSCHE DIESEL」のプレートがある深紅の古ぼけたトラクターがコレクションとして置かれている。エンジンに火も入らず、使われなくなってだいぶ経つそうだ。

「森の馬小屋」の片隅に置かれた「PORSCHE DIESEL」の古いトラクター
味わいはあるが、古いトラクターを遠巻きに眺める
「PORSCHE DIESEL」と書かれたプレート

自然に生きる馬を自ら捕まえてみろ

 ここからは「森の馬小屋」の主、田中次郎さんの指導のもとで馬と向き合っていくプログラムに入る。ここまでのクループから新たに4つのグループ分けが発表された。

「森の馬小屋」の次郎さんが紹介され、自然のなかから好みの馬を連れ帰ってくるミッションが伝えられる
ここにいるのは自然の馬。危険と隣り合わせ。イヤな人はやらなくてよい

 まず最初に、自分の好きな馬を大自然のなかから探して捕まえて、連れ帰ってくるというミッションが与えられた。「馬に触ってみたい、乗ってみたい人! イヤな人はやらなくてよい」と次郎さんが大声で聞く。

「ここは遊園地のアトラクションではない。馬に振り落とされ踏まれるかもしれない。大丈夫かな?」と確認が入る。
「大丈夫です!」と元気な返答。

「では、森に捕まえに行こうか」と、まずは馬を引くために頭に着ける「無口」という装具の着け方のレクチャーを細かく受ける。

「無口」の扱い方をレクチャー
ここに馬の頭が入るイメージで

 この「森の馬小屋」にいる馬は、よく調教された馬ではない。自由になるべく自然に近い形で放牧されている馬たちだ。そう簡単に言うことは聞いてくれない。次郎さんも基本は教えてくれるが、あとは放任だ。自分で考えながら、解決していかなくてはならない。

 危険な状況になると、結構激しいゲキが飛ぶ。最初は荒っぽさに面くらうが、自然を相手にしていて、常に危険と隣り合わせなら合点がいく。メンバーたちも、最初はとまどいながらも、徐々になじんでいっているようだった。

いざ森の牧場のなかへ。この間もいろいろとレクチャーを受ける
馬がこちらに向かってきた
だいぶ近寄ってくる。後ろ足で蹴られないよう注意

 ちょっと心配していたが、実際に馬に無口を付ける段階では、最初こそとまどってはいたものの、意外にすんなりとできていた。若さからか馬とのコミュニケーションの取り方が上手なようで、すべてのチームが無口を着けて捕まえることに成功した。

あれ? 意外と近くに寄れる
最後のバックルの引き寄せがなかなか難しい
おそるおそる着けようとする
こちらはうまく着けられそう
バッチリ着けられた!
こちらもうまく着いたようだ。うれしそう
ここからの力の入れ具合が難しい
ちゃんと着けられたようだ
無口を無事に着けられたら、馬小屋へ引いていく
これは馬を引き連れて、意のままに動かす訓練でもある
道の途中で、まさに道草を食ってしまう

 無事に捕まえることができたら、馬小屋まで引いてきて、水をあげたり、ブラシでなでてあげたりして、コミュニケーションをとる。これで馬はだんだんとリラックスしてきた。ここで馬との信頼関係をシッカリ得ることは、明日実際にまたがるときに重要になってくるのだ。

馬小屋にてブラシでなでて関係性をよくしていく
各チームとも馬を捕まえることができた
馬はだいぶリラックスしてきている
馬はリラックスしてくると、片方の足を上げるような体勢をとる
思いっきりリラックスして、ほとんど寝ている

 ここまでの馬を捕まえる体験で、メンバーの顔つきから心なしか自信が沸いているように見えてくるから不思議なものだ。明日は、いよいよ乗馬体験を行なう。はたして、馬にまたがることはできるのだろうか。

中邑教授も馬とコミュニケーションをとっている