トピック
紙テープでポルシェ 911 ターボの正確な寸法を調べろ!
ポルシェ×東大のプロジェクト「LEARN with Porsche」
- 提供:
- ポルシェジャパン株式会社
2021年11月5日 00:00
ポルシェジャパンと東大が共同で実施した、若者向けプログラム「LEARN with Porsche」の4日目(最終日)。
行き先を告げられぬまま到着したのは、「十勝スピードウェイ」だった。ここで、レーシングカーとしてのポルシェを実体験することに。好天に恵まれたレースコースでのポルシェの同乗走行体験の様子をレポートする。
子供たちに夢を持つ力を与える「LEARN with Porsche」
ポルシェを測って体感せよ <4日目>
最終日の目的地は「十勝スピードウェイ」。ここなら、レーシングカーとしてのポルシェのパワーをめいっぱい体験することができる。
この日は、レーシングドライバーとしても活躍するモータージャーナリストの山田弘樹さんと藤島知子さんも参加した。
メンバーが到着するころには、すでにピットレーンに「ポルシェ 911 ターボ」が置かれていた。580馬力(427kW)で最高速度は320km/hというモンスターマシン。2500万円という車両価格が伝えられると、メンバーはどよめく。
おそらくメンバー全員、初めてレースコースのピットに入る体験だ。通常サーキットでは、レース関係者以外ピットレーンにはそう簡単に入ることができないので、貴重な体験だ。間近に見る最新の美しいボディラインのポルシェにテンションは上がっている。
そこで中邑教授から告げられたのは、目の前にあるポルシェ 911 ターボを「触れずに限られた身近な道具のみで正確に大きさを測ってみてほしい」というミッション。
計測のために与えられたのは、紙テープと一時的に止めておくために剥がしても跡が残らないマスキングテープ。また、紙テープの幅が約1cmということだけが伝えられる。
前日からのチーム替えも行なわれ、「全長」「全幅」「全高」を計測する3チームに分かれた。全幅はドアミラーを除いた値になる。
もちろん情報機器はいっさい使えないが、身のまわりのものはフルに使って構わない。A4サイズのノートや身長から長さを計測するという工夫をし始めるチームもあった。ペットボトルを水準器にしたり、筆入れを重りにして、下げ振り錘の代わりにして垂直を出したりと、いろいろな工夫に関心しきり。
途中、地面が水平でないという理由から、ピットの中にクルマを置いて、テープが風の影響を受けないように計測作業を行なうことにした。
正確な車体サイズは、車検証に書かれている値で発表された。その結果、以下のような数値となった。
全長: 実測値4556mm、車検証値4530mm、誤差+26mm
全幅: 実測値1928mm、車検証値1900mm、誤差+28mm
全高: 実測値1297mm、車検証値1300mm、誤差-3mm
全幅として計測する一番広い部分は、後輪部分で合っていた。この911はターボなので、通常の911より後輪が太くなっている。
教授チームも全高を測るのにチャレンジしていたが、こちらは1285mm(誤差-15mm)と子供たちが圧勝。しかし、全高を測るグループのメンバーは精度に納得していないようで、「もっと時間があれば……」と悔しがっていたのが印象的だった。
中邑教授からは、「もっと正確に測るためには、複数回測ることが重要。10回測ればいろんな値がでる。それを平均化したものは正確に近くなる。今回のように、正確な物差しがないケースでは、感覚的な誤差が入ってしまうので特に有効だ」というアドバイス。
「本来必要なものがなくても、あり合わせでベストを尽くせることを覚えておいてほしい」と締めくくった。
ポルシェをレースコースで実体験せよ
「さて、このポルシェ 911 ターボ。乗ってみたい人!」
おもむろに中邑教授が聞くと、全員の手が挙がった。
ここからは、モータージャーナリストの山田弘樹さんと藤島知子さんのドライブでサーキット走行を体験する。2人とも肩書きこそモータージャーナリストだが、実際にレースに出場する現役レーシングドライバーでもある。
山田さんは、「とにかく、乗ってポルシェを体感してほしいです。レースコースに制限速度はないけど、(レーシングドライバーは)クルマやコースの限界を感じながら、同時によく考えながら走らせているんです。どう走るべきか感じながら乗ると、今はよく分からないかもしれないけど、あとで理解できることもあると思います」という。
中邑教授も「先ほど、山田さんから車高を2mm下げると変わるって聞いてビックリした。その違いが分かるほど走り込んでいるということです。感性が私たちとは違うんだと思う。そういう世界があるということを体感してもらいたい」と付け加える。
「2mmの差とはいっても、今日の計測みたいに没頭してやっていれば、大きな差として感じ取れるようになるんです」と、アドバイスする山田さん。
体験走行のためピットに移動。
「馬に乗って、ガソリンのクルマに乗ったら、新しい現代のクルマ、EVにも乗ってみたくないか?」と中邑教授が言うのに合わせて、ポルシェ「タイカン」がスーとピットレーンを向かってくる。
ポルシェ「タイカン」は、400馬力を超えるモーターをバッテリーで動かす純粋な電気自動車。最高速度は230km/hで、911 ターボには劣るが、0~100km/h加速は5.4秒(ローンチコントロール使用時)と高速走行が得意なスーパーサルーンだ。
まずは、山田さんがタイカンに、藤島さんが911 ターボのハンドルを握る。メンバーを乗せて、颯爽とコースに向かって爆音をとどろかせて走っていった。山田さんは「そんなに攻めないよ」と言っていたが、わりとしっかり攻めた走りを見せている様子。
ピットに帰ってくると、みんな大喜び。口々に「スゴイ気持ちイイ!」「気分爽快です!」と笑みがこぼれている。
聞いてみると、恐怖はまったく感じず、とにかく気持ちがよいという感想だったようだ。911 ターボとタイカンの違いもしっかり感じていて、911 ターボの加速感やコーナリングの力強さ、タイカンの宇宙船に乗っているような感覚のスピード感と、好評の模様。
未来を担う子供たちに向けて
走行体験の合間には、山田さんと藤島さんから、ポルシェというクルマについて、レーシングドライビングについて、詳しい話を聞くトークショーがあった。ちなみに山田さんはプライベートでもポルシェのオーナーだそうだ。
山田さんは、ポルシェのもの作りの姿勢について話し出した。
「ポルシェを作ったフェリー・ポルシェ博士は、ものを作るエンジニアなんです。フォルクスワーゲン ビートルっていうヒットしたクルマを作り、レーシングカーのポルシェ356を生み出したり、70年以上の歴史があるメーカー。
私は1971年生まれですが、小学生のころにはもうレーシングカーとして有名でした。当時スーパーカブームで、フェラーリやランボルギーニと並んで、小さなポルシェ 911が競ってるというのが原体験にあります。後ろにエンジンを積んでいて、レーシングカーなのに大人が4人乗れて、ガッチリしていて、加速もスゴイ。クルマが好きな人が妥協なくレーシングカーを作ってきたメーカーなんだなと感じます。
ほかのクルマと比べることで、ポルシェの凄さを実感させられます。クルマはそれぞれの国の道に鍛えられるんです。ドイツには、速度無制限の高速道路アウトバーンがあります。そこで300km/hくらいで走るわけですが、速度差がすごいんですね。急加速して、そのあと、急減速することもある。そういった動きをしても抜群な安定感があるんです。
サーキットで同乗したときに、意外と大丈夫って感想がありましたが、ポルシェだからこそこういう走りができるんです。どんなクルマでもできるワケではない。ドイツという国で高い速度域で鍛えられたクルマは、ゆっくり走っても乗り味がよいんです」
ここで中邑教授から、どうして911の形は変わらないのかと質問。
山田さんは「スポーツカーは後輪を駆動させるのが基本。前輪は操舵に徹した方がよいからです。ポルシェは後ろにエンジンを積んで後輪を駆動(現在の911は四輪駆動)させて、大人4人が乗れる。このパッケージでいくと決めてやってきた。スピードを出すと滑りやすくなるが、それを技術でカバーしてきた」と解説する。
藤島さんは「コストを考えるとエンジンを前に乗せて、ほかのクルマと共有した方がよくても、もうそこはやらない。価格が高くなっても、911のブランド価値をずっと守ってきているんですよね」と補足する。
これを受けて中邑教授は、「世の中は、進歩するほど均一になっていく。人も機械も均一化した方が効率はよい。クルマなら安全だし、たくさん売れるだろう。
でも、ポルシェみたいな独自性あるクルマは、どう? 実際に試してみたら、こんなところにこんな楽しめる世界があった。学べる場がもっといろんな場所にあったらいいなと思って、今回こういう場を考えてみたんだ」と、ユニークを発見することの重要性を伝える。
また、特別参加したロボットクリエーターの高橋智隆さんからは、「違ったことをやると、大変な部分と楽しい部分がある。ポルシェは、みんなが喜ぶクルマを作って、普通のメーカーよりも断然儲かっている。売れてるクルマと同じようなものを作って、安くしていっても全然儲からなくなってくる。
ユニークであることは成功できるポイントなんです。こういった素晴らしい体験をして感動をする機会は、学生のうちにまだまだたくさんあるはずです。体験の積み重ねが、次のチャレンジにつながっていく。僕と中邑教先生はそんなことばかり追い求めて、研究や開発に活かしてきたんです。どんどんチャレンジしてください」と励ました。
中邑教授は、「今回参加してくれた人たちは、それぞれが色んな哲学を持っている。みんなバラバラだから、それがよいよね。みんなが同じである必要はない。おもしろそうだから、とにかくやってみようと考えることがとても重要だと思う。目的なんか深く考えずにおもしろそうなことをやってみてほしい」とエールを送った。そして、今回のプログラムは、ポルシェジャパンの多大な協力があって実現できたことに感謝をして締めくくった。
メンバーはみな自信にあふれた表情に
最後にコース上で記念撮影を行なった。これで、すべてのプログラムは完了だ。
印象的だったのは、メンバーがみな、どんどん自信に満ちた表情に変わっていったことだ。日を追うにつれて周囲に慣れてきたということもあると思うが、特に後半では、大人たちに積極的に質問や雑談を話しかけてくるシーンが増えてきた。
森の馬小屋を目指して出発するシーンでは、こちらが「元気出して行こう」とガッツポーズを要求しても反応がイマイチだったのだが、乗馬が上手にできたあたりから、笑顔で感情を表わすポーズも、かなりさまになってきた。そういった雰囲気も記事の写真から感じ取ってもらえると思う。ポルシェ同乗体験後に感想を聞いたときの感情が爆発した笑顔は、初日の空港では想像もつかなかったことだ。
きっとすべてのメンバーにとって、とても貴重な体験になったに違いない。今回の経験がきっかけで、新しいことを始めたり、問題にぶつかったときの解決のきっかけになるはず。