地元誌編集長の「ハワイ現地発」

【ハワイ現地発】スピークイージーバーから寿司屋まで。ハワイ在住編集者が選ぶ、地元民の隠れ家4選

 観光客でにぎわうワイキキも、地元の人々が行き交う住宅街も、ハワイには「知る人ぞ知る」場所がまだまだ存在する。パスワードがなければ入れないバー、看板も出さずにひっそりと営業する寿司屋、近所の人しか気づかないカフェ……。

 今回は、私が地元の友人やフードライターの口コミを頼りに、実際に足を運んで見つけた4軒の隠れ家を紹介する。派手さはないけれど、一度訪れたら誰かに教えたくなるような“本当の穴場”ばかり。次のハワイで立ち寄ってみてほしい。

ザ・ツイン・フィン・ホテルの最上階からの絶景。この1階に隠れ家バーがオープンした

ワイキキのビーチ目の前に、まさかの隠れ家バー「シニスター・スピークイージー」

 1920年代、アメリカの禁酒法時代。人々が声をひそめて(Speakeasy)密かに酒を売買していたことから生まれた「スピークイージー」という言葉。真っ青な海が広がる「ハワイ」とは、正直なところイメージが結びつかないが、ハワイでは「スピークイージーバー」がここ10年でグッと増えた。その最新とも言えるのが、ワイキキのメインストリート、カラカウア通りにこっそり登場した「シニスター・スピークイージー(Sinicestir Speakeasy)」だ。

ザ・ツイン・フィン・ホテルのこのなかに外からは見えないスピークイージーバーがある
シェイブアイス店「シニスター・シェイブ・アイス」がバーへの入り口になっている

 入り口となるのは、観光客でにぎわう「ザ・ツイン・フィン・ホテル」1階のシェイブアイス店「シニスター・シェイブ・アイス」。一歩足を踏み入れても「本当にここで合っているのだろうか」という不安が拭えないのだが、壁沿いを奥へ進むと、ひっそりと扉が現われる。

 この扉を開けるには「秘密のパスワード」が必要となる。入手方法はシンプルで、店のインスタグラムにメッセージを送るだけ。パスワードは定期的に更新されるという。ひと手間かかるものの、こうした“儀式”も隠れ家バーの醍醐味と言えるだろう。

バーの中央にバーカウンターがあり、ここでカクテルをオーダーする
窓の外はカラカウア通り。ヤシの木、海を眺めることができる

 扉の向こうには、想像とはまったく違う空間が広がっていた。隠れ家バーというと薄暗いイメージを抱きがちだが、ここは違う。大きな窓から海が見えるのだ。窓はマジックミラーになっていて、外から中の様子は一切見えない仕組み。店内は思いのほか広く、カウンター席、ソファ席、テーブル席などが用意されている。店のスタッフいわく、「スピークイージーというより、“ビーチイージー”」なのだそう。

 自慢はハワイ産素材を活かしたオリジナルカクテル。著名なミクソロジストが手がけるカクテルには、ハワイ産ラムや特製リリコイ(パッションフルーツ)、ハイビスカスなど、島らしい素材がふんだんに使われている。

 マストオーダーは、アルコール入りの自家製シェイブアイス。テキーラ、グアバ、マンゴーに加え、ハワイの定番であるリヒンムイ(梅干しパウダー)が効いた、ここでしか味わえない一杯だ。

 現時点での営業時間は、水曜~土曜の17時から24時のみ。新しいハワイの夜を体験してみたい人は、ぜひ訪れてほしい。

シニスターリリコイを使用したパライソトロピカルやハイビスカス入りのオーキッドシーフなど(19ドル~)
氷がアルコールに溶けるため試作を繰り返したというシェイブアイスカクテル「Hella Wanted」(32ドル)

昼はカフェ。限定の夜だけ現われるワイキキの幻の寿司屋「寿司大亀」

 ワイキキのもう一つの隠れ家は、あのにぎやかな「インターナショナルマーケットプレイス」のなかにありながら、気づかずに素通りしてしまう「寿司大亀(Sushi Ogame)」。地元のフードライターの友人に教えてもらった一軒で、なんと1階のフードホールにある。日中はカフェとして営業しているこのスペースが、木曜から日曜の夜になると、寿司屋へと姿を変える。カウンター8席、16品125ドルのおまかせコースのみという超穴場だ。

 店の入り口は暖簾(というよりカーテン)で覆われているので、少し勇気がいるが、思い切って開けてみてほしい。

店の外観。このカーテンに囲まれているのが8席のカウンターだけの「寿司大亀」

 すべてを一人で切り盛りする大将の大亀さんは、ニューヨークをはじめとするアメリカ本土での修業を経て、1993年からハワイで寿司を握ってきた。そして2024年、この店をオープン。

おまかせコースより、ウニとイクラの盛り合わせ
ヒラメの昆布締め甘エビ、ホタテ&カラスミのにぎり

 日本米を使った赤シャリに、本マグロをはじめとする新鮮なネタを乗せ、本わさびと煮切りしょうゆでテンポよく握られる寿司は、コストパフォーマンス抜群。あっという間に満席になってしまうため、予約は必須。予約はインスタグラムから受け付けている。

長~い穴子をくるくる巻いたにぎり
とろける中トロなどボリュームの16品

「アラモアナセンターのどこにある?」地元民も探す寿司「Amaterasu」

 続けてもう1店舗、寿司屋を紹介しよう。場所はアラモアナセンターの1階。2024年12月のオープン以来、ハワイ在住の日本人とアメリカ人が、こっそりとリピートする店で、「美味しいという評判は聞くけれど、アラモアナセンターのどこにあるのか分からない」と言われている。

 先ほど紹介した「寿司大亀」が伝統派とすれば、こちら「Amaterasu(海女照)」は革新派。黒を基調にした店内にはシャンデリアが輝き、金箔で装飾された寿司下駄ににぎりが乗せられる。

アラモアナセンターの1階山側を中央からメイシーズに向かっていくと右手にたたずむ
カウンター席のほか、テーブル席もあり、10人までのグループにも対応している

 大将の大宮さんは、東京や米本土での経験を重ねてきたという。ほんのり甘い九州のしょうゆとハラペーニョが香る煮切りじょうゆの漬けマグロや、ウニガーリックバターをふんわり効かせたエビなど、伝統と独創的な発想を織り交ぜた寿司を握る。

金箔を織り交ぜた寿司下駄に乗せられた中トロ

 ネタに合わせてシャリの温度を巧みに変えるにぎりは、口に入れた瞬間、ネタとシャリが一体となり、魚の味わいと脂、シャリの甘みが溶け合う感覚を堪能できる。

日本酒にもよく合う数種類の前菜で始まるおまかせコース
炙って脂を溶かしてえんがわがより一層ミルキーな味わいに
シャリは粘り気の少ない米を合わせ、赤酢と米酢を混ぜている
煮切りじょうゆ漬けマグロ、ウニバターが溶けたエビなど

 店内はカウンター7席、テーブル10席で、ランチとディナーともにおまかせスタイル。詳細はインスタグラムで確認できる。

リリハストリート沿いにたたずむ洋風駄菓子屋「カンバセーションズカフェ」

 最後に紹介するのは、おそらく近所の人しか知らないであろう「カンバセーションズカフェ(Conversations Cafe)」。知人が「病院に行く途中に見つけたカフェが気になる」と言い、連れて行ってくれたのがきっかけだった。リリハストリートという、「ど」が付くほどローカルな地域の道沿いに、こぢんまりと店を構えている。

リリハストリートの一角にある小さなカフェ
店内のイメージは一言で言えば「ラブリー」

 店内には、2~3人用の小さなテーブルが3つ。外にも3つ。ハローキティをはじめとしたアニメキャラクターグッズがところ狭しと並んでいて、ハワイ版の駄菓子屋といった趣。接客がとてもフレンドリーで、注文を受けてから手作りするサンドイッチは、パニーニやベトナムのバインミーなど10種類ほど。サラダもローストビーツ、コリアン、オールアメリカンサラダなど7~8種類が揃う。コーヒーは5ドル、ラテやカプチーノは6ドルと、ローカル価格。

外観の雰囲気と違って、キャラクターアイテムなどがびっしり並ぶ店内
アメリカ人好みの楽しいグッズは手頃な価格でお土産にもぴったり

 オーダーしたクランベリーチキンサンドイッチ(15ドル)は、「ハワイといえばこのパン」と言われるほど有名な、ふわふわでほんのり甘いキングスハワイアンロールに、チキンサラダとクランベリー、セロリなどが挟まれていた。

クランベリーチキンサンドイッチ(15ドル)。友人と半分に分けてこのサイズ。サラダも半分にシェアしたところ、かなり満腹になった

 店名のとおり「会話」が弾み、この日もつい長居してしまったのだが、その間も客足が途絶えることはなく、事前にオーダーしてピックアップしていく人も多い。すぐ隣に駐車場があり、立ち寄りやすい。店のなかに漂う独特の文化といい、地元(アメリカ人)に愛される店とはこういうことなのだろう。ちなみに友人は、キティちゃんのお財布をセール価格の12ドルで購入していた。

大澤陽子

ハワイで発行している生活情報誌「ライトハウスハワイ」編集長。日本ではラジオアナウンサー、ライターとエディターとして活動。2012年にハワイへ移住。新聞やハワイのガイド本などの編集に携わる。ハワイのビーチとビールをこよなく愛している。