井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

続・不正はないのに自動改札機に怒られた話

山形駅の改札とホームの位置関係。青線の経路なら何も問題はないが、赤線の経路で「新幹線eチケット」で入場しようとしたところ、乗り換え改札でエラー判定が出た

 前回は、紙のきっぷやICカードで自動改札機を通る際に書き込まれる入出場の情報が、出場時のエラー判定に影響しているらしいという話を書いた。きっぷそのものは正規の内容であっても、使われ方によってはエラー判定が出てしまう可能性があるわけだ。今回はその続きで、もう少し込み入った話を取り上げてみる。

不正ではないがイレギュラー・山形駅の場合

「想定どおりの順番で入場しなかったためにエラー判定が出たらしい」という経験がある。

「青春18きっぷ」を使って、東京から東北本線・奥羽本線を北上、左沢線まで行った。ところが、ここまで進めばもう夕方。日帰り行程だったので、東京までの帰路は山形新幹線「つばさ」の指定席をとっていた。ただし紙のきっぷではなく、チケットレスサービスの「新幹線eチケット」で。

 実際にどうしたかというと、「青春18きっぷ」を使って山形まで在来線で戻ってきて、そのまま出場せずに新幹線乗り換え改札に行った。そこで「新幹線eチケット」に登録しているモバイルSuicaを自動改札機にタッチしたところ、無情のエラー判定となった。

 山形駅から「つばさ」に乗る場合、まず在来線改札を通り、次に在来線と新幹線の乗り換え改札を通る(こういうパターンの新幹線駅は案外と多い)。ところが同じ山形新幹線でも、途中駅の高畠や米沢では、乗り換え改札はない。このように、駅ごとに改札通過の条件が異なる。すると、「新幹線eチケット」では「どこの駅ではどういう順番で改札を通る」という前提条件がそれぞれ決まっており、前提条件に合わない場合にエラー判定とするのではないだろうか。

 確かに、「18きっぷで山形まで来て、そのまま出場せずに『新幹線eチケット』で入場」というパターンが、そんなに多く発生するとは思えない。いってみれば「不正ではないがイレギュラー」だ。

改札通過の順番が影響した? 姫路駅の場合

 もう少しややこしい事例もある。今度の舞台は姫路駅だ。ここも山形と同様に、新幹線に乗るときにはまず在来線の改札を通り、次に在来線~新幹線の乗り換え改札を通る構造になっている。

 そして、山陽新幹線で岡山方面から東京都区内に向かう乗車券を所持していた。ただし、姫路で途中下車して播但線に寄り道するスケジュールを組んでいた。

 播但線はICOCAエリアに含まれている。そこで、新幹線を利用する分の乗車券は姫路で途中下車していったん出場。それからモバイルSuicaで再入場して播但線内を往復。そしてまた元の乗車券で再入場して新幹線で東京に帰る、との計画を立てた(なんでそんなややこしいことを、と思われそうだが、その理由はまた別の機会に)。

岡山から東京都区内に向かう乗車券を持ち、それで新幹線に乗った。ただし姫路で途中下車して、Suicaで播但線を往復するとの行程
単純に、姫路で途中下車してラチ外に出て(1)、同じルートで逆行するだけなら(2)、何も問題はない。

 ところが最後のところで引っかかった。播但線内で入場記録をつけたモバイルSuicaと新幹線の乗車券・特急券を持って在来線-新幹線の乗り換え改札に向かう。そして、新幹線のきっぷを自動改札機に投入してからモバイルSuicaをタッチしたところ、「精算不可能」とのエラー判定が出た。

途中下車してラチ外に出た(1)あとで、Suicaを用いて播但線内を往復(2)、最後に新幹線乗り換え改札に直行したらエラー判定(3)

 新幹線を利用する区間では紙のきっぷを持っていて、その前後の在来線はICカードを利用するときの手順は、「まず、在来線ではICカードで入場する。そして、新幹線駅の乗り換え改札で新幹線のきっぷを自動改札機に投入してから、ICカードをタッチすれば在来線部分の運賃が引き落とされる」。これは一般的に行なわれている運用だから、播但線に乗車した分の運賃だけ引き落としてくれれば済んだのだが。

 仕方がないのでUターンして、まずモバイルSuicaで在来線改札を出場。それから、途中下車していた新幹線の乗車券で在来線改札を通り、続いて在来線~新幹線の乗り換え改札で、その乗車券と新幹線の特急券を一緒に自動改札機に投入。往路の流れを逆戻りしたわけで、これは当然ながら問題なく行なえた。

途中下車(1)に続いて、播但線内をSuicaで往復(2)。その後、いったんラチ外に出てから新幹線区間の乗車券で再入場すると(3)、エラーにはならない

 この挙動から考えられるエラー判定の理由は、ふたつある。播但線が「在来線部分の運賃をICカードから引き落とす」対象から外れていたか、あるいは、新幹線の乗車券における入出場記録の不整合か。個人的な推測だが、後者の可能性が高かったとみている。

 姫路駅の構造上、新幹線で来てラチ外に出場する場合には、乗り換え改札と在来線改札の両方を通る。すると、両方の改札で途中下車の出場記録をつけた乗車券ができると考えられる。そうなった場合、途中下車後の再入場では、先に在来線改札、続いて乗り換え改札を通ることが前提になる。

 そこで播但線から乗り換え改札に直行すると、在来線改札の入場記録がない乗車券を乗り換え改札の自動改札機に投入することになる。これでは入出場の情報が整合しないから、エラー判定が出たのではないだろうか。

 こういうややこしいことをするときには、往復とも同じ経路で入出場しましょうね、短気を起こしてショートカットするのは止めましょうね、という話であった。