井上孝司の「鉄道旅行のヒント」

列車番号はなんのためにある? 読み取れる情報いろいろ

東京駅で。利用者にとっては「行先」「種別」「発時刻」「番線」が分かれば用は足りるので、列車番号の情報は発車標には出さないのが通例

 新幹線、あるいは在来線の特急を利用するときには、列車ごとに愛称が付いているのが普通だ。だから、旅程を組む場面でも、指定券を購入する場合でも、愛称を用いて対象を指定すれば済む。しかし、列車運行に携わる立場からすると、愛称がない列車に対しても、個々の列車を識別するための情報が必要になる。そこで、列車番号を割り振っている。飛行機の便名と同じだ。

しかし、ところ変われば品変わる。スウェーデンに行ったら、行先とともに列車番号の数字も出ていた。「T?gnr」の右側にある「530」がそれ。ちなみに「Sp?r」は「番線」のことだ

列車を識別するための情報が列車番号

 普段、列車番号の存在を意識することはないが、紙の時刻表を見れば書いてある。筆者はスケジュールを立案する場面で、発駅・着駅だけでなく列車番号の情報まで一緒に書くのを通例としている。必須の情報ではないが、自己満足というやつだ。

 とはいえ、列車番号を見ると分かることもいろいろあり、それはときとして、一般の利用者にも影響することがある。民鉄まで取り上げると話が散らかってしまうので、JRグループに限定して話を進めよう。

 列車番号の桁数は最大4桁。識別のための情報だから、同じ路線、同じ駅に出入りする列車の間では重複させない(エリアや運行区間が異なれば、重複することはある)。そして、下り列車は奇数、上り列車は偶数。飛行機の便名が、東西いずれに向かうかで奇数・偶数を分けるのと似ている。

奥羽本線(山形線)の上り普通列車。車両によっては写真のように、前面に列車番号を表示していることがある。これは電車だから、「M」が末尾について「424M」となっている

 愛称付きの優等列車では、列車番号の下2~3桁と号数の数字を合わせるのが一般的。例えば、JR北海道の「北斗1号」は1D、JR西日本の「サンダーバード19号」は4019Mといった具合だ。

 ただし例外もあり、JR北海道の「快速エアポート」は列車番号と号数に関連性がない。号数は3桁で、10の位と100の位で始発駅を出発する時間帯、1の位で時間帯ごとの順番を示す。例えば、15時台の新千歳空港発なら、151号、153号、155号、157号、159号となる。

 列車番号4桁のうち、千の位の数字で定期列車、季節列車、臨時列車の区別を付ける。定期列車は1~5、季節列車は6~7、臨時列車は8~9が基本。だから、例えば列車番号が「9○○○」なら臨時列車と分かる。もっとも、時刻表を見れば運行日に関する注が付いているから、それで分かってしまうのだが。

 石北本線の特急「大雪」は上下2往復ずつ・1~4号まであり、以前の列車番号は81D~84Dだった。ところが、閑散期の平日に一部運休するようになったので季節列車扱いに変わり、今の列車番号は6081D~6084Dだ。1の位の数字は号数と揃えている。

「大雪」は利用が少ない日に運休するので、毎日運転する定期列車とは異なる列車番号が割り振られている。指定席なら、運転しない日の分は発売しないから問題ないが、自由席を利用する場合には運転日に注意したい

アルファベットの意味は在来線と新幹線で違う

 機関車牽引列車の列車番号は数字だけだが、現時点で該当する旅客列車は少ない。それ以外は、動力車の種類を示すアルファベットを付ける。気動車なら「D」、電車なら「M」だ。これを知っていると、「電化区間なのに気動車が走っている」なんてことが分かる。

 例えば、羽越本線の村上~酒田間や函館本線の小樽~旭川間。いずれも電化区間だが、ときどき列車番号に「D」が付く気動車列車があるのが分かる。逆に、非電化区間なのに列車番号に「M」が付くケースもある。それが烏山線と男鹿線。いずれも蓄電池電車「ACCUM」が走っている。

函館本線の普通列車には、電化区間を走る気動車列車が混じっている。列車番号が「○○D」だから、紙の時刻表を見れば分かる
同じ函館本線の小樽~札幌間では、朝の下りで電車と気動車の併結列車が1本あるが、これは「963M」だから電車扱いだ(2023年5月現在)。後方の3両にパンタグラフが見当たらないから、これは気動車だと分かる
烏山線を走る蓄電池電車「ACCUM」。列車番号は「○○M」で、非電化区間なのに電車が走るという珍事になっている
HC85系はおもしろい存在で、車両の形式は電車と同じやり方であるにもかかわらず、列車番号は気動車扱いで「○○D」となっている。ハイブリッド気動車とはコウモリのような存在か

 特に大都市圏において、「M」「D」以外のアルファベットを使う事例が目に付く。線区・運行系統・車両運用の違い、あるいはワンマンとツーマンの違いがひと目で分かるように、という理由による。

 例えば湘南新宿ライン。スタート当初、北行列車は「○○○○E」、南行電車は「○○○○Y」という列車番号を付けており、「○○○○」の部分は系統ごとに数字の範囲を変えていた(現在は、湘南新宿ラインは「Y」、上野東京ラインは「E」となっている)。

湘南新宿ライン北行の宇都宮線直通。北行だから、前面に表示している列車番号の末尾は「E」

 一方、新幹線は路線ごとにアルファベットを使い分けるところが特徴。内訳は以下のようになっている。

A:東海道・山陽・九州新幹線
B:東北・北海道新幹線
C:上越新幹線
E:北陸新幹線
G:西九州新幹線

 例えば東海道・山陽新幹線の「のぞみ1号」なら1A、「のぞみ203号」なら203Aとなる。臨時列車が9000台になるところは在来線と同様。

「D」は在来線の気動車列車とかぶるからか、使っていない。「F」も空いているが、これは九州新幹線が新八代~鹿児島中央間の離れ小島だった時代に使われていた。しかし、2011年3月に山陽新幹線との直通を始めた時点で、東海道・山陽新幹線に合わせて「A」に切り替えた。

 なお、新在直通列車は新幹線と在来線の境界駅で列車番号が変わる。山形新幹線の「つばさ141号」を例にとると、福島以南は併結相手の「やまびこ141号」ともども141B、単独で在来線を走る福島以北は141Mとなる。列車番号から見ても在来線扱いと分かる。

エース格の列車ほど号数や列車番号が若い傾向

 複数の方面に分岐するJR東日本の新幹線では、方面別に列車番号の範囲を分けている。2023年5月現在、東北・北海道新幹線が1~200台、上越新幹線が300~400台、北陸新幹線が500台。

 以前に「繁忙期の新幹線で指定席を確保するコツ」でも取り上げたように、新幹線では停車駅が少ないエース格の列車ほど、号数の数字が小さい傾向がある。だから、同じ「はやぶさ」でも、仙台~盛岡間の途中駅に停車する列車は号数を100台として区別している。ただし近年、「やまびこ」に2桁の号数があったり、300台の号数を持つ臨時「はやぶさ」が出現したりと、ルールがあるのかないのか分からないことになっているが。

 新幹線では、千の位を運行形態の違いを区別するために用いることがある。例えば、東北新幹線の「はやぶさ」は、「こまち」と併結する列車は千の位に「3」を付けるが、単独運転の列車にはつけない。だから、併結がある「はやぶさ1号」は3001B、単独運転の「はやぶさ7号」は7Bとなる(2023年5月現在)。