荒木麻美のパリ生活
パリの盲導犬学校や暗闇レストランで、視覚障害の疑似体験
2026年1月17日 08:00
点字をフランス語でブライユ(Braille)というのですが、その点字を作った人、ルイ・ブライユについて以前ご紹介しました。
身近に目の問題を抱えている人がいるのもあり、その後も視覚障害に関することが頭の片隅にあったのですが、1年に1回、盲導犬を育成している学校を見学できる機会があると知って行ってきました。学校はパリ12区、ヴァンセンヌの森の近くにあります。1987年に非営利の団体として始まり、パリ市とその近郊に住む視覚障害者に対し、盲導犬を無償で提供しています。
生まれた子犬は3か月後にパピーウォーカー(子犬飼育ボランティア)宅に預けられ、1年後に適性検査に合格した犬が訓練に入ります。適性があると認められるのは30~40%ほどですが、1年の訓練を経て年間約30頭が盲導犬としてデビューしています。見学会では、生まれて間もない子犬たちや訓練の様子を見たり、視覚障害者体験として、暗闇でエサを用意したりしました。
その後、前から知ってはいたものの行く機会のなかった「暗闇レストラン」に行くことに。2004年にパリで始まったこのレストラン「Dans le Noir ?」は、今では世界各地に展開しています。場所はパリ4区。
予約した時間に行くと、スマホなどの光を発する荷物をロッカーに預け、一緒のテーブルにつく人たちが6人ほど集められます。視覚障害者のスタッフを先頭に、全員が前の人の肩に両手を置いて迷子にならないようにしたら、扉の奥にある暗闇のなかに入っていきます。なかでは、目を開いても閉じてもまったく同じ状態です。
部屋に入ってさほど歩かずに席にたどり着いたのですが、不安のためか手に汗が。普段これほど見えないことは、寝ているとき以外はない、ということを実感します。スタッフのガイドだけを頼りに座り、目の前の食器やカトラリーを確認します。この間、隣の人の手に触れてしまい、ごめんなさい!と言ったら相手が笑ってくれたので少しリラックス。グラスだけはプラスチック製です。水をそそぐときは、水がこぼれないように少し指を入れておくといいよ、というコツなどもスタッフが教えてくれました。
暗闇のなかでフォークとナイフで料理を「拾う」のはとても難しく、服にソースをこぼさないかとドキドキ。ときには仕方なく手を使ってやっと口に運んでも「美味しいけれど、うーん……」という感じ。料理は目で楽しむ部分が大いにあるのだなとつくづく思いました。それでも暗闇だからこそ、見ず知らずの隣人たちと「これは〇〇かな?」といった話もでき、とてもユニークな経験でしたし、暗闇のなかでもてきぱきと働くスタッフには尊敬しかありませんでした。
デザートまで終わると、またガイドを先頭に、前の人の肩に手を置いて外に出ます。見えるというのは、なんとありがたいこと! 外で、今日食べたものが何だったかを、スタッフがクイズ形式で盛り上げながら画像を見せてくれます。皆がそれぞれ「外れた!」「当たった!」とワイワイと盛り上がって終了。メニューはコースのみで、66ユーロからです。
最後に、視覚障害者向けの商品を売っている7区にあるブティックにも行きました。視覚障害者支援の非営利団体の建物のなかに入っています。拡大鏡、点字付きグッズ、音声で重さを教えてくれるスケール、使いやすく工夫された文具などがたくさんあり、それぞれの商品を興味深く眺めました。
2024年のパリパラリンピックをきっかけに、各区に「アクセシビリティ強化地区」が設定されたものの、古い町並みやパリの地下鉄などはとてもバリアフリーとはいえません。バリアフリー化が進むことは、高齢者、妊婦、幼い子供を連れている人、けがをしているときなど、すべての人にとって大切なことです。今回の体験を通して、これまでどこか他人事であったバリアフリーやユニバーサルデザインについて、もっと自分の視点で見られるようになったことは、大きな収穫です。




































