荒木麻美のパリ生活
ノートルダム大聖堂再建にも貢献、パリ市考古学部門を訪ねる
2025年12月20日 08:00
パリ18区にあるDHAAP(Département d' Histoire de l' Architecture et d' Archéologie de la Ville de Paris、パリ市建築史・考古学部門)を見学しました。毎年9月にあるヨーロッパ文化遺産の日に特別公開されたところの一つです。
DHAAPは建築史部門と考古学部門から成っており、今回は考古学部門を見てきました。考古学部門は5人の考古学者、1人の考古地理学者、1人の修復士で構成されています。内部の棚には古代や中世の青銅貨などの金属製品や、人間や動物の遺骨、石材などが所せましと並んでいます。「発掘現場で見つかったものは、ほぼすべて保管しています」とのこと。約800m2のスペースに約10万点が収蔵されています。
発見された約2000件の考古学的発見物マップ:Carte archéologique de Paris
解説員によると、発掘後の遺物の流れは以下のとおりです。
・放射線撮影によって壊れやすい遺物を分解せずに内部を観察し、修復方針を立てる
・3Dモデリングとデジタル保存により、もし元の遺物が劣化しても、形状データを長期的に保存可能。展示やオンライン公開、教育用VRコンテンツにも活用可能に
・材質ごとに保存・処理
金属:酸化を止める化学的安定化処理
陶器・ガラス:洗浄後に欠損部を樹脂で補填
有機物(木材・革・繊維など):凍結乾燥、樹脂含浸、完全遮光、窒素パックなど
・考古科学的分析
金属器・陶器・ガラスの原材料の産地や製造技術を推定
木炭・骨などから正確な年代を推定
骨や歯から古代パリ市民の食生活や移動経路を解明
2019年4月15日に起きたノートルダム大聖堂火災ですが、まだ工事は続いているものの、2024年12月、ついに一般公開が再開されました。私も見に行きましたが、薄暗い感じが一掃され、とにかく明るい! どこもきらきらで、ため息の出るような美しさでした。ただ再建しただけではなく、新しい技術も取り入れており、フランスのノートルダム大聖堂に対する深い愛情と、火災以前よりもよいものにする、という意気込みを感じました。
この再建に向けて、フランス文化省傘下のいくつかの国立機関が中心的に関与しましたが、DHAAPも活躍しました。
このほか、パリ市内にあるシテ島遺跡納骨堂(La Crypte archéologique de l' Île de la Cité)やカルナヴァレ美術館(Musée Carnavalet)でも、DHAAPの成果を見ることができます。私も何度か行ったことがありますが、パリの建築史・考古学部門に関心のある人には、興味深いところだと思います。特にカルナヴァレ美術館の常設展は無料なのでお勧めです。






















































