荒木麻美のパリ生活
マイナーながら、少しずつ浸透してきたパリの「かき氷」を食べる
2025年8月16日 08:00
フランス気象局によると、今年の6月は1900年以降で2番目に暑い6月となりました。月末から7月頭にかけて40℃前後に達した日もありましたが、パリの古い建物の構造上、あとからクーラーを設置するのが困難、外観を損なうという理由などから、我が家にもクーラーはなく、これくらいの暑さになると、扇風機からは熱風が来るばかり。そこで「そうだ、かき氷を食べに行こう!」と思い立ちました。
フランス人にはまだまだなじみのないかき氷ですが、アジア文化に関心がある層には浸透してきており、パリでかき氷を提供するところが少しずつ増えています。これまで日系のお店では何度も食べていますが、それ以外のお店で出すかき氷はどういうものかを食べに行くことにしました。
最初に行ったのは14区にあるHexagone Cafeです。2015年にオープンしたコーヒー専門店で、自家焙煎した豆を使ったコーヒーを出しています。
このカフェを作った4人は、フランス最優秀焙煎士に選ばれた人、ハンドドリップ大会で入賞した人など、コーヒーへの知識の深い面々。
カフェの創業者の一人でほぼ毎日お店にいるChung-Leng Tranさんは、カンボジア生まれパリ育ちの中国系フランス人です。カメラマンとしてキャリアをスタートしたのち、バリスタとなりました。コーヒーに関する本も出しており、さまざまな言語に翻訳されています。
Chung-Leng Tranさんは日本好きでもあり、かき氷の提供を始めたのが2019年。最初は手動のかき氷機で削っていたそうですが、あまりに大変なので今は機械で。機械はもちろん日本製です。
今年は5月から始め、水曜から金曜までの12時半から14時半までのみ食べることができます。提供時間と終了時期は気候などによるところもあるので、事前に確認をしてから行くのがよさそうです。かき氷の内容は週替わり。自家製シロップや旬の果物、和素材を組み合わせたものを出しています。
注文したのは爽やかなモモとレモンバーベナのかき氷と、クラシックな抹茶小豆のかき氷です。運ばれてきたかき氷を見たときときは「わ、大きい!」と思いましたが、軽くてふわふわの氷なのであっという間に完食してしまいました。この日の気温も高く、店内には扇風機しかないので最初は暑いなと思いましたが、かき氷のおかげで体がほどよく冷えてすっかりリフレッシュ。
一緒に頼んだアイスコーヒーも深い味わいながらごくごく飲めてとても美味しかったので、近所にあれば頻繁に来てしまいそうです。カフェのあるエリアは古い建物、小さな商店、魅力的な小道などが並ぶ、とても「パリっぽい」ところなので、周辺を散歩するのも楽しいです。
2020年にオープンしたPARISDABANGはパリ11区にあります。DABANGは茶房を意味し、韓国の伝統的な喫茶店のことで、知識人・文化人・芸術家たちの交流の場でもありました。1階はカフェ、2階が小さなギャラリーになっています。私が行ったときは、韓国系アメリカ人イラストレーターの作品を展示していました。
展示を見たあとに、カフェでお目当ての韓国のかき氷「ビンス(Bingsu)」を注文。フランスではビンスの方が、「かき氷(Kakigori)」より知名度が高いと思います。見た目のインパクトの強さと、ビンスの方がかき氷より濃厚な味のため、フランス人には好まれる傾向があるようです。
小豆のビンスと、ビスケットのオレオのビンスを注文しました。小豆のビンスには、きな粉と小さな大福がどん!と乗っています。オレオのビンスには、細かく砕いたオレオとアイスが乗っていて、どちらも日本のかき氷より存在感があります。韓国製の機械で作る氷は、日本のものよりも細かく、その分ぎっしりとしています。隣の人が食べていたマンゴーのビンスとイチゴのビンスは、それぞれ生のフルーツがたくさん乗っていて、豪華で美味しそうでした。どのビンスにもコンデンスミルクが付くのがお約束のようです。ビンスを食べるのは初めてでしたが、かき氷でお腹がいっぱいに!
中華系のお店は流行りを取り入れるのが上手です。Shodai Matchaでは、スイーツ系ではビンス、月餅、タピオカ、ミルクレープ、ロールケーキ、食事系ではポケボウル、たこ焼き、うなぎなど、アジア系の人気メニューが並んでいます。近所なので、店の前を通るといつもたくさんの人が並んでいるなと思っていましたが、初めてなかに入り、チーズケーキ味のビンスを食べてみました。チーズケーキの味かというとよく分からず、それなりに美味しいものの、全体的に大雑把で少し残念でした。店内には若い人が多かったので、その世代には何か響くものがあるのでしょうね。パリ市内に3店舗を展開しています。
私の住むアパートの真横にある中華レストランでも、今夏から店先でビンスを始めました。「メニューにあるオアシスってどんな味?」と聞いたらフランス語を話さない中国人のようでよく分からず。とりあえず食べたところ、柑橘系の味でした。これという特別な感想はないのですが、ほかのお店では12ユーロ前後でしたから、小ぶりのちょうどよい大きさで値段が3ユーロというのは、気軽に食べられてよいです。子供の頃に食べた、夏祭りの屋台のかき氷を思い出して懐かしかったです。
この原稿を書いているのは8月上旬ですが、30℃後半の気温になる日はたまにあります。パリでかき氷やビンスを出すところはまだまだたくさんあるので、また暑さがやってきたら、涼を取りにかき氷を探す旅に出たいと思います!









































