荒木麻美のパリ生活
フランスの電波観測の中心地、ナンセーで巨大電波望遠鏡を見学
2025年9月20日 08:00
パリから南に200km、フランスの中央部にあるナンセーという小さな町に行ってきました。ここには「Pôle des étoiles」(星の拠点の意)という、宇宙や天文学について学べる施設があります。
ナンセーに入ったころ、スマートフォンが使えなくなりました。これはPôle des étoilesに隣接する、ナンセー電波観測所にある観測機器が正確に観測できるようにと、「電磁波フリーゾーン」となっているためです。携帯電話やWi-Fiなどの人工的な電波はシャットアウトされており、この辺に住む住民たちは有線電話や有線ネットワークを使っています。
Pôle des étoilesでは天文学や宇宙科学に関する展示、電波天文学の仕組みや観測装置の紹介コーナー、ドーム型プラネタリウムなどを見学しました。これだけでも十分に興味深いのですが、ハイライトはナンセー電波観測所の見学ツアーです。
ナンセー電波観測所は1956年に開設され、フランス国立科学研究センター(CNRS)傘下のパリ天文台が主体となって管理・運営し、オルレアン大学も協力する形で活動している施設です。フランスを代表する電波天文観測施設の1つです。
Pôle des étoilesに近づくにつれてすでに見えていましたが、ここで一番目を引くのは巨大な電波望遠鏡です。二つの巨大な電波反射板が向かい合った形となっています。当時としては世界最大級の電波望遠鏡で、1965年に完成した際、シャルル・ド・ゴール大統領が式典に出席し、その2年後から運用が始まりました。
ラジオヘリオグラフという、太陽から放射される電波を観測して、太陽の表面やコロナの様子を画像としてとらえる装置や、LOFARという、宇宙からの低周波電波を観測するための望遠鏡と、LOFARを強化・拡張する目的で開発された電波望遠鏡、NenuFARもあります。
ナンセー電波観測所は、フランスを中心に展開されている流星や隕石などの観測ネットワークFRIPONにも参加しています。ここで集められたデータは、フランス国内外の研究機関や大学のスーパーコンピュータやデータセンターへ送られます。
施設見学で宇宙の壮大さを感じたあとは現実に戻り、ナンセーの有名なサブレ直売所に寄りました。配合ミスから偶然生まれたというこのサブレ、外はさくっと、中はほろっと、バターの味がほどよくきいた、素朴で飽きない味です。いくつかお土産に買って帰途につきました。





































