荒木麻美のパリ生活
メトロの車両洗浄を見学
環境に配慮した車両洗浄装置の導入がパリで進む
2017年10月14日 00:00
毎年9月、第3週の週末に開催されるヨーロッパ文化遺産の日。普段は非公開となっているところを見学できるため、私は毎年とても楽しみにしています。
2015年は浄水場(関連記事:飲み水を探して試行錯誤中)、2016年はゴミ処理場(関連記事:家庭での分別はかなり適当、それでもリサイクル率30%)を見学したのですが、今年はRATP(Régie Autonome des Transports Parisiens、パリ交通公団)主催のイベントの一つ、メトロ(パリ地下鉄)の車両洗浄の現場に行ってきました。
ヨーロッパ文化遺産の日の間、予約なしで見学できる場所はたくさんあるのですが、予約をしないといけないところもたくさんあります。RATPのイベントの多くは予約が必要だったので、ヨーロッパ文化遺産の日から2週間前の12時少し前にWebサイトにアクセスして待機。12時ちょうどに予約を入れようとしたのですが、取れたのは車両洗浄の1つのみ! 翌週にもう一度予約のチャンスがあったのですが、こちらでは1つも取れないという大盛況ぶり。人気アーティストのコンサート並みです。
こうしてやっと取れた予約だったので、当日はワクワクして待ち合わせ場所に向かいました。場所は7番線終点のMairie d' Ivry駅です。
見学会は1日数回行なわれるのですが、1回の人数はおよそ20人くらいです。予約証明書を提示すると、「INVITÉ(招待者)」シールを渡されます。
その後、ホームに停まっていた車両に全員で乗り込むと、黄色の蛍光ジャケットを渡されます。オレンジのジャケットを着ている人がRATPの職員です。
準備が整うといよいよ発車です。この日は運転中の運転席にも入れたのですが、交代で見るように言われていたものの、一度場所を取った人たちに動く気配がないので、「すみませーん、私も見たいでーす!」と言って少し見せてもらいました。
あっという間に洗車場に到着です。到着すると数人に分かれて下車し、各見学ポイントに散らばります。私がまず見たのは、昔の車両洗浄の様子から現在までが簡潔にまとまったパネルです。
これによると、1949年から1979年までは、すべての車両が手作業で洗車されていました。2017年現在、9つの線で車両洗浄装置が導入されていますが、それ以外の線では今も人の手で洗車しているのだそうです。
その後、洗車のコントロールセンターに入ります。思っていたより小さな場所ですね。使われている製品や車両洗浄後の水が地球環境に配慮していることをRATPの職員は強調していました。例えば水に関しては、1995年と比べると半分の使用量で済んでいるとか。
見学が終わると再乗車し、車両洗浄装置の中に入っていきます。洗車ブラシの形は、各車両の微妙な形の違いに合わせてコントロールセンターで調整する仕組みとなっています。一車両の洗車にかかる時間は約1分30秒なので、あっという間に通り過ぎてしまいました。
なお、車両洗浄装置へ通す頻度は週に1回で、車内は定期清掃が毎日行なわれ、さらに徹底的な清掃は車両の内外一緒に月に1回だそうです。月に1回の清掃は人によるもので、かかる時間は約8時間。メトロが停車する夜間に行なわれています。
思っていたより頻繁に清掃をしていると思いましたが、それなのになぜ、メトロ、特に車内があんなに汚れているのかといえば、道が汚いのと同様、やはり利用者の方に問題があると思わざるを得ません。
こうして約1時間の見学会は無事に終了。最後に記念としてRATPのマスコットキャラクター「セルジュ」のイラストが入ったマグネットをもらいました。
あっという間の1時間でしたが、この日いたRATPの職員全員がとても親切で、仕事を愛し、誇りを持っている様子を感じられたことも楽しかったですし、電車を愛するフランス人たちの様子も微笑ましく、がんばって予約を取って行って本当によかったです。
メトロの車両洗浄見学の帰りには、12区にあるRATP会館(189, rue de Bercy, paris 75012)にも寄り、普段は乗ることのできない昔のバスに乗りました。
車内ではギターとバイオリンの生演奏も行なわれ、フランス人なら誰でも知っているらしい懐メロを皆で大合唱。気候もよく、楽しい1日を過ごすことができました。来年のヨーロッパ文化遺産の日はどこに行こうか今から楽しみです!