荒木麻美のパリ生活

パリでレンタサイクルに乗ろう!

「Velib」から見るとパリの風景もまた新鮮に

街中のあちらこちらにあるVelibのスタシオン

 昨年2015年、舛添要一 東京都知事も海外出張時に興味を持ったとされるパリの自転車貸出システム「Velib(ヴェリブ)」。すでにご存知の方も多いかもしれませんが、簡単に説明させていただきます。

 これは当時のパリ市長であるドラノエ市長の政策の一環として、大気汚染緩和を目的に2007年に導入されたシステム。最初は750カ所の専用の駐輪ポイント(スタシオンといいます)でしたが、2015年の5月時点ではパリおよびパリから1.5km以内に1230カ所のスタシオンがあり、自転車の数は2万1278台となっています。29万1255人の登録があり、1日に16万台の自転車が運用されているとのこと。

 費用は年間29ユーロ(最初の30分無料)と39ユーロ(最初の45分無料)の2種類(学生料金もあります)。1日1.7ユーロ、1週間8ユーロもあり、これらは最初の30分が無料です。最初の無料時間を過ぎた場合は、超過料金を支払います。

 使い方は簡単。Webサイトで申し込むとVelibから写真のようなカードが送られてきます(役所でも配布されています)。またはすでに持っている「Navigo」という、公共交通機関用のカードにチャージすることも可能です。1日券または1週間券の場合は、Navigoにチャージするか、利用端末機(ボルヌといいます)から紙のカードを発券します。

左がVelibのカードで、右が紙版のカード(画像はVelibのブログサイトより)
ボルヌ上部にはVelibのオペレーターと話すためのマイクとスピーカーが付いているので、問題などが起きた場合はこれで通話をすることができます
ここにカードを当てると施錠が外れます。左横に自転車を差し込むと返却完了

 カードの場合は、自転車横にある読み取り機にカードを当てると「ピッ」という音がして施錠が外れます。紙式カードの場合は、ボルヌに希望する自転車の番号と暗証番号を打ち込んで開錠します。

 乗り終わったら、そこのスタシオンにガチャッと自転車をはめこめばOK。しばらくするとまた「ピッ」という音が鳴って、ランプが赤から緑に変われば返却終了です。

 なお、サドルが後ろになっていることがよくあるのですが、これはパンクやチェーンが外れているなど、「この自転車は使えないよ」のサイン。自転車を乗る者同士が自主的に行なっていることなので、自分が変な自転車に乗ったときも、次の人のためにサドルを後ろに回してあげると親切ですね。

 私はパリのメトロがあまり好きではありません。車内がきれいとはいえないことが多く、外の風景をほとんど見られないからです。ヴェリブが始まる前は、できる限り歩くかバスに乗っていましたが、Velibができたときにはすぐに申し込みました。自転車の盗難の多いパリで盗まれる不安もないですし、行きは自転車、帰りはバス、という使い方もできるのもよいと思っています。ちなみに夫もVelibに登録していますが、普段は自分の自転車を乗っています。登録料が安いので、こういう人も多いようです。

 パリの自動車の運転はかなり荒いです。自転車を運転する側も、罰金の対象になるはずなのですが、パリジャンは信号をバンバン無視するので、車と自転車の事故をときどき見かけます。とにかく安全運転をすることをお勧めします。

 そんな私は義務ではありませんが、自転車に乗るときはヘルメットに手袋、暗くなったら蛍光チョッキも着ています。夫はこれに朝と晩はヘッドライトも装着という完全装備です。

 それと、道を曲がるときには右に行きたいときには右手をさっと出す(ここで上下にパタパタと腕を振るとなおよし)、左ならこの反対、というようにしています。やらない人の方が多いですし、私も最初はちょっと恥ずかしかったのですが、今ではすっかり慣れました。

 あとはパリの大気汚染はひどいので、高性能のマスクらしきものを付けている人も見かけます。息苦しくなりそうでまだ試していないのですが、私も使ってみようかなーと検討中です。

 なお、自転車は必ず車道を走らなくてはなりません。交通ルールも自動車と一緒。ただし、自転車だけ通れる道が結構ありますから、一方通行の多いパリではありがたいですね。

 というわけで私にはパリで暮らすうえでもはや必須アイテムとなったVelibですが、不便な点もあります。まず、乗りたくてもスタシオンに自転車が1台もない、逆に止めたいところに空いている場所が1つもないときです。

 特にススタシオンがいっぱいだと、周辺の空いているスタシオンをぐるぐると探しまわる羽目になります。待ち合わせの時間があるときなどはかなり焦ります。この場合、空きのないスタシオンのボルヌで、周辺のスタシオンの空き状況を調べつつ、15分間の時間延長を申請することを忘れずに。

 VelibのWebサイトではどこのスタシンに何台の自転車と空きがあるかを調べられるので、事前に調べて行動するというのも手ですね。

それから私のような超の付く方向音痴ですと、「はて、ここはどこ?」ということになりがちなので、紙の地図かスマホの地図を持って行った方が安心です。

 それと自転車自体が重いので、ギアがあるとはいえ、坂道の多いパリでは辛い場面も。耐久性との兼ね合いもあるのでしょうけど、もう少し本体を軽くしてくれるといいのになーと思います。

 自転車から見るパリの風景はまた特別で、ときどき「お、こんなお店が!」とか「こんな公園が!」「こんなイベントが!」という発見も多々あります。機会があればぜひお試しくださいね。

 なお、Velibシステムの成功を受け、電動自転車の導入も検討されています。電気自動車のレンタルシステムはすでにあるのですが、貸しバイクのシステムも今夏から始まる予定だとか。ますます充実していくパリのレンタルシステムですが、これらはまた別の機会にご紹介できればと思っています。

2015年の6月14日に、シャンゼリゼ付近で開催されていた「Les 24h Velib(24時間Velib)」。Velib祭りというか、Velibをさらに宣伝するためのイベントでした
シャンゼリゼに設置されていたVelibによる発電装置。シャンゼリゼの街灯の一部をこれでまかなうと書いてあります。2015年の11月から12月にかけて開催されたCOP21期間に合わせたイベントでした
今年初め、河底の清掃のために水を抜かれたサン・マルタン運河。Velibが182台も出てきたそうです!

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。フランス人の夫と黒猫と暮らしています。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。2016年は卒業論文を執筆しながらカウンセリングも少しずつ始める予定です。