荒木麻美のパリ生活
パリのレンタル電気自動車と電動スクーター
レンタサイクルと合わせて選択肢が多様化
2017年4月15日 00:00
パリの渋滞と大気汚染対策として、2007年に始まったレンタルサイクルシステム「Vélib’(ヴェリブ)」(過去記事「パリでレンタサイクルに乗ろう!))。今回は、ヴェリブに続いて始まったレンタル電気自動車とレンタル電動スクーターについて、まとめてご紹介したいと思います。
電気自動車「Autolib’」
Webサイト:Autolib’(英語、仏語)
電気自動車サービス「Autolib’(オートリヴ)」は2011年12月にサービスを開始しました。2017年2月末時点で約4000台が稼働しており、利用者は約13万6000人だそう。パリのいたるところで専用のステーションや、走っているクルマを見かけるようになりました。
乗るための登録は簡単。Autolib’専用のステーションそばにある無人登録所(すべての駐車場にあるわけではりません)か、サービスセンター(5 rue Edouard VII, 75009 Paris)で身分証明書や免許証、クレジットカードなどの情報を登録すると、カードが発行されます。これらの情報はAutolib’のサイトから事前に登録しておくことも可能です。国際免許証を持っていれば、旅行者でも登録可能です。
Autolib’には2種類のプランがあります。1つ目の「Autolib’ Premium」は1年間登録プラン。毎月10ユーロ(約1200円、1ユーロ=約120円換算)の月額登録料を支払い、1分間0.23ユーロ(約28円)で使うことができます。予約サービスは無料です。
2つ目の「Prêt à Rouler」は月額使用料がありません。その代わり1分間0.32ユーロ(約39円)となります。予約サービスは1回1ユーロ(約120円)となります。
使い方は運転席側の窓にカードを認証するセンサーが付いているので、そこにカードをかざします。認証されたら、クルマに接続されている充電ケーブルを利用端末機(ボルヌといいます)に収納すれば発車準備完了です。普通のオートマ車として運転してください。
利用後は、車内にあるナビでステーションを見つけ、駐車後、ボルヌにカードを認証させて、充電ケーブルをクルマに接続します。接続後、運転席側の窓にあるセンサーにカードを認証させれば終了です。
フランス語のみですが、Autolib’について動画による説明がありますので、よかったらご覧ください。車内紹介の動画もあります。
私はフランスの免許証を持ってはいるものの、最後に運転したのはかれこれ15年前くらいという、完全なペーパードライバー。マニュアル車の多いパリでAutolib’はオートマ車なのはありがたいですが、それでもパリジャンたちの荒い運転に混じる勇気はありません。サービスセンターでは一通りの説明を受け、クルマの見学をしただけで帰ってきました。
でも乗せてもらったことは何度もあります。小さなクルマに見えますが、4人乗っても快適な広さですし、車内は静かで、なかなかの乗り心地でした。
なお、Autolib’のステーションにはときどき赤いクルマが混じっています。これはUtilib’(ユティリブ)といって、工事業者などが会社として登録すると、従業員たちで1つのアカウントをシェアすることができ、2人乗りで後部座席がフラットになっているので、物資の運搬などにも使うことができます。
Utilib’を外から覗いてみたところ、後部座席には椅子がなく、荷物を載せる場所となっていました。
電動スクーター「Cityscoot」
Webサイト:Cityscoot(英語、仏語)
電動スクーター「Cityscoot(シティスクート)」は、2016年6月にサービスを開始しました。でもパリ市内でよく見かけるなと思うようになったのは、この春くらいからでしょうか?
2017年2月時点で700台のスクーターが稼働しており、利用者は約2000人。2017年末には1500台になる予定だそう。
オンラインでの事前登録が必要なので早速したところ、講習会のお知らせがメールで来ました。スクーターに乗り慣れていない人は、これを受けると晴れて正式登録となるのだそうです。ただ、「そんな講習会などいらないよ」という人は講習会を受けませんというメールを送れば、受講しなくても登録されるようです。
講習会の場所は11区の元自動車整備工場だったという建物でした。講習会といっても使い方とテスト走行を合わせて30分ほどで、毎回の定員は4名なのですが、30分毎にひっきりなしに受講者が来ていました。
スクーターも自動車同様、スマホアプリ上でどこにスクーターがあるのかを見ることができ、予約をすることができます。
予約をするとスマホアプリにコードが届くので、それをスクーターに入力。収納されているヘルメットを取り出してから、ボタンを「オン」にします。
ヘルメットが収納されている場所には、使い捨てのヘアーネットと反射ベストも入っています。バイク用のグローブは入っていないのですが、これは着用が義務付けられているので持参してくださいとのことでした。
乗り終わったら、路上のバイクを駐めてよいところならどこでもよいので駐めます。有料となっているところでも無料だそうです。駐車したらヘルメットをしまい、ハンドルを左に回してロックしてからボタンを「オフ」にします。スクーター上またはスマホアプリ上で終了ボタンを押せば返却したことになります。
これもフランス語のみですが、動画によるCityscootの説明があるので、合わせてご覧ください。
利用料金については、登録料は必要なく、利用時間1分あたり0.28ユーロのみ。よく利用する人には、下記の2つのプランもあります。
CityRider100 :100分間で25ユーロ(約3000円)、1分間0.25ユーロ(約30円)
CityRider500 :500分間で100ユーロ(約1万2000円)、1分間0.20ユーロ(約24円)
なお、Cityscootも国際免許証で登録できますし、1988年1月1日以前に生まれた人なら、免許証がなくても登録・運転できます。
Cityscootは最初「う、重い」と思いましたが、走り始めたらスーッと静かに走るのですぐに慣れました。私は電動自転車を持っているのですが、走り心地が似ていると思いました。利用時間が7時から23時までとなってはいますが、交通渋滞の多いパリではなかなか便利なのではないでしょうか?
私の場合は「Velib’」で大抵の用事は済みますし、少し遠出をするときは自分の電動自転車かメトロかバスに乗ってしまうので、これからもこれで大丈夫だと思います。でも自転車、クルマ、スクーターと、レンタルにもいろいろな選択肢があるのは、利用者にとってはありがたいですよね!
電気バスの導入も始まる
2017年の1月末から4月頭まで、無人の小型電気シャトルバスが、リヨン駅からオーステルリッツ駅間を無料テスト運行していました。係の人の説明によると、走行距離は約200mで、スピードは約7km/h。正直なところ「歩いた方が早い……」と思いましたが、体の不自由な方、荷物が多いときなどには便利だと思います。
パリでは「Bus 2025」という、2025年までにディーゼルエンジン搭載バスを全廃するというプロジェクトが始まっています。有人大型電気バスの運行も一部で始まっていますし、今後も電気バスに乗る機会が増えていくのではないでしょうか?
パリの大気汚染は本当にひどいと思います。しばらくパリを離れて戻ってくると、体が慣れるまでは喉がおかしくなったり、咳が出たりします。電気自動車と環境問題、そして健康との関連については賛否両論ありますが、パリ市内への自動車の乗り入れ規制も強化されていくようですし、レンタサイクル、電気自動車、電動スクーター、そして電気バスの普及により、パリの大気汚染が少しでも減る方が、今の私にはありがたいです!