荒木麻美のパリ生活

パリで猫の里親になる

クリスマス前には大規模譲渡会も開催

 以前書いたコラム「パリで猫カフェ初体験」で触れましたが、私は14年間一緒に暮らした猫を2017年の6月に亡くしました。人生で初めて飼った猫で、15歳でした。

 その後、気持ちの切り替えに少し時間が必要だったことと、パリを長期で離れることが多かったため、すぐに次の子とはなりませんでした。でも猫がいない生活の寂しさは増すばかり。そこで11月末、前から「次の子はここでもらおう!」と思っていた動物愛護団体から親子の猫2匹を引き取りました。

2匹とも新しい環境に少しずつ慣れてきた様子

 フランスには大小さまざまな動物愛護団体があるのですが、私が連絡をとった団体は「Refuge Rêves de Chiens(犬たちの夢の避難所)」といいます。きっかけは近所のトリミングサロンに張ってあったチラシを見たことなのですが、団体の人たちに直接会う機会が8月にありました。

Refuge Rêves de Chiens

Webサイト:Refuge Rêves de Chiens(仏語)

 場所はパリ3区のマレ地区にあるLUSH。LUSHは企業活動の1つとして、さまざまな団体と組んで自社製品のハンド&ボディクリームを販売し、商品の売り上げをそのときに組んだ団体に寄付しています。

LUSHの商品は香りがきつくて苦手なものが多いのですが、写真右のハンド&ボディクリームは香りが控えめで肌がしっとりするのでよかったです

 この日はRefuge Rêves de Chiensとのコラボレーションだったので、Refuge Rêves de Chiensのメンバー2人が、団体の説明のために来ていました。

2人の話ぶりから、動物を愛する気持ちがひしひしと伝わってきます。左側の女性は「昔は犬を預かっていたけど、どの子も手放せなくなってしまうので、今はウサギ担当なの。ウサギならまだ手放せるから」とのことでした(笑)

 Refuge Rêves de Chiensでは保護された動物はすべてメンバーの家庭で飼育されています。こうすることで人間との信頼関係が築きやすく、引き取られた後の飼い主との関係もスムーズになりやすいのだとか。

 保護された動物たちはすべてWebサイト上に写真付きで紹介されており、それぞれの性格などについても記されています。2002年の団体創設当初は犬だけだったのが、今は猫とウサギ、フェレットも保護しています。

 Webサイトを見て引き取りたいと思った子がいたら、Refuge Rêves de Chiensに連絡するとやり取りが始まります。うちはどの子が来てもよいと思っていたので、11月に入り

「年齢や容姿、性格などについての要望は特にありません。仲よく暮らしてくれる猫2匹を紹介してください」。

とだけ伝えて紹介されたのがこの親子の猫たちで、母親は1歳ちょっとで、息子は生後約5カ月でした。

初めて対面したとき。ケージの中でおびえた様子の2匹

 Refuge Rêves de Chiensの事務所はパリ郊外のエヴリーにあり、カトリック系の施設を事務所として使っているようです。主に土曜日が引き渡しの日で、私が引き取りに行った日も、狭い事務所はスタッフと引き取りに来た人たち、そして動物たちでもう大騒ぎでした。

 引き取ったあとは3週間のテスト期間があり、それが終わると再度Refuge Rêves de Chiensの事務所に預かった子たちを連れて行きます。虐待などをされていないか、飼い主に頼んだワクチンや避妊手術が指定の獣医できちんとされているかといった確認をスタッフにされ、問題がなければ正式に引き取りが成立します。

 引き取りにかかる費用は以下のとおりです(※1ユーロ=約140円換算)。

2カ月~1歳:290ユーロ(約4万600円)
1歳~2歳:250ユーロ(約3万5000円)
2歳~5歳:220ユーロ(約3万800円)
5歳以上:50ユーロ(約7000円)以上で金額は自由
6カ月以下195ユーロ(約2万7300円)
6カ月~5歳:150ユーロ(約2万1000円)
5歳以上:50ユーロ(約7000円)以上で金額は自由
血統書付き: 200ユーロ(約2万8000円)
フェレット
220ユーロ(約3万800円)
ウサギ
10ユーロ(約1400円)

 なお、Refuge Rêves de Chiensと提携している獣医でワクチンや避妊手術などを受けると、それらの費用はRefuge Rêves de Chiensの負担となります。

 今回、私は縁があってRefuge Rêves de Chiensから引き取りましたが、フランスで有名な大きな動物愛護団体2つが、クリスマスに向けて11月と12月にパリ市内で譲渡会を行なっていたので、こちらも見に行ってみました。

Fondation Assistance aux Animaux(FAA)

Webサイト:Fondation Assistance aux Animaux(FAA、仏語)

駅のホームに出ていた譲渡会を案内する広告

 FAA(Fondation Assistance aux Animaux)は1930年に創設された団体です。2017年は11月25日と26日の2日間、パリ19区にあるPorte de la Villetteのイベントホールで譲渡会が行なわれました。

 犬と猫それぞれ約200匹ずつ、合計約400匹が来ていました。ケージの上にはそれぞれのプロフィールが記されています。

 引き取りが決まると、団体に渡す金額は、犬が150ユーロ(約2万1000円)で猫が100ユーロ(約1万4000円、猫エイズにかかっている子は80ユーロ/約1万1200円)。引き取り後は全家庭ではないようですが、抜き打ちでスタッフがきちんと飼われているかチェックをしに行くそう。

引き取り手続き中
場内に置いてあった看板には「犬も猫も15年以上生き、飼うには1年に1500ユーロ(約21万円)くらいかかります」といったようなことが書いてあります

 団体の運営についてですが、引き取り時に支払われるお金や寄付金、ペットフード会社からの支援などで問題なく成り立っているとスタッフの1人が話していました。

FAAが発行する冊子
FAAとは直接関係ないのですが、フクロウ、コウモリ、ワシ、ハト、ウサギなどの野生動物を保護して自然に返している団体のブースもありました
蚤の市にFAAのオリジナルグッズの販売も

Société Protectrice des Animaux(SPA)

Webサイト:Société Protectrice des Animaux(SPA、仏語)

 1845年に創設された、フランス最大の動物愛護団体がこのSPA(Société Protectrice des Animaux)です。2017年の譲渡会は12月9日と10日の2日間で、場所はパリ3区、10区、11区が交差するPlace de la Républiqueの仮設テントで行なわれました。

 SPAの譲渡会もFAAとほぼ同じです。約400匹の犬や猫たちがケージの中に入れられており、気に入った子がいれば、ケージに付いている紙を持って手続きに入ります。SPAも抜き打ち訪問をして、引き取られた子たちの様子を見に行っているそう。

この子はなんと4回も捨てられたのだとか。「次は最期のときまで一緒にいられる人を希望します」とプロフィールに書いてありました
この子はもう16歳で耳が聞えないそう

 SPAでは動物を引き取る場合、犬は250ユーロ(約3万5000円、生後6カ月以内の子犬は300ユーロ/約4万2000円)で、猫は150ユーロ(約2万1000円)となります。

引き取りを希望する人たちの長蛇の列

 FAAとSPAどちらの譲渡会も、スタッフによると毎年ほぼすべての子たちが引き取られていくと聞いてほっとしました。もし引き取られなかった子たちがいても、また保護施設に戻って次の機会を待つか、そこで一生を終えます。

フランスにあるSPAの保護施設マップ。フランスに64カ所あるそうです
誰でも無料で参加できる記念写真撮影のコーナー
SPAでも冊子を発行し、オリジナルグッズを販売しています

 どちらの団体の保護施設でも動物たちをケージに入れっぱなしではなく、できるだけ施設内を自由に散歩できるようにしており、同時に衛生・健康状態を管理しつつ、しつけも施しているのだとか。

 SPAの発表によると、フランスでは毎年約10万匹の犬と猫が捨てられており、特に夏の間に約6万匹が捨てられているそう。飼い主が長期のバカンスに行くために、多くのペットたちが捨てられているわけです。

 今回の譲渡会2つで約800匹の犬や猫たちの新しい行き先が決まったわけですが、保護施設にはまだまだたくさんの動物たちが引き取られるのを待っています。フランス各地にある保護施設にはいつでも訪問できますから、そこで直接引き取ることも可能です。

 ところで2017年にフランス南西部のPau(ポー)という街にあるSPAで、2010年から2013年の間に約1700匹が密かに殺処分されていたかもしれないというニュースがあったのでビックリして調べてみると、ここはSPAという名称ながら、別のSPAであることが分かりました。

 フランスでどれくらいのペットが殺処分されているかは分からなかったのですが、Refuge Rêves de Chiens、FAA、SPAに関しては、獣医の同意の下、完治不可能な病気にかかって苦しんでいるといった例外を除いては殺処分をしていません。動物愛護団体の活動を支援するときには、こういったことも考慮した方がよいと思います。

 我が家に来た猫たちはテスト期間が無事に終わり、正式にうちの子となりました。まだ少し警戒されていますが、気長に仲よくなっていこうと思っています。前の子を思い出さない日はないのですが、それはそれ。この子たちともまた別の歴史をできるだけ長く刻んでいきたいと思っています。

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前の子への反省もあり手に入れた、動物と自然療法に関する日仏語の本たち

荒木麻美

東京での出版社勤務などを経て、2003年よりパリ在住。2011年にNaturopathie(自然療法)の専門学校に入学、2015年に卒業。パリでNaturopathe(自然療法士)として働いています。Webサイトはhttp://mami.naturo.free.fr/