旅レポ
グルメ、景色、歴史をまとめて味わう山口県1泊2日の旅(その3)
山口県の地鶏「長州黒かしわ」の生産地を訪ねて……もちろん食べる
(2015/12/10 00:00)
山口県が同県の魅力を伝えるべく実施したプレスツアー。レポートの第3回目は再び「肉」の話である。主役は山口県初の地鶏「長州黒かしわ」。まずは、その生産現場を訪問した。
長州黒かしわとは、「黒柏鶏」という在来種をベースに長門市の深川養鶏農業協同組合が2013年にブランド化した、山口県初の地鶏だ。この生産場は長門市や美祢市にあり、そのうち、長門市にある「扇舎(ファンファーム)」は見学可能な施設として運営されている(ただし冬期は防疫のため見学は中止している)。
長州黒かしわの生産には、「低密度で広々と飼育」「一般的なブロイラーの約2倍となる約100日間をかけて飼育」といった特徴がある。なかでもファンファームは、管理性を高め、長州黒かしわを中心にした地域産業への循環も考慮されたユニークなスキームを構築している。
扇舎の名前のとおり、ファンファームは扇形の鶏舎となっており、内部は4区画に分かれている。ここで生後の生育期間によって12週~15週の鶏を区画別に分けて飼育する。生育期間別に飼育することで状態を把握しやすくする工夫だ。扇の中央部分からは全エリアへアクセスでき、入り口の設備のパラメータなどを容易にチェックできる。
また、このファンファームは緩やかな斜面に建てられている。鶏舎が傾斜というダジャレはさておき、これにより鶏は適度な運動を行なうことができる。飼育密度も1m2あたり8羽以下に抑えているという。
さらに興味深いのは、ファンファームでは「循環」にこだわることで、長州黒かしわの質の向上と、地元産業との連携を図っている点にある。
ここで飼育される鶏のエサは配合飼料が50%程度で、残りは農作物や食品の残りといった地元資源を利用している。そして、鶏のフンは水を吸わせて発酵させ、これに米ぬかなどを混ぜて農作物の肥料として使う。つまり、地元産のエサを食べて育った鶏を地鶏として販売し、鶏が出したフンは農作物の育成に利用するというサイクルでまわっているわけだ。
このフンを発酵させることは、肉質の向上にも繋がっているという。フンを発酵させることで、第1に臭いがないことが利点となる。フンの臭いは鶏の血液に入って肉の臭みに繋がるそうだ。第2に発酵による熱で有害な菌が死滅し、さらに熱が鳥のお腹を温めることで健康維持にも繋がっている。これによりエサに病気予防などのための薬を入れる必要がないのだという。
手間をかけて育てられた長州黒かしわは、深川養鶏の最高級ブランドという位置付けで、当然ながら値段もちょっとお高い(ブロイラーの3~4倍程度とか)。県内外の出荷比率は半々で、一部は首都圏にも流通しているそうだ。
ということで、生きている鶏を見て申し訳なく思う気持ちも抱きつつ、見ているだけではお腹は満たされないのも事実であり、この長州黒かしわをいただきに、長門市内にある「焼とりや ちくぜん総本店」へ向かった。ちなみに、長門市は人口1万人あたりの焼き鳥屋店舗数が日本一という一面もあるのだそうだ。
もちろん、焼とりや ちくぜん総本店は長州黒かしわを使った焼き鳥やスモーク、漬け物などを提供している。今回はモモ肉のネギマをいただいたが、いわゆる“かしわ”のイメージとはちょっと違って、もちっとした適度な歯ごたえ。ジューシーで味も濃く、ちょっと大げさかもしれないが鶏肉の美味しい部分だけが引き立って口の中に広がる、そんな印象を受けた。鶏肉に対する印象がちょっと変わる風味なので、「鶏肉独特の臭いとかがチョットね……」という人にも、ぜひ味わってみてほしい。
もちろん同店では長州黒かしわ以外の素材を使ったメニューも豊富。鶏肉だけでなく、焼き豚もとても美味しく、お酒が進む料理の数々を堪能した。
そして締めは、長門市のご当地グルメ「ながとりめん」。長州黒かしわの鶏ガラと魚介をベースにしたスープに太麺を組み合わせたラーメンで、後を引く、濃厚かつシンプルな味わいはクセになる。美味しいの一言しか出てこなかった。