旅レポ
快適なのに格安。ジェットスターで行く愛媛の旅(しまなみ海道編)
(2015/11/30 00:00)
自転車でめぐるしまなみ海道
2日目の始まりは、しまなみ海道の四国側の玄関口今治市から。来島海峡大橋のたもとにある、今治市サイクリングターミナル・サンライズ糸山にある風のレストランは、来島海峡大橋と瀬戸内の島々が織りなす絶景を眺めながら、愛媛の特産品をふんだんに使った食事を楽しめる。朝7時から営業しているのもうれしい。
朝食メニューは洋食と和食の2種類でどちらも617円とリーズナブル。洋食メニューの「しまなみのモーニングプレート」は地元で採れた季節野菜のサラダと“みかんたまご”のスクランブルエッグに3種類のパン(紅麹・黒糖・ミルク)にヨーグルト。みかんたまごとは、みかんの皮を加えた餌を食べた鶏からうまれた卵。ビタミンEが一般の卵の7倍含まれているとされ、鮮やかな色の黄身が特徴の愛媛県ならでは逸品だ。
和食メニューの「島宿の朝ごはん」は瀬戸内の魚と季節野菜の小鉢、地元の味噌を使った具だくさんのお味噌汁。愛媛でははだか麦を100%使用した麦味噌が一般的で、この甘口の麦味噌で作られたお味噌汁は1度飲んだらクセになる味わい。何ともやさしくマイルドな飲み口は朝食のお供にぴったりだ。ご飯は愛媛県産のヒノヒカリを使用しており、朝食から愛媛らしさを満喫できるメニュー。ドリンクセット185円はドリンクバー形式で、もちろん地元特産のみかんジュースもラインアップ。優しい味わいの朝食と、みかんジュースでしゃっきり目覚めることだろう。
風のレストラン
所在地:愛媛県今治市砂場町2-8-1 サンライズ糸山
電話:0898-41-3196
営業時間:7時00分~21時30分(年中無休)
食後には、サンライズ糸山から歩いてすぐの来島海峡展望館へ行ってみた。日本三大潮流の1つである来島海峡と世界初の三連吊り橋である来島海峡大橋の織りなす雄大な眺望を楽しめるスポットだ。
昔から「一に来島、二に鳴門、三と下って馬関瀬戸」(馬関瀬戸とは関門海峡のこと)と謡われ、潮の流れが速く海の難所として知られている。特に来島海峡の間には小島が多く、複雑な潮流で流速は10ノット(約19km/h)に達することもある。国内外の大小さまざまな船舶が通過し、多いときでは一日1200隻にものぼる。船は国際ルールで右側通行と定められているが、来島海峡では「順中逆西」という特殊な航法が定められ、潮流が南向きの場合は左側通行となる。潮の流れで右側通行と左側通行が切り替わるのは世界唯一で来島海峡だけなのにも注目。
来島海峡展望館
所在地:愛媛県今治市小浦町2-5-2
電話:0898-41-5002
営業時間:9時00分~18時00分(12月~2月は17時00分)
休館日:12月29~31日
広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶしまなみ海道には「瀬戸内海横断自転車道」が併設され、徒歩や自転車で渡ることができる。しまなみ海道はサイクリストの聖地として国内のみならず、海外からもサイクリストが訪れている場所だ。沿線には15カ所のレンタサイクルターミナルが設置され、サンライズ糸山もその1つ。
レンタサイクルというと電動アシスト付き自転車などのいわゆるママチャリを想像するが、しまなみ海道の15カ所のレンタサイクルターミナルではクロスバイクやマウンテンバイクといった本格的な自転車や2人乗りのタンデム自転車などバリエーションが豊富だ。電動アシスト付き自転車とタンデム自転車以外は、この15カ所のサイクルターミナルで乗り捨てが可能。レンタル料金はタンデム自転車が1日1200円、電動アシスト付き自転車が6時間1500円、クロスバイクやマウンテンバイク、軽快車は1000円で、レンタル料金のほかに1台1000円の保証料金がかかる。この保証料金は貸し出しを受けた場所に返却時に返却される。つまり保証料金が乗り捨てする時の手数料と言えるだろう。
近年漫画などの影響もあり、趣味として自転車がブームとなりつつあるが、いきなり数十万円もかけて自転車を購入するのはちょっとハードルが高いことだろう。でもここなら気軽にさまざまな自転車を楽しむことができる。愛媛県では「愛媛マルゴト自転車道」の整備や自転車イベントの開催など、国内外のサイクリスト誘致に積極的に取り組んでいる。そうした背景から自転車の安全利用促進のため2013年に「愛媛県自転車の安全な利用の促進に関する条例」が制定され、日本で唯一ヘルメット着用励行が条例が定められている。もちろん、レンタサイクルではヘルメットも一緒に貸してもらえるので安心だ。
ツアーではサンライズ糸山から来島海峡大橋を渡った大島にある道の駅「よしうみいきいき館」までのおよそ8kmのサイクリングを楽しんだ。クロスバイクはハンドルがストレートで操作しやすく姿勢が楽なので、初心者でも気軽に本格的なサイクリングを楽しめる。
今治市サイクリングターミナル サンライズ糸山
所在地:愛媛県今治市砂場町2丁目8番1号
電話:0898-41-3196
営業時間:8時00分~17時00分(4月~9月は20時00分)、年中無休
戦国時代の水軍に思いを馳せ、瀬戸内の魚介に舌鼓
来島海峡大橋を渡り大島に上陸。大島にある村上水軍博物館の前からは船に乗り、かつて戦国時代村上水軍が城塞にしていた島、能島へ渡る。「海城」として唯一国の史跡に指定されている能島は、2014年に本屋大賞を受賞した和田竜の歴史小説「村上海賊の娘」の舞台で、観光客が多く訪れる人気スポット。天然の要塞と言われていた、能島村上水軍の本拠地である城跡を歩く。かつての海賊が残したと言い伝えられている宝の山の話や海峡に入ってくる船の見張り方など、観光ガイドのテンポのよい解説を聞きながら、戦国時代のロマンに思いをはせるのもいいだろう。
能島の周りも常に激しい潮流があり、うず潮や岩を洗う早潮などの激しくも美しい景観を楽しむことができる。潮流体験は所要時間40分で大人1000円、小学生500円。
潮流体験から戻ってくると、桟橋前の建物では海鮮バーベキューを楽しむことができる。炭火で鯛を一尾丸ごと焼く体験はなかなかできないだろう。隣接する宮窪漁港は瀬戸内海最大級の漁港。潮流体験と魚食レストラン「能島水軍」は漁協の直営なので魚の美味しさは折り紙付きだ。鯛の他にも、サザエなど瀬戸内で上がる旬の魚介類や定番のタコやイカなど、魚介たっぷり海鮮バーベキューは1500円。セットの白ご飯は150円の追加で、炊き込みご飯に変更することができる。ほぐした鯛の身がたっぷり入った鯛めし風炊き込みご飯も絶品だ。
能島水軍
所在地:愛媛県今治市宮窪町宮窪1293-2
電話:0897-86-3323
営業時間:潮流体験は9時00分~16時30分(最終受付16時00分、2名より1時間間隔で随時運航)、レストランは11時00分~16時00分(ラストオーダーは15時30分)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)
神の島と言われる大三島へ
しまなみ海道の島々の真ん中に位置し、みかんを中心とした柑橘類の栽培が主な産業の大三島。そんな大三島にご夫婦でIターン就農をし、有機JAS認定を取得して有機・無農薬栽培に取り組みながら、古い酒場を改築した小さな可愛い工房でリキュール作りをしているのが「大三島 Limone」だ。
なかでも最も人気があるのは「大三島リモンチェッロ」。リモンチェッロは南イタリア発祥のアルコール度数が高くて甘く爽やかなレモンリキュールで、レモンの皮に含まれるリモネンという香り成分には油を溶かす性質があり、強いアルコールには殺菌作用や消化を助ける働きがあると言われている。そのためイタリアでは食後酒として楽しまれている。冷凍庫でキンキンに冷やしてショットグラスでキュッ! と飲むのがオススメ。工房で1本ずつ手作業で作られ、時期によって異なる柑橘の味、香り、風味を活かした少量生産だからこそ表現できる味わいに仕上がっている。
工房内のショップスペースでは、レモンや柑橘を使ったリキュールやジュース、ジャムなどを販売。レモンにまつわる可愛い雑貨も取り扱い若い女性に人気のショップとして注目されている。
大三島Limone
所在地:愛媛県今治市上浦町瀬戸2342
電話:0897-87-2131
営業時間:11時00分~17時00分
定休日:火・金曜(冬期間(12月~3月)は不定休)
大三島で現在柑橘類の生産が盛んなのは、古から神の島として長らく魚類を採ることが禁忌とされていたことに由来するという。大三島は国宝の島としても知られており、愛媛県最古の神社で、全国の山祇神社の総本社とされる大山祇神社がある。広い境内は静寂で厳かな神秘的な空間。境内中央には樹齢約2600年の大楠の木がご神木として鎮座している。山の神・海の神・戦いの神として、歴代の朝廷や武将の尊崇を集め、現在でも政治の第一線で活躍する人物や海上保安庁や自衛隊の幹部などが祈願に訪れる。境内にある宝物館には、奉納された鎧や兜、刀剣類を展示。源頼朝、源義経の鎧、大森彦七所用の大太刀など、国宝8点、国重要文化財469点をはじめとする宝物を収蔵、展示している。
大山祇神社
所在地:愛媛県今治市大三島町宮浦3327
電話:0897-82-0032
大山祇神社宝物館
開館時間:8時30分~17時00分(最終入場16時30分)
入場料:大人1000円、高校・大学生800円、小・中学生400円
【お詫びと訂正】初出時、大山祇神社の表記に一部誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
さて、天気がよければ再び大島に戻り、亀老山展望公園から夕日に照らされたしまなみ海道の絶景を眺めたいところだが、取材当日はあいにくの雨模様。しまなみ海道の美しい夕日はどうやら次回の旅までお預けのようだ。途中来島海峡サービスエリアに立ち寄り、松山空港へと向かうことになった。
帰りの飛行機は松山空港20時05分発のGK404便を利用する。松山空港のターミナルビルは1カ所なので迷うことはないだろう。ジェットスター・ジャパンのカウンターはターミナルに入って左側にある。チェックインを済ませて、2階でおみやげ物店で買い物をしているとあっという間に搭乗開始の時刻だ。
今回のツアーは、1日目のお昼に松山空港に到着し、2日目の夜に現地を出発する便を利用したので、およそ1日半で松山市内としまなみ海道の島々まで堪能することができた。
特に道後温泉周辺は、筆者が抱いていたひなびた趣のある温泉街というイメージをとてもいい意味で裏切る、趣とモダンさが融合したオシャレな雰囲気。プライベートで再び訪れたいと思うほど素敵でのんびりとくつろげる温泉街だった。また、しまなみ海道での本格的なサイクリング体験や文学と歴史に触れる資料館見学など、旅を充実させるさまざまな楽しみがある。そして、特産の鯛料理やスイーツなどグルメもあり、非常に満足感の高い旅であった。
今回利用したジェットスター・ジャパンは、成田~松山線の最も安い運賃で片道5990円からなので、往復で1万2000円ほど。新幹線で東京から行ける温泉地と比べてみると、東京から軽井沢、那須塩原の運賃と新幹線指定席特急料金の合計が片道5710円なので、ふと温泉に行こうと思ったときに選択肢に入るレベルだ。
ジェットスター・ジャパンはローソン、ミニストップ、ファミリーマートと提携しており、インターネットだけではなくコンビニ店頭設置の端末で予約、購入も可能。会員登録や窓口での発券は必要なく、インターネットやコンビニで予約、購入してWebチェックインを利用すれば、空港の搭乗口へ向かうだけという気軽さも魅力だ。旅の準備もスマホ1台あれば片手で気軽にでき、予算的な気楽さから「また来よう」という気持ちも自然に沸いてくる。関東から遠いと思っていた四国・松山をより身近に感じた旅となった。