旅レポ
古都ジョグジャカルタの世界遺産ボロブドゥール寺院へ。“それ自体が巨大な曼荼羅”、仏教の宇宙観に圧倒される
2024年8月12日 12:00
天皇陛下も履かれたサンダルで! 世界最大の仏教遺跡ボロブドゥール
世界史の教科書に載っていた(と記憶する)ボロブドゥール寺院は、ジョグジャカルタ中心部から北西に40kmほどの郊外にあります。市内のホテルからバスに揺られること1時間半ほどで到着。入場時にスキャンされるQRコード付きのリストバントを受け取り、専用サンダルに履き替えます。
ちなみにこのサンダル、遺跡が傷つかないように裏がゴム製になっている専用サンダルで、去年ボロブドゥールを視察された天皇陛下も同じものを履かれていてニュースになっていましたよね。
ボロブドゥール寺院は、ムンドゥット寺院、パウォン寺院の3寺院から成り立つ「ボロブドゥール寺院遺跡群」として1991年に世界文化遺産に登録されています。現在は遺跡保護と保存のために、遺跡に登ることができる人数を1日あたり1200人に制限しています。
登壇できるのは火~日曜の8時30分~17時で、見学できるのはそのうちの1時間のみ。入場チケットは公式サイトから事前購入し、料金はサンダル込みで大人45万5000ルピア(約4200円)です。
ガイドさんの話では、現在のような人数制限やサンダル指定は、コロナ以降とのこと。以前は観光客が遺跡の隙間にタバコやティッシュなどを入れたりしていたほどマナーがわるかったのだとか。ちょっぴり高めに感じる入場料も、持続可能な観光のため、そして世界遺産の維持管理には仕方ないことなのかもしれませんね。
さて、世界最大の仏教寺院といわれるボロブドゥールが作られたのは、8~9世紀のシャイレンドラ王朝時代といわれています。高さは33.5m。一辺120mの正方形をした基壇の上には5層の方形壇、さらにその上に3層の円形壇で構成され、最上層中央には大ストゥーパ(仏塔)がそびえています。
遠目からは黒くて大きな丘のように見えるボロブドゥール寺院ですが、近づくにつれて無数の仏像や精密な浮き彫りが見えてくると、その精密さと迫力に圧倒されてしまいます。今回は現地ガイドさんによる日本語解説を聞きながら見学することができたので、より理解が深まりました。
ボロブドゥールの見どころは、なんといっても回廊にびっしり施されたレリーフの数々です。ブッダが誕生してから悟りを開くまでの物語や、経典の内容などが精密に施されていて、さながら絵巻物を見ているかのよう。「よく彫ったなぁ~」と、ひたすら感心してしまいました。ちなみにボロブドゥール寺院の建造が始まったとされる西暦780年ごろといえば日本は奈良時代!
ボロブドゥールは“寺院”とはいいつつも、私たち日本人がイメージするそれとはまったく異なり、そもそも実際にどう使われた建物なのか不明なのだそう。安山岩のブロックを積み上げて造られている外壁の内部は何もないことが分かっています。
ただ、基盤、方形壇、円壇の三層構造は、仏教の世界観を表わす欲界・色界・無色界の「三界」の世界を反映していると言われています。つまり下から上に登っていくにしたがって、煩悩から悟りへの道を疑似体験できるということ! そしてボロブドゥール寺院は、それ自体が仏教の宇宙観を表現した巨大な曼荼羅と考えられています。
そしてシャイレンドラ朝の滅亡後は荒廃し、1814年に発見されるまで、約1000年もの間火山灰とジャングルに埋もれて眠っていたというからびっくりです。数々の謎を秘めながら、世界中から訪れる観光客を魅了し続けるボロブドゥール。これを観にいくだけでもジャワ島を訪れる価値あり!のロマンに満ちたスポットでした。
こちらはヒンドゥー教、プランバナン寺院
ボロブドゥール寺院をあとにして向かったのは、ジョグジャカルタ市内から東に17kmほどのところにあるプランバナン寺院。周辺5kmに点在する仏教寺院などと合わせて「プランバナン寺院遺跡群」として世界文化遺産登録されています。ボロブドゥールからは50kmくらい離れていて、クルマで1時間半ほど。
ボロブドゥールは仏教遺跡でしたが、こちらはヒンドゥー教寺院。9世紀後半(日本は平安時代)にマタラム王国が建てたといわれています。ジャワ島中部に、ほぼ同時期に、仏教とヒンドゥー教という違う宗教の王朝が存在していたというのが興味深いですよね。
ロロ・ジョングランとも呼ばれるプランバナン寺院のなかで、最も高い建造物がシヴァ堂です。東に正門があり、回廊には古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」の場面を伝えるレリーフが施されています。内部にある「シヴァ神」や「ガネーシャ神」などを祀っている小部屋を巡るのが見どころとなっています。
国民の約9割がイスラム教徒のインドネシアで、仏教遺跡のボロブドゥールや、ヒンドゥー教寺院のプランバナン寺院を見て回るということは、インドネシアの多様性や歴史の奥深さを感じるユニークな体験でした。
ジョグジャカルタで泊まったホテル
続いては、ジョグジャカルタで宿泊した2つのホテルをご紹介しましょう。1つ目は「メリア プロサニ ジョグジャカルタ」。ジョグジャカルタ随一の繁華街マリオボロ通りにほど近いロケーションにあるホテルです。中庭に広がるガーデンとプールが南国リゾートの雰囲気たっぷり。朝食ビュッフェの品揃えがよかったです。
2つ目は、同じメリア系列の少しカジュアルなホテル「インサイド バイ メリア ジョグジャカルタ」です。市内中心部から少し東にあるので、プランバナン寺院群に行くには便利な場所(8.8km、クルマで約25分)。このホテルからは、インドネシア有数の活火山ムラピ山の雄姿を眺めることができます。