旅レポ

古都ジョグジャカルタの世界遺産ボロブドゥール寺院へ。“それ自体が巨大な曼荼羅”、仏教の宇宙観に圧倒される

円壇頂上にある大ストゥーパを72の小ストゥーパが取り囲みます

 7月中旬に開催された、ガルーダ・インドネシア航空主催の視察ツアー。本稿ではジャワ島で見てきた世界遺産のボロブドゥール寺院やプランバナン寺院群をご紹介します!

「でかっ!」というのが第一印象。エジプトのピラミッドを思わせる巨大建造物でした

天皇陛下も履かれたサンダルで! 世界最大の仏教遺跡ボロブドゥール

入場料に含まれるので記念に持ち帰ることができるサンダルは各種サイズあり

 世界史の教科書に載っていた(と記憶する)ボロブドゥール寺院は、ジョグジャカルタ中心部から北西に40kmほどの郊外にあります。市内のホテルからバスに揺られること1時間半ほどで到着。入場時にスキャンされるQRコード付きのリストバントを受け取り、専用サンダルに履き替えます。

QRコード付きのリストバント

 ちなみにこのサンダル、遺跡が傷つかないように裏がゴム製になっている専用サンダルで、去年ボロブドゥールを視察された天皇陛下も同じものを履かれていてニュースになっていましたよね。

周辺はボロブドゥール史跡公園として整備されていて、登らなくても公園入場は有料です

 ボロブドゥール寺院は、ムンドゥット寺院、パウォン寺院の3寺院から成り立つ「ボロブドゥール寺院遺跡群」として1991年に世界文化遺産に登録されています。現在は遺跡保護と保存のために、遺跡に登ることができる人数を1日あたり1200人に制限しています。

 登壇できるのは火~日曜の8時30分~17時で、見学できるのはそのうちの1時間のみ。入場チケットは公式サイトから事前購入し、料金はサンダル込みで大人45万5000ルピア(約4200円)です。

近づくと広角レンズでないと全体を捉えることができないほどの大きさ

 ガイドさんの話では、現在のような人数制限やサンダル指定は、コロナ以降とのこと。以前は観光客が遺跡の隙間にタバコやティッシュなどを入れたりしていたほどマナーがわるかったのだとか。ちょっぴり高めに感じる入場料も、持続可能な観光のため、そして世界遺産の維持管理には仕方ないことなのかもしれませんね。

1時間ごとの入れ替わり制。列になって入場を待ちます

 さて、世界最大の仏教寺院といわれるボロブドゥールが作られたのは、8~9世紀のシャイレンドラ王朝時代といわれています。高さは33.5m。一辺120mの正方形をした基壇の上には5層の方形壇、さらにその上に3層の円形壇で構成され、最上層中央には大ストゥーパ(仏塔)がそびえています。

基壇に並ぶ仏像群。なかには首がないものも

 遠目からは黒くて大きな丘のように見えるボロブドゥール寺院ですが、近づくにつれて無数の仏像や精密な浮き彫りが見えてくると、その精密さと迫力に圧倒されてしまいます。今回は現地ガイドさんによる日本語解説を聞きながら見学することができたので、より理解が深まりました。

「醜悪な顔」のレリーフについて説明してくれるガイドさん

 ボロブドゥールの見どころは、なんといっても回廊にびっしり施されたレリーフの数々です。ブッダが誕生してから悟りを開くまでの物語や、経典の内容などが精密に施されていて、さながら絵巻物を見ているかのよう。「よく彫ったなぁ~」と、ひたすら感心してしまいました。ちなみにボロブドゥール寺院の建造が始まったとされる西暦780年ごろといえば日本は奈良時代!

回廊には経典の内容を表わすレリーフが施されています
こちらはスパイス(主にシナモン)を運んでいた商船のレリーフ

 ボロブドゥールは“寺院”とはいいつつも、私たち日本人がイメージするそれとはまったく異なり、そもそも実際にどう使われた建物なのか不明なのだそう。安山岩のブロックを積み上げて造られている外壁の内部は何もないことが分かっています。

左右のレリーフを見ながら回廊を時計回りに歩きます

 ただ、基盤、方形壇、円壇の三層構造は、仏教の世界観を表わす欲界・色界・無色界の「三界」の世界を反映していると言われています。つまり下から上に登っていくにしたがって、煩悩から悟りへの道を疑似体験できるということ! そしてボロブドゥール寺院は、それ自体が仏教の宇宙観を表現した巨大な曼荼羅と考えられています。

上の回廊に行くには、このような急な階段を上ります

 そしてシャイレンドラ朝の滅亡後は荒廃し、1814年に発見されるまで、約1000年もの間火山灰とジャングルに埋もれて眠っていたというからびっくりです。数々の謎を秘めながら、世界中から訪れる観光客を魅了し続けるボロブドゥール。これを観にいくだけでもジャワ島を訪れる価値あり!のロマンに満ちたスポットでした。

愛敬のある獅子像
体だけの仏像
円壇に到着。ここは三界のうちの「色界」にあたります
中央が大ストゥーパ
小ストゥーパのなかには仏像が入っています
坐像が向く方角によって手の印が異なるというのも興味深いポイント
ストゥーパ自体が壊れてむき出しになっている仏像も
大ストゥーパは「無色界」。欲望や物理的条件も超越して無の世界です
円壇から見下ろす外界
時間になったので下りてくる観光客

こちらはヒンドゥー教、プランバナン寺院

チケット売り場に展示されていたプランバナン寺院の模型

 ボロブドゥール寺院をあとにして向かったのは、ジョグジャカルタ市内から東に17kmほどのところにあるプランバナン寺院。周辺5kmに点在する仏教寺院などと合わせて「プランバナン寺院遺跡群」として世界文化遺産登録されています。ボロブドゥールからは50kmくらい離れていて、クルマで1時間半ほど。

中央が高さ47mあるシヴァ堂。空に向かって突き出る尖塔のシルエットが美しい

 ボロブドゥールは仏教遺跡でしたが、こちらはヒンドゥー教寺院。9世紀後半(日本は平安時代)にマタラム王国が建てたといわれています。ジャワ島中部に、ほぼ同時期に、仏教とヒンドゥー教という違う宗教の王朝が存在していたというのが興味深いですよね。

かつての地震などで崩壊されたままの石が積み上がっている場所も

 ロロ・ジョングランとも呼ばれるプランバナン寺院のなかで、最も高い建造物がシヴァ堂です。東に正門があり、回廊には古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」の場面を伝えるレリーフが施されています。内部にある「シヴァ神」や「ガネーシャ神」などを祀っている小部屋を巡るのが見どころとなっています。

それにしても大きい!
ボロブドゥールで見たレリーフとは雰囲気がちょっと違いますよね

 国民の約9割がイスラム教徒のインドネシアで、仏教遺跡のボロブドゥールや、ヒンドゥー教寺院のプランバナン寺院を見て回るということは、インドネシアの多様性や歴史の奥深さを感じるユニークな体験でした。

階段を上がっていくと……
シヴァ神
ガネーシャ神像
もうすぐ夕暮れ
帰るころは空が茜色に

ジョグジャカルタで泊まったホテル

メリア プロサニ ジョグジャカルタ

 続いては、ジョグジャカルタで宿泊した2つのホテルをご紹介しましょう。1つ目は「メリア プロサニ ジョグジャカルタ」。ジョグジャカルタ随一の繁華街マリオボロ通りにほど近いロケーションにあるホテルです。中庭に広がるガーデンとプールが南国リゾートの雰囲気たっぷり。朝食ビュッフェの品揃えがよかったです。

大理石が美しいフロントロビー
広さも十分で使い勝手のいいお部屋
バスタブもありました
翌朝、部屋から見下ろすと気持ちよさそうなプールが!
ホテル上階から見たジャカルタの街
緑いっぱいのトロピカルガーデン
ラグーンスタイルのプール

 2つ目は、同じメリア系列の少しカジュアルなホテル「インサイド バイ メリア ジョグジャカルタ」です。市内中心部から少し東にあるので、プランバナン寺院群に行くには便利な場所(8.8km、クルマで約25分)。このホテルからは、インドネシア有数の活火山ムラピ山の雄姿を眺めることができます。

インサイド バイ メリア ジョグジャカルタ
利用したキングベッドルーム
こちらはツインタイプのお部屋
絶えず噴煙を上げている活火山、ムラピ山
景色抜群のプールが屋上に!

ジョグジャカルタの目利き通り、マリオボロ通りを歩いてみた

 最後は、夜に少しだけ散策したマリオボロ通りをご紹介しましょう。

観光用の馬車がたくさん

 街の中心を南北に走るマリオボロ通りは、長さ約1km。お土産屋さんや屋台、マッサージ店、レストラン、カフェなどが両脇にずら~っと立ち並び、ジョグジャカルタ最大の繁華街となっています。タクシーのように使える馬車が名物のようで、観光客を乗せた馬車がたくさん走っていました。時間があればゆっくり散策してバティックなどのショッピングを楽しみたかったな~。

中華系の人が多いインドネシア。通りには牌楼も
美味しそうな屋台もいろいろ
こちらはベチャと呼ばれる三輪自転車

 次項は、いよいよジャワ島からバリ島へ。素敵なホテルをご紹介します!

ゆきぴゅー

長野生まれの長野育ち。2001年に上京し、デジカメライター兼カメラマンのお弟子さんとして怒涛の日々を送るかたわら、絵日記でポンチ絵を描き始める。独立後はイラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”として、雑誌やWeb連載のほか、企業広告などのイメージキャラクター制作なども手がける。