旅レポ

福島県側から尾瀬にアプローチ! 神秘的な光景広がる名勝「尾瀬沼」を目指して1泊2日のハイキングへ

池塘越しに尾瀬沼を眺められる沼尻平

 お盆明けの週末、福島県が主催する1泊2日の尾瀬ツアーに参加してきました。緑が美しい盛夏シーズンもそろそろ終盤。秋の気配がちょっぴり感じられる尾瀬は、東京の猛暑を忘れさせるほど過ごしやすい気候でした。

 尾瀬へのアクセスは一般的に、福島県側から入るか、群馬県側から入るかの2通り。首都圏発だと群馬県側からアプローチする人が多いそうで、私も初めて尾瀬を観光したときは群馬県の「鳩待峠」からのスタートでした。

 今回は、福島県の檜枝岐村(ひのえまたむら)から入り、まずは起点となる「山の駅 御池」から主要登山口の「沼山峠」をシャトルバスに乗って目指します。

標高1500mの場所にある「山の駅 御池」
マイカー規制があるので「山の駅 御池」から入山口の「沼山峠」までは片道約20分のシャトルバスに乗る必要があります。運賃は大人片道600円
シャトルバスは30~40分間隔で運行。爽やかなカラーのEVバスも。到着した沼山峠には、檜枝岐村営の休憩所や売店がありました
ここが登山口。尾瀬沼に向けてスタート!

 そもそも尾瀬ってどこにあるの? という人にまずは基本情報を。広い意味で「尾瀬」とは福島、新潟、群馬、栃木の4県にまたがる尾瀬国立公園を指します。園内西側には本州最大の湿原「尾瀬ヶ原」、東側には神秘の沼といわれる「尾瀬沼」があって、一般的に尾瀬とはこの2大エリアと周辺の山々のことをいいます。

 今回の行程では、東京を朝出発してその日は尾瀬沼の山小屋に泊まり、2日目の午前中に尾瀬沼東岸のハイキングを楽しむという流れ。木道が整備されていて、それほどキツい勾配もないので、日ごろ運動らしい運動をしていない私でもこなすことができた入門コースです。初めての本格的な山小屋泊もハイライトの1つとなりました。

1日目 沼山峠~尾瀬沼ヒュッテ

 ツアー1日目の沼山峠~尾瀬沼東岸は、普通に歩くと1時間~1時間30分ほど。樹林に入って木道や階段を登っていきますが、思っていたほど急ではありませんでした。しばらくするとベンチのある沼山峠展望台に到着。木々のあいだから、これから目指す尾瀬沼がちょっとだけ見えてワクワクします。

雨が降っていたので皆さんザックカバーを付けています
遠くにちらっと見える尾瀬沼。昔はよく見えたそうですが、今は樹木が伸びてしまってほんの少しだけ
シラタマノキの実(左上)など、いろいろな植物が見られました

 沼山峠を下って林を抜けたところで“ザ・尾瀬!”という景色に一変します。「大江湿原」です。何度も足を運んでいる人でもパァーッと視界が広がるこの場所では、毎回感動するそうですよ。季節が違えば見られる草花も違うので、そのたびにシャッターを押してしまうのだとか。

下っていくと前方が開けて大江湿原に出ます
大江湿原を流れる大江川。上から魚も見えました
大江湿原で見られた植物。ここでは毎年7月中旬~下旬にニッコウキスゲが咲きます
湿原の中央に続く木道を延々と進みます
大江湿原のシンボル「三本カラマツ」

快適なカプセルベッドで熟睡。お1人さまにもオススメ!

 この日、宿泊した「尾瀬沼ヒュッテ」は檜枝岐村営の山小屋。建物前のウッドテラスから「燧ヶ岳(ひうちがたけ)」が一望できる素晴らしい眺めが自慢です。112人収容で全33室。うちカプセルベッドが6床ある部屋が6室あって、今回はこのカプセルベッドを利用しました。

夕方、尾瀬沼ヒュッテに到着
入り口から入ったところにフロント
渋くてカッコいいオリジナル手ぬぐいは1200円
燧ヶ岳と高山植物が描かれたバージョンも
記念グッズになりそうなものがいろいろ

「え? 山小屋にカプセルベッド!?」と、最初に聞いたきは耳を疑ったのですが、これがすこぶる快適でびっくりするくらいぐっすり眠れました。荷物や貴重品は奥にあるダイヤル式ロッカーに入れます。カプセル内は高さもあるので狭いという感じはしませんでした。

2020年に一部の部屋をこのようなカプセル型ベッド専用ルームに改装したのだそう。お布団を敷いてカーテンを閉めればプライベート空間のできあがり
それぞれにスマホやカメラを充電できるコンセント付き。明るさ調整できるライトもあります

 山小屋の食堂で18時に夕食をいただき、19時にお風呂に入ったら疲れが出たのか眠くなり、21時には就寝するという、まるで子供のころのような生活リズム。普段の生活からは想像つかない健康的な山時間でした。

夕食は17時~18時30分のあいだに食堂でいただきます
品数が多くて栄養満点の夕食。舞茸ごはんが美味しい!

2日目 尾瀬沼東岸の周辺散策~沼山峠

 翌朝は4時45分に玄関集合といわれてちょっとビビっていましたが、アラームでちゃんと起きることができてホッ。尾瀬沼は朝もやがかかる早朝の風景が一番美しいそうで、確かにヒュッテ近くの展望広場から見た尾瀬沼と燧ヶ岳の静寂は感動もの! 尾瀬沼畔の山小屋に宿泊した人しか味わえないご褒美のような光景でした。ヒュッテが用意してくれた朝食のお弁当をリュックに詰めて、尾瀬沼散策に出発です。

4時45分、三日月がまだくっきりと見えていました
5時過ぎ東の空はキレイな朝焼けに
燧ヶ岳も綺麗に見えました
ヤナギランの奥の建物は尾瀬最古の山小屋「長蔵小屋(ちょうぞうごや)」
まずは尾瀬沼越しに燧ヶ岳を望めるビューポイントへ
朝5時30分、静寂のなか聞こえるのは鳥たちのさえずりだけ。時折、水鳥の羽ばたく音も
清々しい朝の空気を吸いながら歩きました
こんな登りもちょっとだけあります。濡れた木の根っこは滑りやすいので慎重に
ヒノキ科の「クロベ」(別名ネズコ)。皮が水に強く丈夫なので檜枝岐村では曲げわっぱに使われているそう。山小屋では屋根に敷かれていたりも
左に尾瀬沼を見ながら木道を進みます

 1周約13kmの尾瀬沼を反時計回りに歩いて「沼尻平(ぬしりたいら)」(福島県南会津郡檜枝岐村燧ケ岳1)という場所に到着。ここには湿原・泥炭地に見られる「池塘(ちとう)」があって、その池塘を巡る木道が敷かれています。大自然が長い年月をかけて作り出したかけがえのない光景に目を奪われてしまいました。

この日の目的地、沼尻平に到着
湿原にできる池塘は大小さまざま。まるでジブリ作品に出てきそうな神秘的な光景

 この日は曇り空だったのでイマイチでしたが、天気がよければ池塘に雲が映り込む光景が映えると人気なのだとか。沼尻平は静かな湿原の風景がとにかく美しく、穏やかな気持ちになれる特別な場所。多くの人々の努力によって守られ続けていることに感謝しながらおにぎりをほおばり、もと来た道を引き返しました。もちろん時間に余裕があれば、そのまま尾瀬沼を1周するのもオススメです。

池塘に花札のように浮かぶヒツジグサは秋にかけて赤く紅葉していきます。小さな白い花が昼過ぎになると咲くそうです
赤くモワモワしているのは食虫植物のナガバノモウセンゴケ。日本で自生しているのは北海道と尾瀬のみ

 散策コースのほとんどは木道が敷かれているため、初心者でも安心して楽しめるのが尾瀬の魅力。体力やアクセス環境、誰と行くかなど、条件に応じていろいろコースを組み立てられるので、リピーターが多いというのもうなずけます。

7時30分に沼尻平で朝ごはん。澄んだ空気のなかで食べるおにぎりは最高です
右端の建物は休憩所とのことですが現在は休業中。近くにあるトイレも閉鎖中でした

 福島県側からアプローチする尾瀬沼散策は、首都圏発の起終点となる沼山峠までが少々遠いですが、2022年シーズン中にまた行きたい! と思うほど素晴らしいものでした。

 公共交通機関では、東武鉄道の臨時夜行列車「尾瀬夜行23:45」などを利用する手もあります。「いつか尾瀬に行ってみたいと思っているんだよね」という人は、この秋の紅葉シーズンに訪問するのもオススメです。できることなら山小屋に泊まって、ぜひ早朝や夕方の神秘的な風景を堪能してみてください。

無事、尾瀬沼ヒュッテに戻ってきました
こちらは尾瀬沼ビジターセンター。尾瀬沼地区に宿泊している人を対象に無料の星空観察会などを開催しています
“天然水珈琲”の文字に思わず誘われた長蔵小屋売店
トレッキング後のコーヒーは写真を撮るのも忘れるくらい美味しかったです
沼山峠休憩所に戻って、再びシャトルバスで「山の駅 御池」へ
尾瀬の各山小屋は10月下旬にその年の営業を終了します。冬期の入山は中上級者向けとなるのでご注意を

 次稿では、福島県側の尾瀬観光の起点「檜枝岐村」へ。檜枝岐歌舞伎の舞台や美味しいお蕎麦の店を訪ねたミニツアーの模様をレポートします。お楽しみに。

ゆきぴゅー

長野生まれの長野育ち。2001年に上京し、デジカメライター兼カメラマンのお弟子さんとして怒涛の日々を送るかたわら、絵日記でポンチ絵を描き始める。独立後はイラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”として、雑誌やWeb連載のほか、企業広告などのイメージキャラクター制作なども手がける。