旅レポ
途中下車でいいとこ探し! 観光列車「四国まんなか千年ものがたり」で大歩危&琴平行ってきた!
2022年5月24日 07:00
4月1日から6月30日まで実施中の「四国アフターデスティネーションキャンペーン」に合わせて、四国の見どころを観光列車に揺られながら巡る旅。
今回は「金毘羅船々~♪」というフレーズでおなじみの琴平の「金刀比羅宮」。そして2022年大注目のアウトドア天国・大歩危から「四国まんなか千年ものがたり」に乗車し、この時期ならではの楽しみ方をお届け! 参拝プラス列車旅で四国滞在をより充実させるプランをご紹介する。
朝イチでこんぴらさんへ。785段の階段を登り、御本宮をひたすら目指す
四国を訪れたならば、誰もが一度は訪れたいと願う有名観光地“琴平”。目的地はもちろん琴平町の象頭山中腹に鎮座するこんぴらさんこと「金刀比羅宮」。農業・殖産に医薬、海上守護の神様として信仰され、年間約400万人ほどの参拝者が訪れる神社だ。
門前に広がる“こんぴら表参道”も、朝イチは参拝者もまばら。地図を片手に散策しつつ、酒の歴史館「金陵の郷」で「四国こんぴら歌舞伎大芝居」のお練りで使用される人力車で記念撮影したり、約400年の歴史を持つ老舗旅館の帳場を活用した「虎屋」の造形を愛ながらのんびりそぞろ歩きが楽しめる。
参道を進み、いよいよ785段の石段がスタート。ところどころで「ここで二九四段目 御本宮まであと四九一段」などと残りの石段数を教えてくれるのがありがたい。「一之坂」を進み、境内への入り口「大門」へ。手前には「五人百姓の加美代飴」(500円)が販売中なので名物の購入も忘れずに。
「大門」から先は神域となり下界の喧騒を離れ、荘厳な雰囲気が漂う空間に。ひたすら急な石段を進み続け、ラストに133段「御前四段坂」を登り切り「御本宮」に到着! 片道約30分かけて登ったが、途中にはカフェ&レストラン「神椿」に美術館などもあるので、休憩しながら時間をかけて登るのがお勧め。
参拝後にぜひ訪れておきたいのが「旧金毘羅大芝居(通称:金丸座)」。多くの有名歌舞伎役者が訪れ演目を披露する現役の日本最古の芝居小屋で、先日耐震改修が完了したばかり。こんぴらさんのお参り後に参拝者が訪れる歓楽街にあったが、保存のため現在の場所に移築されたそうだ。
1835年に建てられた館内の拝観(大人500円、中高校生300円、小学生200円)では、奈落に通じる“スッポン”や“空井戸”、紙吹雪を降らせる“ブドウ棚”、宙吊りで使う“かけすじ”さらに“廻り舞台”に人力の“セリ”などを見学が可能。役者気分で花道を通ることができるうえ、演者を支える裏方の仕事場も垣間見れるなど貴重な時間が過ごせる。通常は春に「四国こんぴら歌舞伎大芝居」を実施。間近で歌舞伎の熱気を味わうには最高の芝居小屋なので、タイミングを合わせて訪れることをお勧めしたい。
讃岐うどん作りに挑戦! コネコネフミフミ、コシ強のマイうどんを手に入れよう
香川=うどん県! マイうどんを作らずして帰れない! ということで、参拝後に「中野うどん学校」へ入学。約1時間でうどん作りを学び卒業できると参拝客にも人気のお店だ。「うどん打ち体験」(1600円 ※要予約、人数により価格変動)では、最初にマイうどん作りからスタート。すでに用意されている団子(うどんの元)を伸ばし4mm幅にカットし、パッケージングしサクッと完成!
続いては、レベルアップし本格的なうどん作りへ移行。小麦粉と食塩水を使って団子から作る作業を行なう。グループで、こねる係、踏む係、タンバリンで応援係と作業を分担しうどんを完成させる。リズミカルな音楽が流れ、ちょっとした気分転換にもなる足踏みはそうとうおもしろい。なお、うどんを打ち終わったあとはクールダウンに「嫁入りおいりソフト」(350円)も食べておこう。おいりのハッカの優しさと和三盆のソフトクリームの上品さは格別! ビジュアルも愛らしいので撮影も忘れずに。
まずは運行開始50周年の特急南風で大歩危へ。周辺を散策し、巨大油揚げを入手
列車の時間となり、JR「琴平駅」へ。今回の目的は、2017年に運行を開始し今年で5周年を迎えた観光列車「四国まんなか千年ものがたり」への乗車だ。3両編成の車体外装には四季をイメージしたカラーリングを施し、季節のうつろいや自然の豊かさ、さらに複雑さを表現している。乗車したのは“さくら紀行”と称し沿線の桜を車内から鑑賞しながら大歩危から琴平、多度津まで約3時間かけて列車の旅が満喫できるコース。まずは乗車する大歩危へと琴平駅から運行50周年の特急「南風」に乗り一気に移動。約45分で大歩危駅に到着後、出発時間まで余裕があるので、駅周辺を散歩してみることにした。
改札を出てすぐ大歩危駅から徒歩約1分の場所に「歩危マート」を発見。こちらではオリジナル商品の巨大な油揚げ「歩危あげ」(450円)や硬めの豆腐に祖谷こんにゃくなどが手に入る。向かい側には「歩危マート2号店」があり、食事処も併設。訪れると「お茶を食べんかえ!?(食べていきなさい)」と声をかけられ挽きたての大歩危煎茶と歯応えがクセになる「揚げおへぎ」をごちそうになった。
観光列車「四国まんなか千年ものがたり」で車窓から桜。2時間弱の旅に大歩危から出発
出発時間が近づき大歩危駅へ戻るとちょっとした出発イベントを開催中。地元の人々が5周年をお祝いしたり、記念撮影を楽しんだりとわきあいあい。なお、車体を撮影するにはやはり大歩危駅がベスト。3号車秋彩「あきみのり」の章→2号車夏清「なつすがし」の章→1号車春萌「はるあかり」の章をすべて写真に収めることができる。なお、2号車の反対側・冬清「ふゆすがし」の章はホーム側から近めだが撮影ができるのはここだけ。
車内はレトロモダンな雰囲気で、古民家をイメージしたインテリアが特徴的。1号車春萌「はるあかり」の章は、若葉の芽吹きをイメージ。天井中央は格子で囲炉裏の火棚をイメージし、机の上のライトで火を囲むような団欒の雰囲気を演出。天井のサイドの角度もその先に屋根があるかのよう。さらに軒下を彷彿させる窓から景色を楽しむイメージは、まさにコンセプトの“大人の遊山”を感じる空間となっている。
続く2号車のポイントは7mものロングベンチ。夏の川のすがすがしさと冬の空気の清らかさをイメージした藍染のブルーが基調の車内は、床のフローリングもブルー。団体での貸切利用もでき、目の前に広がる景色を思う存分楽しめる。ダイニングコーナーも併設し、落ち着いたバーのような雰囲気だ。
3号車は大歩危・小歩危の紅葉で色づく渓谷や山々、熟れた果実に讃岐平野の稲穂をイメージさせるカラーが軸。徳島県産の杉材を贅沢に使った空間が落ち着きと安らぎを与えてくれる。どの車両もまさに走る古民家レストランのイメージで、贅沢な世界が広がっていた。
いよいよ列車が出発。ホームでは「歩危マート」のオーナーさんや、駅職員に地元の人々総出でお見送り。出発後も「妖怪屋敷と石の博物館」のスタッフらが手を振ってくれるなど、心温まる瞬間が何度もあった。車窓からの眺めも抜群で大歩危・小歩危の急流と渓谷が左右で楽しめるので、どちらの席に座っても景色が堪能できるのがうれしい。
食事は三段お重の「遊山箱」で。季節限定のスイーツ&ドリンクもマストで味わいたい
列車旅といえば、やはり車内でのお弁当が景色とともに最大のお楽しみ。「四国まんなか千年ものがたり」では、桃の節句の時期に子供たちが野山で遊ぶ際に持参した“遊山箱”と呼ばれるお弁当箱風のランチ「おとなの遊山箱」(5100円 ※要予約)を提供してくれる。扉をスライドさせ、出てくるのは黒塗りの三段お重。日本料理「味匠藤本」の料理長による地元食材をたっぷり使ったメニューが詰まっている。
“さくら紀行”では「桃江柳緑 春の遊山」とし、鰆の若草焼きから旬菜寿司、徳島県産のお米を使った高野豆腐フライに旬の筍とそば米を使ったお吸い物など盛りだくさん。季節の和菓子も食後に渡され大満足に。コーヒーソーサーも大谷焼と細部まで地元愛があふれている。
なお、季節限定のノンアルカクテル「春色いちごジンジャー」(750円、現在は販売終了)もオーダー。香川県産いちご「さぬき姫」と瀬戸内レモンを使いシュワっとした喉越しの奥に苺のフレッシュと果肉の酸っぱさがプラスされ、爽やかな1杯に仕上がっていた。また、デザートとして「季節のケーキ いちごのシフォン」(600円、5月末まで販売予定)もプラス。こちらもドリンク同様のいちごを使いゆるめの生クリームとの組み合わせてふわふわシフォンをさらに美味しく仕上げている。なお、ソーダやケーキの提供内容は時期により変わるため、詳細は車内メニューを確認してほしい。
途中下車も観光列車の楽しみ! 出発までは記念撮影&お買い物をとことん楽しむ
途中駅での短時間下車とお買い物も観光列車のお楽しみ。出発から25分ほどで最初の「阿波川口(ぽんぽこ阿波川口)駅」に到着。同エリアは日本一の狸の里で多くの“やましろ狸話”が伝わっており、駅舎自体が狸の巨大オブジェに変身中。駅前マルシェ「ぽんぽこ商店」では、停車中の短時間でも地元の美味しいが手に入るのでお財布片手にぜひ下車しよう。
続いての途中下車駅は「阿波池田駅」。こちらでは駅長帽をかぶりつつ千年ハッピで記念写真が楽しめる。乗車日入りのボードも用意。停車駅でのアクティビティだけでなく、車内でも車窓から満開の桜を眺めたり、春ならではの風景を満喫。車内アナウンスで見どころのポイントを教えてくれるので、聞きながら眺めてみよう。ところどころで地元の人々が手を振ってくれたり、たくさんのカカシがいたりと素朴な田園風景が楽しめる。
いよいよ最後の停車駅「坪尻駅」に到着。こちらは列車または徒歩でしか訪れることのできない秘境駅として有名。訪れた日は駅前に植えられた木々の花々がちょうど満開のタイミング。紅白のおめでたい景色を目に焼き付け、いよいよスイッチバック体験。車内を運転士が前後に移動する際には拍手が沸き起こるなどイベント感があふれ大盛り上がりに。スイッチバック時にしか見ることができない滝などを眺めて、いよいよ琴平へ。
約2時間ほどかけて大歩危駅から琴平駅に到着。同駅には専用待合室「ラウンジTAIJU」があり、フェアウェルサービスを受けることができた。ラウンジには「金刀比羅宮」の金のロゴや「四国まんなか千年ものがたり」の建築模型を展示。実際に車内を見てから模型を見るとまさに屋根のような造形になっていたことも分かるはず。
なお、列車はその後終点「多度津駅」へと出発。全行程で約3時間の列車旅となった。今回紹介した観光列車「四国まんなか千年ものがたり」の乗車予約の受付は乗車日の約1か月前より受付。駅のみどりの窓口やJR四国旅の予約センター、JR四国ツアー、せとうち観光ナビ「setowa」で予約ができる。コースは「そらの郷紀行」「しあわせの郷紀行」の2種類。食事もそれぞれ異なるので、こんぴらさんのお参りに合わせて地元愛をたっぷり感じられる優雅な列車旅を満喫してみてはいかがだろう。