旅レポ
タイ東部、ラオス国境沿いのアドベンチャーがスリリング! 闇夜に輝く2つの寺院は必見
2019年11月7日 07:00
タイ国政府観光庁のプレスツアーで観戦した、オートバイ最高峰レースのMotoGP世界選手権「PTT Thailand Grand Prix」(MotoGPタイグランプリ)。
このイベントが開催されたブリーラムのチャーン・インターナショナル・サーキットがあるタイ東部には、なかなかスリリングなアドベンチャーを楽しめるスポットがある。MotoGPのレースの迫力に負けない大自然のアクティビティと、闇夜に輝く寺院をチェックしてみよう!
洪水被害のあったウボンラーチャターニーで巨大ポンプ車が展示
ブリーラムの市街中心部から東へ約240km、クルマで3時間ほどのところに位置するウボンラーチャターニーは、隣国のラオスに接するタイ最東部の県だ。日本ではあまり報道されていないが、付近一帯では9月半ばに大雨による洪水被害があり、その被害の爪痕は至るところで目にした。ただ、訪れた10月初旬は完全に水が引いて活気を取り戻しており、今後観光の際に洪水の影響を直接受けることはまずないだろう。
洪水に関連して、ウボンラーチャターニーの街のシンボルの1つであるラクムアン(市の柱)の前には、浸水した地域の排水のため街に貸し出された巨大なポンプ車が展示されていた。実はこのポンプ車、2018年7月に北部のチェンライで少年たちが閉じ込められたタムルアン洞窟の事件でも活躍したもの。ポンプ車には横断幕が掲げられ、そこに感謝や応援の言葉を書き込む人々の姿が絶えなかった。
足のすくむ絶壁と壁画、キノコ形の奇岩がまとめて見られるパー・テーム国立公園
そんなウボンラーチャターニーの街からさらに東へ100km、パー・テーム国立公園まで足を伸ばすと、東部最大のアドベンチャースポットと言ってもよい断崖絶壁にたどりつく。メコン川を隔ててラオスを臨む崖上からは、まさに息を呑むようなパノラマが広がる。
ただし手すりなどは設置されておらず、ちょっとでも足を滑らせれば崖から真っ逆さまなので要注意。写真映えを狙って崖の縁から脚を投げ出して撮影する人もいるが、自己責任で!
ところでこの断崖絶壁は、ただの切り立った崖というわけではない。崖下には片道2km以上の徒歩ルートがあり、その途中で3000~4000年前に描かれたと見られる古代の壁画を目にすることができる。人や動物の姿、手形などがおおまかに4か所に分かれて描かれていて、なかには長さ180m、計900m 2 の広範囲にまとまって描かれているところもある。
真夏の暑さのなか、起伏の多い森をひたすら歩くような形になり、水が流れる滑りやすいポイントもある。壁画を観察するときはトレッキングに出かけるくらいのつもりでしっかり装備を整えておきたい。巨大な壁画は古代の人々にとって日々の出来事を記す日記のようなものだったとされているが、ここで何を思い、どんな暮らしをしていたのか。大自然を歩きながら、そんなことに思いをはせずにはいられない。
さらに断崖絶壁から1~2km離れた場所にあるのは、「サオ・チャリアン」と呼ばれるキノコ形の奇岩。まるで皿のような岩が水に流され、別の岩の上に乗り上げてしまったように見えるが、長年の浸食で脆い部分が削り取られ、危ういバランスをギリギリでキープするような奇岩が形作られたという。
これら奇岩群は遠くから眺めることも、近づいて触れることもできる。近くで見れば見るほど、上に乗っている岩が絶妙なバランスで支えられていることが分かるだろう。しかしさらに浸食が進めば、いずれはこのキノコ形の岩も崩れて見られなくなってしまうかもしれない。今のうちに、この岩の奥にある、岩盤の隆起によってできたとされる亀裂の入った大岩とあわせて見ておきたい。
2色の川の流れを見るならボートから!
もう1つのアドベンチャースポットは、パー・テーム国立公園の南、メコン川とムン川の合流地点に現われる色違いの流れ、「Two-Color River」と呼ばれる場所だ。メコン川の茶色く濁った水と、ムン川の緑色の水とが合流するところでは、きれいに2色に分かれて見えることがあり、合流地点に設けられた展望台からその様子を観察できる。
ただし、きれいに2色に分かれて見えるかどうかは運に左右されるところもある。天気のよい、ある程度日が昇った時間帯で、合流地点からムン川の10kmほど上流にあるダムから放流されているとき、といった条件に合致していないと、どちらも茶色く濁った水になるので境目が分かりにくくなるようだ。
よりはっきり境目を見てみたいなら、近くのボート乗り場から貸切ボートで直接川の境目まで行くのもアリ。10人までなら、船頭付きのボート一隻を600バーツ(約2161円、1バーツ=約3.6円前後)で借りることができる。川の上を移動するだけとはいえ、ここは一応ラオスとの国境。乗船前には国境を警備する人たちに写真撮影されるなど、やや緊張する場面もある。が、それも含めてメコン川の冒険を楽しみたい。
なお、今回筆者が訪れたタイミングではダムの放流が止まっており、大雨の影響で川が濁りやすい状況でもあったのか、残念ながら2色に分かれて見えることはなかった。地元の人の話によると、6月、12月、1月が一番はっきり見えやすい季節だそうだ。メコン川の流れは冷たく、ムン川の方は温かいことから、ボートの上から川に手を差し込んで、水温の違いによって境目をはっきり知ることもできるだろう。
闇夜に輝く2つの寺院
ウボンラーチャターニーには、夜になると光輝く寺が2つもあるという。1つは「Two-Color River」のさらに南にある、「ワット・シリントーンワララーム・プープラオ」という寺院。昼間はにぎやかな絵が描かれた寺院だなあ、という印象だが、日が暮れて暗くなってくると、徐々に寺院の壁の絵や周囲の地面の一部が淡い光を放ちはじめ、幻想的な雰囲気を醸し出す。
壁面や地面が特殊な塗料でペイントされていて、日中に蓄光したものが夜に放出されるというシンプルな仕掛けながら、周囲が完全に暗闇に包まれても、なんとなくずっとぼんやり眺めていたくなる。カップルのデートスポットに最適かも。寺院の出入り口付近の歩道には誰もがよく知る日本のキャラクラーやマークが彫られた石畳が敷き詰められ、伝統ある寺院ながら自由さあふれるスタイルもおもしろい。
もう1つは、ウボンラーチャターニーの街の中心部、「ワット・プラタート・ノン・ブア」という寺院。こちらはホワイトとゴールドが目に映える尖塔のようなシルエットで、夜の闇とライトアップされた寺院とのコントラストが美しい。夜にもかかわらず、祈りを捧げたり、おみくじで運勢を占ったりする現地の人や観光客が多く訪れていた。
ちなみに寺院の敷地内では、毎年7月ごろにウボンラーチャターニーで開催されるキャンドル・フェスティバルで使われる、ロウで作られた巨大オブジェが見られる場合もある。一回り小さいレプリカのオブジェも常に2体設置されていて、これらを目の当たりにすると、ウボンラーチャターニーのお祭りの壮大さを否応なしに予感させる。MotoGPタイグランプリが開催される3月もよいけれど、お祭り期間中の7月もウボンラーチャターニーの見どころは多そうだ。