旅レポ
チェンマイでワーケーションするなら訪れたい、まだ知られていない観光スポット
2019年8月16日 07:00
チェンマイでワーケーションを実践するなら、当然1週間以上の長期滞在が基本となるでしょう。そうなると、短期滞在ではできないような観光をしたくなるものです。
タイ国政府観光庁が主催した今回のツアーでは、日本の観光客がまだほとんど訪れていないという観光地を巡ってきました。
近年注目を集めつつあるインスタ映えするお寺、ワット・バンデン
まず最初に訪れたのは、チェンマイ中心部から車で1時間ほど北東に進んだところにある「ワット・バンデン」という寺院です。1894年に建立された寺院だそうですが、一時はかなり荒れていたそうです。そういったなか、1988年ごろから寄付を募るとともに、復興が進められてきて、現在では広大な敷地に数多くの建造物や彫像が作られていて、とても見どころの多い寺院へと生まれ変わっています。
ワット・バンデンに到着してまず目に付くのが、寺院入り口の白い狛犬のような彫像です。この彫像は、シンハーという魔除けです。シンハーというと、タイのビールの銘柄という印象が強いかもしれませんが、サンスクリット語でライオンを意味する言葉で、神話にたびたび登場していることから、寺院などの魔除けとして、日本での狛犬と同じように祀られているそうです。
そのシンハーの後ろには鮮やかなブルーの蛇の彫像が置かれています。この蛇も神話に登場する蛇をモチーフにしているそうで、蛇の彫像は入り口だけでなく、敷地内の建物の入り口にも置かれています。それも、ブルーだけでなく緑やピンクといったとても鮮やかな色が使われていて、とてもカラフルな印象を受けます。
そして、それら彫像だけでなく、境内の建物も非常に印象的です。建物はいずれも屋根が三重に重なった独特な構造となっていますが、これはタイ北部のランナー派と呼ばれる宗派の建造物で広く採用されている建築様式なのだそうです。しかも、彫像同様にこれら建物も鮮やかな色使いで、とても目を引きます。濃いブルーの屋根は、周囲が金などできらびやかに装飾されていて、壁面には非常に細かな彫刻も施されています。さらに屋根の端には入り口同様に蛇の彫像も取り付けられていて、芸術性にも優れているという印象を強く受けます。
ところで、建物入り口の蛇の彫像をよく見ると、尻尾のあたりが別の蛇に噛みつかれるような形になっています。これは別の蛇に噛みつかれているわけではなくて、昔に現在のミャンマーの支配下から独立したことを示すもので、チェンマイなどのタイ北部でだけ見られるものなのだそうです。
境内の中の建物は、もともとは本堂と礼拝堂だけだったそうですが、復興を進める間に寄付も増えて、建物もどんどんと建て増されていったとのことで、今回訪れたときには7棟を超える建物が完成していました。それぞれの建物の中には仏像が設置されて、いずれも基本的に自由に礼拝できるようになっています。また、巨大な涅槃像も作られています。タイではバンコクの「ワット・ポー」にある巨大涅槃像が有名ですが、ワット・バンデンの涅槃像もそちらに劣らず非常に巨大で、見逃すことのできない存在です。
これら建物の奥に進むと、干支の十二支を祀った礼拝堂があります。タイ北部で信仰されているランナー派では十二支ごとに塔の形が決められていて、自分の干支の塔にお詣りすることで御利益が得られると信じられています。ただ、その塔はさまざまな場所に分散していてお詣りするのが難しいため、ワット・バンデンでは、誰でも簡単にお詣りできるように十二支の塔を用意したのだそうです。ちなみに、ランナー派の干支では、日本の干支の動物と違うものがあって、羊が山羊、猪が象となっています。
このようにワット・バンデンは、非常に巨大な寺院ですが、現在でもまだ増築が続いています。今後さらに建物などが追加されていけば、観光地としての注目度も大きく高まっていくことでしょう。1つ問題があるとすれば、チェンマイ中心部からのアクセスです。今のところ、日本人観光客を対象としたツアーなどはありませんので、レンタカーを使うか、タクシーなどをチャーターする必要があります。そういった意味で、訪れるにはややハードルが高いですが、チェンマイを長期滞在で訪れる場合には、ぜひ足を伸ばしてもらいたい魅力的な寺院と言えます。
チェンマイ市民憩いの池で巨大藁アートに触れる
チェンマイ中心部からやや北に行ったところに、「ファイトンタオ池」という池があります。この周辺は、もともとは軍の用地だったそうですが、現在は公園として整備されていて、暑いときなどにファイトンタオ池でボートに乗ったり水遊びをしたりと、チェンマイ市民の憩いの場として親しまれているそうです。
そのファイトンタオ池周辺の公園に、ちょっとおもしろいアート作品があります。それが、藁で作られた巨大なゴリラの像です。ファイトンタオ池周辺は水田としても利用されていますが、その水田で育てた稲の藁を活用して作られたアート作品だそうで、もともとは1体だけだったとのことですが、かなりの人気を集めたことから、現在では親子の3体のゴリラ像が設置されています。
なぜタイでゴリラ像なのかはちょっと不明ではありますが、実際に見てみるとその存在感はかなりのもので、想像以上に迫力があります。当日は曇り空でしたが、奥の山々や水田の緑との対比が素晴らしく、晴れていればもっと美しく映えると感じます。また、このゴリラ像は登ることも可能です。登って周囲の景色を眺めたり、インスタ映えする記念写真を撮影するにも最適です。
そして、このゴリラ像だけでなく、周囲には鹿や象、水牛などの藁アートも設置されていますし、花も植えられていて、一大アート施設となっています。周囲は公園のように整備されていて、ひと休みできる小屋もありますので、ゆっくり散策するのにももってこいでしょう。
このほか、この藁アート周辺には宿泊可能な藁葺きのコテージも用意されています。高床式で風通しがよく、それぞれにトイレやシャワーも完備しています。さすがに、ホテルなどに比べるとホスピタリティは劣りますが、ほかでは体験できない経験として、1泊だけでも体験してみるのもおもしろいかもしれません。空調がありませんので、じめじめとした雨期の利用はお勧めできませんが、湿度が低く気候も安定する乾期であれば、体験してみる価値はあるかもしれません。ちなみに1泊の料金は600バーツ(約2070円、1バーツ=約3.45円換算)と格安です。
このファイトンタオ池周辺の公園には、入場料が50バーツ(約173円)かかりますが、藁アートを楽しんだり、長期滞在中に緑いっぱいの公園でゆっくり過ごしたいときにお勧めです。
たばこ工場をリノベーションしたリゾートでチェンマイの歴史に触れる
次に訪れたのは、チェンマイ中心部から南へクルマで30分ほどの場所にある「Kaomai Estate 1955」です。ツタが絡まるレンガ造りの建物が並ぶ、とても印象的な雰囲気が特徴でとなっています。
こちらは、歴史的な建造物をリノベーションしてリゾートとして整備されたところです。もともとKaomai Estate 1955周辺は、この地域の特産品となっていたたばこの工場として60年以上稼働していました。その工場で、葉を乾燥させたり貯蔵したりする倉庫群を、当時の雰囲気を活かしながら現代風にリノベーションして、ホテルやカフェなどを整備したのです。歴史的な建造物や周辺の雰囲気を損なうことなくリノベーションして活用していることが評価されて、歴史的な環境と調和する優れた新規デザインを表彰する「ユネスコアジア太平洋文化遺産保全賞」を受賞しています。
Kaomai Estate 1955の魅力は、何と言っても歴史的な建造物と自然が一体となった、ほかにはない雰囲気です。敷地に一歩足を踏み入れると、樹木が生い茂ったジャングルのような雰囲気ですが、そのなかにたばこの乾燥蔵が現われます。うっそうとした自然のなかに近代的な建造物が現われ、その対比に驚かされます。その建物は、多くがカフェやホテルとしてリノベーションされていますが、一部は歴史資料館として公開されています。タイ北部の近代産業がどのように進化してきたのかを知るうえで、非常に貴重な場所と言えます。
また、敷地内のカフェにもぜひとも足を運びたい場所です。こちらも古い倉庫をリノベーションしたものですが、側面がガラス張りとなっていて、とても近代的かつお洒落な雰囲気となっています。こちらでコーヒーやお茶、スイーツを楽しむのはもちろん、チェンマイの伝統料理も楽しめますので、ランチがてら訪れるのもお勧めです。
ところで、Kaomai Estate 1955の一角にあるホテル「カオマイ ラーナ リゾート」も、同じくたばこ工場の建物をリノベーションしたものとなっています。外観こそ旧来のレンガ造りの倉庫そのままですが、中は近代的なホテルとしてリノベーションされていますので、快適に滞在できるでしょう。今回はこちらで宿泊はしませんでしたが、2階建ての倉庫を丸ごと使い、1階をリビング、2階を寝室として利用できるメゾネットタイプの部屋では、大きなデスクも用意されていますので、ワーケーションで長期滞在する場合の拠点として利用するのもよいかもしれません。
手作りの工芸品に触れられる「バーン・カ―ン・ワット」
チェンマイでは、現地の素朴な工芸品が近年日本人にも人気となっています。そういった工芸品は、チェンマイ市内の夜市などでも気軽に触れられますが、もっと芸術性に富んだ一点ものの工芸品に出会いたい場合にお勧めなのが、チェンマイ国際空港の近くに位置する「バーン・カ―ン・ワット」です。
バーン・カ―ン・ワットは、もともとは寺院のそばにある集落だったところを丸ごと買い取って、工芸品作家が集まるアーティスト村へと変貌したそうです。当時の建物などを活かしつつ、お洒落な雰囲気を実現していますので、その雰囲気を楽しむだけでも、かなり魅力があるt感じます。
そして、それぞれの建物の中では、工芸作家が実際にその場所で工芸品を制作し、販売しています。どの工芸品も、実際にその場で作られていますので、量産品とは違ってどれも同じものは1つとない一品ものです。チェンマイ市内の夜市などで売られているものと比べると、価格はやや高いですが、ほかにはない芸術性に優れる工芸品ばかりですので、質のよい工芸品を探しているなら、見逃せない場所と言っていいでしょう。
また、ここバーン・カ―ン・ワットでは、工芸品の制作を実際に体験できるワークショップも定期的に開催しています。ある程度言語の壁はあるかもしれませんが、チャレンジするとまたとない体験ができるかもしれません。このほかにも、カフェやアイスクリームショップなどがありますので、工芸品を楽しみながら午後のひとときをゆっくり過ごすというのもよいかもしれません。そういった意味でも、長期滞在中に訪れる場所として、かなり魅力的と感じました。