旅レポ

ほっこり馬車に山車タッチと「星野リゾート 青森屋」ならでは!を体験

雪の中浮かび上がる「ねぶた雪灯り」は必見

「星野リゾート 青森屋」の滞在も2日目。朝食は池のほとりに建つ「南部曲屋」で味わうことに。

「南部曲屋」は、青森の伝統家屋仕様の農豪の邸宅を移築した建物が特徴的で人間と馬とが暮らすためにL字形であるのが特徴。藁葺き屋根の大きな屋根が見えるとまもなく到着。スタッフに迎えられ中に入ると囲炉裏でニジマスがじっくりと焼かれ静かな時間が流れていた。

「南部曲屋」で贅沢朝食。眼福&満腹で幸せな1日がスタート

 朝食に選んだのは「古民家の田舎ご膳」。見た目が華やかで写真映えもお味も抜群の品々が並ぶ。目覚めのジュースとして豆乳とりんごジュースをミックスしたドリンクを一口飲み、箸を進めることにした。

「南部曲屋」の入り口に到着。スタッフが出迎えてくれる
囲炉裏では食事で提供される虹鱒が焼かれタイムスリップしたような雰囲気

 まずは「生ハムと野菜サラダ りんごドレッシング」から。次に目にもうれしいカゴ入りの「ねぶた漬と牛蒡の和え物〜青森名物 海の幸と山の幸の醤油漬け」「いくら」「長芋めかぶ和え」「春菊胡麻和え」「香の物」へ。到着時間に合わせ炊かれた土鍋の中にはつやつやのご飯。この日は囲炉裏で焼いた魚に合う「青天の霹靂」を使ったブレンド米。魚とともにお茶漬け用の八助梅や三つ葉、あられや海苔と一緒にスルスルといただこう。

「帆立味噌貝焼き」は味噌や溶き卵で旬の食材と煮込む郷土料理。メインの「虹鱒塩焼き」はふっくらした身とパリパリの皮で食べ終わるのが惜しいほど。振られた塩加減も絶妙だ。デザートは愛らしい器入りの「甘酒ゼリー」。とろんとした優しい舌触りと淡い甘みで幸せに。窓の外の湖と雪景色を見ながら満腹に。目にもうれしい品々で朝から鋭気を養えた。

テーブルいっぱいに並べられた「古民家の田舎ご膳」
りんごドレッシングがポイントの「生ハムと野菜サラダ りんごドレッシング」
「籠小鉢」では6つの味わいが楽しめる
郷土料理の「帆立味噌貝焼き」。帆立がくつくつ
メインの「虹鱒塩焼き」。ふっくらした身はいつまでも食べていられる
土鍋ご飯はふっくら。お茶漬けにして味わうのもいい
上品な食べ心地なデザート「甘酒ゼリー」

青森県の朝風呂文化を、津軽びいどろの色彩包む「元湯」で

 朝食後は一休みしてから「元湯」を訪れてみた。創業者に「出るまで掘りなさい」と命を受け、1971年に湧いた温泉だ。地下約1000mから湧いており、ここ一帯で一番古い源泉。豊かな水量ととろみのあるお湯は入った瞬間に美容液と思うほど肌がツルツルに。湯を守るために半径2kmは温泉掘削が禁止となっているほど地元でも愛されている。

 営業時間は朝5時から22時まで。地元にも開放されているため宿泊者専用時間がある。青森県民の起床時間の早さは日本一であり、1日のスタートに朝風呂を楽しむ文化が根付いているという。漁業が盛んなため漁を終えたあとにひとっ風呂浴びて冷えた体を温め疲れを癒す部分もあるそうだ。本館からは毎時10分、40分にシャトルバスが運行している。

レトロな雰囲気の「元湯」入り口に到着
津軽びいどろのはめ込まれた衝立の向こうにはコタツを設置。湯上りにのんびりも
初めて来たのに懐かしい! 気分になるもう一つの入り口

 入口を抜け中へ。津軽びいどろの衝立の美しさに驚きながら進むと休憩所とともに価格表などを発見。宿泊者向けには無料で開放されているが、日帰り利用の場合も料金を払えば利用ができる。9時を過ぎるとお風呂道具片手に続々と馴染みのお客さんが訪れ、地元感たっぷりの空間となっていた。

 湯船のある空間は想像以上の美しさ。職人とともに半年かけて生み出した全5色約100枚のオリジナルガラスが朝日を受けて色彩のラインを生み出していた。冬の8時から9時過ぎのみ見られるとっておきの景色とのこと。これを見ずして東京に帰れない!と言えるほどの瞬間だった。

 約41℃のお湯はアルカリ性単純温泉で関節痛や冷え性、疲労回復などに効果がある。とろっとしたお湯は肌を艶やかに仕上げてくれ、湯上がりの保温性も抜群。朝入り、夕方まで体がポカポカと地元では評判の湯だそうだ。

日帰り利用の場合の価格表
本館行きのバスの時刻はこちらを参照
冬の朝の決まった時間にしか見ることのできない色彩のラインは必見(画像提供:星野リゾート)

うるる部長と公園一周。「ストーブ馬車」でのんびり散歩

 体もポカポカしたところで池をぐるりと巡る「ストーブ馬車」(大人1200円、子供1000円、未就学児700円)を体験。特製「八幡馬」フォルムの薪ストーブで温まった馬車内から雪景色をゆっくり見て回ることができるのだ。午前中全6回運行で各時間6名。天候や馬の体調により運休の場合もある。

 集合時間にエントランスに向かうと、この日はうるる部長がスタンバイ。馬年齢17歳。農耕馬の血を引き太く短めの足とプリッとしたお尻、お腹のぽっこりフォルムが愛らしい。性格はマイペースでとっても優しい。きらら課長と一緒に馬車を引くお仕事をしている。

うるる部長とともに「ストーブ馬車」で公園一周に出発
ベンチが左右に用意され、机の上には「ごぼう茶」がスタンバイ
「八幡馬」フォルムの薪ストーブで馬車内は暖か

 早速「ストーブ馬車」に乗り込み出発! 目の前ではパチパチと薪が燃え上着がいらないほどの温かさ。クールダウンしたいと願った瞬間に馬車が一旦止まり扉が開くと「雪ん子」が「雪ん子アイス」を車内に配布。この絶妙なタイミングぶりにびっくり。少し待ちアイスが柔らかくなったら食べごろだ。南部せんべいは地元ならではのバターを練り込んだもの。ほんのり甘く、アイスとの相性がとてもよい。

 その間にスルメも薪ストーブの背中部分で焼くことに。香ばしい匂いが漂い思わず会話に花が咲く。

薪ストーブで暖かくなったタイミングで「雪ん子」が扉を開けて風呂敷をオープン
地元ならではのバターを練り込んだ南部せんべいにアイスを挟み「雪ん子」に見立てたスイーツ
薪ストーブの背中でスルメを焼くことに!
あっという間にできあがり、つまみながら馬車は進む

 散歩の途中、幾度か馬車を止めて周囲の解説も。なぜ池に岩が置いてあるのか、人気の撮影スポットや奥入瀬渓流とのちょっとしたつながりについても知ることができる。また、馬車を引いてくれるうるる部長とサラブレットの違いも蹄鉄を見せつつ説明してもらえた。あっという間の約20分。徒歩で回るよりもプラスアルファの体験ができ大満足。乗車後は地図をチェックし、気になる場所へもう一度行ってみるのも楽しい。

窓を開けつつ代表的なスポットなどを教えてくれる
蹄鉄を例に農耕馬の血を引くうるる部長についてもレクチャー
お散歩で気になったエリアへもう一度行ってみても

2000円で「八幡馬ラウンジ」でティータイム

 雪景色を眺めながら静かに流れる時間を楽しみたいならば「八幡馬ラウンジ」へ足を運ぼう。チケット代1人2000円でフリードリンク&お茶菓子のサービスを受けることができるからだ。どっかりと座れる大きめソファとミニテーブルが窓に向かって設置され、お茶やアルコールを飲みながら景色を眺めながらの~んびり。午前中・午後と提供アイテムが異なり、訪れた20時には「ごぼう茶ラテ」と「陸奥八仙」にシードルとアップルジュースが味わえた。

お茶室を改装した「八幡馬ラウンジ」
珍しいブラックとゴールドの「八幡馬」がお出迎え
21時ごろに訪問。落ち着いた空間が広がる。人気の14時〜22時は予約が必要
フリードリンクエリア。「ごぼう茶ラテ」の作り方のボードもある

 フリードリンクのため自分好みのラテを作ることも。ごぼうシロップやパウダー、仕上げの黒蜜を多めにしたりといろいろ試せた。お茶菓子には青森屋オリジナルの「ごぼうチョコせんべい」(10枚入り1200円)を提供。ほんのり塩味&しっかりごぼうな南部せんべいでチョコレートをサンド。その新感覚のハマる美味しさに「じゃわめぐ売店」で追加購入したほど。なお、なぜ「ごぼうづくし」なのかにも理由があるのでぜひスタッフに聞いてみよう。

下に敷くボードも「八幡馬」フォルム。「ごぼう茶ラテ」と「ごぼうチョコせんべい」をセットで
お茶菓子で提供された「ごぼうチョコせんべい」は個別包装でお土産にもぴったり
本館への帰りには源泉掛け流しの「足湯」で雪景色と凍結した池を眺められる

夕闇と雪に映える「ねぶた雪灯り」で極彩色に酔いしれる

 自然に囲まれながらのんびり過ごしていると気づくと夕刻になっていた。ならばと遠くからでも光が灯っていることが確認できる「ねぶた雪灯り」へと出かけてみることに。貸し出し用の提灯片手に雪の中をテクテク。目の前には雪に色が映し出されダイナミックさと美しさを兼ね備えた青森ねぶたの山車が現れ、思わず釘付けに。

 4名のねぶた師による作品たちは大迫力の姿を見せてくれる。「勧善懲悪 閻魔」や「相馬太郎良門 妖術を修る」。史上初の黒ねぶた「黒船ねぶた」など人物や伝説を基にした作品と写真を撮るだけでなく実際にそっと触れることも可能。線の太さや、使われている色の際の処理など普段間近に見ることができないのでかなり興味深い。もちろん作品解説もされていた。

闇の黒と雪の白のコントラストの中浮かび上がる「ねぶた雪灯り」
優しく触れることもできる。間近で見る描写の迫力さは凄まじい
史上初の黒いねぶた「黒船ねぶた」は圧倒的な存在感

ホテル業とともに地域活性化と伝統文化を伝承。総支配人 岡本氏に話を聞いた

 日本人観光客のみならず海外からの旅行者も訪れ多言語飛び交うロビーが印象的だった「星野リゾート 青森屋」。スタッフのホスピタリティの高さとともに、コンセプト「のれそれ青森~ひとものがり~」を感じるアクティビティや客室の装飾、食事など地域性を全面に打ち出しているのが特筆すべき部分だ。総支配人の岡本真吾氏にその狙いや展望を聞いてみた。

 初めて青森を訪れる利用者向けにお勧めアクティビティを聞いたところ、「青森はお祭り文化がございますので、ぜひ『じゃわめぐショー』や『みちのく祭りや』で体験していただきたいと思います。

 そしてお祭りあとには文化的側面にも注目していただけると幸いです。伝統工芸、食事さまざまな魅力が青森にはあります。例えば、南部裂織はこの地方に昔からある織物です。しかし歴史はしっかりございますが認知度はまだまだの部分も。ですのでロビーや客室で小座布団などに採用し実際に使っていただけるように。そして売店でも販売しています」と話してくれた。

 冬季限定で450個以上の灯篭が連なる「八幡馬灯篭回廊」を始め「八幡馬」も館内で目にする機会が多い。そのかわいらしいフォルムに心奪われる宿泊者が続出だが、その意図も同様。「冬の期間の目玉の一つである「八幡馬」に対しても、伝承のために自分たちもできる限り力を尽くしたい思いです。文化が途絶えぬように次の担い手まできちんとつなげていきたいと。我々は宿泊業ですし、できることには限りがありますが情報発信はできます。滞在で工芸品をお楽しみいただき、作り手にの方々たちが新たなニーズを掘り起こせる機会になればと考えています」と語った。

 さらにスタッフの青森愛についても言及。「スタッフのほとんどが地元出身で青森愛があふれています。地域活性化や伝統文化への思いも深いですので、スタッフとともに青森屋、地域を盛り上げるべく今後も試行錯誤しながら運営を行なって参ります」としめてくれた。

「星野リゾート 青森屋」総支配人 岡本真吾氏
ロビーや客室で採用されている南部裂織を使った色とりどりの小座布団
客室には「八幡馬」が対で親子2馬飾られている

地元の美味しいがここに集結。「八食センター」で炭火焼

「星野リゾート 青森屋」周辺の観光エリアについてもご紹介。クルマで約40分と滞在時のランチや八戸駅へ向かう帰り道に立ち寄りたいのが「八食センター」だ。市場棟・味横丁・厨スタジアムの3エリアに分かれており、「八戸のうまいもんがみんな揃う!」をうたうだけに、まさに八戸名物のパラダイス。創業から30年以上の歴史があり、全長約170mの間に約60店舗がひしめきあう眺めは壮観。水揚げされたばかりの魚介に地元産のお酒、りんごスイーツにお土産などなんでも揃う。

八戸の美味しいが必ず見つかる地元民御用達の「八食センター」
約170mの間に60もの店舗が並ぶ
夕飯の買い出し用から、併設される「七厘村」用のセットまで販売
大きなホタテは市場でも人気。必ず手に入れたい
アルコール類も豊富。青森らしいアップルシードルも多数揃えている
りんごジュースもずらり。味と特長を考慮した並びになっていた

 市場に併設されている「七厘村」では入場料(2時間大人350円、小学生100円)を支払うと七輪を使い「八食センター」で購入した食材をその場で焼き上げ味わうことができる。お皿や箸、各種調味料も貸し出してくれるため食材を準備するだけでかなり便利。

 天然ホタテや活あわびに真鱈白子、開きキンキン、生干し真𩸽、赤エビとともに岩倉牛のA5ランクを手に入れ、早速焼いて食べることに。ホタテや白子、アワビにエビはそのまま食べてもOK、焼くのを悩むほど新鮮だった。

 七輪の上手な使い方をスタッフに聞いたところ火力が強いため、こまめに見つつ食材を裏返しながら焼くのがよいそう。訪れた時期は12〜3月まで漁が解禁されているホッキ貝が旬で、ホタテやカキも人気だった。貝類は焼きあがるのに時間がかかるので始めに網に乗せ、干物系はすぐ焼き上がるのとサイズが大きいのであとがよいと教えてもらった。

「七厘村」で焼けば、熱々の美味しい魚介がたっぷり食べられる
受付後天然ホタテや開きキンキン、倉石牛まで食べたい食材を調達して席に戻ろう
バターオンでホタテを焼いたり、できあがるまでの時間が愛おしい
訪れた時期はホッキ貝が旬。色々なお店を見て、八戸の美味しいを探そう
「七厘村」の入口にはアウターなどを保管できるロッカーも設置
市中心部や八戸駅行きのバスでアクセスも簡単。マスコットキャラクター「タベラくん」が目印

相川真由美

フリーライター/鉄鋼業やIT系やエンタメ関連の雑誌やWeb媒体の編集者を経て、フリーの記者として活動中。海外は一人旅がほとんど。趣味は世界のディズニーのパーク&リゾート巡り。最近は年間パスポート片手に日々舞浜通い。うなぎとチョコレートが好物で、旅の基本は“出されたものは全部食べる”。激辛とうがらしから謎の木の実まで挑戦するのがモットー。