旅レポ

フィリピン・クラークを観光してみた。ワイルドなスパと砂風呂に癒される

ジェットスター・アジアで行く関空~クラーク

フィリピン・クラークを観光してみた

 ジェットスター・アジア航空は、2018年3月27日から関西国際空港~フィリピン・クラーク国際空港(ルソン島)の直行便を運航している。

 クラークと聞いても日本ではあまりなじみがないかもしれないが、現地で近郊のスポットを観光してみた。

ジェットスター・アジア航空の関西国際空港~フィリピン・クラーク国際空港線

3K778便: 関空(12時55分)発~クラーク(16時15分)着、火・木・土曜運航
3K777便: クラーク(07時00分)発~関空(11時55分)着、火・木・土曜運航

クラーク国際空港

まずはクラークの宿泊先に移動。安心して過ごせるセキュアな空間

 ジェットスター・アジアの3K778便がクラークに到着するのは16時15分(現地時間)。そのまま予約してあったアンヘレス市のホテル「Park Inn by Radisson Clark」に直行した。

 空港の到着ゲートを出ると、日本円からフィリピン・ペソへの両替所やプリペイドSIMの窓口があり、建物の外に出れば多くのタクシーが到着客を待っているので不便はない。大きな店舗での決済はクレジットカードが利用可能で、物価が安いこともあり、贅沢をしなければ2000ペソ(約4200円、1ペソ=約2.1円)もあれば1日を過ごせるようだ。

 タクシーはメーター式のものがあり、Park Inn by Radisson Clarkまでは乗り換えなしのバスもあったのだが、重い荷物を持っていたので迷わずタクシーに乗車。空港から10分ほどで到着した。

 口コミサイトの掲載を見ると、Park Inn by Radisson Clarkの評価は高い。ホテルの入口には金属探知ゲートが設置されており、ハンドガンを持っている警備員が24時間常駐しているし、ルームキーを持っていないと2階以上のエレベータ操作ができないなど、とてもセキュアなホテルだ。

 ホテルのゼネラルマネージャーであるZenaida R. Alcantara氏によると、「クラークは横浜ゴムなどのメジャーな日本企業も進出し(ヨコハマタイヤ・フィリピンがクラーク開発公社と工場用地を借用契約)、数千人を雇用している。英語を学ぶために留学している日本人も多い。

 セキュリティゲートで不審者の侵入をシャットアウトした特別経済区のなかでも、アンへレスを代表する大型ショッピングモール『SM City Clark』に隣接するセキュアな空間なので、安心してクラークを楽しんでほしい」とホテルについて説明してくれた。振る舞っていただいたクラッシュドアイスで冷やされたスイカジュースも日本人の味覚に合うもので美味だった。

 実際、隣接するSM City Clarkはアンヘレスでメジャーな観光スポット。お土産はもちろん日常に必要なもののほとんどを購入可能であり、映画館もある。一人歩きしている女性が日本語で電話をかけているシーンに何回も遭遇し、安心した。正直なところ、特別経済区以外は日本人の一人歩きは危険なので、買い物や食事、ATMはここを利用するのがお勧めである。

Park Inn by Radisson Clarkのスーペリアルツインの室内。無料Wi-Fiも完備、各種アメニティも揃う。浴槽はなくシャワーで、温水式洗浄便座ではない。部屋からは隣接するショッピングモールのSM City Clarkが見える
Park Inn by Radisson Clarkのレストランでいただいたサーモンのソテーは厚みがあり美味。「San Miguel」のビールは数種類あり、フィリピンのビールマーケットシェア約90%を誇る人気とのこと

ワイルドな秘境エリアのスパで寛ぎの時間を過ごす、プニング温泉で過ごす贅沢な時間

 一夜明けて、アンヘレス市観光局が用意したクラークエリアのお勧め観光に出かけた。ホテルで合流したツアーガイドのRichies S. Dizon氏は、「クラークはほかの街よりも安全で過ごしやすいだけでなく、近隣に楽しめる場所も多い。東京ではあり得ないアトラクションもあるので、ぜひ楽しんでいってほしい」という。

 最初に訪れたのはプニング温泉(The Puning Hot Spring)。「ステーション」と名付けられたエリアに、レストランや各種の温泉があるスパリゾートで、親子で楽しめるアンヘレスの観光スポット。

 まずは更衣室やレストランエリアがある「ステーション1」で貸し出されるシャツやショーツに着替えてから4WDに乗り込み、砂風呂(Sand steam)のある「ステーション2」に向かった。クルマで小高い丘を越えて急な坂道を降りていくと到着。スタッフの方々が砂を返し少し掘り下げたところに体を横たえると、首から下にスコップで砂を盛ってくれ、顔面にピナツボの火山灰を使った泥パック(Mud pack)を施してくれる。

 筆者は国内で砂風呂を体験したことがあったが、鹿児島県・指宿の砂蒸し風呂の砂に比べると細かく重さを感じた。サンドスパの下にあるかまどの熱で砂を温めているようだが、効用は血行促進、肩こり、頭痛、むくみの改善などとのこと。

 女性スタッフが脚や腕の上に乗り、砂を介した間接マッサージを施してくれるごろには全身の毛穴が開き、仰向けに寝ている後頭部に汗が垂れていくのが分かるほどに温まった。約20分の利用時間ではあるが、スタッフの方が大きな団扇で顔の辺りを扇いでくれるので快適だった。

プニング温泉のステーション間はオフロード車で移動する。ステーション1と2の間は砂埃を上げて走る
砂風呂で半生き埋めにされる筆者。決して熱いわけではないが10分を過ぎたころから、じわりと汗が湧き出てくる。約20分で終了し立ち上がると、発汗がとても爽やかに感じた

 砂風呂から上がり体に付いた砂を簡単に払うと、顔面に泥パックをしたままで再びクルマに乗り込んで、15もの温水・冷水プールがある「ステーション3」に移動。ステーション1から約30分の所要時間だが、どのプールに入るか迷うほど。

 切り立った岩の間を流れる渓流沿いの道なき道を登っていく道中は、砂埃を上げて走るときもあれば、そこそこの深さのある川を渡って水しぶきを上げるシーンもあり、まさにワイルド。振動でクルマ酔いする方には厳しいかもしれないが、視界に広がる大自然を眺めていれば酔いも忘れてしまうのではないだろうか。

ステーション2と3の間は狭い渓谷のようなところもあれば、視界が急に広がる場所もある。何度もクルマで清流を渡るが、本当に透き通っていた

 ステーション3に着いたら、まずは天然温泉が流れ落ちる滝(滝は人工の造形)をシャワー代わりにして、砂を洗い流す。滝が温かい温泉水であり、足元を流れているのも温水。雄大な自然のなかで温泉のシャワーを浴びるのは、露天風呂に比べても非日常的で気分がよい。

 プールも温かいものから温度が低いものまでさまざまで、温まったあとにクールダウンするなど何度でも入りたくなる。スノコの上に簡易ベッドが置かれ、建物の下を流れる温泉を吸い込んで休憩できるコテージで横たわると、「1日居たい」と思うくらいに癒される空間。

 日差しが強いので素足で歩くのは熱い。可能であれば、ビーチサンダルなどを持っていくのがお勧めだ。

人工ながら、流れ落ちる滝が温泉というのは不思議な気持ち。湯量も多めなので「打たせ湯」の効果もありそうだ
ステーション3の最も高いエリアには、高中低の3温度のプールがある。ガイドによれば、ステーション3を正面から見て左の山からは温泉、右の山からは湧冷水が出るので、それらを混ぜて温度調節をしているとのことだった
これが癒されるコテージ。簀子の下を流れる温泉を吸引しながらヒーリング。簡易ベッドに横たわると、通り過ぎる風の心地よさもあり眠ってしまいたくなる
ステーション3には、大小合わせて15もの温水・冷水プールがある。筆者たちは午前中に訪問したので、半分貸し切りに近い状態で存分に楽しめた

 ゆったりとスパでの時間を過ごしたあとは昼食。再びクルマに乗り秘境のような景観を潜り抜けてステーション1に戻り、ビュッフェ形式のレストランに向かった。肉を野菜と一緒に煮込んだ酸味の効いた甘酢っぱいフィリピンの郷土料理「アボド」や、モチモチした麺で日本の焼きそばと似ている「パンシット」、肉から炭に落ちる脂が一帯に香るBBQ、新鮮なマンゴーなど、ともかく腹いっぱいになるまで食すことができ大満足であった。

ステーション1に戻り着替えたあとに、ビュッフェ形式のランチ
プニング温泉の各ステーション。東京で決して味わえない楽しさは一度味わってみてほしい
プニング温泉

所在地: Sitio Target, Barangay Sapang Bato, Angeles City, Pampanga, Porac, Pampanga
TEL: 0919-399-2795
営業時間: 8時~15時(最終入場14時)
入場料: 3000ペソ(約6300円、3名以上の参加が必要)

4Dシネマでクラークの歴史を学べるシアター併設のクラークミュージアム

 まるで時間が止まってしまったかのように過ごしたプニング温泉をあとに、続いて訪れたのは「クラークミュージアム」。クラークはアメリカの航空基地があったこともあり、街の景観もどことなくアメリカ的で「リトルカリフォルニア」とも呼ばれているそうだが、その歴史的な記録を展示しているのが「クラークミュージアム」である。

 建物自体は2階建てで目立つものではないが、正面には大砲のモニュメントや石碑があり、「歴史を残すミュージアム」っぽさを感じる。館内の展示は、玄関を入って左に向かう順路を進むと原住民の生活を示す展示から始まり、時間軸を追った内容になっていた。

 クラークは日本では聞き慣れない地名だが、実は「Kamikaze East Airfield」は太平洋戦争のときに零戦が初めて飛び立った場所であり、日本と深い関係のあるエリアである。ミュージアム内の展示でも日本の軍人の遺品などが展示されており、つい見入ってしまった。

 展示は1階と2階に分かれているが、後半はやはりピナツボ火山の大噴火や特別経済区として多くの世界的なメジャー企業の拠点が集まってきていることが分かる内容。位置的にもアジア地域の拠点にするのに適していることもあり、これからの発展にも期待されていることが理解できるものだった。入館料は50ペソ(約105円)なので、クラークを訪れた際にはぜひ立ち寄ってみてほしい。

クラークミュージアム内の展示。人々の生活や事件など、時間軸で並べられた展示なので分かりやすい。つい日本人に関係ある展示に見入ってしまうが、ピナツボ火山の大噴火や特別経済区になってTexas Instrumentsなどの世界的にメジャーな企業が進出してきていることについても学べる

 クラークミュージアムに隣接する「4D Theatre」では、4Dシネマでクラークの歴史を学べる。上映しているコンテンツは原住民の生活、他国からの侵攻、太平洋戦争、ピナツボ火山の大噴火、そして現在、特別経済区として成長している様などを映像で紹介するもの。映像は3Dで、座席がシーンに合わせて振動したり、前後に角度が変わったりする仕組みを持っている。シーンによっては送風による演出などもあり、純粋に歴史を学ぶというよりは映像コンテンツを体感して楽しむものだったが、分かりやすかった。

クラークミュージアムに隣接する「4D Theatre」
通りの向かい側はパレードグラウンドという運動場

ヒルトンホテルなど、大規模開発が進められているクラークサンバレーリゾート

 2016年、米ホテル運営大手のヒルトンワールドワイドとヒルトンホテルズが、クラークサンバレーリゾートと、クラークのリゾートホテル開発で契約したことが報じられたが、現在まさに大規模な開発が進められている。

 その中心となる「クラークサンバレーゴルフリゾート&カントリークラブ」は、アヤラート山とカブサン山脈を一望できる360度のパノラマビューを誇る、韓国企業が保有する36ホールのゴルフコース。「ヒルトン・クラーク・サンバレー・リゾート」には268室のホテル、カジノ、ウォーターパーク、インターナショナルスクール、ハイエンド住宅のヴィラなど、大がかりな複合用途開発が行なわれている。スパ、キッズクラブ、料理学校、乗馬施設などのスポーツ施設も開設される予定なので、これからますます発展することは間違いないだろう。

美しいゴルフ場はすでに海外からの訪問者に人気コース。サンバレーは熊本県にも2つのコースを保有しているので名前を聞いたことがある方も多いだろう。ホテル、学校、カジノなどが現在建設中であり、今後さらに多くの経済価値を持つ街ができあがることは間違いない

第二次世界大戦での日本に関する歴史や、戦没者とその遺族について思う場所

 続いて案内されたのは「Kamikaze West Airfield」。碑に刻まれている文字を読むと「昭和20年1月8日の暁、この飛行場から最後の飛行機が離陸した。『神風』の機密書類と人員を乗せた最後に2機の飛行機が脱出するため、この飛行場から低空飛行で台湾へと旅立った」とあり、世界平和を祈念するアンヘレスの歴史研究家 ダニエル・エッチ・エイソン氏の言葉が記されていた。

 また、「Goddess of Peace Shrine」(平和観音宮)では詳細な説明はなかったが、鹿児島高野山・最福寺が中心となって戦没者の慰霊を行なっているようだった。

「Kamikaze East Airfield」の慰霊碑は日本人向けの観光スポットになっているが、クラークの中心地からは「Kamikaze West Airfield」の方が近い。公共交通機関はないのでタクシーに乗る必要があり、アメリカ空軍基地のなかにあるので事前許可も必要
Goddess of Peace Shrineの前に立ち、思わず手を合わせた

 このほか、サーキット場の「クラークインターナショナルスピードウェイ」や、フィリピン軍の戦闘機を展示している「エアーフォースシティパーク」を遠目に見るなど、まだまだ行ってみたい場所があった。ともかく、クラークを訪れる方に覚えておいてほしいのは、可能であれば旅行代理店で組まれたツアーに参加するか、信頼できるガイドに案内をお願いするのが安心ということ。

 今回の訪問で、今まで観光先として意識していなかったクラークに対して興味が湧いた。まだまだ不便な点も見受けられるが、日本との時差は1時間。ジェットスターの就航によって日本人の行動範囲が広がったことは間違いない。

早朝のクラーク国際空港 国際線出発ロビー

酒井 利